中立者達の日常   作:パンプキン

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前回の後書きを少し修正しました。


到着と顔合わせ

帝都の遥か東に、キュロクという街がある。

その街は、豊富な地下資源により経済的躍進を遂げ、現在では帝都の次に豊かな街であるとも言われている。近年、帝国の中でも大きな規模を持つ宗教団体「安寧道」の宗教施設が多く建設され、独自の文化を持つ巨大都市へと姿を変えつつある。

この街、キュロクと安寧道。この二つの存在が舞台となり、ナイトレイドとイェーガーズ、ジャッカルの対決場となった。

 

 

 

 

 

 

ある日の夜。キュロク中心部、安寧道本拠地。

その中にあるパーティー会場にて、ある者達によるパーティーが開催されていた。

 

「まさか帝国最強と言われるエスデス将軍が来てくださるとは、心強い事この上ありませんな」

 

その中に、安寧道教主補佐 ボリックとイェーガーズのエスデス、ウェイブ、クロメ、セリュー、ランが対面していた。

ボリックは帝国(大臣)が送り込んだスパイであり、教主を暗殺する事によって安寧道を掌握して武装蜂起の阻止、そして教主を神化し、安寧道を己の物にせんとしていた。イェーガーズは教主暗殺の時までボリックを護衛し、安寧道の武装蜂起を阻止する為に派遣された。今こうして対面しているのも、顔合わせと挨拶を兼ねている。

 

「このパーティーは私の忠実な部下しか居ません。どうぞ安心してお楽しみ下さい」

「大臣に受けた指令はお前の護衛だ。部屋をいくつか借りるぞ」

「もちろん。 …私の屋敷は退屈しないと思いますぞ」

そいつら(女達)にはまるで興味はない…が、天井裏から私達を覗いている奴等とは会ってみたいな」

 

そう言ってエスデスは天井に目線を向けた。ウェイブとセリューは驚いて、クロメとランはエスデス同様冷静に天井へ目線を上げた。

 

「流石、お気付きでしたか」

 

パチン、とボリックが指を鳴らす音を合図に、天井裏から男女4人が飛び降り、ボリックの右側に降り立つ。その反射速度の速さから、実力の程も垣間見える。

 

「此奴らこそ、教団を牛耳る為に帝国より預かった暴力の化身…皇拳寺羅刹四鬼です」

 

皇拳寺羅刹四鬼。

帝国最高の拳法寺と名高い「皇拳寺」の中でも最高クラスの実力を持つイバラ、スズカ、シュテン、メズの四人で構成された、大臣直属の戦闘集団である。

 

「ほう…帝都に居ないと思っていたが、ここに居たのか」

「将軍様が来て下さったお陰で、護衛に専念していたこの鬼達を攻撃に使う事が出来ます」

「待って下さい!」

 

ボリックの言葉に、正義感の強いセリューが一歩踏み出して意見する。

 

「この街に、帝具を使うナイトレイドという悪のチームが潜入している可能性があります!そいつらと戦うのに、帝具無しではっ!?」

 

その時、セリューの首筋に軽い衝撃、そして気配。

 

「心配はいらねぇよぉ。俺達は生身で帝具使いを倒した事もあるぜぇ。こんな風にさぁ」

「いつの間に…」

 

セリューが後ろに視線を向けると、ついさっきまでボリックの右側に居た羅刹四鬼の一人、イバラが首筋に手刀を据えていた。

 

「私達が回収、大臣に送り届けた帝具は五つ」

「幾ら帝具が強力であろうとも、使う者は生身の人間である事は変わらん」

「なら、勝ちようは幾らでもあるって事だね」

 

そう、彼等は帝具を使わずに帝具使いの討伐経験を持つ、数少ない実力者でもある。帝具使いに対抗するには帝具使いを必要とすると言われているが、彼等はその例外に位置する者達だ。

 

「羅刹四鬼は大臣お抱えの処刑人。言葉通り、腕は確かですぞ」

「へっへ、そういう事。あんたらはこの屋敷でのんびり酒でも」

 

瞬間、ゾクリとイバラの全身に悪寒が走る。パキッという音と、己の首筋に走る冷たい感触。後ろに、氷の剣を生成したエスデスがいた。

 

「お前達も、実績があるとはいえ油断しない事だな」

「…へえ〜凄ぇ、流石エスデス将軍だぁ」

(大事な持ち駒である此奴らが来てるのにも関わらず、私まで出向かせるとはな…余程ここ(安寧道)を重く見ているか、大臣)

 

氷剣を消しつつ、エスデスは大臣の思考を推理する。そして、その時にある事を思い出した。

 

「…そういえば、もう一人傭兵が派遣されると聞いていたが?」

「ああ、ジャッカルの事ですな。まだ姿を見せていない辺り、まだ此処には到着してないようですが」

 

 

 

「私の事なら、此処に居るわ」

「えっ!?」

「…!」

 

 

突如、ボリックの左後方から各人の鼓膜に届いた声。ボリック達が驚いて振り返ると、壁に背中を預け、丁度右手に持っていたケーキの一切れを食べ切る所のジャッカルが、其処にいた。

当の本人は、驚愕の視線など気にせず、手についたクリームを舐め取る。

 

「パーティーのデザート、楽しませてもらったわ」

「…此処まで気配さえも悟らせないとはな。お前が、話に聞くジャッカルか」

「ええ。こうして顔を合わせるのは初めてね、エスデス将軍。私がジャッカルよ」

「お前ともいつかは会ってみたかった。是非ともそのフードに隠れた素顔を見てみたいものだな」

「丁重に断らせて貰うわ。第一私が受けた依頼は「ナイトレイドの殲滅」、貴女に私の素顔を見せる事は契約外であり、私の素顔を見せる時は、私が信頼する者と相対する時だけよ」

「さて…挨拶も済んだ所だし、私は独自に行動を取らせて貰うわ。共同とはいえ、私の戦い方は貴方達と横に並ぶようなものじゃないから」

 

そう言って、ジャッカルは天井裏へとジャンプし、姿を消した。

 

 

「…取りつく島も無し、か」

 

 

 

 

 

 

(これでナイトレイド、イェーガーズ双方の残存戦力は把握した)

 

(私達の手札も揃った)

 

(後は場所とタイミング。万が一イェーガーズに邪魔されようものなら)

 

 

 

(容赦無く、消す)


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