「ぐぉっ!?」
「バッキャロー!着地の時は足を一度制動掛けてから降りるんだよ!怪我すんぞ!」
現在、モードレッド指導の下…円卓の騎士達によって「ダ・ヴィンチが量産したテールブースター」とサーヴァント達の得物(ナイチンゲールとマシュは除く)に射撃モードを搭載した仕様の運用試験が行われている。馬より速く、文字通り地に足のつかない機動性能に騎乗スキルを持っている筈の騎士達の方が振り回されていた。因みに先程倒れたのはガウェインである。
前回の反省は「擬似宝具のヘルタースケルターを量産した機動兵による物量での攻撃」に近接兵装ばかりのサーヴァント達が押された、という事だ。サーヴァント自体はその神性により現代兵器は通用しない筈なのだが、上記の場合は例外だ。仮にも宝具だ…それを四方八方からぶっ放され続ければ結果は惨敗。今回で必要と感じたのは機動力と牽制程度でも行える射撃能力である。
「ひっ!?」
「あぶねっ!?ベディヴィエール!ヌァザの腕をマシンガンに改造したのはダ・ヴィンチだが、管理するのは本人の仕事だろうが!指先から機銃が飛び出さないように入力切り替えしとけよ!」
「このボタンを入力して…よし、通常状態になった……」
まぁ、結果はご覧の通り。新兵器を使い慣れていない彼等にはあまりに酷なようだった。ゲストで参加している黒ジャンヌの方が順応している。
「へぇ、これで戦えるわけね」
模擬弾を装填したガトリング砲の雨の中をホバリングで移動しつつライフルモードにした細剣で牽制射撃・即座にソードモードに変形して斬り抜け。いい動きだ。
史実にて「ジャンヌ・ダルクは勝つ為にどんな事も躊躇しなかった」とされている事から、 それも繋がっているのだろうか。
因みに、壊れた装備はダ・ヴィンチが修理してくれるから幾らでも壊していいぞ。
「ダ・ヴィンチ、オレのテールブースターも機銃の装填数とブースターの容量を増やしといてくれ。弾数が足りねぇ」
「それ以上は重量が増えるぞ…まぁ、言っても聞かないか」
「じゃあカートリッジを幾つかくれよ。どうせカルデア側から弾補給出来る機会は少ないんだしよ」
モードレッドも今回のミッションでガス欠&弾切れになる問題が露見した。まぁ、あいつに関してはバカスカ撃ち過ぎなだけなんだがそれも戦略の内なんだろう。そういう事にしよう。
「どぅどぅ」
「
アルトリアはテールブースターを手にした途端、あろう事かドゥン・スタリオンに暇を出した。しかも最近『馬刺しって美味しそうですよね』と言い始めたので堪らず彼を連れて再就職先を探し回ったところ、「馬上戦闘は得意です』とトリスタンが引き取ってくれた。だが、肝心のドゥン・スタリオンが心を開くのはまだ遠そうだ。
「何故言う事を聞かないのでしょう……私は悲しい」
「ヒヒーン(迫真)」
「今日はカレーだ!腹いっぱい食べて明日に備えろよ!」
「やったー!いただきまーす!」
「鉄鍋一個でカレーですか…胸が熱くなりますね」
食堂に用意した鉄鍋一杯のカレーを全員で戴く。今日1日ずっとトレーニングし続けていた。終わった頃には全員息が上がり、ボロボロであった。だが、皆全員あの不甲斐ない戦いをした事への悔いとリベンジに燃えていた。
「まぁ、なんだかんだで特異点攻略のスピードはかなり早い方だ。2016年までまだ時間もたっぷりとある。気楽に行くぞ。時間が無いと思ったら死に急ぐバカが出るからな」
腹いっぱい食べたら明日の修行に備えて早めに寝てもらう事にした。
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「やっとアルトリアの追加兵装が完成したよ。重いから気を付けてね」
そう言ってアルトリアに追加兵装を纏わせるダ・ヴィンチの顔はにやけていた。会心の出来らしいその兵装の正体は「アサルトランドセル」と呼ばれるブースター・サブアーム2コが搭載されたバックパックであり、サブアームの先にはさらにブースターを搭載した分厚い長方形のシールドが取り付けられている。さらに腰には既に完成しているテールブースター…これでもかという程、推進器を取り付けた姿は最早原型すら留めていない。さらに言えばアルトリアの宝具「風王結界」の影響により空気抵抗を軽減出来る為、相当加速するに違いない。サーヴァントで無ければ空中分解するぞ、あれは。
「ズバリ言えば、アルトリアの持つロンの槍を極限まで特化させる為に用意した『一撃離脱用兵装』といったところかな♪アルトリアの宝具のお陰で自由度がかなり高かったぜ。どうだい?使い心地は」
「──」
バーチャル世界の中、5カ所のブースターにより凄まじい速度を得たアルトリアは完全に流星と化していた。摩擦熱で焼ける事も無く、シールドを前に展開してガトリング砲の弾幕を防いでいる。どうも前のモードレッドとの戦いの影響で対策を考えていたようだ。そのままロンの槍による突進で轢き倒したアルトリアは大きく旋回して再び突撃。
「小回りは利かんな…あれじゃ」
「そこが欠点なんだよね…まぁ、アルトリアの場合はあの盾のお陰でかなり防御力が向上したからそれほど欠点でも無いけどね」
その戦闘の中に、もう1人介入する者が現れた。あれは…モードレッドか!?
「父上!今度こそ決着を付けるぞ!!!」
「モードレッド…!?」
挨拶代わりに発砲する機銃の雨をアルトリアはシールドを器用に動かして防御する。曰く、サブアームは「思念操作」らしい。だがモードレッドの目的は最初からそれだった。
機銃をばら撒きながら横合に回り込む。一直線にしか動けないアルトリアに対しモードレッドが考えた作戦のようだ。
「次は私が──」
「オレが───」
「「勝つッ!!!!」」
モードレッドの斬撃が1つのシールドを叩き斬る。だが、すぐにもう1個のシールドでモードレッドの振り下ろす腕を止めた。射撃モードに移行するロンの槍を見た彼女は、意外な手を打った。
「ンな技ァ読めてんだよ!!!」
「!?」
テールブースターを地面に向けて噴射したのだ。ビームが走る前にその噴射で跳躍するモードレッド…発生した土埃で視界を奪われたアルトリアはモードレッドの姿を一瞬見失う。その一瞬だけで充分だった。
「らぁあああああああああ!!!」
さらに空に向けたテールブースターの噴射により落下速度を上げた状態でモードレッドはクラレントを振り下ろす。土埃を振り払った時にはモードレッドの剣がロンの槍ごとアルトリアの右腕を斬り飛ばしていた。
「決着だ──」
「………私も随分と鈍りましたね」
アルトリアはバーチャル世界から出て行った。モードレッドも肩の凝りを解すように首を回してから後を追った。
「一度考え直すべきですね。追加兵装に頼り過ぎました」
帰還後、アルトリアは腕を組みながらイメージトレーニングで細かい修正をしていた。ダ・ヴィンチからもモードレッドの動きから何かを掴んだらしくラボに籠ってしまった(なんでも
「あとはガウェインとベディヴィエールが慣れてくれたらいいんだが……」
俺は、本日30回目の転倒をやらかしたガウェインを見て肩を竦めた。
大型改修!ガンギマリを果たした父上…という事でアルトリアは全身スラスターの塊のようにした事で高速移動しながら槍でブッ刺すキャラへと変貌。男子組はまだ慣れていない為に何が出来るのか不明。そして、モードレッドは………
※アルトリアの新兵装はガンダムキマリスヴィダールあたりをイメージして戴くと分かりやすいです。