Re:SAO   作:でぃあ

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ご感想、誤字報告いつもありがとうございます。今後もよろしくお願いします。

遅くなりまして申し訳ない。

前回出たキリトの武器名はリネージュから引っ張ってきました。
今後も色んなゲームから武器名引っ張ってくる予定。

第二層攻略会議~スキル説明まで





第十七話

 休憩を終え、ポーションと食糧の補充を終えたキリトとアスナは、主街区で受けることができるクエストをことごとく受注し、その消化と共に主街区周辺での狩りを行っていた。

 

 キリトのレベルは15、アスナは13であり、共にこの層の適正レベルを超えてはいるものの、クエストの経験値やコルを加味すれば十分な旨みがある。クエストの消化だけでもレベリングは可能であるが、やはり戦闘が重視されるこのゲームでは狩りの重要性は極めて高い。

 

 同じレベルでも、クエストをメインにあげたレベルと狩りをメインに上げたレベルでは実戦経験に大きく差が出る。最前線に立つ二人にとって、実戦経験を積むためにも狩り重視のレベリングになるのは必然であった。

 実戦経験――プレイヤースキルとも呼ばれるそれは多くのオンラインゲームで重要なものであるが、このソードアート・オンラインという自らの身体を動かすゲームにおいては、プレイヤースキルの有無が生死に直結する。危険を感じとる感性、咄嗟の判断力などはどうしても実戦においてしか鍛えることができないのだから。

 

 受注したクエストは七つ。その全てを四時間ほどかけて達成した二人は主街区で報告を行う。モンスター討伐の経験値とクエストの報酬によって、キリトはレベル16に、アスナはなんと15と二つレベルを上げることができた。

 

 その後、会議の時間まで酒場で軽い祝杯を上げたのち、二人は会議場所である主街区広場に向かう。時刻は午後十七時十分前。すでに多くの見知ったプレイヤーが集まっており、知り合いの一通り声をかけた二人は、定位置である会議場の端にそろって腰掛けた。

 

 壇上にはいつもの二人が上がっており、会議の開始と共にギルドの正式結成の報告、メンバーの紹介、加入条件の発表などが行われた。そして、発行されたアルゴの情報本を元に次の街へは明日の夕方までに、この階層を六日後の十二月二十一日までに突破するという目標が掲げられた。

 

 迷宮区への道もまだ開拓できていないのに随分と立派な目標を掲げたものだと思ったが、第二層を十日で突破したのだ。第三層もペース良く突破して、勢いをつけたいということなのだろう。ギルドに入っていない者たちにも目標と期限を提示し、それに合わせるように動けと言ったところだろうか。

 

「攻略自体の具体的な内容は無しか……狩りでもしてた方が有意義だったかしら」

 

「まあ、想定の範囲だったってことで」

 

 正直に言えば、日程に関しては後々アルゴから聞くだけでもいい。だが、攻略会議に参加することで自分たちはボス戦に参加しますよと言う意思表示にもなる。無意味ということはないだろう。

 

 リーダーのリンドが会議の終了を告げると、広場に喧騒が戻る。

 そしてキリト達も広場から出るためと立ち上がろうとしたとき、前からかけられた声に足を止めた。

 

「キリトさん、アスナさん、少しいいだろうか。話したいことがあるんだが」

 

 声をかけてきたのはリンド、その横にはキバオウが立っている。DKBとALSのリーダー直々の声かけとは珍しい。

 

「ああ、大丈夫だけど……アスナもいいか?」

 

 左側にいたアスナが頷く。それを確認したリンドが、言葉を続けた。

 

「実はギルドに関しての話があるんだ。その……君たち二人はDKBかALS、どちらかのギルドに加入するつもりはあるだろうか?」

 

 リンドの言葉に、キリトはなぜこの場が持たれたかを理解した。

 キリトの予想通り、どうやら勢力争いのようなものが起きているのだろう。そして、それをこの二人は良く思っていないということだ。

 

「あー、なるほど。俺は一応、当分はギルドに加入する予定はないけど……」 

 

「……わたしも。彼とコンビを組んでいるから、ギルドに入る予定はないわね」

 

 キリトとアスナの言葉に、リンドが安堵の溜息をつく。その横でキバオウがやれやれといった顔をしているのを見て、どうやらその亀裂は結構深いものなのだろうとキリトは想像した。

 

「……やっぱり、あんま仲良くないのか? DKBとALS」

 

「気づいとったんか、キリトはん。……あんたの言う通りや。バラバラになるのを防ぐために二つに分けたつもりが、逆に溝を深くしてもうた。全く、面倒なことや」

 

「どちらが攻略隊を引っ張っていくかで結構ね……。適度な競争ならいいんだが、足の引っ張り合いになったら目も当てられない。まあ、君たちにした質問もそれが理由なんだが……」

 

 リンドがそこで一旦言葉を切り、済まなそうな表情で続ける。

 

「君たちがギルドに加入する場合、二人を別々に……一人をALS、もう一人をDKBにというのをお願いするつもりだったんだ。君たち二人の実力は攻略隊内でも突出しているし、二人とも同じギルドに入ってしまうと勢力の均衡が崩れかねない」

 

「コンビだからなぁ。このゲームは少人数の方がどうしても経験値効率は良くなるし……。まあ、安心してくれ。ギルドってのはあんまり得意じゃなくてさ、当分入るつもりはないよ」

 

 キリトの言葉を聞いて、リンドはキバオウに目線をやり、キバオウが頷いたのを見てから自身も頷いた。

 

「わかった。これからも迷惑をかけると思うが、よろしく頼むよ。もし君たちがギルドを作ることがあれば言ってくれ、その時は力になろう。第三勢力ができるのは、現状では望ましいからな」

 

 ではこれで、とリンドが軽く頭を下げ、キバオウと共に各々のギルドメンバーの元に戻っていった。

 

「随分と丁寧だったわね、あの二人」

 

「そうだな。まあ、向こうがああいう態度で接してくれるなら、こっちだって協力はやぶさかじゃないさ。攻略組の分裂だけは、絶対に避けなきゃならないしな」

 

「うん。現段階で、攻略組の主流は彼らだもの。彼ら抜きでのボス攻略は現実的でない以上、ある程度は気を使う必要はあるでしょうね」

 

 DKBとALS二つのギルドで、合計三十六名をボス攻略に投入する。ブレイブスが第二層で脱落した以上、それ以外のプレイヤーはキリトとアスナ、そしてエギル達の六名しかいない。現段階でのボス攻略は完全に二大ギルドに依存しているのが実情だ。

 

 フィールドボスや迷宮区の攻略は彼らがメインになって行う。ならば、その脇道となるストーリークエストのような大規模なクエストは間違いなく手薄になる。キリトがエルフクエを優先して進めている理由は、大ギルドと狩場やクエスト攻略でバッティングしないというのが理由の一つだった。

 

 攻略会議が終わり補給やクエスト消化も済んでいる以上、もはや主街区に用はない。

 キリトはアスナを伴い広場を後にした。目標はダークエルフ野営地。攻略隊が動き出したならば、キリト達も急がねばならないのだ。第三層に存在するストーリークエスト全十章の内、まだ第二章までしか攻略していないのだから。

 

 

 

 野営地でキズメルを再びパーティーに迎えたキリト達は、死んだ偵察兵への供物を集める第三章<<手向けの花>>、偵察兵の救助を行う第四章<<緊急指令>>、救助した偽物の偵察兵を排除する第五章<<消えた兵士>>の攻略を行い、同時進行で主街区の残りのクエストを終わらせるべく森でモンスターを狩り続ける等、非常に慌ただしい日々を送っていた。

 

 そのおかげでキリトは17、アスナは16とレベルがしっかり上がったが、この第三層ではこれが限界だ。特にキリトに至っては、フィールドのモンスターを相手にすると適正レベルで倒した時に得る経験値の半分程度しか得ることが出来なくなっている。クエストを絡めない限りレベルアップは難しいだろう。

 

 そうして戦力面をしっかりと充実させたキリトとアスナは、本日行われたフィールドボス攻略戦を危なげなく終え、野営地で一時の休息を取っていた。

 アスナの精神攻撃をしっかりと耐え抜き、食事をとった二人は身体を休めるためキズメルの天幕に足を向けた。どうやらキズメル自身は何がしかの用で留守にしているようだが、事前に留守の時でも使ってよいと許可をもらっていたため、部屋着に着替えた二人は遠慮なく毛皮の上に腰を下ろした。

 

 第六章の<<潜入>>はその名の通り潜入クエストだ。ベータテストでは<<隠蔽>>スキルを持ったプレイヤーが一人で森エルフのキャンプに潜入し、クリア条件の<<命令書>>を奪取すると言うのが基本の攻略法だ。だから日が落ちるまで一時休憩して、その頃には戻ってくるであろうキズメルと合流してからクエストを進行させる旨をアスナに伝える。

 

「一人で潜入って、流石に危険すぎない? テストとは違うんだし、一緒に行った方が……」

 

「うーん、確かにその危険はあるんだが……。アスナは<<隠蔽>>持ってないだろ? そうなると、逆に見つかる危険上がりそうだしなぁ」

 

「……そうよね。ごめんなさい」

 

 申し訳なさそうに謝るアスナに、気にしないでくれと告げる。

 キリトはソロで動くことを前提としているスキル編成のため、こういった潜入ミッションが苦手ではないのだ。一方アスナは一般的な戦闘職のスキル構成だ。<<片手用細剣>>、<<体術>>、そして恐らく<<疾走>>。高速戦闘を旨とするアスナにとってはどれも相性のいいスキルだろう。これで<<軽業>>を取ってしまえば、攻撃面では万全な動きができるはずだ。

 

 しかし、隣に腰掛けている細剣使い(フェンサー)の少女は、暇な時間を見つけては糸と針を取り出してチクチクと布を縫っている。何処からどう見ても生産スキルの<<裁縫>>であり、戦闘職の彼女に必要なものとは思えなかった。他人のスキルへの口出しはタブーだが、何故彼女が<<裁縫>>を取ったのか正直気になる。

 

 今も会話が少し止まったため、第二層で確保した牛の皮を加工している。作っている物は恐らくグローブか何かであろうか。目は真剣だが、楽しそうに手を動かしているアスナを見て、キリトは疑問に思ったことを口に出してみた。

 

「なあアスナ。楽しそうにしてるけど、なんでまた<<裁縫>>なんだ?」

 

 キリトの言葉に手を止めたアスナは、顎に指を当てしばし考えてから答えた。

 

「第二層って布系の素材がいっぱい取れたじゃない? だから、なんとなく……かな? 意外と楽しいし、普段着る服程度なら熟練度低くても作れたし、やっぱり服はいろいろと持っておきたいから」

 

 アスナの言葉になるほどと、キリトは頷いた。

 キリトの普段着など一着しかないし、下着もバラン将軍のラストアタックボーナスで獲得したトランクスと、別に二枚程度しかもっていない。しかし、やはり女性プレイヤーは着る物に気を使うのだろう。素材を狩りで得ることができるのならば、自分で作ったほうが安上がりだし、好きなものを作れていいのかもしれない。

 

 今度自分の着る物も作ってもらうかとキリトは考えたが、その考えはアスナの次の言葉にバッサリと切られた。

 

「あ、そうだキリト君。相談があるんだけど、<<裁縫>>の代わりに何かスキル取るとしたら何がいいかな?」

 

「え? <<裁縫>>切るの?」

 

「ううん。実はね、こんなものがあるの」

 

 アスナはそう言って、アイテムストレージから小さい小瓶を取り出した。

 <<カレス・オーの水晶瓶>>と名付けられたその瓶には少しだけ液体が入っており、「説明文読んでみて」とのアスナの言葉に瓶をタップし、説明ウィンドウを表示させる。

 そこには、<<この瓶には、スキルスロットに設定中の各種スキルの熟練度を保存することができます>>と書かれていた。

 

「は?」

 

 キリトは絶句した。

 レアアイテムなんてレベルのものではない。このゲームの根幹を崩しかねないアイテムだ。

 現在のキリトとアスナのスキルスロットは四つ。つまり、スキルを同時に四つまでしか育成することができないのだ。スキルスロットはレベル20になれば一つ増え、あとは10上がるごとに一個ずつ増えていく。しかし、このアイテムがあれば常に設定しておくことができないデメリットはあれど、育成するスキルを実質一つ増やせるということになる。

 

 キリトの驚きの顔が余程面白かったのか、アスナはくすくすと笑っている。

 彼女曰く、気づいたらストレージの中にあった。場所からして、キズメルと倒した森エルフからのドロップだろうとのことだ。

 

「とりあえず今は<<索敵>>を入れてるんだけど、なんか上がりにくいのよね。それに効果もいまいち実感できないし……。だから、何がいいか聞いてみようと思って」

 

 なるほどと、キリトは腕を組んだ。

 確かに今の状況では、アスナの<<索敵>>は上がりくいだろう。すぐ側にそれ以上に高い<<索敵>>を持つキリトがいるのだから。将来的に取っても良いスキルだが、優先度はそこまで高くないのは間違いない。

 ならばと、キリトはいくつかの選択肢を口にする。

 

「<<疾走>>は恐らく取ってるだろうから、攻撃面なら<<軽業>>、防御面なら防具系のスキルかなぁ。<<武器防御>>や<<戦闘時回復>>も優先度は高め。あとは、それこそさっき話題になった<<隠蔽>>も選択肢に入ってくるだろうな」

 

「……結構多いのね、おすすめのスキル。あと良く分かったわね、<<疾走>>取ってるって」

 

「まあベータの経験でな。今挙げた中でもお勧めなのは、防具系と<<武器防御>>。どちらも即座に効果が出るからね。他のやつはどうしても効果を実感するまでに時間がかかるし。育成のために早めに取っておきたいけど、やっぱ序盤は効果優先になるかなぁ」

 

「うーん、なるほどなぁ……」

 

 悩ましいのか、アスナがキリトと同じように腕を組み、左手を顎に当てて考え込んでいる。

 必然、アスナのとある部分が強調されるためキリトはそこに視線を奪われることになったが、アスナは目を閉じて考えているため気づかれることはなかった。

 

「ねぇ、キリト君は次何を取るの?」

 

「俺? 俺は<<武器防御>>かな。防具はこのまま皮装備で行く予定だから、その次は<<戦闘時回復>>、<<疾走>>と続けようとは思ってる」

 

「そうよね、正直防御系欲しいわよね……。あまり重い防具は装備したくないけど、布装備なんて紙みたいなものだし……」

 

「<<軽金属装備>>取って胴体とか靴だけ装備するってのも悪くないかもな。やっぱ、ある程度防御力あると戦闘安定するしなぁ」

 

「そうね……<<軽金属装備>>取ろうかしら。正直防御低すぎて不安だったってのはあるから……」

 

 アスナの気持ちは痛いほど理解できる。

 キリトもアスナも敵の攻撃を回避しながら戦うスタイルだ。しかし、どうしても回避できない状況に陥る可能性もあるのだ。少なくても、敵の強撃で一時行動不能(スタン)まではもっていかれない程度の防御力は確保しておきたい。

 

「じゃあ、お勧めは<<ブレストプレート>>だな。重すぎず、(やわ)すぎず、第一層からの売ってる防具だけど、この階層なら鉄板の装備に間違いない。もし靴とか腕とかも装備するなら……確か、第四層にそこそこいい装備がNPC売りされてたはずだよ」

 

「じゃあそれまではドロップの皮装備だね……。ありがとうキリト君、相談に乗ってくれて」

 

「いやいや、お役に立てたなら何よりさ」

 

 持っている知識も役に立てなければ宝の持ち腐れだ。特にスキルの話などは会話に上る機会がほとんど無い。ベータテスターによる情報提供はされているものの、スキル構成が生死に関わる情報である以上、どうしても無駄になってしまいがちだ。ならば、せっかく聞いてきてくれたのだから遠慮なく知識を使わせてもらうのが一番だろう。

 

 そして、知識と言う面でこの件に関しては重要なことが一つある。

 

「アスナ。その水晶瓶だけど、俺以外に誰かに話した?」

 

 アスナが首を横に振る。それを見て、よかったとキリトは一息吐いた。

 

「アスナ、その水晶瓶はあまりにも強力過ぎる。極めて有用な情報だし、隠し続ける必要はない。けど情報を流せばその発信元が君ということに気付く人間が出てくるかもしれないし、トラブルの原因にもなりかねない。だから、君の安全を考えてアルゴに伝えるのは少し待った方がいいと思う」

 

「……わたしの安全のため?」

 

 キリトは頷く。

 この世界には、プレイヤーが持っているアイテムを無理矢理奪い取る<<手段>>がある。対人戦の練習を積んでいない今、彼女をそのような事態に巻き込むことは極力避けねばならないだろう。

 

 アスナはじっとこちらを見ている。そして、しばらくして視線を逸らし、口元を動かした。

 

「君が言うなら、そうするわ」

 

 納得してもらえたことに、キリトは安堵する。

 しかし、アスナは何故か俯いており、その表情を窺うことはできなかった。

 

「……ごめんなさい。君に頼ってばかりね、わたし」

 

 アスナはその体勢のまま、謝罪を口にする。

 相変わらずその表情を窺うことはできないが、少なくとも笑顔ではないのだろう。どのような意図で彼女がこの謝罪を口にしたのかはわからないが、少なくとも謝罪を受ける(いわ)れをキリトは持っていなかった。

 

「君が謝るようなことはなかったと思うんだけど……」

 

 キリトの言葉に、アスナは首を振った。

 

「ううん。キリト君にいろんなことを教えてもらってるけど、わたしが代わりに何かを教えられたことなんてないもの。ホント、頼ってばっかり」

 

 ベータテスターとしての知識を持っている以上、ビギナーである彼女より知識量が上なのは事実だ。教えるという点では、キリトがアスナに教えるというのが基本になるだろう。その逆というのは、現状よほどのことがない限りないだろうし、またキリトもそれを求めていない。

 

「うーん。むしろ知識があるからこその落とし穴ってあるからさ、そういう点に気付いてもらえてるから、逆に助かってるんだけど……」

 

「そう……なのかな?」 

 

 キリトは頷く。

 知らないからこそ、客観的に見ることができるのだ。思い込みによって起きた事故で死んだベータテスターは多い。当然キリトにとっても、そういった事故は今後起こり得ることだ。だからこそ、キリトの横にいてくれる彼女の存在は貴重だった。

 

「少なくとも俺は、アスナが謝る程頼りっぱなしになっているとは思えない。むしろ、こっちが頼りすぎてるんじゃないかって思うくらいだ。それに、その、結構理想的なんだ、今の状況って」

 

「理想的?」

 

「ああ。すごく効率的って言えばいいのかな。クエストも狩りもソロじゃ比べ物にならないペースで消化できてるし、戦闘も安定してる。それは君がいるからで、俺一人じゃもっと大変だったと思う。だから、謝らないでほしい。むしろ、感謝しなさいぐらい言ってもいいと思うよ」

 

 コンビで狩りを行えば、簡単に考えて経験値やコルは二分される。しかし、アスナと狩りは間違いなく、キリトがソロで狩る時の二倍以上の効率があった。今のキリトにとって、戦闘やレベリングと言う面において彼女とのコンビを解散してソロで動くメリットは皆無だ。キリトはアスナと組むことで、間違いなく大きなメリットを得ている。だからこそ、彼女に謝ってほしくはなかった。

 

「そっか……。ごめんなさい、君の足を引っ張ってるんじゃないかって、ちょっと不安になってたの。ありがとね、話聞いてくれて」

 

「気にしなくていいよ。俺だって不安になることがある。でも、隣に誰かいればその不安を話すこともできるからさ」

 

「そうだね。やっぱり、聞いてもらえると楽になるもんね」

 

 この世界で気軽に話すことができる相手というのは得難い。信頼できる相手ならばなおさらだ。

 こちらを向いたアスナの表情に硬さはない。

 

「じゃあ、今度キリト君が不安になったら、わたしに話してね?」

 

「ああ、その時は遠慮なく話させてもらうさ。……頼りにしてるよ、アスナ」

 

「うん」

 

 右こぶしをコツンと合わせる。

 同時に、アスナに笑顔が戻る。キリトも自分が笑顔になってることを自覚した。

 常にこうして笑い合えるわけではない。不安になることもあるだろうし、動揺するときだってあるだろう。しかし、彼女が隣にいればきっとまた笑うことができるはずだと、キリトは感じていた。




アスナの軽金属装備はいつ取らせるか非常に迷いました。SAOP原作では第一層から取っているんですが、漫画版では取ってないんですよね……。

結局体術使わせるために、軽金属装備はここで取得することに。

アスナに索敵取らせたいけど、取らせるタイミングがなくて迷ってる今日この頃。


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