史上最強の武術家の弟子伐刀者マコト   作:紅河

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こんにちは、紅河です!

何話かによってオリジナル展開が続きます!
暖かい目で見守っていただくと嬉しいです!
宜しくお願い致します!



BATTLE.18 それぞれの夜

 一輝の七星剣武祭選抜戦一回戦が終了し、重体の一輝はiPS再生槽(アイピーエスカプセル)がある病室に運ばれていた。

 真琴はステラと共に、病室で一輝の回復を待っていた。例え、iPS再生槽が優秀な回復医療機だとしても、大事な人間が重体なのだ。二人は心配そうに一輝を見つめていた。

 

「イッキ、大丈夫かしら・・・」

「大丈夫だろ、一輝の事だから内功も鍛えてるだろうし、なんとかなるさ」

「内功?」

「ん?知らないのか?内功とは、内側の力の事だ。内功を鍛えれば傷の治りも早くなる。一輝程の武術家が内功を練ってない筈ない、心配すんな」

「そんな力が有るなんて・・・」

「ステラが知らない武術の技なんざ、幾らでもある。一輝と関わってけば嫌と言うほど目にする事になるさ」

「覚悟しとくわ」

「んじゃ一輝の事頼んだぜ?俺は少し外の空気吸ってくるわ」

「ええ、いってらっしゃい」

 

 病室の扉を開けて後にする真琴。

 

「(俺が居るより好きな女性が側に居た方が良いだろ?一輝・・・女性は大切にな)」

 

 

 そう心に思いながら真琴は病室を出ていった。すると目の前に一輝の妹、黒鉄珠雫が浮かない顔で立っていた。

 

「お前は入らないのか?」

「・・わ、私は・・・」

 

 真琴は黙って珠雫の頭を撫でた。

 

「な、何を・・・」

「黒鉄妹を慰めてやろうと思ってな、俺にも大切な妹が居るもんでね、お前と少し重なって見えて、ついな」

「真琴さんにも妹が?」

「あぁ、つっても血は繋がって無いんだけどな」

「そうなんですか?」

「俺の師匠の娘で、一緒に道場で育ってきたから、妹みたいなもんなんだよ」

「そんな方が・・・っていつまで撫でてるんですか!」

「あ、わりぃ・・・」

「あらぁ?お邪魔だったかしら?ウフフッ」

 

 その様子を陰から有栖院凪が覗いていた。真琴と珠雫の微笑ましい会話は全て、有栖院凪に聞かれていたのだ。

 

「真琴に妹が居たなんてねぇ人は見かけによらないのねぇ・・・」

「お前がいうなよ、アリス。それで、一輝に話し掛けないで良いんだな?」

「・・・ええ、今はステラさんが一緒に居るんですよね?」

「ああ」

「なら私は邪魔になるでしょう・・・それにステラさんなら・・・」

「兄妹でキスをした女性がなぁ・・・ここで身を引くのか」

「ステラさんにならお兄様を預けられると思っただけですよ」

「そっか、ま、黒鉄妹が良いならそれでいいさ!さてお前らって飯は食った?」

「まだよ?何処か食べに行く?」

「まぁそれも良いけど、今日は俺が何か作ってやるよ」

「そう言えば真琴さんって、お菓子作りが得意なんでしたっけ?」

「よく覚えてるな、お菓子だけじゃなくて人並みに料理は出来るぜ?実家の道場でよく手伝いしてたからな」

「あら、そうなのね。折角ならご馳走になりましょうよ、珠雫!」

「アリスがそう言うなら・・・お菓子は作って無いんですか?」

「冷蔵庫にレアチーズケーキを作りおきしてたはずだ、食べるか?」

「ご馳走になるわ、有難う真琴」

「おう!」

「気前良いですね」

「だろ?」

「私の呼び名ですけど、名前で呼んでくれて良いですから・・・」

「お?良いのか?」

「ええ、黒鉄の名は余り好きじゃありませんので」

「分かった、んじゃこれから改めて宜しくな!珠雫!」

「はい、此方こそ宜しくお願いします、真琴さん」

 

 真琴はそう言うともう一度珠雫の頭を撫でた。真琴にとって珠雫は、もう一人の妹が出来たようだった。

 

「頭は撫でないで下さい!私はもう子供じゃないですから!」

「体つきは子供だろ?」

「小さいのは関係有りません!歳だって貴方と一歳違いです!」

「ウッフフ、二人とも仲の良い兄妹みたいね?」

「アリスぅ」

「あの深海の魔女もアリスにかかると形なしだな!」

「誰のせいで!」

 

 そんな睦まじい会話をしながら、真琴達は寮へ向かった。三人の様子はまるで、仲の良い三人兄妹の様だった。

 一方その頃一輝とステラはと言うと・・・。

 ステラが病室でずっと一輝が目を覚ますのを待ち続けていた。待つ事に疲れたのかステラはベットに腕をかけて寄りかかり、寝てしまっていた。

 数時間が経ち、気づけばもう夜になっていた。そして回復した一輝がゆっくりと、目を覚ました。

 

「ここは、そっか僕、カプセルに運ばれたのか・・」

「グゥグゥ・・・・」

 

 ステラはすやすや寝ている。

 

「ステラ、傍にいてくれたのか・・・有難う(君と真琴があそこで励ましてくれなければ、桐原君に負けていた。本当にありがとう、それがなければ僕は今頃・・・)」

 

 一輝は心底ホッとしていた。ステラの様な人が自分のルームメイトで良かった、真琴が自分の友人で良かったとそう思ったのだ。でなかればあのまま桐原に敗北し、もう一年留年する羽目になっていただろう・・・。桐原静矢という強者に自分が勝てたのは、幸運だったと言わざるを得なかった。

 すると寝ていたステラが目を覚ました。

 

「んあ、やだ私ったらいつの間に・・・」

「ん?起きたのかい、ステラ」

「イッキ!目が覚めたのね!」

「うん。ステラ、ずっと看病してくれて有難う。真琴が見えないけど一緒じゃないの?」

「先に帰ると連絡があったわ」

「そっか、真琴にお礼を言いたかったんだけどな」

「お礼?」

「うん」

 

 一輝は対戦中に真琴達が励ましてくれた事を思い出していた。

 

「あの時、二人が声をかけてくれなければ僕は・・・」

「そうよ!あんな奴にボコボコにされちゃってもう!」

 

 ステラは辺りに在る物をやたらめったらに、一輝へ投げ付ける。

 

「や、止めてよ、ステラ!」

「もう!もう!」

「ご、ごめんよ!でもステラ、君のお陰で勝てたのはかわりないよ、本当に有難う」

「・・いいのよ、それよりイッキが無事で良かったわ」

 

 ステラは才能も欠片もない無い、一輝の為に他人を憤激し、看病までしてくれたのだ。こんな経験は初めてだった。そして一輝は自分の心臓の高鳴りを感じていた。そして自覚した。自分が恋をしたんだと確信したのだ。この女性になら自分の全てを捧げたいと心からそう、思った。

 そして、一輝は勇気を振り絞りある言葉を口にする。

 

 

 

 

 

 

 

「ステラ、僕は・・・君が好きだ」

 

 

 

 

 

 

 少女に衝撃が走った。

 生まれて初めての異性からの告白。言い寄られて来たことはあったが、告白される事は無かった。一輝に告白され、自分の胸の高鳴りは収まらず、ずっとドクンドクンと鳴り響いている。

 少女は初めて自覚した。私はこの人に“初恋”をしたのだと・・・。そして少女は思わぬ行動に出たのだった。

 

「イッキ!め、目を瞑りなさい!」

「え!?何、殴るの!?」

「いいから!目を瞑りなさいって言ってるでしょ!」

「あっはい・・・」

 

 ステラは恥ずかしながら一輝に近付き、チュッと右頬にキスをした。

 沈黙。

 数分間、唇が触れただけなのに、キスをした時間だけはゆっくりゆっくりと、進んでいるかの様に二人は感じた。柔らかな唇の感触・・・。生まれて初めての異性からのキス。キスがこんなにも心を満たすモノだったとは

思わなかった。

 もっとしていたかったが、ステラの心が限界に達してしまい一輝から離れた。

 

「もしかして、ステラも僕の事を?」

「・・・・コクリ」

 

 黙って頷くステラ。

 

「!」

 

 一輝は堪らずステラを抱き締めた。ステラもそれを、受け入れ抱き返した。最初に会った時に、お互いの肌を見るという不祥事があった。部屋のルールを決める為に、模擬戦もしていた。あれから色々あったが、二人は晴れて今日から恋人同士になったのだ。

 近い将来、この二人が雌雄を決して戦う事になる。だがそんな事とは露知らず、二人の時間は淡々と過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

「今頃、一輝そろそろ起きたかな?飯はとったとステラに連絡はしたが・・・」

「その連絡する必要あったの?」

「ああ、飯はいつも三人で食ってたからな」

「(ステラさんも可哀想ですね)」

「一輝からは後で連絡が来るだろう。つか二人とも!俺のレアチーズケーキの味はどうよ!」

「お兄様が褒めるだけ有りますね、凄く美味しいです。真琴さん、ケーキ職人になったら良いんじゃないですか?」

「そうね、お店に出せるレベルよ?このケーキ」

「へっそうだろ?ジャムとかも有るから付けて食べるとなお旨いぞ?好きに使ってくれ、ブルーベリーにオレンジにイチゴもあるぞ」

「それじゃイチゴを貰いますね」

「私はブルーベリーを貰うわ」

「あいよ、ちょっと待ってな、冷蔵庫から持ってくるから」

 

 真琴は立ち上がり、冷蔵庫に向かった。ジャムを取りだしてテーブルに出した。

 

「これもしかして自家製ですか?」

「ん?そうだがそれがどうかしたか?」

「貴方、どれだけ料理のポテンシャル高いのよ・・・」

「ま、師匠の奥さんが篦棒に料理が上手かったからなぁ、その影響もあって料理する事が日常になってんだわ」

「その方もお菓子作りが得意なんですか?」

「ん?ああ、奥さんは和菓子が得意だった筈だ」

「真琴とは逆なのね」

「ちなみに俺より料理の腕は上だぞ?料理で俺はあの人に勝てん・・・」

「真琴さんがここまで言うなんて・・・」

「一度味わってみたいわね・・・」

「んー、電話すりゃ送ってくれると思うし、今日にでも連絡してみるわ」

 

 

 真琴がそう言うと突然ピリリリリと携帯電話の着信音が部屋に鳴り響いた。どうやら真琴の対戦相手決定の通知だった。

 

 

「近衛真琴様 第一仕合

 

 破軍学園序列第45位 中川聖夜様に決定致しました」

 

「序列45位中川聖夜?誰だこいつ」

「その人は確か、固有霊装は«ガイアハンマー»形容形態はモーニングスター、«地»の能力を使う伐刀者だったはずです」

「よく知ってんな、珠雫」

「彼はCランクの騎士で、噂では低ランクの伐刀者を見つけると学校の裏などで、苛めや暴力を奮うそうよ、その酷さはあの桐原静矢すら凌駕するほどらしいけど、苛めなんかはあくまで噂だけどね」

「へぇ~そうなのか!アリス!んじゃソイツにとって俺はいじめ対象者ってことか!面白ぇじゃねぇか!」

「真琴さんなら問題ないでしょうけど」

「桐原と同じタイプってんなら容赦はしねぇ・・・」

 

 真琴の表情が鬼の形相へ変貌していく。

 

「死んだ方がマシだと思えるような戦いをしてやる!!」

「ちょっと顔怖いわよ?・・・」

「珠雫、ソイツってよぉー実践経験あんのか?」

「そこまでは知りませんけど、学生騎士で実践経験がある伐刀者なんて一握りしか居ませんよ?経験は無いんじゃないですか?」

「ほほう・・・」

 

 それを聞いた真琴の顔は更に、酷い顔付きになっていく。

 

「真琴!顔!顔!」

「ん?わりぃわりぃついな!明日の一回戦が楽しみだぜ!!」

 

 こうして、意気揚々と仕合に備える真琴を見た珠雫とアリスは、真琴だけは敵に回したくないとレアチーズケーキを頰張りながら思うのだった。




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