家長カナと明鏡止水の彼 作:明鏡止水
----------------遠き日。
世界は妖怪を恐れていた。
その中心にいた妖怪の名は------------------
羽衣狐-------------------。
曰く最強の妖怪。
曰く不死の妖怪。
曰く魑魅魍魎の主と。
京に存在していた大妖怪。
その妖怪を封じるため動いたのが花開院秀元。
式神[破軍]を扱える天才陰陽師。
式神[破軍]を用いて羽衣狐を倒した......と記述には記されている。が、真実は異なっていた。
花開院秀元と、ある妖怪の手により羽衣狐が倒されたことは現在では知る人は少ない。
これが400年前の出来事。
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目を覚ますと庭に咲いている桜の花びらが風に揺れて膝の上に落ちてくる。
「もうこんな季節になったんじゃな」
寂しくもあり嬉しくもある季節。
可愛い孫が今日から中学生になる、心踊らないはずがない。
だが.....。
「のお、鯉伴よ」
それに気になることもあった。
あんなにわしの組を継ぎたいと言っていたリクオが妖怪なんてだいっきらいだと言って飛び出した。
学校で何か言われたのじゃろうな。
妖怪の家で生まれたと言ってもわしの血は4分の1、殆どが人間の血じゃ。
じゃが、わしの血に勝るものは無い。
「まぁこれからゆっくりと腰を据えて見守ればいいかの」
「総大将!総大将!」
この声はカラス天狗か?
小さな体に羽を生やした、見た目は烏だが正真正銘妖怪であり、高尾山天狗党党首。奴良家のお目付け役でもある。
爪楊枝ほどの錫杖を常に持っている。
「どうしたカラス天狗。そんなに慌てて」
「リクオ様は何時になったら奴良組を継いでいただけるのですか!?」
カラスよそれはわしも思ーておるわ。じゃがなリクオはまだ12歳じゃ、そう焦らんでもよかろう。
「いつになるのかのーわしも早く隠居したいんじゃがなー」
「総大将が隠居したら今の奴良組はおしまいですぞ!リクオ様が継がれても早々に隠居するのはお止めください!」
「けっ、カラス天狗は真面目じゃな」
「総大将....冗談を言っているわけではないのです。私共奴良組。今や百鬼夜行の半分も掌握出来ておりませぬ」
「それは仕方あるまい。鯉伴に着いてきた者も少なくないからのー」
「先代....総大将。鯉伴様は」
「言うなカラス天狗。あいつは弱くねえ。そんなことは分かってる。その鯉伴をやったやつはきちっと奴良組で片をつける」
「そうでございますな。はあ....リクオ様、あの時の覚醒。皆が見れば納得するであろうに...あれ以来起きておらぬとは.....」
「覚醒、か」
もう4年経つのか。
ガゴゼの野郎がリクオを暗殺しようとしたのは。
「のお、カラス天狗よ」
「はは。なんでございましょうか」
「近頃また不穏な気配がする。リクオに護衛を付けるのじゃ、バレんようにな」
バレたら、わしが怒られるしな。
「分かりました。雪女。河童。首なし。青田坊。黒田坊。毛倡妓に護衛を付けさせましょう。念のためうちの馬鹿息子共(三羽烏)も動かせましょう」
「ん、あとは任せる」
カナside
今日は中学の入学式。
新しい学校で勉強する。でも私は新しく勉強する環境の変化よりも気になることがある。
今から4年前の事。
私はまだ小学生だった。
それは自由研究の発表会で起きた。
清継君と島くんの自由研究の発表をしているときの事だった。
テーマは[妖怪]について。
内容は散々な物だったと思う。
でも否定もしないし話を聞いてる限りなにも思うことはなかった。
私自身あまり妖怪が好きではなく苦手だったのでどうしても自分の価値観をいれてしまい妖怪=怖いを連想させてしまっていたからだと思う。
その発表会が終わりに近付いたとき突如一人の男子生徒が手をあげた。
「ごめん、ちょっと良い?」
手をあげた男子生徒は、私の幼馴染みの奴良リクオ君だった。
「ん?君は確かー」
「あー奴良ですよ。奴良リクオ」
「あーそうだったな。すまない。それで何かな?」
「妖怪って良いやつらだよ!」
その一言でクラス中の雰囲気が変わった。
いや変えられた、と言うべきか。
「なんだ、奴良。清継君の自由研究にケチつける気か!?」
その一言に便乗するように周りも騒ぎ始めた。
「そ、そうじゃないけど!皆本当は良いやつらなんだって!」
リクオ君どうしてそこまで妖怪を庇うんだろう....。
私は既に妖怪の事についてではなくリクオ君が何故ここまで妖怪を庇うのかが気になり始めていた。
「どうしてそんな事が言えるんだよ!」
島くんが言った。最もな意見だと思うけど、どうしてだろう。
「だ、だって....」
次のリクオ君の言葉を聞いて頭の中は混乱してしまう。
「僕の爺ちゃんは妖怪の総大将だもん!」
クラスではざわついている。清継君も駄目だししてるけど長い間、リクオ君と一緒にいた私には分かる。
あの目は嘘を付いているときの目じゃない事を。
そのあとも暫くリクオ君は周囲から罵倒され続けて授業の終わる鐘と共に罵倒は無くなった。
というか先生も止めようよ!放任主義すぎるでしょ!
「リクオ君.....」
リクオ君のお爺さんは妖怪?それじゃあリクオ君も?
考えれば考えるほど分からない。
「よし....直接話そう」
私は一人で悶々と考えていても駄目だと思い放課後になって帰ろうとしているリクオ君を引き止めた。
「り、リクオくっ!.....」
リクオ君は目に涙を溜めていた。
私は言葉に詰まってしまい先の言葉が喉に詰まってしまい出てこない。
「なに、カナちゃん....」
声にハリがなく。何時も元気なリクオ君はそこにはいなかった。
私はなんて声をかければ良いのだろう。私は何て声をかけたいんだろう。
答えが出そうで出てこない。
「妖怪が、あんなに悪いことする連中だなんて知らなかったんだ。俺は妖怪のこと、ヒーローだと思ってた。そしてそんなヒーローの上にいるじいちゃんに憧れていた。でも悪戯や悪行ばっかりして、しかも爺ちゃんはそんな奴等の上にいて....情けなくて........」
リクオ君が呟いた。夕陽を背にしてるせいで顔の表情が見えない、けど声は泣いていた。
「それならさ」
リクオ君の声を聞いたら自然と言葉を紡いでいた。
「情けなくない人になれば良いんじゃない」
「え?」
「そういう人達を導く立派な人間になれば良いんだよ。リクオ君が」
「僕が、立派な人間...」
「ほら行こ?帰りのバス行っちゃうよ?」
「いや、良いよ。今日は歩いて帰るから」
「そっか。ねえ、もうお爺ちゃんが妖怪とか言わない方が良いと思うよ?」
「それってやっぱり僕の言ったこと信じてないってこと?」
「だって怖いもん!妖怪ってことはお化けでしょ?」
「......」
「見せてくれたら信じるけどやっぱり見たくないよ!」
これで良いよね。これだけ言ったらリクオ君、もう言わないと思うし。虐められることも無くなる。だからこれで良いんだよね.....。
「.....」
リクオ君は未だに下を向いて棒立ちになっていた。
「ごめんね、リクオ君.....」