「この負傷だと治療は厳しいです・・」
「手術でも駄目なのか!?」
「基地には医務室程度しか・・」
「・・クソったれ!ならばどうするんだ!?」
「ガリアはまだ復興途中、ブリタニアは遠い。カールスラントでさえ医療が発展しているがネウロイに占領されている・・」
「リベリオンもネウロイと戦っている。決して安全では無い」
「ならば扶桑は駄目なのか!?」
「移動にも時間がかかりすぎる・・。医療はカールスラントまでとは達しないが」
「もう何でも良い!扶桑だ、扶桑にタケムラを送ってくれ!」
「ならば宮藤を乗せて移動しながらの治療はどうだろう」
「それだと魔力が・・」
「ですけど一刻も早くタケムラさんを・・」
「私行きます!」
「美香ちゃん!」
「だがな宮藤・・」
「トルゥーデは口出さないで、時間が無いんだよ?」
「少し落ち着く。もう時間は無い。何でも良い、手配してくれないか」
「ならばこうしよう。私はアフリカへ帰るつもりだが、この人達と沢山話したい事があってね」
「輸送機で扶桑に向かえば良い」
「これしか無いな・・。私も行こう」
日が出てくる言う時に俺は医務室の廊下でじっと床を見ていただけだった。
リトヴャク中尉、エイラ大尉を除いたウィッチで隊長は話し合っている。
あの時、よくしっかりと周りを警戒するべきだった。
扉が開くと宮藤さんとリネット曹長、そして隊長、坂本少佐、クロステルマン中尉にアフリカの星が出てくる。
少佐は俺に気づき、
「自分を責めても何も起こらないぞ」
と言われた。
「シデン、済まないが今すぐ扶桑へ行くぞ」
「分りました・・」
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――JU52 機内
まだ飛びだったばかりで力も出ない。
これ以降は長距離飛行の為、増槽か経由で向かうらしい。
「シデンさん、これ食べてください」
「ん?有難う」
かごに入れられた沢山のサンドイッチ。
野菜や肉が挟まった西洋料理と聞くが・・。
手にして齧る。
パンの味と水々しい野菜に肉が旨味を増してくれる。
朝食って無いから少し元気が出てくる。
「沢山食べてください」
正面に座っていたアフリカの星が口を開き、
「シデンと言う名か。私はカールスランと空軍所属、第27戦闘航空団第3中隊の中隊。第31統合戦闘飛行隊所属のハンナ・ユスティーナ・マルセイユだ」
「君の事は疲れ果ててる隊長さんから聞いたよ」
俺に自己紹介をしてくれた。
「そうか・・」
そんな気にならず変な呟きで返してしまった。
「君達が居たラバウル隊と言うのはどう言うところだ?」
「あえて言うなら海軍の本拠点だ。南太平洋に位置した所」
「リバウ島と言う所なのか。あそこにはエースウィッチが多い所だったな」
ラバウル島はこの世界ではリバウ島って言うのか・・。
「エースが多い分、死者も多い。去年では4人ばかりが未帰還になった」
「そうか・・すまない。こんな話を持ち込んで」
「いや大丈夫だ。いつもの事だからな」
「アフリカの星と聞いて、本国から色々とありそうなイメージがある」
「ははは。実は本当さ。 私のファンも沢山いてね、毎日の様に手紙が来るんだ」
「あ、でもサインはお断りさ」
「アフリカか・・」
「どうかしたか?」
「アフリカなら燃料、水もすべて血に等しいくらい大事なものじゃないかって」
「うんうん、基地の様に風呂も満足に出来ないんだ。羨ましいよ」
「バルクホルン大尉とハルトマン中尉とは一緒じゃないのか?」
「あの堅物バルクホルンはね~・・。まあハルトマンと一緒には居たな」
「互角に戦えるのはあのハルトマンだけさ」
「勝ち負けにこだわるより、勝たないと駄目なのさ」
勝たないと駄目なのか。
俺は敵は人間と認識し、脱出のチャンスを与えてきた。
これも勝ちに入るべきか・・?
いや相手を追い込んで行動不能にさせたほうが勝ちなんだ。
って何深く考えてたんだ・・。
「アフリカの兵士でもネウロイを撃破した事は?」
「ああ。もちろんあるさ」
「地上でも撃破できるんだったら、海上でも撃破出来たはずなんだがな」
「私達と違って武器と仲の問題さ」
「海軍は駄目駄目と言う事か・・」
マルセイユから目を逸らす。
逸らした先には呼吸器のマスクと心拍数を確認する機械が置かれた通路に、座席横で仰向けになるタケムラを見る。
生々しく包帯が血で染み込まれていた。
「彼が心配か?シデン」
少佐が口にした。
心配に決まってるだろ・・。
「少佐の様に、右目を負傷したラバウルの上官がいる」
「ほう?詳しく聞かせてくれないか?」
「坂井三郎と言う名前で数々の空戦を潜り抜いたエースさ」
「彼は"左捻りこみ"と言う技を披露したり、敵陣に連続宙返りと遊び心もあった人だ」
「アメリカ軍の艦載爆撃機の旋回機銃で右目をやられながらも、ラバウルの地へ戻った人でもある」
「私に似ているな。はっはっは!」