描写不足の部分は脳内補完お願いします。
ヒトロクマルマル、医務室。
提督宣言を済ませた俺は、電の用意してくれた白い軍服と革靴に着替え、彼女の提案でこの鎮守府の案内をしてもらうことになった。……この服と靴、サイズ丁度いいんだけど、これもなんだか都合が良いんだよなあ。
「さて、司令官さん、まずはどこから案内いたしましょうか?」
「ん?えっと……」
別にどこでもいいのだが、いかんせんさっきまでただの一般人だったので、海軍施設なんて微塵もわかるはずがない。知らない場所に来た時の定石として、ここはまず全体図から把握していくのが良いだろう。
「電、この鎮守府の見取り図はないか?」
「地図でしたら、さっきのファイルの中に挟んであると思うのです。」
そういわれて探ってみると、確かにあった。なんだか某遊園地のパンフレットに載っているような図で、想像していたものと違ったが、これはこれで見やすいので有りだ。地図によると、
・執務室や司令部、食堂・医務室などがある一番大きな「本棟」
・艦娘の寮等、生活の中心である「居住区」
・装備の開発や建造を行ったり、整備・補給・入渠を行うドックのある「工廠棟」
・資材や装備の保管に使う倉庫の連なる「倉庫区」
・艦娘の出撃や、訓練・演習の行える施設、防空施設が配備されている「港区」
と、大まかな紹介があった。これらはそう低くない壁や鉄線に囲まれており、一般人の侵入は容易には出来ないようになっている様子である。そうか、軍事機密とか色々あるんだろうな、とか軽く考えていると
「それで、どうしますか司令官さん?」
そうだった、今は彼女に案内される身なのであった。しばし考えた後、まずは自分が利用するであろう場所から周っていくことにする。
「そうだな、まずはこの工廠棟からお願いできるか?」
「了解、なのです!」
気合いの入った敬礼で答えた電は、今にもスキップしだしそうな様子で工廠棟へと歩を進め始めた。なんだか機嫌が良いな?待ちわびた提督がやっと着任したからだろうか?鎮守府内を案内してくれる、と言ってきてくれたあたりからやけにテンションが高い気がする。そんな彼女を見ていると、自分の頬が緩んでしまうのを感じた。
☆
「ここが、工廠棟なのです!」
「ほえー……」
一際大きな建物である工廠棟に入った俺は、見たことのない機器が並んでいるのを見て、感嘆の声を上げた。実際何に使うのかわからないが、元の世界の番組などで見た工場とは比べ物にならないほどの密度である。が、全く人がいる気配がない。ここの運用は誰がするのだろう。
「なあ、電、この施設は誰が運用するんだ?」
「そうですね、今この鎮守府には工作艦である明石さんはいませんから……」
そう言って、電は工廠の奥の方を向かって手招きした。すると、何か小さい物……人型の何かがワラワラとこちらに向かって来るのがわかった。その光景に圧倒されていると、彼女は屈んでそれらをいくつか両手で掬い上げる様にこちらに見せてくれた。
「こちらの妖精さんたちが、工廠の仕事をこなしてくれます!」
妖精さん。『艦隊これくしょん』で艦娘の艤装に乗っていたり、また艦娘の建造の時に作業していたが、まさか工廠全ての仕事を担っているとは。容姿はみなそれぞれ、艦娘をとても小さくしたような娘達で、とてもかわいらしい。若干、衰退しちゃった小説を思い出したが、張り付いたような顔ではなかった。
「妖精さんは、電たちの理解の及ばない技術を身に着けているんです。電より小さいのにとてもすごいんですよ!」
電の手に乗った妖精たちは、どや顔で胸を張っている者、電に対して抗議の意を表している者、急に高い所まで持ち上げられたために怖がっている者、と三者三様である。多分、小さいと言われたのが気に食わなかったのだろう。言葉は発してはくれないが、こちらの言葉を解している様子である。しかし、超技術を持った生命体か……にわかには信じがたいが、この子らの自身に満ちた顔を見るに、俺たちの期待以上の働きをしてくれるのではないか、そう思わずにはいられない。
「俺は、今日付けで能登鎮守府に配属になった提督だ。これからよろしく頼むよ。」
敬礼しつつ挨拶すると、妖精さんはみなシャキッとした姿勢で敬礼を返してくれる。……まだ高所で腰の引けている子もいたが、床にいる子たちも返礼してくれた。やはりしっかりとした高等生命体なのだろう。この妖精さんならば、元の世界に帰る鍵を握っているかもしれない。仲良くなっておいて、損はない。ここはこちらから歩み寄っておくのがいいだろう。
「電、妖精さんの好きな物ってわかるか?」
「好きな物ですか?機械をいじったりするのが好きみたいですが、基本的に甘いものには目がないのです。」
妖精さんは全員一致でうんうんと頷く。こいつら可愛いな。甘いものか、よし、今度大量に金平糖あたりを買ってこよう。……この世界で無事に手に入ったらだが。そもそもこの世界のことを何も理解していないため、人々の生活事情もわからない。下手したら生活資源も手に入れることが難しいかもしれない。ダメだ、今考えても仕方のないことだ。あとで電に聞いてみることにしよう。
「では次は建造ドックの紹介しますね。」
電は掌に乗っけていた妖精さんたちを床の上に降ろすと、手を振って別れを告げる。俺は建造ドックに向かう彼女の後へと付いていった。
☆
俺たちは、カプセルのようなものが二つ置いてあるエリアに着いた。このカプセルで艦娘の建造を行うのだろうか、なんだか近未来的だ。いや、今更か。
「こちらが建造ドックになります。」
「このカプセルで艦娘を建造するのか?」
「はいなのです。こちらにいる妖精さんたちに使用しても良い資源の量を書いた書類を渡すことで、艦娘の建造に取り掛かってくれます。ちなみに、装備の開発は工廠にいる妖精さんなら同じような工程で、誰にでも頼むことができます。」
良く見ると、ドックの隅々に寝っころがったりじゃれ合っている妖精さんたちが見えた。ゲームとほぼ同じなのか、それは楽でいいな。……ちょっと待て、引っかかる言い方したな。
「……使用しても良い量?」
「……勘のいい司令官さんは嫌いなのです。」
俯いてそう呟いた電の顔はよく見えなかったが、これ以上踏み込むと俺の命運は尽きてしまうのだろう。余計な詮索はしないことにしておく。この世には知らなくて良いこともある、どちらの世界も真理は一緒なんだな。……寒くなってきたな、体が冷えてきたようだ。
「さて、気を取り直して、司令官さん。」
「な、なんでしょう!?」
思わず声が上ずってしまったが、微笑んだ電は構わず続ける。
「今、能登鎮守府に艦娘は電しかいないのです。ここでひとつ、戦力増強を図って建造してみてはいかがでしょう?」
そうか、言ってしまえば俺は今、『艦隊これくしょん』を始めたばかりの提督と同じ立場なのだ。まずは建造して艦娘をそろえていくのが定石だろう。
「わかった、そうするよ。」
「了解しました!各資源はどれくらい使用しますか?」
「まだ資源も潤ってないだろうし、最低値でお願いできるか?」
「わかりました!では、こちらに使用量の記入と、司令官さんのサインをお願いするのです!」
そう言って電はドックのデスクに置いてあった書類を示してくれる。
「こちらに記入用の書類は置いてあるので、建造の際はこちらを利用してくださいね。」
近くにあったボールペンを持ち、必要事項を記入していく。最低値って30で良かったっけ?と思いつつサインを終わらせると、近くにいた妖精さんが物欲しそうな顔をしていたため、書類を渡しておいた。すると、その妖精さんは書類を掲げながらドックの奥の方へと嬉しそうに走って行った。
「これで建造の申請が完了なのです。建造時間は艦娘によってまちまちなのですが、最低値で頼んだのでそこまで時間はかからないと思うのです。妖精さんは気まぐれなので、資源の量と機嫌によって建造結果が決まるらしいのですが……電は良くわかってないのです。」
わかる。『艦隊これくしょん』でも何度泣かされたことか……。しかし、建造完了の時間がわからないのはやきもきするな。
「あ、あと言い忘れていましたが、建造の時間を短縮するバーナーの使用許可も先の書類に記載されているので、お急ぎの際はチェックをお願いするのです!」
おいおい、それは先に言うものではないだろうか。書類に記入するときには気付いていたが、言われてなかったため、チェックは付けなかった。だって下手なことしたら怖いんだもん、この娘……。
「それでは、最後に入渠ドックの紹介をしますね。」
そう言って電は工廠棟入り口へと向かっていく。どうやら建造ドックとは反対側に位置しているようだ。俺はまた電の後を付いていった。
☆
「ここが艦娘が入渠するための施設なのです。」
脱衣所を抜けるとそこには、カポーンといった効果音が聞こえてきそうな立派な銭湯があり、いくつかの浴槽にはお湯が張ってある。
「こちらには艦娘の傷を癒す成分が含まれていて、どんなに傷ついた艦娘も、入れば疲れもどこかに飛んで行ってしまうのです!」
電の大げさなジェスチャーに癒されながら、話を聞いていく。
「大きな傷を負ってしまうと回復に時間がかかってしまうのですが、遠征などで手に入る高速修復材というものをお湯に使うと、艦娘の傷はたちまち全回復してしまうのです!」
ゲームではお世話になった高速修復材だが、そんな使用法だったとは。中身を被ったり飲んだり……いや飲むのはなんか見たくないなあ。
「ちなみに艤装の修理や入渠施設の準備にも資源を使用しますので、そこは注意が必要なのです。」
使用した資源の量は、工廠棟の妖精さんが書類として提出してくれるらしい。律儀で偉いと思うのだが、その中に横領された資源は……いや何も言うまい。俺も命は惜しい。
「一応男性禁制では無いのですが、艦娘が利用しているときは……」
「いやいや、しないからね!?」
電には俺がそんな人間に見えたのだろうか。そりゃあ、そういうことに興味が無いわけではないが、俺も男として云々。
「なら、安心なのです。艦娘は結構デリケートなのです。」
電はそんなことなさそうに見えるけどなあ。なんて言うわけにもいかないので頷いておく。仮にもさっきは泣かせそうになったのだ。精神的にはまだ幼い少女のソレなのだろう、これから気を付けることにしよう。
「それでは、この工廠棟の紹介は終わりなのです。なにか質問とかはありますか?」
「いや、無いよ、ありがとう。」
後々になってわからないことは出て来るだろうが、今のところ施設の使い方は理解した。もっとも、疑問はあるが、妖精さんとは今後仲良くしていきたい。電にも嫌われたくはないので、ここは好奇心をグッとこらえる。
「では、次は本棟と工廠棟の間にある居住区の紹介に行きますね。」
「わかった、お願いするよ。」
艦娘の生活の場か、どんなところだろうか。俺は想像を巡らせながら、電と一緒に工廠棟入り口に向かっていった。
能登鎮守府、略してのとちん
大体提督さんはしゃべってないときは妖精さんに構ってあげたり、電の説明に相槌打ってます。
長くなりそうなので前後編分けます。一話何文字くらいが良いのでしょうか。話が一向に進みません(汗
的外れな設定があったら指摘してもらえるとありがたいです。