組曲涼宮ハルヒって2007年なの……
ピッ……ピッ……ピッ……
と、目覚ましの音で僕は意識を取り戻した。ええっと? SOS団の部室で大人版みくるちゃんに会って、有希ちゃんのパンツが見えそうで見えなかったような記憶を最後にプツリと意識が途絶えた覚えはあるけれど。こんな心電図みたいな音をアラームに設定していたっけ?
てっきり有希ちゃんかみくるちゃんの膝枕で目覚めたのかと期待したものの、頬に太ももの柔らかさや体温なんかは感じる事もなく、仰向けの姿勢で硬めのマットレスみたいな感触が背中に。
見慣れない天井……どころか、光を微塵も感じられない。目隠しなんて物理的なものでは無く、僕の目蓋は開いているのに視界は真っ暗闇。部屋そのものに光源が無いのか、はたまた僕の視力を薬か、外科的な処置で奪ったのか。これが誘拐だとしたら、そんじょそこらのスパイ映画よりも徹底しているね。人間は視覚から得る情報が8割だというし。
「……目が覚めましたか?」
状況整理に忙しい僕の耳に、唐突に低めの女性の声。変声機を使用したような違和感がある無機質な音声。人の声を加工しているのか、あるいは機械で一から作成したのかは判断がつかない。なんだか、スピーカーから響いているような聞こえ方がする。
目が覚めたから声をかけてきたんじゃないのかい? なんて、野暮な事は言わないでおくよ。うん。てことはこれはアラームの音なんかじゃなく、紛れも無く僕の心電図の音なのかもね。四肢も拘束されているみたいで、なんなら指の関節一つ動かないな。瞬神夜一と砕蜂隊長に【筋一本でも動かせば、即座に首を刎ねる】って拘束された藍染隊長はこんな気分だったのかな? または、キラだと疑われてLに拘束されたミサミサ的な?
『お約束だから聞いておくけれど、ここはどこで、今はいつだい?』
口は動かせて、声も出せた。それは逆に、僕がどれだけ大きな声で助けを呼ぼうと誰にも届かない証明でもある。
「……申し訳ありませんが、その質問には答えられません」
『だと思ったぜ。で? ついでに聞いておくと、僕はいつ自由にしてもらえるのかな。これは、人権侵害というのも烏滸がましいんじゃない?』
何が目的かはわからないけれど、僕の自由を奪いたいとして。ここまでするのなら、いっそ殺しちゃった方が早いよね。そうしないってことは、命まではとられないと安堵しちゃっていいんだろうか。
「最初に伝えておきます。貴方はもう、自由に出歩く事は出来ません。そこで一生を終えてもらいます」
ある意味、終身刑みたいな返答をされてしまう。
『ふーん? そう。じゃあ君は誰かな? 場所も時間も教えてくれないあたり、君の正体も内緒ってわけ?』
「……貴方は! 自分が一生そこから出られないと言われて、動揺などは無いのですか!?」
いきなり取り乱す会話相手。
よくわからないけれど、僕の脳波やらも測定しているのかい? こちらが微塵もショックを受けていないのは、この機械音声の主に筒抜けみたい。
ただ。
『質問を質問で返すなあーっ!! 疑問文には疑問文で答えろと学校で教えているのか? 僕が君は誰と聞いているんだッ!』
僕は柄にもなく険しい顔で声の主を怒鳴った。誘拐犯に常識を期待するのもどうかとは思うけれど、一生をここで終えるらしい僕に免じて、正体ぐらいは教えてくれてもいいじゃないかっ!
「ぇ……!? あの、当然あたしの正体も禁則事項なんです。……貴方に教えられることは、実は殆ど無くて……」
ここでようやく、話し相手は人間らしく言い淀んでくれた。生々しい反応から、どうやらAIでは無かったみたい。はははっ、ごめんごめん。僕が突然怒ったことでビックリさせちゃったかな? それとも、さては大激怒した僕の脳波が、寝起と全く変化していなかったから表情や声との齟齬に驚いたとでも言うつもりかい。
何にしても、質問を質問で返した君が悪いのだから、それは自業自得ってやつだよ。
部屋が真っ暗であれば僕の怒った表情も相手には見えないだろうから、やっぱり僕が失明してる説が濃厚かもしれない。
それはそれとしても、今聞き捨てならない単語が耳に入ったな。
『禁則事項、ときたね』
最近耳にした四字熟語。なんとなーくネタがわかってきたぞ! なんなら、僕をこんな目に合わせている犯人の正体も。
『おおよそ、君が何者で、【ここがいつ】で、どこなのかわかってしまったけれど……それならそれで! もう少し君との会話を楽しもぉーっと!』
「あ……改めて質問しても良いですか? どうして貴方は四肢の自由を奪われ、目が見えない状況なのに平然としていられるの? 普通は、取り乱したりする筈では」
『ん? さっき怒られたのに、めげずに聞いてくるあたり相当気になったみたいだね! まあ、端的に言うと。……意識を失う直前、有希ちゃんのパンツが見えそうで見えなかったショックのほうが大きいからかなっ』
ここで死ぬとしたら、それだけが心残りとも言えるよ。もちろん、有希ちゃんのスカートの中身が見えなかった事自体も惜しいのだけれど。僕の忠告を受けた情報統合思念体が、一体どのようなパンツを有希ちゃんに履かせたのか。遥か宇宙に存在する概念と、有希ちゃんのパンツを通じて意思の疎通が出来るチャンスを逃してしまっただなんて。ある種、文通でやり取りするような喜びがあったかもしれないというのに。選んだパンツの種類や色で、情報統合思念体のレベルも推し量れただろうし。
「長門さんのパンツ……!? そんなことが、今の状況より優先されるっていうの?」
『おいおい。宇宙人のみならず、未来人にもパンツの尊さを教えてあげなくちゃいけないのかい?』
がっかりだ。
僕はどうにも、全世界の人間にパンツの素晴らしさを布教できる事なく生涯を終えてしまったらしい。未来人がパンツを軽んじたのは、これもまた、監禁されるより辛い。いや! 高校生の僕がここで監禁されてしまい、布教の機会を奪われたと考えるべきかな? それなら辻褄が合う。伊達に未来は見てねぇぜっ! ってところかい。
「未来人って、どうして!? あたしは何も……」
『いやいや。流石にあの流れでこうなってて君が未来人じゃ無いほうが驚いちゃうって。短い会話からの印象だけれど、なんか君、あんまり頭が良くなさそうだねっ!』
「なんてことを言うんですか!」
『やっぱり未来では、人間では無くAIが意思決定を代替していたりするのかな? 大規模言語モデルが進化していったりさ。だとすると、未来人の何割かは退化していて実は頭が悪いって言われても納得できたりするけれど!』
どのくらい未来なのか、そこまではわからない。ただ、僕がこうなっちゃっているのは、きっとみくるちゃんが関係しているはずだぜ。この状況から判断するに彼女はツアーコンダクター失格だな。未来に連れてきてくれたのは良いとしても、禁則事項で何も見せられませんでは、ここが未来なのかもわからない。その辺の適当な倉庫とかだって良くなってしまうからね。
「……とにかく。話を戻します」
反論が浮かばなかったのか、反論さえ禁則事項なのか。会話相手は強引に軌道修正してきた。
『僕はここで縛られたまま、暗闇の中一生過ごすんだよね? それはどうだっていいんだけど、どうしてそうなっちゃうのかぐらいは教えてよ』
「それは貴方が……! いえ。【貴方】に言っても仕方がないことでしたね。それでも、貴方に責任があると言うしかないんですけど……」
……なーんか1人でブツブツ言ってるし、やっぱこの人はどこかおかしいみたい!
「良いですか? この会話は全て記録されています。貴方にとっても、不用意な発言はマイナスにしかなりません。あまり軽口を叩くのは控えたほうが身のためですよ」
とはいえ僕の様子は、やはりというかなんというか、複数人にモニターされているんだね。まるで凶悪犯だよ。
「まるで、では無くあたし達からしたら事実そうなんですが……。ともあれ球磨川禊さん、ここから本題です。今、貴方には選択肢が二つあります」
これはまた、お馴染みのパターンだな。
『一つはこのまま拘束されて過ごす、だよね? 勿体ぶらず、もう一つを言ってくれよ』
大抵は、次の選択肢はもうちょっとマシなはずだけれど。あ! これは禊調べね。あらゆる漫画、アニメ、ゲーム、映画では大体2個目を主人公は選択しがちなのさ。まあ、当然悪い可能性だってあるけれど。
「察しが良くて助かります。もう一つは、貴方の記憶を全て消去した上で、別人の記憶を植え付けられてから普通の暮らしに戻ってもらうといったものです」
おいおい、早速禊調べに疑問を抱かせる展開はやめてくれよ。一番目の選択肢より悪化しているじゃないかっ!
『それを【普通の暮らし】と表現してしまうだなんて、未来人はかなりぶっ飛んでるね』
記憶を消されて偽の記憶を植え付けられたら、そんなのは別人だろうっていうのが僕の考えだ。めだかちゃんのことも安心院さんのことも忘れ、【
もしかしてもしかすると、鶴屋さんの前で未来の話をしちゃったから怒ってたりするかい?
「もしも記憶の消去に同意してくれるなら、何故そうしなくてはいけないのかを多少は説明できます。教えたところで、すぐに忘れてもらいますから」
記憶を消す前提ならば、禁則事項も多少は言えるってわけだね。……過去人? の僕が言うのもアレだけれど、そんなにユルユルで大丈夫かい?
そっちが教えてくれるって言うんなら、いいけどさっ。
『同意するよ! だからさ、いい加減前置きはウンザリしてきたし、パパッと教えてっ』
「……本当に、記憶が無くなるんですよ?」
どうしてこの人は自分が用意した選択肢が選ばれただけで一々動揺するのかな。そんなに疑問符を浮かべるようなものを、よくもまあ監禁しているただの男子高校生に提示するよね。
「いえ、いいです。また怒られちゃいますね」
わかってきたじゃない。
「球磨川さんを県立北高校で過ごさせると、試算ですが高確率で涼宮ハルヒは暴走します。正確には、貴方が力を暴走させる引き金になってしまうと言いますか」
まったく。未来くんだりまで来てハルヒちゃんか。君たちが西暦何年を生きているのかは知らないけど、いつまでもJK一人に拘ってるのってちょっと怖くね? にしても、敬虔なSOS団員の僕を捕まえてハルヒちゃんに悪影響を与えるとか、失礼すぎだよっ。
『僕の記憶だと、ハルヒちゃんは自分が持つ力を認識しておらず、最初からコントロールとは程遠い状態だって認識なんだよね。僕が暴走させる引き金? 説明を端折りすぎだってば。ていうか未来の僕はさて置き、【この僕】は悪い事をしていないんだし、この対応はやりすぎじゃね? 未来人としては、過去と未来で完全な同一人物扱いなのかな』
「いくら記憶を消すとはいえ、詳細までは話せません。でも、涼宮さんと貴方を引き離すのが目的なのは嘘では無いわ。涼宮さんが貴方と接触した事で、あらゆる事象がコントロール不可能になってしまったの。それを【元の形に戻す】のが我々の最優先事項なんです。貴方が涼宮さんに何をするのかは、この際関係ありません」
ただハルヒちゃんのまわりをウロチョロするだけで怒られるとか。僕、可哀想すぎない? ……そういった扱いには慣れっこだけどね。
『つまるところ、君たちがハルヒちゃんをコントロール出来なくなるって感じね。どうして単なる過去の人間な僕がいるとそうなるのかは知らないけれど。あれ? 今この時代に、まさか記憶を消された僕が生きていたりするのかい?』
「……貴方自身についてはトップシークレットです。記憶を消す消さないに限らず。涼宮さんにどう悪影響を与え、力を暴走させるのかも」
そりゃそっか。
話だけ聞くと、未来人は自分たちの史実通りの未来にする為に過去へ介入しているらしい。全く愚かで救いようが無い。悪い方へいかない為だとか大義名分を掲げているのだろうけど、自分達には想像もつかないようなより良い未来へ到達する可能性は捨てちゃったのだろうか。より良い変化が起こった結果自分たちの存在が消えてしまう場合、人間はそれを是とは出来ないのか。
だから滅びた。って地球育ちのサイヤ人に言われないことを願うぜ。
『僕の記憶が消される前に、一個だけ聞いても良いかな?』
「……禁則事項で無ければ、構いません」
仮に禁則事項であっても、これだけは答えてもらうぜ。どんな手段を使ってでもね。
『安心院なじみ、って単語に聞き覚えはあるかい?』
そういえば未来の安心院さんって、どんな姿なんだろう。大人版みくるちゃんみたいに肉体が成長してたりするのかな? なんて、ちょっとワクワクしながら尋ねてみた僕の期待は
「……いいえ、ありません」
なんというか。あっさりと、バッサリと切り捨てられた。
僕がさっきまでいた時代より、更に3年前まで遡れる未来人が。安心院さんの存在は知らない、…………だって?
それはおかしい。
……あり得ない。
未来に安心院さんがいないって言われれば、まだ納得出来る。未来の僕がそうした可能性は考えられる。けれどこの人は、あろうことか最初っから安心院さんがこの世にいないみたいな口ぶりだった。
『……どういうことかな。これもハルヒちゃんのせい?』
思考が乱れる。この僕の明晰な頭脳が、無様にも余計な雑念を次から次へと生み出していく。
まさか安心院さんの計らい? とも考える。
……わからない。
更に考えても、わからない。
あの人なら、未来人から姿を隠すなんて朝飯前を通り越して数年前の夜ご飯前だし。でも、僕をこれだけ邪魔者扱いする未来人達が球磨川禊の素性を過去に遡って洗い出せば、安心院なじみってワードくらいは目にするはず。未来人の調査力が案外大した事ないのか。
でも、確かに言えることは。
『安心院さんがいない世界に、時代に。僕はそれほど興味は無いな』
「…………えっ?」
手始めに。
『【
「失明を……なかったことに……!?」
僕の目は何らかの薬品で一時的に視覚を奪われていたようだから、薬の作用を無かったことにしてみた。するとどうだろう。無機質な白い部屋の中央に、僕が縛り付けられているベッドがあるだけの光景を目にできた。まさしく、映画やアニメで見る実験室って内装だ。
お次は……そうだね。やっぱり会話ってのは、相手の目を見て顔を見てするものだと思うんだよねっ!
『【
ベッドが無くなり、部屋はレイアウトが自由になるのも束の間。今度はその部屋ごと無くなる。結果として、ロケットをも格納出来るほどの広さがある、巨大な開けた施設に僕は立っていた。
立て続けのスキル行使。まるで【
「何が………起こっているの……?」
『へぇ……こんな空間に僕を隔離する部屋を作って、みんなが周囲で観察していたんだね。そして、気絶前ぶりだねっ! ……みくるちゃん?』
もう意味は無いけれど、僕がいた部屋……今となってはブースと表現するべきかな? と通話する為のマイクセットの前には、予想通り大人版みくるちゃんが座っていた。いかつい黒服のお兄さん達が大量に取り囲む中で。アメリカのシークレットサービスも顔負けな厳重さだ。
おや? 僕に対してみんなが構えている拳銃は、光線銃とかじゃないグロック? 的なやつなんだ。イメージとは違うなぁ。君たち、本当に未来人??
「撃たないでっ!!!」
みくるちゃんは運動部顔負けの声量で、銃を構えたボディーガードを静止させる。そんなにでかい声が出るんだね!? 惚れ直したよ。ひょっとして、みくるちゃん(大)がこの中で一番権力を持ってたりする?
でも、ちょっとばかり声を出すのが遅かったねっ。安心してくれていい。もう既におじさん達の手には何も握られていないから、僕が撃たれることはないよ!
『おじさん達の拳銃は勿論、なかったことにした』
「そ、そんなことが……!? 目の薬品も、拘束具も、部屋も、拳銃も……! 球磨川さん、貴方はさっきから何をしているのっ!?」
年上女性のヒステリーは遠慮願いたい僕ではあるけれど、他ならぬみくるちゃんを無視は出来ないな。にしても拳銃とは、未来人って予想より野蛮だな。もっとも? 初対面で身体を真っ二つに引き裂いてきた文学少女と比較すればこれでも友好的か。
『大人バージョンだからって、いきなりさんづけは他人行儀だってば! 遠慮せずに禊ちゃんと呼んでくれよ』
「それは……」
『そうそう、僕が何をしたかと言うとね。さっきも口にしたのが聞こえてたはずだけど……なかったことにしたのさ。消えちゃったもの全部を』
「さっきの、なかったことにしたって、……本当に?」
スキルを手に入れてまだ間もない僕本人ですら、たまに信じられない気持ちになるよ。なかったことにする、なんて与太話を未来人がすんなり信じてくれるとは思わないさ。でも、ハルヒちゃんや有希ちゃんよりは現実的なラインだろう?
『信じてくれなくてもいいよ。ただ知っておいて欲しかっただけ』
「その言い方は、私の……」
いつか、書道部室で未来から来た少女に言われたセリフを僕は伝えてみた。大人みくるちゃんは、今だに消えた拘束セットやブースがあったあたりに視線をウロウロさせている。【あったあたり】じゃなくて【なかったあたり】かな? 頭がこんがらがっちゃいそうだ。
うんうん。目の前で手品を見せられても、タネがわからなかったら誰だってそうなるよね。
「この男は、危険です!」
「私も同感です。次のフェーズに移るべきかと」
ここで、僕とみくるちゃんの逢瀬を黒服おじさん達が邪魔してきた。おじさん達、喋れたんだ。上司のみくるちゃんに進言する部下、みたいな一幕だけれど、いかんせん肝心のみくるちゃんが処理落ちしてしまっている様子。
次のフェーズ……ねぇ。シンプルに考えれば僕が逃げようと試みた場合の対応策だろうか。自然な策としては拘束ないし、殺害あたりだろうね。
「いいえ。一度上に判断を仰ぎます。ここは引き払います。各員、撤退の準備を開始してください」
みくるちゃんは頭痛が痛いようなポーズで部下に指示を出す。みくるちゃんの上司……か。僕をどうするかはその人の機嫌しだいになるのかもね。
『時にみくるちゃん、僕はこの後どうやって帰宅すればいいんだい?』
忘れられても困るから先に聞いておく。
『大抵の場所からは家に帰れる自信がある僕でも、時空を越えるのは面倒くさそうかなって!』
「……心配には及ばないわ。ここは、未来ではありませんから。貴方が生きている時代のままよ」
『……………………だよねっ! 未来人が、僕を未来に連れてくような知能じゃなくて安心したよ。別に、未来に行けなかったのが残念とか、そんなことはないんだからねっ!』
と言いながらも、完全に未来だと思いこんでいた僕は照れ隠しでハルヒちゃんみたいな口調を演じてみた。
そっか。それで拳銃とかは現代レベルに合わせていたのかな? もしも! 万が一誰かが未来の光線銃を失くしたりしたら、タイムパラドックスどころの騒ぎじゃない。
「ひとまず、我々は貴方への対応を一から考え直さなきゃいけなくなりました。私が直接こうして貴方に接触するのは、本来ならあり得ません。かなり奥の手、最終手段に近いものだったの」
知らないよ。直接手を下すのにそこまで勿体ぶるとか。樺地にラリーさせる跡部様かい?君は。
「……でも、出来れば今日の時点で……いえ、これはもう、現時点から禁則事項になってしまいました」
大人みくるちゃんは立ち上がる。自分を落ち着けるように長い髪に手櫛を通せば、その光景はそのまんまシャンプーのCMに使えそう。
『僕への対応に頭を悩ませるなら、ひとつだけ大人みくるちゃんにサービスで教えておいてあげる』
これはみくるちゃんへの、掛け値無しの僕の【親愛の証】だよ。
「サービス? ……なんですか?」
『一度だけ、僕に言うことを聞かせる方法がある』
僕は右手人差し指を、みくるちゃんの眼前で立てて。
「それは……いったいどんな方法!!?」
ちょ、ちょっと!
君はどれだけ僕に言うことを聞かせたいのかな。みくるちゃんがずずいっと距離を詰めてきて、もうお互いの吐息が感じられるほど。
大人みくるちゃんが美人すぎて、僕の心臓はいつもより激しくビートを刻む。もしかすると未来の整形技術なのではと疑うくらいに整った顔が、もう近いのなんの。
暗にもっと追加でサービスしろってこと? いやいや、これだけでも出血大サービスなんだし、我慢してくれよ。
「………教えて。」
『それはね。君が』
僕が唯一、おねだりされると弱いシチュエーション。それは当然、最近ハマっている僕のフェチに他ならない。
『裸エプロンで僕にかしずけ』
裸エプロン先輩!!!!
現在の球磨川君がハマってる設定の裸ワイシャツと迷ったけど、傅くならやっぱエプロンかなって…