バラバラにレイシフトした為、それぞれの視点でストーリーが進みます。
「なるほど、先祖が新撰組だったのか」
「いかにも、拙者は先祖代々守り続けていた局中法度を継ぐ者。人理継続保障機関に所属していた時も忠実に守ってきた。そして、家宝であり壬生浪士の魂であるダンダラ羽織を触媒として新撰組の英霊を呼び出す事に成功している」
薩摩は話す言葉が難解なものの、気苦労や彼なりの配慮が分かる。ただ…ムスリムの村に新撰組の屯所を建てるのはどうかと思う。何人かにもダンダラ羽織を渡してるし。
「では、手筈通りこれから新撰組は西の村を巡回する。藤丸殿はこの村に侵入者が来ないよう注意深く監視するように。襲われた場合は無理をせず現地の人に光通信をさせておくといい」
「分かった。気を付けてな」
新撰組のメンバーが立ち上がると同じ足並みで西の村に向けて歩いて行った。彼から聞いたのだが、本来の新撰組は旗を掲げ集団でパトロールする、といった事はやらず、「人斬り」よりも「捕縛」を中心にして活動していたのだと言う。ただ、池田屋の件は「新撰組の数<敵の数」であった為、止むを得ず斬った事が万人に広まり人斬りの組織と勘違いされたんだとか。
「モードレッド、傷はどうだ?」
「まだ動けそうにない…すまねぇ」
モードレッドは咄嗟の判断とはいえ1番近くにいた俺を守って墜落した。おかげで聖剣は折れ、ブースターは壊れてしまった。モードレッドは戦力に数えるのは厳しい…。
「こういう時にこそ私が居ますよ!先輩!」
「黙って監視してろ」
「酷いッ!?」
双眼鏡を手に周囲を観察しているが、肝心の入り口が砂嵐で見えない。こりゃ下手すると侵入されるまで分からんな。
「ロマンとの通信が頼りなんだが全然通じない。下手に動く訳にはいかねぇだろ」
「分かってる、けどよ…父上は一体何をやってんだよ」
落ち込んでいるのは俺だけではないらしい。モードレッドも相当落ち込んでいる。愛用する聖剣が折れた事が堪えているようだ。
「でも気になる事があるんだ」
「気になる事ォ?」
「この世界ではロンドンの時と同じようにモードレッドが2人居る」
「!!!」
「だから獅子王と言っている奴はアルトリアではないのかもしれない」
「かもしない……か」
今は通信が繋がるまでに待とう。そう決めて俺達は皆の無事を祈って監視を続けた。今は希望を待つしかない…。
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「くっ……」
私は走っていた。壊れたロンの槍を腰に提げた私は鈍剣を手に追っ手から逃れていた。ブースター一式も無茶な着地の所為で壊れておりマトモに機能していない。
「私は…まだ……!」
追っ手の鎧騎士3人に囲まれた私は腹を括り、剣を構え鞘を盾にゆっくりと威嚇しながら歩く。
「覚悟せよ。獅子王の紛い物」
「……!」
一気に踏み込んで来た鎧騎士の一撃をギリギリで避けた後、鈍剣の柄頭で顔面を殴りつけた。怯んだ隙を見逃さず、私は走った。ダメだ…私では勝てない…。
「…!?」
鈍い衝撃。同時に冷たい感触。腹からは矢尻が突き出ていた。
「ぐっ…まだ居たのか」
4人の鎧騎士に囲まれた私は、疲労と痛みに耐え切れずに膝をついた。首筋には幅広の剣が押し当てられる。
「───覚悟」
全てを諦めた私は目を閉じ……しかし、その剣は私の首を斬る事なく苔だらけの土の上に落ちた。
「───
顔を上げると…そこには銀髪に銀の腕を持つ男が立っていた。騎士達は皆倒れている…。痛みで軋む体を起こすように鈍剣を杖に立ち上がると私は彼の顔をじっと見た。端正な顔立ちだ。何処かで見たような……
「ありがとう、私は───旅人の『ワート』だ」
「──」
「名は何と言う?」
「──やはり、そうでしたか」
咄嗟に思い出した偽りの名を聞いた彼は勝手に納得すると、手に持つ剣を鞘に収めた。アルトリア・ペンドラゴンではマズイ…無意識にそう警戒してしまったのだ。
「私は………ルキウスと申します」
「ではルキウス…すまないが今の私は手負いだ。何処かで休める所は無いだろうか?」
「──幸い近くに泉があります。そちらで傷を癒しましょう。珍しい清い湧き水です」
彼に肩を担がれた私は、何処か懐かしい感覚を覚え………彼に身を預けた。
以上、ルキウス登場回です。アルトリアが彼を認識出来なかった理由は原作通りです。