Grand Order Of Fate   作:レモンの人

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今回はジャックに焦点を当てています。やはり全員を活躍させるのは難しいです。






霧の道すがら

「この道が安全なんだな?」

「うん、次はこっち!」

 

ジャックはヘルタースケルターの体では通過出来ないルートを走り、俺達もそれを追い掛ける。敵に一切遭遇しないまま、俺達はジキルの住むアパートへと辿り着いた。

 

「よし、到着だ。マシュを早くベッドに寝かせろ!」

「はい!!!」

 

マシュを運び、先にアパートに入れた後で俺はジャックに次の命令を出した。

 

「外科手術が得意な人を連れて来い」

「えーっと…わかんない」

「テメェ…今すぐその首をへし折ってもいいんだぞ!!!」

「まって……」

 

苛立つ俺に怯えながらジャックは提案した。それはジャックだからこそ出来る事。

 

「わたしたちあれのとりだしかたわかるよ?」

「じゃあ今すぐやれ!今すぐに!」

「ひっ…!わかったよ!」

 

俺の怒声に完全に萎縮したジャックをジキルのアパートに入れると、彼女によって手術が開始された。うんうん唸るマシュの頭に辞書で一撃加えて気絶させてからジャックは医療キットからメスを取り出し酒瓶を刃に掛けて殺菌した後、鼻歌交じりに施術を行う。

 

「ヒュー…スゲェな」

 

丁寧かつ手早い動きでナイフを抜き、手持ちの医療キットで傷口の修復を行うジャックの姿は完全に名医のそれだった。

 

「わたしたち…おいしゃさんのほんをよくよんでたから」

「人体理解って奴か…」

 

マシュの腹を縫合し終えたジャックはふぅっと顔を腕で拭った。前の傷を含めた縫合跡は「T」字になっている…酷い傷跡だ。まぁ、カルデアに帰れば再生出来る縫合跡だから問題無いだろう。

 

「じゃあ、ジャックには約束通り報酬を用意しよう」

「ハァ?お前、切り裂きジャックに報酬渡す約束してたのかよ!?」

「彼女を従えられているのも一方的な奉仕を命令しなかったからだ。それにジャックは今のロンドンの土地を一番理解している。今はこの子に頼るしかない」

「──まぁ、マスターの話ならば仕方ありません。話を聞いてあげましょう」

 

って訳で、俺はジャックの為にちょっと体に悪い料理を作る事にした。幸い、消費期限が迫っている牛肉の塊が冷蔵庫から出してあった。

 

「これ食っていいか?ジキル」

「まぁ、いいけど…ちょうど食べようと思って30分前くらいに出してたし」

「ジャストタイミングだ。これを使おう」

 

肉は赤身で硬めだが、レモネード用の炭酸水もあるし丁度いい。まずコイツを全員分ほぼ均等に分ける。ジャックは少し大きめに切っておく。

 

「で、切れ目を入れて…っと。で、コイツらを炭酸水に10分漬け込む…」

 

その様子が見たいのかジャックがぴょんぴょん飛び跳ねて覗いてくる。料理を作る間は敵も味方も関係無い主義なので今回は助けるとしよう。

 

「ほい、椅子な。脂が飛ぶから気を付けてな」

「はーい」

 

10分待っている間も「まだ?」と何度も聞いてきた。まぁ待ってな、せっかちは嫌がられるぞ。

 

「よし、だいぶ良くなったな。今回は質素に行くか」

 

直前に塩胡椒で味をつけてから肉をフライパンで焼いていく。事前に油をしっかりと塗っておいたのでいいだろう。しっかりと火が行き渡ったフライパンの上で肉を焼いていく。ごく一般のステーキだが、ジャックは食べた事が無いだろう。ステーキ用のグッズが無いから本格的に作れないのが悔やまれるな…。

 

「よし、出来たぞ」

 

取り敢えず、即席のステーキが完成した。同時進行で作っていた焼きジャガイモも添えて皿に盛り付けた後、全員に配った。マシュさっきの一撃で眠っているので作らなかった。すまん…その体じゃ無理だろ。

 

「ホントは野菜を用意したかったが、手持ちではこれが限界だ。英気を養い明日もう一度アタックを掛けよう」

「おいしそう…」

「まだダメですよ。ジャック。お祈りをしなければ」

「あ、わすれてた…」

 

俺とアルトリアは「いただきます」。他の面々は神に祈りを捧げてからステーキを味わった。充分柔らかくなった肉は美味しかった。

 

「かいたいするよ!」

 

自分で切り分けたいと言い張ったジャックのリクエストで等分せずそのまま渡したステーキを彼女は美味しそうに食べていた。殺人にさえ手を染めなければ名医としてやって行ける腕なだけに勿体無さを感じてしまった。まぁ、「殺したいから医学を学んだ」って可能性もあるからな…其処のところは分からない。

 

「ジャック、明日だが…この座標の場所に偵察として行って欲しい。それなりに報酬は用意するつもりだ」

「うん!がんばるね!」

 

正直、霧の中で自由に動けるサーヴァントはありがたい。魔力の流れでしか探索出来ない現状だ…彼女の力は何よりも必要となっている。

 

「取り敢えず今日は寝るぞ。明日になったら活動再開だ。よろしく頼む」

 

1人を失って(戦闘不能)代わりに1人を得た。明日はさらに探索範囲が広がり、楽になる筈だ。次こそはと俺は床の上に敷いた寝袋の中で就寝した。

 

 

****************

 

「おかあさん、おわったよ」

 

朝起きる頃にジャックがやって来た。どうやら俺のようなマスターの事を「おかあさん」と呼びたいらしい。まぁ、変なアダ名よりはマシだ。

 

「ここがさいたんでいちばんあんぜんにいけるみちだよ」

「ありがとうな。これ今作ったべっこう飴だ。これ舐めてな」

「わぁ…ありがとう!おかあさん!」

 

改めてロンドンの詳細までの記録がされた地図と照らし合わせる。ロンドン駅の地下通路か…

 

「こんな所にあったのかよ…」

 

モードレッドはその答えに腕組みした。ロンドン塔や魔術協会辺りを探していたらしいが、意外な答えに納得していないような顔をした。

 

「まぁまぁ、目的地と最短距離が分かったんだ。何事も百聞は一見に如かずって奴だ。行くぞ」

 

取り敢えず、出立の支度を終えた俺達は敵の拠点を目指して歩き出した。ジャックの情報によれば動きには規則性がある。その内の何処かで見つけられた時点で俺達はヘルタースケルターの大軍と戦う羽目になる。なので、全員が死角になるタイミングで移動する必要がある。

 

「こっちだ、合図したら来い」

 

囁きながら静かに通路を歩く。街を駆け抜けながら俺達はロンドン駅目指す。敵の探索に引っかからないよう慎重に走り続ける事15分。ようやく目的地に到達した。

 

「ここがロンドン駅か…」

「感傷に浸る余裕なんて無いわよ!ほらほら!」

 

ジャンヌに押されるまま俺はトリスタンが指し示すルートを歩く。幸い追っ手は来ておらず、すごく深い通路である事を除けばあっさりと奥に到達出来た。そこに鎮座していたのは巨大な蒸気機関だった。

 

「なんだありゃ。ヤカンか?」

「ですが聖杯が埋め込まれているようです。反応で分かります」

「聖杯の泥を沸騰させその湯気が霧になっている…ヤカンという喩えは合っていると思うわ」

「取り敢えず破壊しろ。ガウェイン、宝具の用意を」

 

 

 

 

「──それはさせない」

 

その時、声が聞こえ見上げるとトレンチコートを纏った男が蒸気機関の上に立っていた。

 

「私はマキリ・ゾォルケン。自らの野望を成就させる者だ」

「マキリ…?」

 

そのワードにアルトリアは聞いた事のある素振りを見せた。ただ、思い出せなかったようだ。

 

「この蒸気機関アンクルボザは絶望であり希望である。この『魔霧計画』の第一人者の私が生み出したこの機関はやがてロンドン…いや、イギリス全土を覆い尽くし、人類史を駆逐するだろう」

「悪いがそれはさせねぇ!聖杯諸共奪わせてもらうぜ!」

 

モードレッドはクラレントを向け、マキリに敵対の意を示す。ロマンからの情報では彼は強力な魔術回路を持っているが人間らしい。

 

「これこそが我が王の下した不浄の決断…私はそれに従うのみ」

 

そう言うと彼は自分の肌を切り、その血を霧の中に垂らした。やがてその霧が男の肉体を包み込む……あ、この展開は。

 

「魔神柱だ!総員!警戒態勢!!!」

 

 

命令する前に各自サーヴァントはそれぞれの得物を手に魔神柱………バルバトスと対峙した。




バルバトスと聞くとあの悲劇を思い出しますよね。
ロンドン編は良いキャラを育成していたので攻略が楽だった記憶(テスラにボコされた思い出)。

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