中立者達の日常   作:パンプキン

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「…ていう感じ。ナイトレイドは新たに2人追加したけど、結局こうなる(離反者)って馬鹿よねぇ」

「…決定ね。ナイトレイドを潰す場所はキュロク。最終的にはイェーガーズと共同で叩けるようにしたいわね」

「えー…私達の取り分物凄く減るじゃない。それになんでキュロクなの?」

「キュロクなのはその時になれば分かるわ。報酬に関しては3人取るだけでも十二分な量よ。それに私達が活躍し過ぎる(・・・・・・)と、イェーガーズとの関係が色々とややこしくなりかねないわよ」

「…チッ、イェーガーズも潰せれば良かったのに」

「それと…チェルシーに伝言を頼んだわよ」

「内容は?」

「そうね…」


舞台へ

チェルシーの裏切りから、更に数週間が経過。

帝都でのほとぼりが冷め、ナイトレイドは元の帝都アジトへと帰還。緊急任務の新型危険種の排除を完了し、新たな大型任務の説明が一同に行われている。

 

(…キョロク、か。いよいよね)

 

その内容を説明すると、「安寧道」と呼ばれる宗教団体が近い内に、帝国に大して武装蜂起する。革命軍はこれを利用し、本格的に蜂起を開始。これをきっかけに帝国を打倒する。

しかし安寧道内部は現在蜂起派と反蜂起派に分裂しており、反蜂起派のリーダー格である教主補佐「ボリック」は帝国スパイである事が判明。ボリックは教主を暗殺し、安寧道を掌握する事を目的としている。

ナイトレイドはボリックによる安寧道掌握を阻止する為、キョロクにある安寧道本部へと移動し、ボリックを暗殺し、安寧道の武装蜂起を促す。これが今回のナイトレイドの主目標である。

副目標は、キョロクに移動すると同時にイェーガーズを帝都外に誘導。打撃を与え、戦力を漸減させる。

 

そしてジャッカルとマインはナイトレイドからチェルシーを引き抜いた上で、キョロクにて可能ならばイェーガーズと共同し、ナイトレイドを壊滅させる。

 

(姉さんは既に、安寧道に関する情報を掴んでた訳ね…そして、その情報から革命軍の動きまで予測した)

 

改めて、マインはジャッカル(己の姉)の恐ろしさを再認識する。

まるで未来を見ているかのような先読みの精密さ、そしてそれを支える異次元の実力。

マインは幼き頃から育てられた故に認識出来なかったが、チェルシーの様子を見て漸く正確な認識を出来るようになった。いや、正確には認識するにはハードルが余りに高過ぎた、と言った方が良いか。

 

(…)

 

どちらにしろジャッカルはキョロクに移動し、そこでナイトレイドは壊滅する。これは既に決定事項となった。

チェルシーにアイコンタクトを送る。

向こうもそれに気付き、僅かに頷いた。

 

 

 

 

 

 

説明が終わり、一同が解散した頃。マインとチェルシーは少々離れた所で再度合流していた。周囲に2人以外の気配は無い。

 

「貴女の提案は通ったわ」

「…!」

「ただし、条件付き。伝言があるから、しっかりと聴きなさい」

「『別に貴女を引き入れなくても、私達は何のデメリットも発生しないし、わざわざする理由も無い。それでも引き入られたいなら、貴女が此方側に来るという確固たる意志を見せる事が絶対条件』」

 

 

「『キョロク到達までに、マイン()を除いたナイトレイドメンバーを1人、貴女の手で殺しなさい』」

 

「…っ」

「これが、貴女の引き抜きの条件よ」

「…つまり、ロマニー街道でイェーガーズとの戦闘中に暗殺を行えって事ね…」(それ以上に、私達の動きも完璧に読まれてる…)

「ま、気張りなさい。どちらにしろ、生き残らなきゃ意味無いわよ」

 

 

 

 

 

 

帝国最東端、秘境ツェルト。

数多くの危険種が住み着き、火山噴火などの数多くの自然現象が日常的に発生しており、帝国内でも屈指の危険地帯である。

その地は余りにも危険過ぎる故に、人間は誰一人として近づく事は出来なかった筈だった。

 

しかし今は、その中を進む1人の人間がいる。

 

先程も火山の小噴火が起こり、高温が周囲を包み込んでいるにも関わらず、その人物は汗一つとしてかく事もなく歩みを進める。

しかしその先に、ドラゴンの危険種が空より降り立った。

その危険種は秘境ツェルトに於ける生態系の頂点に位置する特級相当の危険種であるが、周囲の環境の過酷さによって認知されていない、名前無きドラゴン(危険種)である。

縄張りに他の生物(人間)が入ってきたのを見て、降りて来たのだろう。不機嫌そうにグルルと喉を鳴らし、威嚇の姿勢に入っている。

 

「…」

 

(彼女)は目の前に立ちはだかったドラゴンを一見して立ち止まり。

 

 

 

 

 

 

ドグン゛ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

「ギュアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?」

 

刹那。ドラゴンは悲鳴を上げて仰け反った後に地面を這い、無様に空を飛んで逃げ出した。いや、それだけではない。周辺に存在したありとあらゆる生物が、一斉に(彼女)から逃げてゆく。

その人物は、外見上は何もしていない。ただ「力の差」を、ドラゴンとその周辺に見せただけだ(・・・・・・)

 

「…」

 

そして、何事も無かったかのように歩みを再開する。その人物にとって、今はこんな場所で時間を食っている場合では無い。

その人物は幼き頃、大切な物を失った。しかし、今は最早その復讐が目的では無い。

復讐よりも遥かに大切な目的が出来た。最早この問題は(彼女)1人の問題では無い。寧ろ「全ての始まり」でもあったのだ。

一分一秒でも早く止めなければ、アレは無辜の人々に向かってその牙を振るい続けるだろう。それだけは、何としても阻止せねばならない。それを知ってしまったからこそ。

 

「…まだ先、か」

 

故に、(彼女)は進み続ける。その身に秘める、絶対の殺意と復讐(救世)の刃を研ぎながら。

 

 

 

 

目的地は、キョロク。




そして配役は揃う。結末は一つの運命の元に集い、時間の針は進み始める。




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