アニメキャラを呼び出して戦わせるマスターに選ばれた件   作:100¥ライター

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74話 作文を一番最初に終わらせるやつはそのあと絶対寝てる

はぁ…全く…

金が絡む話に対して詳しく問い詰めてくる物好きはそうそういない。だからお前が飯を奢ったことにして、それに対して罪悪感を覚えた俺がお金を返そうとした。これで解決だっただろうに。

 

 

「…何であんなことをした?」

 

 

今俺は奇行に走った犯人を案内がてら問い詰めている。転校生が彼女とか凄く悪目立ちするだろ。それに側からしてみれば俺はテストの成績が常にランキング上位に載っている以外には何の取り柄のない哀れな陰キャだぞ。日本代表間違いなしの筋金入りのな。

 

 

世の中には釣り合いというものが存在する。美男美女カップルや名家の御曹司と令嬢がお似合いカップルと言われるように一般ピーポー目線で見れば結構な美女でいいとこのお嬢様のお前とじゃ釣り合わない。だから否が応でもかなりのヘイトを集めることになる。

 

 

おまけにマスターとの関係が無くなれば俺との関係は自然消滅するだろう。そうなればどうあがいても100%俺が悪いことにされる。ほら、面倒くさい。

俺はマスター関係のことであれば大抵首を突っ込みに行くが、マスターの件とは一切関係のない無駄なトラブルは嫌いなんだ。

 

 

「学校とは学生である以上、1日の大半がいることになる場所よ。だからそこで同盟関係の貴方と一緒にいる理由を作るとしたらこれが最適解。貴方に一目惚れだの恋した…とかは流石に無理がありすぎるからね」

 

 

「んだと、この野郎…まぁ、百歩譲って俺に一目惚れとかはないとしよう。一緒にいる理由としては隣の席の人だから色々教えてやるっていうことでも別に不自然ではなかったと思うぞ」

 

 

「…」

 

 

「…」

 

 

あ、詰まった。自分の悪手を実感しー

 

 

「バ、バカね!ならこの先ずっといることになったら不自然になるわ!それに私が彼女のフリをされると嫌なのは貴方の都合でしょ!?」

 

 

「ほぉう…お前俺とずっと一緒にいる気か?」

 

 

「…!?」

 

 

やっと自分が何言ったか理解したようだな。ずっと一緒にいる…ねぇ。そんなこと言ってきたやつらが昔何人いたか…

 

 

「言っちまったもんは仕方ない。とりあえず彼氏のフリはしてやる。とりあえずは…な」

 

 

 

 

「津島さん。彼女…如月(きさらぎ)美嘉(みか)は本当に貴方の彼女ですか?」

 

 

ト、トランクス…!?こんなところで出てきたらバレるだろ!時雨!お前は一体何がしたいんだ。とりあえず執談で…

 

 

『おい、マスターがいたら正体がバレるぞ』

 

 

落ち着いて…落ち着いて文字に動揺を表せ。もし万が一でも図星を突かれたという解釈をされたらおしまいだ。

 

 

「え?知らないのですか?この前の残りマスター100人の戦い以降からある特定の人にだけ見えるよう調整可能になったんですよ」

 

 

…いや、それはマジで知らなかった。ケロロ軍曹のアンチバリアかよ。

 

 

「あら、トランクスさんは彼女であると信じられませんか?」

 

 

「はい、単刀直入に言って貴方のマスターはこんな戦いの最中彼女を作る行為はしないはずです。もしかしたら貴方はマスターである彼女から脅されているのではないですか?」

 

 

わお…ほぼ合ってやがる。名推理じゃんか。だが、ここは意地でもシラを切らなくては。

 

 

『え?何言ってんの?俺とミカちゃんはどっからどう見てもラブラブカップルですけど?すげぇよ、ミカは…そのあまりの可愛さから旅行先で俺が会った時に一目惚れして告ったんだ。そして今日も一緒に帰る約束してんだよね』

 

 

俺が告白した。信憑性を持たせるには充分すぎるだろう。

 

 

「え、えぇ…どうやら僕の勘違いだったようです。それでは」

 

 

よし、一旦疑いは晴れた。ひとまずは美嘉がマスターだという疑惑を早急に消さなきゃな。

 

 

「それじゃあ授業を始めるわ。今日やるのは作文!作文と言って侮るなかれ、しっかり書けないと入れない大学もあるわ」

 

 

へぇ、作文ねぇ…先生が休みだからって若干手抜きじゃないかと思ったが…意外と考えてんだな。

 

 

「テーマはなんと人それぞれ別のものを用意しています!難易度は5段階!!作文はその人の考え方や人間性がよく分かるものよ。先生、貴方達のことを知りたいから教えてね」

 

 

「おおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 

うるさい、黙れ。どうでもいいだろ、そんなこと。俺の知識が正しければ正規の手順を踏んで教師になった場合は22歳。時雨綾から聞いた情報通りなら今年で2年目らしい。それなら最低24歳は確定。ほら、どんなに年下に見積もっても+7歳だぞ?お前らはそれでいいのか?

 

 

「それじゃあ、テーマは試験開始と同時に既に配っておいた紙を見てね。よーい、スタート!!」

 

 

…とりあえずテーマは何なんだ…?

 

 

『あなたにはこれまで3年間真剣なお付き合いをしてきて、来年には婚約する彼氏または彼女がいるとします。ところが2ヶ月前にふとしたことである人のことが好きになり、今付き合っている彼女と別れる決意をしました。600文字以上でお別れの手紙を書いてください 《難易度5段階中5!》』

 

 

…は?

 

 

あ、あぶねぇ…もう少しでこの作文用紙を握り潰すところだった。ふざけんじゃねぇよ。これ絶対あいつ仕込んだだろ。悪趣味な女教師だな。行きおくれちまえ…こんなテーマで作文が書けるわけねーだろ。それでもありがちな家族との思い出とかに比べちゃ100倍マシだが。

 

 

「ユウキ、余った作文用紙やるから時雨のやつに渡されたテーマを見せてもらってこい。ちょうどあの席空いてるから代わりに座りな」

 

 

「うん、行ってくるね!」

 

 

よし、二人の知識をフル動員すれば…!!まずは認識阻害の設定で二人を綾と美嘉に見えなくする!ユウキは美嘉だけ!

 

 

『七草先輩、先輩なら何度もお見合いとかしているみたいですし、きっと経験豊富ですよね?』

 

 

「えぇ!?そんないきなり振られても…私は家がちょっと特殊だったし…マスターは恋愛経験ないの?」

 

 

七草先輩…最終的に俺に戻しやがった。

 

 

『ない。ちょっと好きなのかもしれない程度ならまだしも恋焦がれるような恋愛感情なんて誰かに抱いたことないよ』

 

 

それも小学校低学年の頃…俺が身の程を知る前の話だ。

 

 

「なんというか…その手の事に関して津島さんは凄くドライですよね…」

 

 

悪いかよ…女に愛される以前に家族にも…誰にも愛されたことなんてないっつーの。

 

 

「津島君の言い分も分からなくもないけど…」

 

 

『そういうモモはこの作文書けるのか?』

 

 

「お、お任せください!津島さん」

 

 

よし、これで俺の面倒な作文は終わった。

 

 

さて、どんな文を書いて…

 

 

「…」

 

 

俺がモモの方を見るとモモは無言で涙を流していた。恐らく自分のことを考えてしまったのだろう。

 

 

『すまない。もういい。二度とこんな事言わない』

 

 

自分のしたことによる罪の重さに今更気づき、慌ててモモを止めたが、結局振り出しか。イカサマはするなってか?

 

 

しゃーなしだな。まず最初は…

 

 

パァァァァン!!

 

 

外で銃声!?こんな朝っぱらから戦闘か!?

 

 

『真由美、モモ。近くに誰かいるか?』

 

 

「…いないわ」

 

 

「真由美さんと同じくいませーマスター?」

 

 

さっきのはマスターを炙り出すフェイクだった可能性がある…

認識阻害の新たなシステム…一般人かマスターかを見極める手段になり得るな。探すべきは銃声の後に俺のことを見てきたもの。あるいは周囲を見回しているやつは…

 

 

美嘉を除けば3人か。ドドリアに野口さん、あとは…あの蒼樹優美子先生か。

 

 

しくじったかもしれない。時雨はさも気づいていないかのようにしている。あれが最善の行動だろう。もしかしたら本当に気づいていないのかもしれないが。

 

 

 

とりあえずは作文を完成させる。だが、ただでは終わらせない。

 

 

「あっ」

 

 

「…津島君ね、はい。次は気をつけてくださいね」

 

 

 

俺がやった事は実に簡単なことだ。消しゴムを落とした。…それ自体はテストなどでよくあること。違うのは…落とした消しゴムにはペンで『汝も我の同胞…マスターだろ?』と書いていることだ。

 

 

この反応で確信した。普通の人間なら厨二乙程度にしか思わずに鼻で笑うだろう。しかし、彼女は一瞬だけだが、たじろいで俺を二度見した。ほぼこいつで決まりだな。

 

 

そうしたらあとは作文!

 

 

私の愛しいかのぴっぴへ

突然でごめんね?これからだぁであるオレからマイスイートハニーへ最後の言葉を君に綴るのだ!

俺達は今思えばサイコーでマジ卍なラブラブカッポーだったよな。だがすまない、結婚、しちまったんだ。お前以外のやつと。

お前は俺と結婚するのはあたしだ〜なんて思ってくれていたのかな。

でも俺、今この手紙ベッドで書いているんだけど俺の隣に寝ているやつと昨夜×××とか×××、××や××××までやってしまったんだ。

俺も最初は俺はマイスイートハニーの彼ぴっぴ津島隼人だぞ。これくらいなんてこたぁねぇ。と自らに必死に暗示をかけて抱いた恋心に嘘をつき続けていた。待てよ。待てって言ってんだろ。と自分にセーブをかけ続けていました。しかし、彼女との出会いはそれら全てを吹き飛ばすほど衝撃的でした。彼女は私の荒んだ心にも光を照らしてくれ、取るに足らない私に生きる意味をくれました。そして今まで誰にも、君にも言えなくて一人で抱えていた孤独をやっと唯一打ち明けられた人なのです。彼女を知ってしまった俺はこれから彼女のことしか考えられなくなりました。全てを与えてくれた彼女に尽くそう。たとえどんな壁が彼女を阻もうとどこへでも連れて行ってあげよう。そう決めてしまいました。もしもこの事を突然知ったらきっと君は不幸になる。勝手ですが、君の傷が浅く済む今の内に言わせていただきました。こんなどうしようもない男に今まで付き合ってくれてありがとう。

 

 

「よし、完璧!!」

 

 

 

ふぅ…最初の作文が来た時はちょっとひやひやしたが、なんとか今日も学校終了!さて、帰るか。

 

 

「津島君は…あとで隣の空き教室に来てください」

 

 

「はい」

 

 

(美嘉、空き教室内に認識阻害をかけたキャラを送るか遠くから空き教室を観察していてくれ)

(了解…)

 

 

こいつがマスターなら一番手っ取り早いんだがな…ドドリアと野口さんの調査はしなくて一旦済むし。

 

 

「話というのは?」

 

 

「言わないと分からない…なんてことはありませんよね?」

 

 

「分かりますとも。一番最後にだからよぉ…止まるんじゃねぇぞを抜いた事を怒っているんですよね?申し訳ございません。私の文章構成が至らないばかりにアニメで原作ファン待望シーンをカットしてしまったばりの失態を…本当に申し訳ございません」

 

 

「そうじゃなくて!最後の文章は普通にかけていたのに最初のは何なの!?」

 

 

「文字数稼ぎです。あと下げて上げる戦法」

 

 

「だからってこんな滅茶苦茶な文字数稼ぎ論文の締め切りに追われている大学生でもやらないわよ!」

 

 

例えが妙にリアルだな。

 

 

「他にも…」

 

 

「まどろっこしいことはやめましょう。先生、私は訳あってこの場を設けさせていただきました」

 

 

「ま、まさか…」

 

 

「汝は我が数奇な運命に導かれた盟友か…または我に牙を成すてー」

「私に告白を…!?落ち着いて!?津島君!私と貴方は…」

 

 

「違います」

 

 

「うん、何の動揺も無しにそういうこと言われるとさすがの先生もちょっと傷つきます…」

 

 

なら一体何が最適解なんだ。先生ならこういう時の模範解答も教えてください。

 

 

「なんならもう曲げないで直球ストレートで聞きますけど!先生マスー」

 

 

《試合開始5分前です!》

 

 

「んだよ、推測通りマスターじゃねぇか」

 

 

隣にいるのは魔法科高校の劣等生のアンジェリーナ・クドウ・シールズ。姿はスターズのアンジー・シリウスの名で活動している時のそれだな。彼女はUSNA最強の魔法師。まさかこういった最強系とエンカウントするとはな。俺も相当運が悪いのかもしれない。

 

 

だが、予め如月を味方に付けているのは大きい。遠くから監視をしているモモが今頃如月に連絡しているはず。

 

 

「やっとこの学校に潜むマスターを炙り出せました…教師は必然的に学校を拠点とします。ならば同じ学校にいるマスターのことは把握しておきたかったので」

 

 

全く…だから他の担任の先生を上手く休ませて全クラスにローラー作戦仕掛けてたのか?かつての時雨に勝るとも劣らず大胆なことするなぁ…

 

 

「なぁ、先生は俺をどうしたいんだ?」

 

 

「もちろん教師ですからあなたを殺めたりはしません。ここの生徒が謎の死を遂げたり、行方不明になれば必ず誰かがここを突き止める。それは避けたいことですので。大人しく従えば手荒な真似はしません。私はただ知りたいだけです。この学校にいる4人のマスターのことを」

 

 

4人のマスター?俺、時雨、美嘉…あと1人は誰だ?名前は忘れたが、システィーナのマスターを誘拐したやつがいたが…退場させたことを知らないのかもな。

 

 

「ほぉう…先生は俺に勝つと? 先生もマスターなら俺のことちょっとくらいは知ってますよね?」

 

 

「えぇ、ユウキのマスターはどんなキャラを使ってもそのキャラの120%以上を引き出す強者と呼ばれています。ですが、私の敵ではありません」

 

 

《試合開始!》

 

 

試合開始と同時に1kmルールによってシスティーナ、ルミア、マシュ、モードレッド、アイリス。この5人もこちらに来た。さて、すぐに終わらせー

 

 

ダン!ダダダダン!!

 

 

「!?」

 

 

…今誰かが何かをこちらに飛ばしてきたが…

 

 

「チョーク…だと?」

 

 

黒板にめり込んでやがる…チョークを投げてくるやつは一定層いるが、こんな破壊力を生み出せるやつは流石の俺もそんなに思いつかない。

 

 

「ご無事ですか?我がマスター」

 

 

「えぇ、今は問題ないわ。セイバー」

 

 

「ランスロット…!!」

 

 

よりにもよって円卓の騎士最強と名高いランスロットかよ…

 

 

「ランスロット!?ボク聞いたことあるよ!アーサー王に仕えるカッコいい騎士様なんでしょ!?」

 

 

「いいえ、違います。女性となれば誰でも口説きに行く最低な私のお父さんです」

 

 

「あぁ、のこのこ現界してきやがったな。不貞野郎め」

 

 

おいコラ、お前ら。何でそうやってマイナス面ばかり強調させて言うんだ。

 

 

「その宝具…貴様、モードレッドか!?そしてマシュまで…」

 

 

「マスター!こいつは俺が相手する。いいな?」

 

 

「私も戦います!」

 

 

「…あぁ、この場はお前とマシュに任せる。リーナや他の敵は俺がどうにかしておく」

 

 

ランスロットの相手をしてくれるなら俺は大いに助かる。

 

 

USNA最強の戦略級魔法師のリーナに円卓の騎士団最強と名高いランスロット。そもそも何でこんな汎用性が異常に高くてマスターが思考停止しても大半のやつに余裕で勝てるやつばっか持ってんだよ。おかしいだろ!?

 

 

「ユウキ!久々に俺と組もうぜ。ルミアも援護を頼む!」

 

 

「うん、任せて!」

 

 

「はい、私も全力を尽くします!」

 

 

「他は別戦力の警戒に当たれ!!」

 

 

『了解!』

 

 

「さぁ、始めますよ。蒼樹先生」

 

 

「えぇ、すぐに終わらせましょう。津島君」


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