IS学園での物語 作:トッポの人
二つの機体を一つにしてデュアルコア……なるほどなるほど。
で、シャルがくっそカッコいい変身ポーズ決めながらMAX大変身って言ってマザルア……IS展開するSSはまだですか?
自分のためではなく、誰かのために。
そいつが俺に魅せたのは、自分が理想とする姿そのものだった。他にも何か考えがあったと誰かは言うかもしれないが、ずっと思い描いてきた理想の姿を見間違えるはずがない。あれは純粋に誰かのためだった。
嬉しかった。自分と同じような事を考えるやつがいて。
羨ましかった。自分には出来ない事を出来るそいつがどうしても。
あれは決して咄嗟に出来るような事じゃない。きっとこの学園に来る前からずっとそうしていたんだろう。誰かのために。そしてこれからもあいつは誰かのために行動するんだろう。
なら俺ももう一人の男子として恥じない行動をしよう。いつかあいつと肩を並べるため。隣に立っても不自然な事がないように。
「やはりか」
「これ……なんて言えば良いんでしょう……?」
「さて、な……」
真耶が戸惑うのも無理もない。私達が見ているウィンドウには凄まじい力でフレームを歪められたラファール・リヴァイヴがあった。はっきり言ってもうこのラファールは使い物にならない。装甲だけなら学園だけで何とでもなったが、フレームもとなれば話は別だ。新しいのを取り寄せてまるまる交換するしかない。
とその時、私の前に空間ディスプレイが開かれた。来客のご登場のようだ。
この部屋には私と同等の権限がなければ入れないようになっており、それは真耶とて例外ではない。
「入れ」
短く告げるとドアのロックを解除する。開けばそこには私が呼んだ学生が二人。
「「失礼します」」
IS学園はネクタイの色で学年が判別出来るようになっている。やって来たのは三年生と一年生。二人は姉妹で良く似た顔立ちではあるが、雰囲気はまるで違う。
三年生の方は学生ながら秘書のようでもあるのに対し、一年生は幼い子供のような無邪気さがある。
そうは言ったが三年生は勿論の事、少し頼りないが一年生もこれから依頼する分野に対して高い能力を持つ。人を見掛けで判断するなといういい例かもしれない。
……正直な話、一年生の方はそんなところまであいつに似なくてもいいと思う。
「山田先生お願いします」
「はい。これを見てください」
「これは……」
先ほどまで真耶と見ていたラファール・リヴァイヴのウィンドウを見せれば顔色を変える三年生。一目見ただけで状態を理解したらしい。さすが三年主席なだけはある。
「はるるんのだー」
「はる、えっ?」
「本音……」
「……はぁ」
そしてこちらも一目で理解したらしい。操縦者が誰なのかを。間抜けな渾名に困惑する真耶を尻目に私と三年生は頭を抱えていた。
間違ってはいない。間違ってはいないのだが、もう少し場に適したましな言い方があるだろう。
深い溜め息を吐くと、気を取り直して顔を上げた。伊達にあいつと長年一緒にいた訳じゃない。
「……正解だ。これは櫻井が使用したラファール・リヴァイヴ、その成れの果てだ」
「こんな、たった一回乗っただけで……?」
布仏姉が驚くのも無理もないだろう。櫻井に渡されたISは毎日の整備に加えて定期的なオーバーホールもこなしていた。
実際に渡す直前にはオーバーホールもしている。新品同様だったのだが、一回で壊されたのだ。しかもたった数分の搭乗で。
「それだけじゃありません。こちらも見てください」
真耶が手元の端末を操作すると違う画面に移る。そこには外装の状態が映し出されていた。
今言った通り、被害はフレームだけではない。装甲にも無数の亀裂が入っている。レーザーが直撃して砕けた右腕以外にもだ。 外部から何かしらの衝撃があればシールドの上からでも簡単に砕けてしまうだろう。
「開発者もまさか内部からダメージを受けるとは思ってもなかったでしょう」
「それは……そうでしょうね……」
私の言葉に真耶が困惑しながらも同意する。いや、困惑しているのは布仏妹を除く全員だった。
ダメージを受けていない箇所にまでそうした被害が出ているという事は、つまり内部からのだと判断出来る。被害を出したのは他でもない操縦者自身なのだと。
外部からの攻撃はシールドと絶対防御という二重構造の防壁で遮断、もしくは軽減出来る。だが内側から、搭乗者からともなればそうも行かない。軽減すら出来ずにありのままを受けてしまう……らしい。私も見るのはこれで二回目だから何とも言えん。
「こんなのありえない……」
布仏姉の言う通りだ。普通ならありえない。だが現実にこうして起きているのだ。受け止めるしかないだろう。
そして対策を考えるべきなのだ。二つの意味で。
「本題に入るぞ。二人に集まって貰ったのは他でもない、櫻井のISを改造して欲しい。これは学園からの依頼だ」
「……それは構いませんが、具体的にはどういった風にでしょうか? こちらで考えるのでしょうか?」
こういった話になった時点である程度予想はしていたのか、布仏姉の返事が早い。たった三人で生徒会を機能させているだけはある。
「パワーアシストを利用する。増幅ではなく、抑制としてな」
櫻井はこう言っていた。ただ全力で刀を振っただけだと。ただ飛ぶ際に足場を蹴っていただけだと。
そういった機能があるなら未だしも、常人が斬撃を飛ばすなんて出来るはずがない。
飛ぶ時に足場を蹴るなんて当たり前の事で、既存全てのISを凌駕する速度が出せるはすがない。
ISが内部から壊されていた事も加味すると、一重にあいつの異常なまでの身体能力が原因なのだろう。原因が分かってしまえばやりようは幾らでもある。
「それと重りとしての意味合いで追加装甲もだ」
「……そんなに必要なんですか?」
「必要だ。備えあれば憂いなし。用心するのに越した事はない」
不服そうに布仏妹が口を開いた。いつもは浮かべている笑みも今だけは影も形も見せない。
こいつが真面目なのも意外だが、それ以上にこんなに分かりやすい態度を取るとは思わなかった。同室のやつを除けば恐らく一番櫻井と一緒にいたから面白くないのだろう。
「本音。今回は運が良かったけど、もしかしたらがありえるのよ」
そう、今回は運が良かっただけ。それは櫻井が無事だったというのもあるが、今は他の意味の方が強い。
オルコットとの試合の最後、櫻井は直前まで振り下ろす気でいた。常人ではありえない現象を起こしたその力を、そのまま人に向けて。
ISはあくまで普通の人間同士が乗って競うものだ。それが櫻井のような逸脱したやつが乗ればどうなるか……はっきり言って分からない。
例え話をするとしたら、銃弾には耐えたからこれも耐えられるはずだと防弾チョッキを装備した人間に戦艦の大砲をぶつけてみようとしているようなものか。ISの絶対防御も完璧ではない。もしもあのままオルコットを切り裂いていたとしたら、きっと悲惨な事になっていただろう。その可能性は充分ありえたのだ。
「それにまたあんな戦い方をすれば今日と同じ事になるぞ」
何故そうしたのかは分からないが、櫻井はオルコットを徐々に追い詰めていき、嬲り殺しにしていた。何度も終わらせられるタイミングはあったのにも関わらずだ。
オルコットが怯えるのも仕方ない。IS同士の戦いかと思いきや、相手はISの皮を被った別の何かで規格外の力で徐々に嬲り殺しにされ、最後は散々見せつけたその力で一刀両断にされるところだったのだ。
何の気紛れが起きたのかそれは未遂に終わったが、次がないとは言い切れない。
「……分かりました」
「他の生徒だけでなく、これは櫻井のためでもあるんだ。頼む」
「はい……」
さて、布仏妹も了承したし、後はあいつか……。面倒だな。
あの後、やる気満々の織斑の元へ織斑先生から通信が入り、たった一言だけ。今日は中止だと。一気に空気が盛り下がった。
織斑が見せつけた主人公っぽさにすっかり忘れていたが、よくよく考えればそうなるよね。俺は自分のISぶっ壊したから出られないし、オルコットのISも殆ど俺がぶっ壊したし。……全ての原因俺じゃん。破壊衝動が半端じゃない。
「包帯、緩んでる……」
「……ん」
更識に言われて右腕を見てみるときつくしてもらったはずの包帯がもう緩み始めていた。怪我を気にせず右腕を使っていたからだろう。
片腕でやるのは面倒だな……なるべく右腕は使わないようにして明日先生に巻き直して貰おう。
そう考えていたら更識がそっと俺の右腕を手に取り、こう言ってくれた。
「巻き直してあげるね……」
「……ありがとう」
やっぱりこの子天使ですわぁ……。天使と同じ部屋で良かった。
「ねぇ、何であんな危ない事したの……?」
包帯を巻き直している最中、更識から質問された。内容から察するに今日のオルコットに対する仕打ちの事だろう。
実は自室に戻る最中、途中で合流した相川から散々説教されていた。戻ってからも正座で説教されたけどね。
あんな追い詰めるような事したら怖がられるのは当然だと。何であんな事をしたのかと。要約するとこんなところだ。ぐぅの音も出ない。
「あそこは引き下がっていた方が賢明だったのに何で……?」
「…………そっちか」
「?」
「……いや、こっちの話だ」
思ってたのと違った。更識が言っているのはオルコットを助けに行った事らしい。
仕方ないとはいえ、てっきり更識からも何か言われるのかと思った。
「……助けるのに理由がいるのか?」
「えっ……?」
「……困ってるやつがいる。そこに誰かが助けに行く。当たり前の事だろう」
「――――」
俺が言ってるのがそんなにおかしいのか、包帯を巻くのも忘れて更識は呆けていた。こういった表情を見せるのは更識にしては珍しい。
ちなみにこれ、ダブルオーのモレノ先生の言葉なんだけどね。初めて見た時、凄く感銘を受けたのだ。
ていうかオルコットのは俺のやらかした事だから俺が片付けるのが普通なんだけど。
「私が困ってても助けてくれる……?」
「……助ける。幾らでもな」
何処か不安そうに俺の手を握って訊ねてくる更識の手を握り返す。その不安が少しでもなくなるように。
「うん……うん! えへへ……!」
それが功を奏したのか、不安そうな表情から一転して眩いばかりの笑顔となった。こんな近くで手を触れ合いながらともなれば嫌でも鼓動が早くなるのを感じる。
「どうしたの……?」
「…………何でもない」
「???」
突然、手で顔を覆ってそっぽを向いた俺に疑問を抱いた更識から即座に追及されるが、何でもないとだけ返す。その態度に不思議そうにしているだろう事は間違いない。
あああ、更識さん困ります、困ります! 春人くん惚れてしまいそうです! 天使に惚れるとかいうあかん事してしまいそうです!
「ね、ねぇ今日お風呂はどうするの……?」
俺の乙女回路がどうにかなってしまいそうになっていれば、見かねた更識からそんな話が浮かび上がる。更識の顔が見た事ないほど赤くなっているのは気のせいではないはず。
ああ、そういえば言ってなかったな。俺が今日風呂入ってはいけないって事。
「……早く治すために今日は入るなって言われた」
「右腕濡らさなければ大丈夫……!」
「…………ん?」
医師に言われた事をそのまま告げると、何故か胸の前でぐっと握り拳を作る更識。やる気満々なのが伝わってくる。
入るなって言われてるのに暗に入れと言われてるぞ。どういう事だ。そんなに臭いのか俺は。
確かに右腕が濡れないようにすれば入れなくもない。そうだな、入るとしよう。天使に嫌われたくないし。
「で、でね? 片腕だと不便だから私が――――」
「……客か」
「――――」
更識が何かを言い掛けた瞬間、部屋にノック音が。こんな時間に誰かが来たらしい。
そして唖然として固まっている更識の反応を見るに更識の客ではない事も分かる。とりあえず出るとしよう。
「夜分遅くにすみま――――櫻井さん!?」
「……オルコットか」
扉を開ければそこにはバッグを持ったオルコットが頭を下げていた。顔を上げるなり、俺を見て驚くのはやめてほしい。
「……誰かの部屋と間違えたのか?」
「あ、いえ、櫻井さんに用事がありまして……」
「……俺に?」
「は、はい」
念のため確認してみるが、俺に用があるとの事。何故かモジモジと恥ずかしそうにしているのが気になる点ではある。
だが俺はまだ風呂に入っていないのだ。更識の反応を見るに臭うみたいだし、明日にしてもらおう。
「……明日ではダメなのか?」
「えっと、きょ、今日の方が良いかと」
「……今日の方が良い?」
やばい、全然話が見えてこない。オルコットが遠回しに言っているのもあって輪に掛けて分からん。
「……よく分からないが、立ち話も何だし入れ」
「お、お邪魔します」
長くなりそうだからと部屋に招いてみればあっさりと応じた。
「セシリア……?」
「あら、簪さん?」
「……知り合いなのか?」
「ええ、入学する前に何度か……そうですか、お相手は更識さんでしたか……」
「むぅ……」
「???」
部屋の中に入れば復帰していた更識とオルコットが向き合った。二人は知り合いだったらしい。
それはいい。それはいいのだが……何故ちょっと険悪な雰囲気になっているんだ。更識は面白くなさそうに眉をひそめているし、オルコットも目を細めて見ている。
あれか、喧嘩別れでもしたのか。ここで再会したのも何かの縁なんだし、仲良くしようぜ。
「……ところでオルコットは何の用だ」
「あ、はい。その、まずは櫻井さんにお詫びをしたくて……」
この空気を変えるためにもオルコットの用件を訊ねてみれば、俺への謝罪との事。
はっきり言って謝られるような事をされた覚えがない。口出しして話が進まないのでは仕方ないので黙って様子を見る事に。
「……本日は未熟なわたくしのせいで櫻井さんにお怪我をさせてしまった事、心より謝罪致します。申し訳ありませんでした」
そう言ってオルコットは深々と頭を下げてきた。その表情は暗く、重苦しい。言葉だけでなく、心からの謝罪だというのが見て分かった。
「……気にするな。お前は悪くない」
「ですが、傷を負わせたのはわたくしで――――」
「……そうさせたのは俺だ」
ガンダムという存在だ!
と、ふざけるのはそこまでにしておいて。俺がオルコットを怖がらせてああなったんだからこの傷は自業自得でしかないだろう。
「……だからオルコットは悪くない。気にする必要もない」
「……ふふっ」
すると俺の言い分に突然オルコットが吹き出した。口元を手で抑えて笑う姿はとても上品で、育ちの良さが窺える。
「……何故笑う」
「すみません、実はここに来る前に謝ったら櫻井さんが何と言うか想像していまして」
「……」
事前にシミュレートしてきたという訳か。
「……で、結果はどうだった?」
「ええ、バッチリ予想通りでしたわ。きっとあなたならそう言ってくださると信じてました」
「むぅぅ……」
シミュレートしていた時を思い浮かべているのか、そう言う姿はやはり楽しげで。
しかしそんな姿もほんの少しだけだった。直ぐに真面目な顔に戻る。
「ですからもう一度だけ謝罪を。あなたがそういう人だと分かっていながらあんな事をしてしまい、申し訳ありません」
また言ってきたという事はどうしても謝罪を受けてほしいという事だろう。ここで俺が何か言っても言うだけ無駄、か。
「……はぁ、分かった。降参だ。それでいい」
「はいっ」
両手を上げてオルコットに降参のポーズ。嬉しそうに微笑む彼女を見るとここまで想定していたのだろう。俺が最初にああ言う事も、そして最後に折れる事も。
と、そんな時だった。いつの間にか横にいた更識から袖を引っ張られたのは。
「うぅー……!」
「……更識?」
何か俺に訴え掛けて来ているのは分かるが、袖を引っ張りながら低く唸るだけ。
……はっ、そうだった。臭いきついから風呂入るって流れだったわ。これは早く風呂入れって訴えか。
「……すまない、用件はそれだけか?」
「じ、実はもう二つほどありまして……」
まだあるのか。というよりはこっちの方が本題のような気がする。
「これからはわたくしの事は名前でお呼びください。それと櫻井さんの事を名前で呼んでもよろしいですか?」
「!?」
神妙な面持ちで何を言うのかと思えば呼び方の問題だった。そんなに緊張するような話なのかと声を大にして聞きたい。
そして何故言われた俺じゃなくて、関係ない更識が驚くのか。
「……別に構わない」
「!?」
「はい! では名前を呼んでみてください!」
何かオルコットさんのやる気スイッチ入ってる。失礼だが、名前を呼ばれるのをそわそわと待つ姿はご主人様に懐いている犬のよう。
「……セシリア?」
「はい、春人さん!」
ただ名前を呼んだだけなのにここに来てから一番の笑顔を見せるセシリア。それだけだが嬉しくてしょうがないのだと。
何このわんわん。これでもかってくらい尻尾が振れてる幻影が見えるわ。超ご機嫌だわ。
「わ、私だって名前で呼ばれてないのに……!」
再び更識にぐいぐいと引っ張られたかと思えば謎の対抗意識。
名前呼びが流行ってるのか? そういえば織斑も名前で呼んでくれと頻りに言っていたな。名前で呼ばれたいのならそうしよう。
「……簪」
「っ、は、春人」
「むむむ……!」
たった一言、名前を呼べば更識の対抗意識の炎が収まった代わりに今度はセシリアが着火。
その火を自分で消火するべく、今度はセシリアの口が開いた。何を言うのか。
「そ、それとわたくし、春人さんの入浴の手伝いをしようかと思いまして!」
……えっ、何だって?
初めて知ったが、俺は疲れていると難聴になるらしい。セシリアが何を言っているのか全然分かんなかった。
入浴の手伝いをするとか言ってたけど、聞き間違いだろう。
「それは同室の私がするからセシリアは気にしなくていい……」
「あら……では春人さんに決めてもらいましょう」
天使の口からも変な言葉が聞こえる。私がするからとか何とか。そして俺が決めるとか何とか。
うん、これは重症ですね。今日は早く風呂入って寝よう。こそこそと風呂へ向かおうとしたところ二人が一斉に俺の方へ向き言い放った。
「春人はどっちがいいの!?」
「春人さんはどちらがいいですか!?」
「…………えっ」
頼むから俺に聞かないでくれ。
気付けば三人で備え付けのシャワールームに。右腕にはゴミ袋、腰にタオルという心許ない装備で。二人が前後からサポートしてくれるのだが狭い事この上ない。しかし、これは仕方なかったのだ。
どっちとも入らないを選ぶともう一回聞かれてループに入るし、どちらか一人にしようとすればもう片方が泣きそうになる。苦肉の策でしかない。
「それにしても簪さん、その水着お似合いですわね」
「セシリアは水着用意しててずるい……!」
「ふふっ、これは淑女の嗜みですわ」
後ろにいるセシリアは白いビキニタイプだった。大きな胸に括れた腰とスタイルの良さを見せつけるには最適だった。本当にありがとうございます。
一方、前方の更識は学園指定のスクール水着。セシリアに比べれば慎ましやかな彼女のスタイルを晒し、ある意味最大限引き出していると言っても過言ではない。
ていうか古き良き伝統のスク水を学園指定にするとか、IS学園何考えてんだ本当にありがとうございます。
それにしても……
「春人、大丈夫……?」
「先ほどから静かですが何かありましたか?」
「…………気にするな、俺は気にしない」
狭いせいか、さっきから前から後ろから柔らかいの当たっててこちとら必死なだけだ!!
二人の姿を見ないように目を瞑ったのが間違っていた。その分、他の感覚が鋭敏になって辛い。これは小宇宙が高まるのも頷ける。
しかも困った事に二人は気付いていないのだ。俺から言うのもどうかと思うし、耐えるのみである。
「うんしょ、うんしょ……」
「う、ん……」
「……ちょっと待て」
「「?」」
いや、もう我慢の限界だ……。
俺は怪我をしていない左腕をどうにか上げると思いっきり自分の頬を殴り抜いた。
「は、春人、大丈夫!?」
「……ああ」
「何で自分の頬を……!?」
「……気にするな」
その後も何度かこの痛みで誤魔化す戦法を繰り返してどうにかこの事態を乗り越えた。何だったんだ、この拷問は……。