再び参戦
――1945年
ラバウル撤退後、南東諸島の島々の資源地は米軍により占領、奪還されもはや反撃の手段もなくなり、本格的反撃を受けつつあった。
ドイツ軍からの輸入戦闘機を真似して作られた三式戦闘機の飛燕、五式戦闘機など陸軍は中々良い物を開発していた。
なのに俺達はこの零戦だけで戦わなければならない。
改良は進んでるものの失敗ばかりだ。
だがそんな事は言ってられない。
ここ最近、数を増やしながら海軍航空隊基地と民間施設を叩くB29とP51Dが来襲している。
当たるはずのない高射砲の隊にとっても無駄弾は撃ちたくないんだろう。
零戦隊と呼ばれていた俺達は太平洋に出て敵機の索敵と哨戒を続けていた。
視界に入る蒼青の空だ。
<<はっは、でけえ雲だ。前見たあの雲と一緒だ。またあの時の様に入ってみるか?>>
「隊長、そう簡単には行きませんよ」
<<まあ試しだ。試し。どうせマスタングと戦っても陸軍がやってくれるわ>>
まあ間違ってない・・。
機体を上昇しながら滑らす隊長機に続いて、フットバーを蹴って雲の方へと機首を向ける。
続いて3番機も同様。
<<よし無線切れ。落とされた様に見せかけろ>>
無線の電源をオフに。
後に隊長が、
<<うわ!マスタングの襲撃だ!太平洋中部に似てグラマン随伴!>>
<<至急増援頼む!うわあああ!>>
と言うお芝居に笑いを堪える。
勿論敵機なんていない。
<<ようし雲に入るぞ>>
周辺が白くなり、太陽の日差しは途絶えた。
このまま一直線。
気流と雷やらで機体が多少揺れるも、そんな事は気にせずひたすら前を見ていた。
この間、すでに30経過。
突然狂い始めた方位磁針は、急にピタリと止まり普段と変わらない動きをする。
雲を抜け出す。
一面に広がる大陸と、水上の上には都市が。
そうだ・・。
俺達は戻ってきた。
この世界に。
<<さて・・ここに来るのも1年ぶりか。501基地はどうなっているんだろうか>>
ここ辺りは・・俺達が入った所と一緒だな。
「それより、燃料が少なくなってきています。どこか着陸出来る所を探しましょう」
<<そうだな・・。無理があるかもしれないがあそこの水上都市の空軍基地に着陸しよう>>
<<ロマーニャ空軍基地に着艦許可を願ったほうがよろしいかもしれません>>
<>
取りあえず、ロマーニャのヴェネチアまで来て飛行場へ着陸したのは良い。だが問題は今後どうするかだ。
連絡無しに来たにも関わらずお金は無いし、泊まり込み出来るところも無い。
一応燃料だけ補給して、ロマーニャの空軍基地を飛びだったけど・・。
隊長は隊長でガリア経由で行くって言ってるけど。
燃料計は半分以下まで切っている。
大丈夫だろうか・・。
<<行くぞ~日の丸~、日本の艦だー。海の男の艦隊勤務、月月火水木金金>>
<<どーんとぶつかる怒濤の唱に~。揺れる杉の音、今宵の夢は~>>
フライト時間にも暇があるので、隊長とタケムラは月月火水木金金と言う歌を歌いながらガリアを目指していた。
俺は無線の周波数を変えリトヴァグ中尉に通信をしようとする。
「頼む・・出てくれよ・・・」
雑音が混じって合わないぞこれ。
ダイヤルを一つ一つ慎重に行くも繋がらない。
そういえば言ってたな、どんな無線でも聞き取れるって。
「リトヴァグ中尉、応答してくれ俺だ!」
<<・・!シデンさん・・?>>
やったぞ!
「久しぶり、いや1年ぶりだな。リトヴァグ中尉」
<<お久しぶりです。でもどうして・・?>>
「同じ雲に入ったらまた別れを告げたところに来てしまったんだ」
<<そうですか<<ンー?サーニャどうしター?>>
ユーティライネン大尉の声だ。
相変わらずの棒読みはいつ聞いても不思議ちゃんだ。
<<ミーナ中佐とバルクホルン大尉、ハルトマン中尉が居る基地なら・・>>
「教えてくれ!」
<<ベルギカ王国・・サントロン空軍基地に所属しています。およそ799.147kmです>>
今乗っている零戦五二丙型は落下増槽で2,560km、通常なら1,920km。
大丈夫だろう。
「分った有難う。誘導は出来るか?」
<<すみませんそこまでは・・>>
仕方が無いな。
「場所さえ分れば良い。有難う」
<<お役に立てなくて申し訳ありません・・>>
「気にするな。じゃあ、またどこか」
<<また会えると良いですね>>