アニメキャラを呼び出して戦わせるマスターに選ばれた件 作:100¥ライター
49話 英雄王の気まぐれの続きにあたります。
なんならその間をすっ飛ばしても構いません。
今回から京都騒乱編後編の始まりです!
64話 流石にそれは対処出来ない
〜今までのあらすじ
俺の妹を騙る輩達との戦闘を終えた後、残りマスターが100人になったとの通告が入り、かつて残り150人になった時の戦いを思わせるようなサバイバルが始まった。
俺はその戦いにおいて最もあくどい手を使い、最悪の勝ち方で優勝を手にした。
優勝商品は一番最後のライトノベル作品のキャラ縛りの戦いで使用したキャラが1人確定。もう一人はランダムで手に入るとのこと。俺は退場したと聞いてメンバーに加えたルミアを確定枠に、優勝商品の受け取りはいつでもOKだったのでランダム枠は一旦権利のみを手に入れることにした。
さすがに確定枠のルミアを敵の前で召喚する訳にはいかないのですぐにホテルへと戻ってきた。
そしてその翌日
〜
「ん…?」
何だ、寝ちまったのか。一緒に寝ているのはシスティーナとルミア。どうやらあのまま疲れ果てて眠ってしまったらしい。
「早いとこ準備しなきゃー」
コンコン
『ルームサービスです』
あ、頼んでたルームサービスだ。このホテルはバイキングはないが、頼めば他のやつらに邪魔されずに朝食を食べられるというマスターにとっては素晴らしいシステムだったな。
新しくルミアが来た影響で俺の飯は無くなるけど。
まだ身体がダルい上に寝癖も付いてるけど待たせるのも悪いし、いいか。
「はいはーい、今取りま…す?」
寝ぼけていた頭がすぐさま本来の思考能力を取り戻した。この青年は食事を用意していなかった。やっちまった…新手のマスターか?
その疑問は青年が帽子を脱ぎ、青い長髪があらわになったことですぐに晴れた。
「ふん、これでもフィーベルのマスターか?無警戒にも程があるぞ」
「アルベルトめ…」
おい、流石にそれは対処できない。朝っぱらで戦闘中でもない時にまで神経張り詰めるのはちょっとキツい。
京都で遭遇したグレンのマスターが所持しているキャラの一人。グレンと同作品『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』のアルベルト。グレンのかつての同僚で相変わらず変装もお手の物だな。
「話がある。失礼するぞ」
「の前に…システィーナとルミアを起こしてからでもいいか?」
「あぁ、好きにしろ」
〜
システィーナとルミアを起こし、アルベルトの話を聞く準備をさせた。アルベルトはシンプルに強いキャラだから姑息な手を使ってくることはないだろうけど念のため。
同作品のメンバー同士である方が話は円滑に進みやすくなるので他のやつらはまだ寝かせたままで平気だろう。さて、何を話すんだ?
アルベルトは事前に用意した袋から何かを取り出して…
「この国ではこのような時に菓子折りを持っていくらしいな。自ら手土産をつまらないものと呼ぶのは分からないが」
「あっ、これはどうもご丁寧に…」
どこまで完璧さを追求しているんだよ、お前は。そして日持ちするクッキーをチョイスしている上に個別で包装されている。
おまけにこれ京都でしか買えないやつだし、ケチのつけようがない。
アルベルト…お前はここまで強いキャラだったのか。
「ではまず…そこにルミア=ティンジェルがいるということは貴様が優勝して復活させたということでいいんだな?」
グレンのマスターはルミアのマスターの弟だったな。姉と一緒にどこかしらで戦い、ルミアのマスターがやられたのだろうか。
言うか。どうせウソついても意味ないし。
「あぁ、俺が優勝した。だが、この話はくれぐれもオフレコで頼む」
「了解した。では、次の話だが…」
キーボーウーノーハナー
「すまないな、失礼する。ルミア、代わりに話を聞いておいてくれ。共闘したことある者同士の方がより話は進みやすいだろうし」
「はい。分かりました、マスター」
しまった。スマホを切ってなかった。あれ?そもそも俺のスマホの電話番号知っているやつなんてほとんどいないのに…
「もしもし」
『津島瑠璃は預かった。返して欲しくば…』
相手はボイスチェンジャーまで使っている用意周到なやつか。だが、俺が言う言葉はただ一つ。
「津島瑠璃って誰?」
ピッ!
はぁ…間違い電話か…てっきり敵マスターに特定されたかと。
「失敬失敬。間違い電話だー」
キーボーウーノーハ
「それは本当に間違い電話か?」
「多分そうだよ。また少し席外す」
「…はい、もしもし」
『おいてめぇ、妹がどうなってもいー』
「好きにしろよ」
ピッ!
はぁ…アホらし。電話番号特定されちゃったか…
「そろそろ電話番号変えねーと」
俺のほぼソシャゲ専用スマホに電話がかかってくるようになるとは。この戦いで随分と変わったなぁ…
「その電話。またかかってきたら次はスピーカーにしろ。何か隠してはいないだろうな?」
「あ?三度もかかる訳なー」
キボ
「もしもし」
しつこいやつだな。そして今回はアルベルトの助言通りスピーカーに…
『貴様は人の心がないのか!?貴様の妹を誘拐したんだぞ!?』
っ!!寝不足の頭に響くからあんま大声出さないでくれよ。
常に冷静なアルベルトを少しは見習え。
「犯罪なんか犯す人に人間性を説かれたくないのですが」
戦闘中に起こしたマスター間の犯罪…たとえば殺人や誘拐はこの大会の謎パワーにより、何事も無かったかのように処理される。
死体があれば事故死。なければ行方不明…と、いったように。
俺の妹を名乗る輩は確かにいたが、あいつはあの場でキャラを召喚した。前に試したが、キャラ召喚が可能なのはマスター本人だけ。おまけに戦闘後誘拐されてないこともしっかり見届けた。
よって敵マスターはほほ確実に刑法224条である略取・誘拐罪を犯している。
『黙れ!妹の命が惜しくなければな!』
「マスターの妹が誘拐!?」
今更か。驚きすぎだぞ、システィーナ。SNSでバカなこと書き込んだりするのはもちろん、戦闘する場所を同じ場所にしすぎると比較的楽に特定される。
アクセル・ワールドとかを読んでいればマスター割れがいかに危険かくらい理解していると思うけどな。そんなことも分からなかったのかねぇ…
というかオタクの中には特定に長けたやつもいるからそのスキルを有効活用されたと考えてもおかしくはない。
あいつのことだし、無警戒に馬鹿やって特定されたんだろう。
「知ってるぞ。実際は誘拐してないんだろ?ガッシュでそうやって誘い込んで自らにとって有利なフィールドで戦いを行うっての見たし」
『津島隼人。君の名前だね?ユウキ、アイリス、マシュ、モモ、システィーナ、モードレッドのマスターだろう?』
ちっ、ここまで来ると無駄に頭の良い妹が俺の情報を売った可能性が高くなってきた。
だが、同時に俺自体はストーキングされてないことが分かった。
「誘拐した証拠は?」
『ふん、こちらの要求が先だ』
「あっそ、そういう態度に出るのね。じゃあ、いいよ。諦めるから」
『ま、待て待て!切るな!もうちょい交渉していけよ!』
やれやれ。最初からそれくらい素直になれよ。
「いいか?取り引きってのは取り引きしたいやつ同士じゃなきゃ成立しないんだ。こういうのは別にそこまで取り引きしたくないやつが一番強いの。理解したか?」
『誰か助けて…助けてよ…』
あっ、昨日の妹を名乗る輩の声。声ぐらいはいくらでも誤魔化せそうな気はするがな。
「要求するものは?」
『貴様の所持しているユウキだ』
「妹を助けたかったら俺はマスター権を剥奪しろってか?」
『あぁ、そうだ。助けて欲しかったら今日の対戦が始まったらこれから送る場所までに来い』
「論外だ。俺は妹ごときのためにマスター権を手放す気はないし、命をかける気もない」
ピッ!
「アホらし…」
あっ、一応メールで場所と妹を誘拐した証拠写真を送ってはくるのか。親切だな、おい。こいつ実はそんなに悪い奴じゃないんじゃね?
「見損なったわ!ハヤト!!」
「何だ?」
いつにもなく、システィーナが怒っている。やっぱまずかったか?
「貴方のたった一人の妹が誘拐されたのよ!?何でそんなに平然としてられるの!?」
「動揺したって仕方ないだろ。現状は何も変わらんし、俺が今やるべきことではない」
「それに何で要求を断ったの!?飲めば妹の命は助かー」
何故要求を断ったか?何を今更…
「まず誘い自体に乗れば俺は必敗どころか不戦敗。たとえ乗ったフリをしたとしてもこういう陰湿な行為してくるやつが誘い受けで何も用意していないはずはない。勝ち筋は薄い」
「それに…俺は絶対にマスター権を手放せない理由がある」
「それは…妹の命より重要なの…?」
「あぁ、俺の叶えたい願いは妹の命より重い。あいつめ。俺の情報流しやがって…忠告通りマスター権を手放して大人しくアルトリアなりリーファなりこっちに寄越せば巻き込まれずに済ー」
乾いた音が部屋中に響いた。システィーナに平手打ちされたのか。
「…」
「そんな…家族…じゃない。どうして…そんな酷いことが言えるの…?嫌いよ、貴方なんか」
「待て、システィーナ!」
「触らないで!」
伸ばした手が振り払われ、システィーナは泣きながら部屋から出て行ってしまった。
「ちょっと、システィ!?」
そうだった。システィーナにとって家族とはかけがえのない大切な存在だったもんな。本当に…羨ましいよ…
だからお前には怒ることも言い訳することも出来なかった。
「津島さん、貴方はもしかして…」
自分と似たような境遇なのかもと何かを察した風のルミアが俺のフォローに回ろうとするが…
「いや、いいんだよ。俺が言い過ぎたせいだ」
「貴方と家族の間に…何があったんですか?」
「自分語りするつもりはないよ。よくあるつまんない話だし」
妹は使える人間であり、俺は使えない人間だった。それだけだ。
バタン!
「津島さん、何があったんですか!?」
「敵だな!そうなんだろ!?マスター!」
「お怪我はありませんか?ハヤト」
「先輩、さっきの音は何の音だったのですか?」
さっきの平手打ちの音を聞いて、みんなが駆けつけてきたか。派手にドア開けやがって…
「あっ、アルベルトさんだ。どうしてここに?」
「えっとだな…どうやら俺に用があるらしくて」
「…こちらの話はこちらで話をつけておく。お前はフィーベルの元へ迎え。今なら間に合うぞ」
「だが…」
システィーナに何て言えばいいのだろう。言葉が見つからない。
「なら一つだけアドバイスをしておく。お前は冷静沈着なマスターとしては正しい判断をした。だが、システィーナが求めていたマスターとしては誤った判断をした。早くしろ、間に合わなくなっても知らんぞ」
「…行ってくる。モモ、あとは任せた」
「了解です。彼女にかける言葉…くれぐれも間違えないようにしてくださいね?」
忠告痛み入る。さて、システィーナはどこかな…
〜
ピンポーン!
「白猫か?どうしー」
「先生!私、どうしたらいいか…」
今のシスティーナが頼れる数少ない人物であるグレンを見つけたことでシスティーナは安堵し、抱きついた
「…白猫。何があったんだ?」
「マスターが酷いの…妹が誘拐されたって聞いても平然としているし、妹よりマスターでいる方が大切って…」
「システィーナのマスター?あの人がシスティーナを泣かせたの?斬ってくる?」
居間で話の一部を聞いたリィエルが剣を取り出し、臨戦態勢に入る。
「お前は何でいつもそう時期尚早なんだ…?斬るのは話が終わってからでいいだろ」
「分かった。話が終わったら斬ってくる」
「…リィエル、ありがと。私のことを気遣ってくれたのね。でも、気持ちだけで充分嬉しいわ」
「それで?話が見えてこないからもっと具体的に聞かせてくれないか?」
それからシスティーナは少し落ち着いてきたのか一部始終をグレンに話した。
それを聞いたグレンは誰を否定するでもなく…
「そうか。辛かったな、白猫」
ただただシスティーナを受け止めた。
「先生…」
バタン!
「システィーナ!」
「システィーナのマスター。システィーナ、泣いてた。貴方のせいで」
リィエルの苦言が胸に突き刺さる。俺の発言がシスティーナの心をいかに傷つけたかは計り知れない。
許してくれだなんて言わない。ただ一言だけ…
「…システィーナに謝らせてください」
俺の願いを汲み取ってくれたからかリィエルは俺を担ぎ、システィーナの場所へ連れていった。
「システィーナ、マスターが謝りたいって」
「さっきは本当にすまなかった。お前に酷いこと沢山言っちまって…」
「私からも謝るわ。貴方のことを勝手に決めつけて…私は貴方のことを何も理解していなかった。しようともしなかった」
システィーナ、謝らないでくれ。システィーナが胸を張って俺がマスターだって言ってくれるような…そんなマスターを目指さなかったことが悪いのだから。
「システィーナ。お前が無事で本当に良かった…」
「マスター…」
キーボーウーノーハナー
おいおい、空気読めよ…あっ、モモからだ。
「もしもし。マスターだ」
『マスター、私達は運が良いのかもしれませんよ』
「どうしたんだ?」
『アルベルトさん達はルミアさんを倒したマスターを追っているそうです。そしてその敵マスターは話を聞く限り先程マスターに電話をかけてきた人物と同一人物である可能性がとても高いんです!』
ふーん、あんだな。そんな偶然。…え?
「つまりそれって…」
『3人のマスターによる共同戦線です!』