Grand Order Of Fate   作:レモンの人

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完全フリーの日に休もうと温泉地に行ったら観光客が押し寄せ逆に疲れた件について





ローマの休暇

ローマといったらどんなイメージを思い浮かべるか?「温泉」「コロッセオ」「アッピア街道」「パラティーノ丘」…様々だと思うが、その内のコロッセオは現在閉鎖されている。少女──正式名称「ネロ・クラウディウス」が決めた方針によるモノで、『毎日血生臭い戦いを見物して何が面白いか!反乱が起きては大事になる!』と主張したのだという。確かにコロッセオは今となっては「有名だな〜。」で済むだろうが、彼処は奴隷が人間同士や獣同士で殺し合い、観客がそれを見て楽しむという正気を疑う施設なのだ。昔はそれで良かったのかもしれないが、現代っ子はどうしても閉鎖が妥当だと感じてしまう。

 

「さってと…」

 

ネロからカタチだけだが、ローマ市民としての権利を与えられている(大衆も許してくれた)。まぁ1日だけだが楽しもう…という事で、今回は温泉に来ていた。なんでも、自由な温度が選べる浴槽があり、食堂へ行けば6皿(内2皿が肉料理)が食べられるらしい。しかもそれらサービスがほぼタダだというから凄い。永遠に住みたい(迫真)

 

「風呂楽しみだな〜…まずは熱いのでも行くか」

 

 

 

───

 

「おぅ!アルトリアとガウェインも来てたのか!」

「はい、古代ローマの味も悪くないです」

「マッシュポテトを添えたいのですが…」

 

ガウェイン、お前の言葉はツッコまんぞ。それにしても…

 

「なぁ、ガウェイン」

「なんでしょう?」

「なんか男達の視線がヤバくなかったか?」

「あー…」

 

俺の言葉に心当たりがあるのか、彼は気まずい顔をした。やっぱハッテン場だったのかなぁ…ここは。

落ち込み気味に話していると、不意に子供達が俺の方に寄ってきた。

 

「あっ!カレーの兄ちゃんだ!」

「また料理作って!」

「あっ!こらっ!ここ食堂!作ってくれてた奴に顔向け出来ないって!」

 

子供達に弄られるのをアルトリアはニコニコと笑っていた。コイツ…どさくさに紛れて俺の飯が食えると思って…!まぁ、いいか!諦めよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

疲れた顔で市場に向かうと、モードレッドとベディヴィエールが買い物をしていた。俺の顔を見た途端2人とも心配そうな表情で近寄って来た。

 

「マスターじゃん!どうした?」

「…湯治しに行った筈が食堂でお好み焼きを振る舞っていたの巻」

「あー…」

「マスターの料理は美味いですからね」

「なんで俺休んでる筈なのに疲れてんだ…?」

 

まぁまぁと背中を撫でて労ってくれた2人には大いに感謝したい。群がってきた温泉客が後から後から人を呼んでしまった為半無限に増え続けた事が悪かった。

 

「それより、この林檎美味そうじゃね?さっき買ったんだけど、ちょっと酸っぱかったが美味かったぜ」

「はい、品種改良がまだ成されていないのですがこの時代であれば美味しい林檎でした」

「酸味が強いのか…ならアップルパイが───」

 

そう言って気付いた。俺の背後に「期待」の目で見つめてくるローマ市民の姿に…勘弁してくれ。

 

────

 

「マスター…大丈夫か?」

「…死にそう」

 

流石に2人に手伝ってもらったが、ほぼ無限にアップルパイを焼き続けるのは疲れた。林檎は流石に店側から買って持ってくるように条件提示をしたのだが、皆んな揃って他の必須材料まで買ってきやがった。クソッタレ。

 

「でも、美味しいですね。この時代の調理器具でここまで…」

「サンキュ、でも今はその労いが重い…」

 

このまま帰らないと間違いなく俺死ぬわ。

そう告げるとベディヴィエールが俺を背負って運んでくれた。今回の寝床はネロの城にある一室とされている。

 

「観光もクソもねぇよ…」

「心中察するぜ」

 

モードレッドも付き添いで行き…無事に到着した。しかし、俺を待っていたのは…目をキラキラさせるネロだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「余にも未来の飯を用意するのだ!」

「えぇ…(困惑)」

 

「皇帝ネロ、カルデアのマスターは各所で炊き出しを振る舞っており、疲れ切っております。ここは彼の体調維持の為、寝かせていただきたい」

「皆が食っておるなら余も食べる権利がある!叩いてでも起こすのだ!」

 

り、理不尽だ…神は俺を見捨てたのか…?

 

「ふざけんな!マスターとオレ達は明日からテm…ごほん!ネロ皇帝を連れてこの戦いを終結させるんだぞ!マスターが倒れたら動けねぇだろうが!!!」

 

そうオレを守るようモードレッドが抗議したところ…ネロはあろう事か……

 

 

「やだやだやだ!!!余にも食べさせるのだ!!!たーべーさーせーろー!!!」

 

 

年甲斐も無く駄々っ子おねだりを始めたのだ。ひっくり返りバタバタと手足をばたつかせる…そんな子供っぽい姿を見せられると、流石のモードレッドも言葉に詰まってしまった。仕方ないか…

 

「ベディヴィエール、降ろせ」

「し、しかし!?」

「摘み出されたらこのミッションは失敗だ…俺が体を張ればなんとかなる……」

 

千鳥足気味に俺は立ち上がるとモードレッドに向かい合った。

 

「モードレッド…活力注入してくれ」

「え!?どうすりゃいいんだ!?」

「何でもいい!励ましになるような奴で!」

「分かった!えーっと…」

 

相方のお前ならこの俺の疲れをブッ飛ばせる何かが出来ると信じてる。頼む…なんか考えてくれ!

 

「ベディヴィエール…背を向けてくれ」

「あ、はい!」

 

ベディヴィエールが意図を受け止めたのか背を向けた。それを確認したモードレッドは大きく深呼吸をした。そして…

 

「っ───!」

 

突然彼女は俺の胸に飛び込み……

 

「いいか?これはオレの1番だからな!今の感触…忘れんじゃねぇぞ!!!」

「───サンキュ!モードレッドのパワーを得た俺に不可能は無いッ!皇帝!どんな飯が食いたいか言ってみろ!!!」

 

ぞの真心…しかと受け止めたぞ。疲労など吹っ飛んだ。後はひたすら作るのみ!!!

 

************************

 

「」チーン

 

死んだ…もう動けん。LOVEパワーで無理矢理動かした事が俺の体に洒落ならない程の負荷を掛け、現在指先1つ動かせない状態でベッドに倒れていた。

 

「マスターの本気、初めて見たぜ」

「…」

「だってよ!イタリア料理のフルコースだぜ?古代ローマで作れるシロモノじゃねぇよ…」

「…」

「美味かった!マジで美味かった!ファーストキスが等価交換になるのかどうかってくらい美味かった…」

「…」

「か、勘違いすんなよ!今日はマスターの護衛の為に添い寝するだけだ。動けない分オレがしっかり守るだけだからな………ゆっくり休めよ」

 

 

動けない。近くですごく大切なイベントが起きてるのに…指一本動かせねぇ……ちくしょう…。

結局、瞼も上げられぬまま俺は意識を手放した。俺はローマに疲れに来たのか…?




トリスタン「────スヤァ」

次の日、起きて悲しくなるトリスタン。

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