中立者達の日常 作:パンプキン
-月-日
うん、なんて言うか、うん。
…前者3つはまだ納得出来なくも無いのよ。そこはまだ良いんだけど、何で私ごと洗濯したの?「服」と「服を着ている人間」をどうやったら間違えるの、ねえ。生きてたから良かったけど、完全に想定外だったから本気で死を覚悟したわ。というより溺れて死にかけた。潜入してる以上、バレて殺されるのは覚悟してるけど、天然でうっかり殺されるとか姉さんに顔向け出来ない。
…今回ばかりは恨むわよ、ド天然。
○月○日
聞いた話だと帝都に出稼ぎに向かう最中、盗賊に襲われて早速仲間と離れ離れ。帝都に着いた直後、不運にも獣に騙されて全財産持ってかれて、仕方なく野宿しようとした所に目標に拾われた所、これまた不運に私達の襲撃に巻き込まれて誘拐。 …不運過ぎるにも程があると思うんだけど。
タツミの身柄に関しては取り敢えず、
暗殺組織がそんなノリで良いの?
×月×日
夢想家が帰ってきたから、早速タツミに関しての話が行われた。今のナイトレイドのメンバーは私、夢想家、大飯食らい、獣、
その直後にオネストが依頼した(と思う)異民族の傭兵がアジトを嗅ぎ付けた。すぐさま総出で潰したんだけど…三流もいい所。下手したら四流以下ね。良くあんなので傭兵やってられたわね…姉さんの面汚しが。
兎にも角にも、後数日後には姉さんと会える。楽しみでしょうがないわ。
△月△日
今日は姉さんと会った。やけに機嫌が良かったけど、多分依頼の報酬がいつもより良かったんでしょうね。聞いた話だと、一週間の間に反大臣派の政治家一人と革命軍の幹部二人が姉さんに狙撃されたらしい。流石姉さん、としか言いようが無いわよホント。
…姉さんって何処までの無茶振りまで行けるのか気になる。私を拾う前にも幾つかの暗殺部隊を一人で潰してたらしいし。
◻︎月◻︎日
タツミがナイトレイドに入ってから数週間経った。今は大飯食らいとコンビを組んで暗殺を学んでる。同時に炊事担当になってるんだけど、タツミの料理中々美味しいよのね。ついついおかわりしてるけど、ちょっと体重が気になるわね…
P.S.
タツミのあだ名が決まらない。他の連中はすぐに決めれたんだけど、単純に個性が飛び抜けてるからだし…決まらなかったらそのままでいいか。
○月×日
タツミが私とコンビを組む事になった。私が依頼をやってる間に帝都警備隊隊長のオーガを単独で暗殺したらしく、一端の暗殺者の顔になってたわね。まぁ私の方が先輩だから、帝都の市勢調査(と評したショッピング)でこき使ってやったけど。最後に生意気な事行ってきたから1発殴ってやった。案外Sっ気あるのかしらね、私。殴られた時のタツミの表情を見て、思わずにやけそうになったわ。
ついでに帰る途中、公開処刑の場に出くわした。タツミはその光景を見て顔を青ざめてたけど、あんなものはまだ優しい方。精神面なら姉さんの尋問の方がよっぽどヤバイ。 …姉さんの尋問訓練は本当に地獄を見たわ。
P.S.
明後日、ナイトレイド総出で依頼を行う。目標は大臣の遠縁(という名のほぼ無縁)に当たる男、イヨカル。悪いけど、死んでもらうわ。
◆
作戦当日。私達は帝都からやや外れた所にある、イヨカルの豪邸前に張り込んでる。
今回の作戦は単純明解。私とタツミが居る
…よし、パンプキンの最終確認終了。問題無し。
「…この距離なら普通に届く。自室から出てきたところを撃ち抜くわ」
「俺の役目は狙撃後の護衛だな、任せろ!」
「期待してないけどね」
…さて、と。ここで私が失敗したら笑い話にもならないわ。
距離、997〜1034m。高低差、27〜29m。天候、晴れ。視界、問題無し。気温、常温。風速、無風。
「…出てきた」
「え…どこだ?」
目標視認。速度低速。同時に同速度で進む非目標を12人確認。内2人は目標の至近距離。
「標的じゃない人達も出て来てるぞ」
「で?」
「でって…どう狙撃するんだよ」
「関係無いわ」
最終修正。距離1014m、高低差−27m。照準完了、呼吸停止。
ファイア。
…ヘッドショット。誤差0.2cmか、帰ったら私も含めて再調整しなきゃならないわね。
「仕留めた。さっさと合流地点に向かうわよ、タツミ」
「え、あ、おう!!」
◇
「…歩きづらい」
確かに合流地点までのルートは最短距離なんだけど、木の根っこがそこらじゅうに飛び出てるのがウザい。突っ走った方が速いんだけど、私の護衛役としているタツミを置いてく訳に行かないし。
「追っ手はもう全滅かな?」
「相手は皇拳寺で修行した連中、サクッとは行かないんじゃない?」
「帝国一の拳法寺か…大臣の縁者にもなると、護衛の質もヤバイな」
「血縁の力でやりたい放題…そういうのは一番気に入らないわね」
「…」
…分かりやすい顔してるわね。
「「昔何かあったのか?」って思ってるでしょ」
「えっ!?」
「顔に出てたわよ。 …ま、簡単に説明してあげるわ。アタシは西の国境付近の出身で、異民族のハーフ。その時から異民族の差別があって、私もそれを受けて来て、その日が生きられるかどうかの子供時代だったわ。革命軍は西の異民族と同盟を結んでる。革命が成功して新国家になれば国交が開き、多くの血が混ざり…アタシみたいな思いをする子はいなくなる。もう二度と、誰にも差別はさせないわ」
「…マイン」
「そしてアタシは革命の功労者として、莫大な報奨金を貰ってセレブに暮らしてやるわ!」
「………………」
ま、それが「ナイトレイドのマイン」って訳。単純明快で分かりやすい設定でしょ?
…ようやく森林地点から出たわね。合流地点も目と鼻の先。
「もうすぐ合流地点、任務達成ね」
「報告するまでが任務だぜ!」
「アカメの受け売りね。確かにそうだけど、ね!!」
パンプキンを即座に構えて背後に発砲。後ろから奇襲しようとして来てた男の心臓部を撃ち抜く。撃ち抜かれた男は、何が起こったか分かってなかったのか、呆気ない顔で倒れ、死んだ。
…やっと現れてくれたわね。ちょっと前から張り付かれてて鬱陶しかったんだから。
「なっ…いつの間に!?」
「さあね。どっちにしろ、ちゃんと護衛役として最後まで機能しなきゃ完遂とは言えないわよ。タツミ」
「うっ…」
そんな訳で、特に何の問題も無く作戦は終了。その後皆に革命軍からの報酬が渡った訳だけど…しょっぱい。姉さんの平均報酬の3割しか無い。遠縁とはいえ、大臣の縁者なんでしょ?せめて4、5割は持って来なさいよ。個人の依頼がしょっぱいのはしょうがないけど、革命軍は資金が潤沢にあるでしょ。全く…そんなんだから、姉さんも帝国の依頼しか受け持たないのよ。
その習得方法は単純明快。「反復練習」、「実地練習」のみ。