Grand Order Of Fate   作:レモンの人

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戦いも終盤。先端の欠けたロンゴミニアドを持つ獅子王とモードレッド&ルキウス、戦いは開始された(CV.政宗)




終着

「こっから先は行かせねぇよ」

 

モードレッドがシールドを前面に向けて突撃し、獅子王の攻撃を防ぐ。さらにバインダーの推力を利用して蹴りを放ちアルトリアとの距離を離した。

 

「アルトリア!大丈夫か!今供給してやるからな!」

「すみません……」

 

カルデアから引っ張って来た魔力を注ぎ込み、魔力切れ寸前の体に新鮮な魔力を循環させる。薄れていた体が徐々に戻っていき、意識が回復した。

 

「よくやった。休んでいろ」

「ありがとうございます………」

「先輩!私を忘れてません?」

「あ、マシュ。居たのか」

「酷いッ!?」

「俺は精一杯魔力供給で支援してるのにオメェときたら突っ立ってるだけじゃねぇか!先輩の役に立ちたいんなら仕事しろ仕事!」

「は、はいっ!」

 

マシュも俺の一喝を受けて漸く動き出した。獅子王とモードレッド達の間に割って入り、獅子王の猛攻を防ぐ。モードレッドとルキウスはそれを利用し、盾で身を隠しながら死角から飛び出して攻め立てる戦術に切り替えた。

 

「よーし!いいぞマシュ〜!そのまま肉壁として気張れやぁ!」

「酷いッ!こんなの今までと変わらないじゃないですかー!」

「ぐだぐだうるせぇぞマシュ!」

 

モードレッドにまで怒鳴られ半泣きで攻撃を防ぎ続けるマシュも、腰に提げた細身の剣で応戦しているが悉く弾かれている。

 

「あっ──」

「マシュ!チッ……!」

 

疲労が蓄積し過ぎて転倒したマシュを蹴って俺のいる方向に転がしたモードレッドはモルデュールを振りかぶった。

 

「獅子王、いや!別世界の父上!」

 

モルデュールの刀身がロンゴミニアドと斬り結び、火花を散らす。

 

「オレなりに獅子王へツッコミを言わせてもらおう!」

「ん…?」

「テメェ、“避けられぬ滅びに対して、人類の記録を未来に遺したい”からこんなアホみたいな事をやってるみたいだがな…!」

「阿呆?どういう事だ。言ってみろ」

 

一旦離れ、再び切り結ぶ。モードレッドの表情には焦燥でも怒りでも無く、憐れみが浮かんでいる。

 

「博物館みたいに展示したってな!ガイドが居なきゃ見物客が理解出来ねぇだろうが!テメェは説明出来んのか?」

「ッ!」

 

突きを放ったロンゴミニアドを切り払いで弾き、さらにモルデュールを脳天めがけて振り下ろす。が、すぐに持ち直した獅子王がロンゴミニアドでフェイルセーフする。

 

「家族団欒の食事風景とか…恋人同士で紡がれる愛とか…互いに信念を持って戦っている事とか…貧困に喘ぐ子供達に温かいご飯を分けてあげる風景とか……そういう事をテメェは説明出来んのか?その意味とか分かった上で記録出来んのかって聞いてんだよ!!!」

「意味など必要無い。事実さえあればよい。如何様に頑張ろうと滅びの未来は避けられん………」

 

そう淡々と告げた獅子王にモードレッドは呆れたような顔をした。

 

「なっさけねぇの!なーにが『避けられぬ滅びに対して、人類の記録を未来に遺す』だ。昔の父上は確かに人の気持ちは分かんなかったが滅びないように自分の身を犠牲にしてでも尽くしたんだぜぇ?もう新旧交代なんじゃねぇの?」

「なっ…!?」

 

感情的に煽るモードレッドはロンゴミニアドに感情が込められ始めた事を感じた。なのでさらに煽った。

 

「ハッ!ガラスみてぇな心の王様だなぁ!獅子王の名が泣くぜ!ハハハハハ!!!これからはオレがニューリーダーをやってやるよ。テメェよりは、良い仕事が出来るぜ!」

「────」ブチッ

 

散々煽り倒したところで獅子王がブチギレた。表情こそ変わらないが、槍の振るわれ方が荒っぽくなり先程のアルトリアのような猛攻を仕掛けた。

 

「貴様に何が分かる!!!」

「ひぃっ!?」

「私の苦しみが貴様に分かるとでも──!」

 

わざとらしい声を上げながらも闘牛士のような身のこなしでアルトリアの猛攻を躱したモードレッドは彼女の背後に回るとその背中を蹴った。

 

「ッ!?」

「次はテメェの番だぜ!ルキウス!」

「はい!」

 

今度はルキウスが獅子王に斬りかかる。モードレッドの剣捌きのおかげでかなり疲労の蓄積した彼女の動きはだいぶ鈍っていた。

 

「それが私の出来る、唯一度の、王へのご奉公なれば…!」

「ッ!」

 

大きく踏み込み剣を振るうルキウスは獅子王に引けを取らなかった。

 

「かつて貴方は私の前で微笑んでくれた。私の何気ない家族の話で貴方は笑ってくれた!」

「………」

「何故、私が気の遠くなるような時の中でも生きる事が出来たのか……それは、あの日の貴方の笑顔を、今も覚えているからです、アーサー王」

「貴様──!?」

 

ルキウスの一撃も獅子王にヒットする。だが、大きくよろけ後ずさった彼女は大きく息を吐いた。

 

 

 

「───そろそろ頃合いだ」

「!?」

 

 

 

獅子王が呟いたそう呟いた瞬間、彼女の体から凄まじいオーラが放たれた。あの光は……山の民を焼き払おうとしたアレと同じ……!チャージが溜まったのか!?

 

「全員後退だ!」

 

それに気付いた俺は全員に後退を命じ転がっていたマシュを起こした。

 

「マシュ!」

「何ですか!」

「あれを防げ」

「………無理無理無理無理!!!!死にます!私死にますって!」

 

それを見たマシュが恐怖のあまり膝を震わせてフリーズしてしまった。そんな後輩を励ましたのはルキウスだった。

 

「安心してください。貴女の持つギャラハッドの盾はその尊き精神が強い程力を発揮します。貴女なら出来ます。今こそ解放しなさい。そして、マスター達を守るのです」

「───はいッ!マシュ・キリエライト!行きます!」

 

発破かけるの上手いなぁ。きっとブラック企業に勤める先輩として同じ後輩をやる気にさせるタイプの奴だな。あぁいうタイプの人間は親父の店でバイトしてた時によく見たもんだ。

 

「ほう、その盾で受けると言うのか……その勇気に敬意を表し、全力で打たせていただこう」

「がががが頑張ります!」

 

相当怖いようだが、今はマシュを信じるしかない。

 

「気張れ!マシュ!ここが踏ん張りどころだ!」

「先輩の役に立つんだ…先輩の役に立つんだ……恐れるな…マシュ・キリエライト!」

 

マシュは改めて二本の足をしっかりと踏み締め、盾を前面に展開する。

 

「──最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)!」

 

いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)!」

 

2つの宝具が衝突した。大都市1つを蒸発させるビームはマシュの生み出した白亜の壁により受け止められた。だが、ジリジリと後ろに下がってきており、マシュは必死に踏み止まろうとしていた。

 

「焦れってぇ!」

 

その時、俺と一緒にマシュの後ろに後退していたモードレッドがスラスターを噴かせて彼女に高速で近付き、盾を支えるのを手伝った。

 

「マシュ!放すんじゃねぇぞ!このまま突っ込む──!」

「モードレッドさん…………はいッ!」

 

4枚のバインダーが後方に展開し、一気に前に突進する。押し返す先は獅子王の槍!

 

「───なっ」

「「いっけぇえええええええ!!!!!」」

 

突撃した白亜の壁は聖槍のエネルギーをそのまま押し返した。逆流したエネルギーと放つエネルギーが衝突し、激しい閃光と共に爆発。粉々に砕け散った聖槍と共に獅子王は床を転がり玉座に頭をぶつけた。爆風を防ぎきったマシュは宝具を解除し盾を杖にして荒い息をしている。

 

「う…く……バカな………」

 

奇想天外な方法で逆境を跳ね返した事を獅子王は理解出来ずにいた。バチバチと火花の散る視界の中でその目に映ったのはルキウスだった。

 

「ルキウ……いや、分かっていた………ベディヴィエール…」

 

自分の本来の名前を呼んでくれた事にルキウス…いや、ベディヴィエールは微笑んだ。

 

「……円卓の騎士を代表して、貴方にお礼を。あの暗い時代を、貴方1人に背負わせた。あの華やかな円卓を、貴方1人知らなかった……勇ましき騎士の王。ブリテンを救ったお方。貴方こそ、我らにとって輝ける星。」

 

そして、ベディヴィエールは自らの銀の腕を外し、跪くと獅子王の手に銀の腕を差し出した。

 

「我が王、我が主よ。今こそ───いえ。今度こそ、この剣をお返しします」

 

獅子王はヨロヨロと立ち上がるとその銀の腕を受け取った。それを満足気に網膜に焼き付けたベディヴィエールは腕を失った事で次々と体が崩れていくのを感じながらも最期に見る事が出来た獅子王の笑顔に心の底から満足してその身を灰にした………。




獅子王との戦いはこれで終了です。後は蛇足になります


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