Grand Order Of Fate   作:レモンの人

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セプテム編前日談です。





閑話休題5…いともたやすく行われる(ry

「これ以上は見過ごせませんッ!」

 

ガウェインがテーブルを叩き立ち上がった。対して俺はうんざりといった体でコーヒーを飲んでいた。

 

「我が王を危険に晒し、一時死にかけたと聞きました。これ以上貴方に任務を任せる事は出来ない…!」

「んな事言われてもなぁ…」

「いいえ!私から進言します。我が王の出陣をこれ以降取り止めていただきたい!」

 

ここまで過保護になるとなぁ…肝心のアルトリアはもっと出歩きたいそうで、先程から玉座(ガウェイン渾身の力作)に座して凄くむくれていた。

 

「アルトリアが決める事だ。そして彼女は行きたいと言った」

「はい、マスターの言う通りです。私はまだ外で戦いたいのです。それが出来ないのであれば…今すぐ王位をモードレッドに継承し隠居します」

「それはなりません!あの放蕩息子に王位継承など──」

「クラレントでしたら、つい先程私の名の下で正式にモードレッドの所有物としました。よって彼女にも戴冠の資格はあります」

「なっ──」

 

史実とは真逆の方向に進んでいるなアーサー王。まぁ、王というしがらみから解放されてからはやりたい放題だな。

 

「───良いでしょう。では、私にも考えがあります」

 

ガウェインはメガネを掛けると突然、ノートパソコンを取り出した。トリスタンとベディヴィエールが大型スクリーンを用意し、画面を表示した。画面トップには「人理定礎修復 新企画案A(仮称)」と描かれている。

 

「では、私から説明しましょう」

 

指差し棒を取り出し、画面を指しながら説明を開始した。

 

「まず、我々サーヴァントは多くが召喚されていながら、実際に機能している数は極小数であります。そこで、ロマンの通信システムを利用して他の多くの地点でも通信が出来るようにし、多くの特異点をこちら側のサーヴァントにより同時進行で攻略。非常時の際にマスターがレイシフトを行い援護する。それ以外では、我らサーヴァントが現地で各個制圧。聖杯を回収して生還する…どうでしょう?」

 

はぁ〜…脳筋にしては考えたな。だが、

 

「皆がガウェインのように真面目なサーヴァントとは限らない。野心家な者も居るだろ?そんな奴がいざ聖杯を手にしたらどうすると思う?」

「──っ」

「だが、お前の考えは評価する。俺も盲点だった」

 

決して否定だけでは終わらせない。追い詰め過ぎると窮鼠猫を噛むとまでは言わないが、何をしでかすか分からない。それに、ガウェインの考えも悪くはない。

 

「特異点を一個ずつ潰す事に変わりはねぇ。だが、そこにサーヴァントを有りっ丈投入して対抗する案にするのではあれば承認する」

「──と、すると…」

「ガウェイン卿、我々の出番です」

 

トリスタンがガウェインの肩を叩きそう告げた。嬉しそうな顔をする彼にアルトリアも素直に頷いた。

 

「じゃあ、次から円卓の騎士団を派遣し特異点の修復を早めよう。アルトリアへの忠誠を誓う一騎当千のお前らなら、オルレアン程長引く事は無いだろう」

 

が、少し条件を付ける事にした。

 

「だが、絶対条件がある。“現地の人はなるべく殺さず無力化しろ”それさえ守れば許す」

「はッ!」

 

取り敢えず、円卓の騎士達の不満は解消された。さて、俺の部屋で待っているモードレッドに会いに行くか。

 

*********************

 

「今戻った───!?」

 

マイルームに戻った時、視界に映ったのは…肩まで伸びたブロンドの髪に櫛を通す綺麗な少女だった。真っ白なワンピースが彼女の美しさを物語っている。

 

「あ、おかえりなさい!マスター」

「ってお前かよ!?」

 

少女…モードレッドの屈託の無い笑顔に俺は驚いた。髪下ろしただけで全然別人なんだが…!?口調も女だし!?

 

「今の私、どう見える?」

「どう見えるって…」

 

言葉にも棘が無く、女性らしい口調で話す彼女は本当にモードレッドなのだろうか?清純・可憐を体現したような姿に思わず赤面してしまった。改めて見るとモードレッドも女の子なんだなと実感させられる。

 

「とっても綺麗だよ」

「ありがとう!マスター…いえ、立香さん」

 

立香さん、だなんて初めて言われたぞ///彼女はベッドに座るとぽんぽんと隣を叩いた。座れと言いたいらしい。言われた通りに座ると、モードレッドは1人で語り始めた。

 

「私、やっとお父さんに息子と認められた…。正式にクラレントを与えられ、王位継承者として認めるって言われた時…驚きました。ずっとお父さんにも…誰にも褒めてもらえなかったから……」

 

お父さんに頭を撫でてもらう事が今の幸せと語る少女は、何処にでもいる女の子だった。

 

「立香さん…本当にありがとう!」

「モードレッドが感謝してるのなら俺も頑張った甲斐があった。またよろしくな!危険な場所に駆り出す事が多くなるが、俺もなるべく危険な目に遭わせないよう頑張るからな!」

「えぇ、その言葉が聞けただけで安心しました」

 

モードレッドはそう答えると、髪を結い始めた。それがいつもの髪型になった時、彼女はいつもの顔に戻った。

 

「さてっと、お礼はここまでだ。次は何でもお願いを聴いてくれるらしいんで?遠慮無くお願いしよっかな〜♪」

「……俺にダメージが無い程度にな」

 

快活な笑みを浮かべる彼女は、ベッドにうつ伏せになりこちらをチラッと見た。

 

「マッサージをしてくれ」

「────は?」

 

てっきり、なんか面倒くさい事をやらせるのかと思ったら、そういう話!?

 

「ほら、ハリーハリー♪」

「分かった。今回の任務が無事完了したお祝いだ。しっかり疲れを取ってやる!」

 

言われた通り、モードレッドの背中に手を這わせ、俺はマッサージを開始した。余談だが、尻を触った瞬間モードレッドの平手を喰らい気絶したのはいい笑い話となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「♪〜」

 

夜の食堂で俺は料理を作り続けていた。前回の反省を生かし、保存食を多めに持っていく事にしたのだ。日持ちし且つ美味しいものを用意する必要がある。でなければ…

 

「あの雑草スープだけは勘弁だな…」

 

脳裏に焼きつくあのゲロマズ鍋を思い出し全身に悪寒が走った。今度はガウェイン・トリスタン・ベディヴィエールも参戦し、より大所帯となる。今回の作戦の要はぶっちゃけトリスタンだと思っている。あの武器と彼の命中精度が絶対役に立つ。

 

「ガウェインは要らないなぁ………」

 

大雑把過ぎる彼に関しては不安要素しか無い………。




次回からトリスタン・ガウェイン・ベディヴィエールが介入に参加します。円卓の騎士勢ぞろい(?)で攻略しますので制圧速度がエライことに…(特にカタログスペックがチートリスタンな兄貴がいますので)。


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