時間が過ぎ経つともう何日ここに居たか、生活したか忘れてしまい只作戦通知が来るまで待ち望んで居ただけだった。
夜の広い格納庫外、薄暗い灯の光りを浴びながら外で待機される新型の"零戦五二型"を眺めていた。
(多分こいつで出陣するんだろう・・)
そんな思いを胸に抑えながら、自分に言い聞かせた。
時間は深夜か・・。
前まではウィッチ隊と一緒にネウロイを撃破したばかりなんだけどなあ。
坂本少佐の動きも素人の俺には分らんけど、多少鈍っていたか・・?
殆どの奴らは寝ているが、こうやって地中海の月を眺めるのも悪くない。
「・・シデンなの?」
「ミーナ中佐、どうしてここに?」
格納庫の入り口に中佐が俺の事に気づいた。
思わず近づきながら、
「問題でも?」
と言葉にする。
「美緒よ・・」
「坂本少佐が?」
「あの人はもう、魔力も無い・・。まだ飛ぶ続きなのか心配で」
内部からプロペラのエンジン音が、夜景に響く。
ストライカーユニットを履いた坂本少佐が近づくと、突然現れた中佐に交わす事も出来ずに。
大きくバランスを崩し滑走路へ突っ込んだ。
ストライカーユニットは大きく深い傷とオイルが漏れ、少佐自身も擦り傷や衝突の傷が露になっていた。
ここは2人にさせておこう。
俺が居ても邪魔だ。
黙ってその場を離れようとすると、影から2人を覗く宮藤さんが心配そうに見ていた。
<>
「ただいまより第501統合戦闘航空団は、この地よりネウロイを一掃するため"オペレーションマルス"に参加します」
「我々の任務は連合国艦隊、大和の護衛です」
脳裏に蘇る中佐の声。
任務は戦艦大和の護衛だ。
ミッドウェー海戦以来か。
――ロマーニャ北部 ベネチアネウロイ防衛圏内
凄まじいく厚い黒雲に身を隠した、大きな親玉が視界に入る。
無理して扶桑からここへ帰って来たタケムラも状況を知って、少し顔を難しそうにしていたが今はそれ所ではない。
彼の肩は完治していない。無理してでもやるつもりだろう。
日独伊英、じゃないな扶桑、カールスラント、ロマーニャ、ブリタニア、大和を旗艦とした艦隊が防衛圏内へ侵入する。
中央に戦艦大和と空母艦天城が随伴する。
両側、数十隻の駆逐艦、巡洋艦、戦艦。
<<戦艦大和・・。ネウロイ化まで3分>>
<<駆逐艦、1隻大破>>
タケムラの状況報告の声と共に、高価なオクタン燃料を飲み続ける零戦五二型はニニ型とまったく違う速度を出していた。
250kgの搭載にも関わらず速度形の針は600km/s前後をさしていた。
<<全艦、対空戦闘!>>
轟く砲声が鳴り響くとき、杉田艦長の命令でウィッチ隊がそれぞれパートナーと共に散らばると護衛のネウロイが数百機以上出現。
大和目掛けて光線を発射する円盤のネウロイに、宮藤さんが青い魔法陣を展開させ攻撃を弾き返す。
せめて負担を減らそうと宮藤さんを襲う子機のネウロイに7.7mm機銃を射撃。
まとめて子機諸共砕け散る。
<<2番機、3番機、ついて来い!>>
射撃を中止し3機1個小隊の編隊で、目の前に現れた隊長機の主翼から対ネウロイ用ロケット弾が勢い良く発射され、白煙が空に線を描く。
<<こちら3番機、エンジン不調、オイル漏れを起しました。戦線から離脱します>>
<<了解。良くぞ戦ってくれた>>
タケムラの3番機は濃緑色の翼を光らせながら旋回する。
そして、青い海に浮ぶ天城の方へと機体を向けた。
周囲がネウロイの破片で包まれる。
これが対ネウロイ用の威力か・・!
<<短い空戦だったが、命令が来た。ネウロイ化が始まった>>
「おお・・」
俺が目にしたネウロイ化の大和。
それは六角形模様を晒し、全体が漆黒に包まれていて、戦艦の重りを構わず空へ浮上していたのだ。
赤い目の様に鋭く発光する艦橋。
ハリネズミの様な弾幕で敵を一切近寄せずに親玉の方へと飛行していた。
<<俺は天城へ着艦する>>
ネウロイの黒雲と、親玉が残るその空、降下して消えた隊長機。
俺はもう少し眺めてみようとエンジンをフルに近づいて見る。
空中で大和の対空弾が炸裂する。
「・・動きが止まった?」
本来の目的は零距離で主砲発射と言う話しだがすぐには発射できないものだろう・・。
なんせ46cmだからそれなりの装填はかかる。
危険な所まで目視で確認すると、大和が一方的にネウロイにやられている!
「どう言う事だ!?話が違う!」
<<魔道ダイナモ起動しないだと!?>>
「おのれ・・!俺が大和の変わりに親玉のコアを破壊する!援護しろ!」
<<私が魔道ダイナモを再起動させる!>>
「少佐!駄目だ、魔力はもう無い筈じゃないのか!?」
<<ウィッチに不可能は無い!>>
「畜生!借りがあるんだ!俺にやらせろ!」
速度650km/s..!
頼むぞ零戦!
お前と俺が死ねば解放出来るんだ!
もし出来なくてもその穴を埋める奴が現れるさ・・!
「行くぞ!」