アニメキャラを呼び出して戦わせるマスターに選ばれた件   作:100¥ライター

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66話 『正義』は必ず勝つ

〜前回のあらすじ

 

津島隼人はちょうど同じ敵を倒そうとしている二人のマスターとチームを組み、いざ屋敷へ。そこにいたのは…

 

 

 

 

「ったく、ゾンビか…驚かすなって」

 

 

さて、こんなアニメキャラでもないやつ。さくっと倒していくか。

 

 

一番手っ取り早い方法は肉体も消せる浄化魔法だが…

 

 

「ひかっ、ひっ、ひきゃりあれ!」

 

「光ありぇ!け、けが…」

 

 

システィーナとグレンはダメみたいだな。錯乱状態でまともに打てそうにない。

 

 

「ルミア、任せた」

 

 

「《光在れ・穢れを祓い給え・清め給え》!」

 

 

…あら、まだ元気とは。いや、それどころか効いてない…?

 

 

呪文の失敗?そんなわけはない。ルミアの詠唱は完璧だったし、精神状態もいつも通りだ。失敗はしていない。

 

 

「マスター、白魔【ピュアリファイ・ライト】では浄化出来ません!白魔【セイント・ファイア】を使いますか?」

 

 

 

そういやルミアは触媒さえ用意すれば高等浄化魔法も使えるんだったな。だが…

 

 

「やめとけ。あいつらには微塵も効いていなかった。恐らくタイプが違う。ゾンビってよりは死体って入れ物を使って操っている。というタイプだと思う」

 

 

実際のキャラを挙げると死者の魂を入れる必要性のないハンターハンターのイカルゴみたいなやつか。

 

 

何はともあれ死霊でないなら死霊を祓う技で倒すことは不可能だ。

 

 

「なら普通に倒せばいいだけだろ!?マスター!」

 

 

モードレッドの剣戟により、ゾンビの上半身と下半身が生き別れてしまった。まっ、ゾンビである時点で既に死んでるんだけど。

 

 

そしてこの場合はやはり操作されている系か。

 

 

試合開始前なのにゾンビを斬れたのは何かしらのアニメキャラが憑依しているわけでも人でもなく、物体扱いされたからだな。

 

 

「…ん」

 

 

ヤミがじっと死体を見つめている…のか?

 

 

「どうかしたか?」

 

 

「い、いえ。何でもありません。恐らく気のせいです」

 

 

恐らく?何か引っかかるようなこと言うな…

 

 

「言ってくれ。どんな些細なことでも構わない。別にお前のことを笑ったり非難するわけでもないし、それが敵のヒントになる可能性がある。だから…教えて欲しい」

 

 

俺の頼みに根負けしたのかヤミはそこまで言うなら仕方ないですね。と告げた。そして続けて…

 

 

「…そっくりなんです。私がかつて戦ったことのあるマスターに。そしてこの人は死亡したはずなんです」

 

 

『!?』

 

 

「死亡したはずのマスター…?じゃあ、そいつは死んだマスターの死体を回収して自分の能力で再利用してるってか?ったく、ひでぇ話だな」

 

 

アニメキャラは一般人や戦闘時間外のマスターを害せないルールが存在する。だが、死体なら話は別。

 

 

マスターの死体であっても、そして戦闘中でなくても死体相手なら何をしてもルール違反にならない。

 

 

死体を操る能力者はそういった死体を集めているのか。もしそうならマスターの死体ってのは理にかなってる。

 

 

戦闘時間中でマスターを殺して、死体を確保すればたとえどんなに現場に証拠を残そうがマスターの死は謎の行方不明事件で処理されるから裏ルートで一般人の死体を手に入れるよりも足がつきにくい。

 

 

ルールの抜け穴を突くのはいいことだ。ただ人殺しをするのは感心しない。

 

 

「…グレンの言う通り到底褒められる行為じゃないよな」

 

 

全く…何て非人道的行為なんだか。俺だって勝つためなら卑怯な手を使う時はあるっちゃあるが、それだってもっとまともな手段選ぶぞ。

 

 

さて、あとやるべき事があるとしたら死体の状態からどんなやつが操っていたかの特定だ。

 

 

「その死体をよく見たいからちょっと近寄る。七草先輩は目を閉じてください」

 

 

「わ、私だってあれが動かなきゃ平気よ!」

 

 

強がるな。今回合わない場所へ呼んでしまったのは俺の責任でもあるんだし、また今度活躍出来る場で頑張ってくれ。今回のは言わば采配ミスだ。

 

 

「まず目は埋め込まれたものとかじゃないな。そして肝心な死体…さっきモードレッドが斬った時、どこにも血が付いてなかった」

 

 

「あ?死体だろ?ならいくら斬ろうが血は流れねぇだろ」

 

 

「違う、確かに血流が止まれば流血はしないが、体内の血液は残るだろ?なのに何故血が少しも付いてないんだ?」

 

 

「言われてみれば…そうかもしれねぇな」

 

 

「あとは何か違和感あるだろうか…」

 

 

もっと近くで見れば敵を特定可能な証拠が掴めるはず!

 

 

『シャ…フシャァァァァ!』

 

 

なっ!こいつめ、いきなり上半身だけで動きやがった!

 

 

「きゃーーーっ!!」

 

 

真由美は…驚いて足がすくんでしまったか。グレンやシスティーナも同様に悲鳴をあげてるし…だったらスコーピオンですぐに首をはねてー

 

 

「やぁーーーっ!!」

 

 

俺がスコーピオンを出すよりも早くリィエルが持っていた剣で上半身ごと壁に突き刺した。

 

 

「すまんな、リィエル」

 

 

「私にはよく分からないけど、死体の1つや2つ…どうしてそんなに気にかけるの?」

 

 

「…死体は雄弁に語るからさ」

 

 

ってある人が言ってた。だが、その人の言う通りだ。さっきリィエルがゴツい大剣で思い切り雑にぶっ刺したのにその周りは刺した傷とは思えないくらい不自然な穴が綺麗に空いている。おまけに相変わらず血が全くついていない。

 

 

あっ、そうか。屋敷の周囲に立ち込めていた霧、そして不自然な死体…よし、謎は全て解けた。

 

 

「この後試合開始まで気をつけることがあるとしたらこいつみたいなゾンビがまた驚かしに来て撹乱させてくる…ぐらいか」

 

 

いくら物であろうが戦闘中以外でアニメキャラやマスターにダメージを与える場合は相互同意がなければならない。

 

 

だから上半身だけで動いてきた時はつい焦ったけれど攻撃されることは無かったんだ。

 

 

「おーい、白猫。行くぞ」

 

 

「七草先輩、もう大丈夫ですよ。さぁ、行きましょう」

 

 

 

「せ、先生…こ、腰が抜けちゃった…立てない…」

 

 

「ごめんなさい、マスター。私も…」

 

 

…ただし、精神的ダメージは受けるらしい。真由美、お前は現界した時の時系列を映画の時点と仮定してもあと少しで大学生になるって頃だろうに…

 

 

 

 

俺とグレンはそれぞれ腰を抜かした真由美とシスティーナを背負い、屋敷の探索を続けていた。しかし、一向に敵は見えない。

 

 

「ったく、勘弁してくれよ白猫」

 

 

「だって…だって!!」

 

 

『試合開始!!』

 

 

「やれやれ、なんの脈絡もなしに始まりやがったか!」

 

 

真由美を背負った状態で機敏に動くのは難しい。こっからいきなり奇襲が来たらまずい… こんなことなら5分前の時、しっかり計算するべきだった。俺の初歩的なミスだ。

 

 

そして俺の願いも虚しく開始早々3本のナイフ…いや、メスが空を裂いた。

 

 

「せいっ!」

 

 

しかし、そのメスは1つも残らずアイリスが的確に敵が投げた場所へと跳ね返えした。

 

 

「お怪我はありませんか!?マスター」

 

 

「大丈夫だ。サンキュ」

 

 

アイリスの驚異の反射神経に多少なりともたじろいだのか攻撃の手が休まった。

 

 

「誰ですか?出てきてください」

 

 

「アイリス、呼ぶ必要はないぞ。やつの正体はもう分かった」

 

 

薄々正体は勘づいていたが、確信はなかった。だが、今なら堂々と言える。

 

 

「メスを投げてくるようなやつなんてブラックジャックを除けば、俺が知る限り1人しかいないよ。お前は…Fateのジャック・ザ・リッパーだ」

 

 

「ふふふ、あったりー!流石はここまで勝ち上がってきたマスターだね」

 

 

そしてジャック・ザ・リッパーがいるってことは…

 

 

「やはり来たか…難癖付けながらも何だかんだ助けには来るのだな。マスター隼人よ。やはり妹が大切か?」

 

 

やはりシナジーが強いお前もついてくるか、ステイン!

 

 

「ふざけるな。俺が動くのは自分にメリットかデメリットが生じる時だけだ。流石に俺がまた会う前に妹の葬式が開かれると困るんでな。せめて最期に恨み言くらい言ったっていいだろう?」

 

 

「ふっ、口ではいくら悪態を突こうが貴様の心には非道になりきれない良心とそこから来る人を助けたいという心が確かにある」

 

 

ステインの個性は血の凝結。相手の血を舐めることで相手の動きを完全に封印可能。しかし、俺はヨハネ様と同じO型だから効き目は薄い上に今は流血しないトリオン体だから完全に無力化可能。ここは俺が相手にするべきか?

 

 

「ここは僕が食い止めるよ!」

 

 

ユウキ…なるほど、こいつは最適解かもしれない。確かユウキなどバーチャル世界のアバターで戦うキャラには流血しないって特権ルールがあったわけだし。

 

 

「そっか。だったら俺とお前でこいつらを倒すか」

 

 

「ふふふっ!」

 

 

ジャックは霧から出てきてメスを投げては再び身を潜めてきた。ヒット・アンド・アウェイの作戦でいくつもりか。

 

 

「マスター、下がってください!」

 

 

マシュの盾によりジャックが投げてきたメスは全て叩き落とされた。

 

 

「マスターは先に行って!間に合わなくなるかもしれない!」

 

 

「だが…」

 

 

「ったく、マスターには俺がいるんだぜ?ジャック・ザ・リッパーとは戦ったこともあるし、なんか知らんのが増えていようが余裕だっての」

 

 

「…ユウキ、マシュ、モードレッド。そしてモモはこの場に残ってくれ。アイリス、システィーナ、ルミア、七草先輩は俺と先へ行く。グレンも俺と同じく先へ。そしてリィエルかヤミ。お前らの内どちらかはこっちに残ってくれないか?」

 

 

この場は近距離での先頭に長けた3人と代理として指令塔のような役割も可能なモモが適任だろう。

 

 

おまけにモモは携帯端末を持ち歩いている数少ないアニメキャラだから俺も連絡を取りやすいし。

 

 

「了解しました、マスターさん。ここは私達にお任せてくださいな」

 

 

「マスターさん…先程のリィエルか私のどちらかが残るという話ですが…この場は私が残ります。作品を統一した方が連携は取りやすいでしょうし」

 

 

「うん、私も戦うならグレン達とがいい」

 

 

オッケー。ならリィエルとグレンが前線へ。

 

 

「待って、貴方達はせっかく来てくれた獲物…誰一人逃がさないよ!」

 

 

「ジャック。あいつの正義が生かすに値する者か。俺はそれが知りたい。通らせてやれ。我々のマスター達が勝てば貴様が殺しても同じように解体する人間が増える。それに数は減らした方が勝率も上がるだろう?」

 

 

「うん!そうだね!だったらあの人達が死んだら解体させてね!」

 

 

 

しれっと怖い事言いやがって…だが、通れるなら通らせていただこう。

 

 

任せたぞ、俺の頼れる最高の仲間達。

 

 

 

 

ユウキ達と分かれてからも多少ゾンビとエンカウントすることもあったが、アイリスが全て秒殺。しかし、ゾンビが湧いてくるルートに何かしら作為的なものを感じる上にゾンビが妙にあっさり倒れていく…どうにも俺達を誘導している気がしてならない。

 

 

「…逃げるようにこの部屋に入ってしまったが、やっぱ罠か?グレン、お前はこの状況をどう見る?」

 

 

「お前と同意見だ。俺達はあからさまにこの部屋へと誘導された。どうせこの先にロクでもないやつが待っているんだろうさ」

 

 

ドアを開けた先の光景でまず目に入ったのは脱走でもしてきたのか一人の少女が右往左往していた。

 

 

「兄ちゃん…? お兄ちゃん!」

 

 

あっ、お前か。俺の情報色々バラしてくれちゃって…でも、間に合ったな。

 

 

「瑠璃!」

 

 

「やっぱり助けに来てくれたんだね、お兄ちゃー」

 

 

「えいっ」

 

 

突然した鈍い音の正体は俺がこいつに腹パンをした音だと他のみんなが認識できたのはそれが起きた少し後だった。

 

 

「…」

 

 

「ったく、何がやっぱり助けに来てくれたんだ…だよ」

 

 

「マスター!!この子実の妹でしょ!?何してるのよ!」

 

 

システィーナが食ってかかるが、今回の事に関しては7割は俺の私怨によるものだが、ちゃんと理由もある。これは正当な防衛なんだ。

 

 

「バカ、落ち着いてよく見てみろ…」

 

 

って、言われても他作品の能力が関わってくるからそれを教えていないお前には分からないことだったな。今度最低限ぐらいは教えとくか。

 

 

ぱっと見じゃ見えなかったから恐らく首元辺りかな…

 

 

「やっぱり、小さい穴が空いている。とある能力者はこれだけで操れる」

 

 

妹の服を調べてみたが、右腕の裾の内側にナイフが細工されていた。恐らく近づいてからこれでザックリってか?

 

 

「確かに…まるで硬貨に匹敵する大きさ穴が…って!やっぱり!?もしかして確信もないのに殴ったの!?」

 

 

今までのゾンビといい、こんなことがやれるやつは一人だけだ。

 

 

「DIOにスタンドを教えた張本人、エンヤ婆。スタンドは『正義(ジャスティス)』。そこにいるんだろ?出てこいよ」

 

 

「このクソガキィィ!!大人しく操り人形になっちまえば良かったものを!」

 

 

よし、当たり。ムキになって直々に出てきたか。やっぱり俺の推測に狂いは無かった。

 

 

エンヤ婆は既に操った妹を使って油断させ、妹が俺に傷を負わせれば洗脳完了。これで人質が増える。そう言った作戦を立てていたのだろう。もちろんそんなチープな作戦じゃ俺には効かなかったがな。

 

 

「だから…そんなものは当てにならないと言っただろう?僕は試合が始まる前から既に“読んでいた”のに…それを信じないからそうなる」

 

 

その声を聞いた瞬間、グレン、システィーナ、ルミアにリィエル…彼の存在を知るもの達の表情がより険しいものとなった。

 

 

「なんで…あなたがここにいるの?」

 

 

「なんでここにいる?別におかしくはないだろう?リィエル。君達がマスターに呼ばれて現界したように僕も同じように呼ばれて現界してきたわけさ」

 

 

リィエルの威圧にも全く臆する事なく不気味に微笑む男。

 

 

アニメキャラは惹かれ合う。と、聞いたことがある。

 

 

それは例えば同作品の仲間や敵同士、作品がコラボした者同士、はたまたモチーフが同じなどなど…アニメキャラは何かしらの縁に惹かれやすいものらしい。

 

 

だが、これは出来すぎてんじゃないか?想定外にも程があるぞ。

 

 

「元帝国宮廷魔導師団特務分室所属…執行官ナンバー11《正義》ジャスティス=ロウファン…!!」

 

 

やつにとってのメインディッシュが来たことで堂々と姿を現しやがったな。相変わらず不敵な笑みを浮かべやがって…

 

 

「ふはははは…たまには僕のマスターに無理を言ってみるものだねぇ…こんな素敵な出会いがあったのだから。グレン、君と最高の状態で戦える!こんなチャンス滅多にないだろう!?」

 

 

「うっせぇ、こんな所に来てまでてめぇの面なんざ見たくなかったぜ…」

 

 

 

「それじゃあ、始めようか」

 

 

 

『《正義(ジャスティス)》は必ず勝つ!』

 

 

「…ってね、正義執行の時間だ。覚悟はいいかい?グレン、僕は今日…君の正義を超える」




正義は必ず勝つ。ステイン(ヒロアカ)、エンヤ婆(ジョジョ3部)、ジャスティス=ロウファン(ロクアカ)それぞれ独自の正義を掲げる者3人とジャックちゃん(Fate)の登場です!

各々の正義が交差する時、戦いは更に激しさを増していく…


次回も楽しみにしてくださると嬉しいです。それでは!

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