史上最強の武術家の弟子伐刀者マコト   作:紅河

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こんにちは、紅河です!


やっと真琴の一回戦目です!ここまで大変でしたが、楽しく読んでいただければ幸いです!


BATTLE.20 落第の拳«ワーストフィスト»VS«大地の守護者»

 ここは第二訓練場。真琴達が仕合をする数分前の事である。学園中の生徒達が集まっていた。

 その生徒達の話題とは近衛真琴で持ちきりだった。世間一般では低ランク伐刀者の生徒は肩身が狭く、虐げられるのが常識である。その為、Eランクである真琴の扱いは、一輝と同じ様に落ちこぼれのレッテルを貼られている。一輝や刀華等、学園の実力者以外の伐刀者以外には、真琴の勝利はないと認識されているのだ。

 

「まぁ、落第の拳«ワーストフィスト»の敗北は決まったな」「そうだよな、昨日の落第騎士«ワーストワン»の仕合はまぐれだって!」「落ちこぼれに中川君が負けるわけないじゃない!」「そうよねぇー!」

「「「「ハハハハハハ!!」」」」

 

「また、やってるわね・・・。マコトの実力も知らないくせにベラベラ、ほんっと口だけは達者ね」

「ステラさんに同意です・・・。真琴さんが負けるはずありませんよ、ねっお兄様?」

「そうだね」

「私は初めてショッピングモールで真琴の実力を見たけど、あの歳であそこまでの戦闘能力を有してる人間は今まで、見たことがないわ・・・」

「でも日本の武術道場に入っただけで、あれだけの実力がつくものなんですか?」

「そうよね、それは私も思っていたわ。イッキ、マコトは誰に武術を教わってるの?」

「今は言えない、それに仕合ももうすぐ始まるからね。今度、真琴に聞いてみるといいよ、きっと驚くから」

「有名な方々なのですか?」

「そうだね、武術の世界では知らない人はいない位には有名かな?」

「き、気になるわね・・・」

 

 四人が世間話をしていると、«雷切»で知られる東堂刀華が入場し、真琴の仕合を観戦しに来ていた。

 

「もう!刀華遅いよ!準備に時間かかり過ぎだよ」

「うーご免なさい、うた君・・・」

「カナタ達が席を確保してくれてるとはいえ、早くしないと始まっちゃうよ!」

「はーい・・・」

 

 刀華と泡沫がギリギリで会場入りした。カナタ達が二人を確認すると、手を降りながら刀華達に知らせたいた。

 

「会長、遅いですよ」

「そうだよー何してたのさー」

「準備に手間取っちゃって・・・」

「仕方ないでござるな・・・」

「遅刻しなかっただけマシだけどさ」

 

 生徒会の面々が集まり他愛ない会話をしていると、真琴と中川がステージに入場してきた。

 

「おっ来たね真琴君」

「まこ君の闘気がここまで伝わってくる・・!あのまこ君と戦ってみたい」

「会長、愉しそうですわね・・・」

「え!?顔に出てた?」

「顔というかもう口に出てたよ」

「え!?ほんまに!?」

「ホントホント」

「会長の気持ちもわからなくもないでごさるが・・・」

「それもそうですわね」

 

 

 

 

 そして、真琴達の戦闘準備が整い仕合開始のアナウンスが鳴り、仕合が始まった。

 真琴は肘をやや曲げて腕を前に出し、空手の構えの一つである❮前羽の構え❯とった。どんな攻撃が来てもいいように、空手の内臓上げも行い、中川の攻撃に備えていた。

 

「西京先生、近衛選手が構えをとりましたね」

「うーん、まこっちは武術を修めてるからねぇ」

「近衛選手は武術を習ってるんですね、あの構えはなんというんですか?」

「あれは空手の❮前羽の構え❯だね」

「前羽の構え?」

「あの構えは空手の様々な受けに移行しやすい為、空手家の人達には絶対防御といわれているね」

「成る程、では近衛選手は中川選手の攻撃を待っているということですか?」

「まぁ、まこっちにとっては様子見程度じゃないかなぁ」

 

 

「「「「「アハハハハ!!」」」」」

 

 

 空手と聞いた学園の生徒達は一斉に笑い始めた。

 

「空手だと!?バッカじゃねぇの?」「あのスポーツのやつだろ?」「そんなんで攻撃を防げる訳ないじゃない!」

 

 昨日の仕合と同じ様に低ランクの伐刀者を馬鹿にし始めたのだ。

 ステラはその言葉を耳にし怒り狂い、今にでも爆発しそうな勢いだった。

 

「アイツら!また馬鹿にして!」

「真琴さんの実力を知らないから言えるんですよ」

「ステラ、真琴は僕みたいに緊張はしてないから大丈夫だよ」

「そうなの?」

「うん、真琴はこういう“空気には慣れてる”から」

 

 

 

 

 

「おい、何だよそのカッコ悪い構えは!」

「構えだが?」

「寧々先生が言ってた空手の!?」

「ああ、そうだ」

「ほおー絶対防御とされるなら、これを受けてみろよ!」

 

 中川がそういうと自身の伐刀絶技、大地の岩石«ストーンエッジ»を繰り出した。

 この技は無数の岩石を造りだし、相手に向けて投げ付ける技である。多くだすと魔力量の消費が大きい為、大抵の場合は10個程に止めておく。だがランダムに飛んでくる為、並みの伐刀者では躱すのは困難である。

 しかし、その攻撃は真琴の身体には届かなかった。何故なら真琴の身に岩石の攻撃が当たる直前に、中国拳法の“化勁”で反らしたのだ。

 

「なっ!?」

「どうした?俺には一つも届いてないぞ?」

 

「西京先生、何故近衛選手には当たらなかったんでょう?あれも空手の技ですか?」

「あれは空手じゃないね。中国拳法の太極拳に伝わる、優れた身法の一つ、化勁さ」

「化勁?」

「腕をコロの原理で回転させ、相手のベクトルをコントロールする技さね。まこっちはその技を使用して、攻撃の方向を変えたんだ」

「ちょっと待ってください、近衛選手は空手を習ってるはずじゃ・・・」

「別に私はまこっちが“空手だけ”を修めてるとは言ってないよ」

「え?それじゃ近衛選手は空手と中国拳法を?」

「それも違うねぇ、まこっちが修めてる武術は・・・空手、中国拳法、ムエタイに柔術さね」

「えええええ!?そんなに習ってるんですか!?」

「(まぁそれ以外にもあるけど今はこれで良いんじゃないかねぇ・・・)」

「皆さん、聞きましたでしょうか!なんと、近衛選手は化勁と呼ばれる技を使用し中川選手の攻撃を見事、受け流しました!果たして中川選手の攻撃は近衛選手に届くか!?それとも近衛選手が躱し続けるのでしょうか?目が離せません!」

 

 

 寧々の話をを聞いていた他の生徒達は、その事実を受け入れなかった。何故ならただの“落第伐刀者”が多くの武術を習い、修めている訳がないとそう思っているのだ。それを感じ取った寧々が、口を開いた。

 

「まこっちはね、武術の世界では“神童”と称され、天才と呼ばれる人間より一つ上の存在だったのさ」

「神童、ですか?」

「ああ、神童とは幼くしてその道のコツを知り得てしまった者の事を指す言葉」

「それが近衛選手だと・・・」

「そうさ、私が見たところだと、武術の腕ならこの破軍学園じゃ一番だろうねぇ」

「それは«雷切»や«模倣剣技»を持つ黒鉄選手より上って事ですか?」

「その通りさね、だからまこっちの身体能力は❮S+❯なのさ」

 

 

 その話を聞いた生徒達は何も言えなくなってしまった。❮夜叉姫❯がここまでハッキリ言ったのだ、間違いなくそうなのだろうと思っていた。だが信じられない事なのは変わりない。だから黙って仕合を観ることにしたのだった。

 

 

 

「へっ!攻撃を躱しただけで調子にのるなよ!」

 

 

 中川は自身の固有霊装をステージに叩き付けると半径一メートルはあろう巨岩を造り出した。中川の伐刀絶技、巨岩石«ビッグエッジ»だ。

 それを真琴目掛けて投げ付けた!これならば先程の技は使用できない。躱した時にはもう一度、大地の岩石«ストーンエッジ»を真琴にぶつければいいと安直な読みをしていた。

 ゴオオオっという衝撃を纏いながら、巨岩が真っ正面から真琴に向かってくる!

 

 

「スゥー・・・・❰正拳突き❱!!!」

 

 

 真琴が巨岩に向かって正拳突きを放ち、中川の巨岩石«ビッグエッジ»を粉砕した!

 

「ふぅ、お前の岩石、柔いな」

 

 真琴は笑みを浮かべながら中川に目を向けた。

 

「ハァ!?何でノーダメなんだよ!?」

「何でって当たる前に、お前の岩石を俺の拳で打ち砕いただけだよ」

「くそっ・・・!」

 

「く、砕けちったー!中川選手の巨岩石«ビッグエッジ»が近衛選手の放った拳で粉砕されました!」

 

 

「やるじゃない!マコト!」

「でも、何で真琴さんは傷一つないのでしょう?例え真琴さんの防御力がunknownだとしても、傷もついていないなんて」

「それもそうよね・・・」

「それはね、外功の力だよ」

「外功?」

「それって、外側の力の事よね!?」

「その通りだよ、ステラ。よく知ってたね」

「昨日、真琴がイッキの病室で内功がどうたらって言ってたから、外功って事は逆に外側って意味よね?」

「脳筋のくせに良く分かりましたね」

「脳筋って何よ!?」

「まあまあ二人とも!それより一輝、外功ってなんなの?」

 

「外功とは文字通り、外側の力。中国では硬功夫(イーゴンフー)と呼ばれている。鍛練用の硬い木等に身体や腕をぶつけて気血を送り込み鍛練する事で、得られる力の事を指すんだ」

「真琴さんの拳は既に鋼鉄と化している訳ですか・・・」

「だからあんな巨岩を粉砕する事が出来たわけね」

 

 

 

 

「俺にお前の技は通用しない・・・。お前が“次に放つ”伐刀絶技もな」

 

 中川はその言葉に動揺を隠せなかった。真琴が既に自分の行動を読んでいるという事に他ならないからだ。しかし中川は真琴に、自分の技を悟られる事は決してないと思っていた。それは落ちこぼれの真琴に予測する術等を持ち合わせていないと、決め付けている他なかった。

 

「・・・だったら!これでも喰らえ!大地の牢獄«ガイアプリズン»!!」

 

 

 厚い壁が真琴を囲う様に、中川の手によって生み出されていく!真琴の上部分も囲い、正に牢獄に相応しい状態だった。

 

「出ました!中川選手の大地の牢獄«ガイアプリズン»!厚い壁とその高い防御力の前に、多くの伐刀者がなすすべなく敗北しています!近衛選手はこれを突破することが出来るのでしょうか!?」

 

「へぇーホントに牢獄だなぁ」

 

「サレンダーするなら今のうちだぜ?落第の拳«ワーストフィスト»さんよぉ!」

 

 真琴はその壁に触れながら岩の厚みを確認し、次の攻撃を思案していた。

 

「よし、これなら無拍子で抉じ開けられるな(ま、それ以外でも出来るけど、無拍子の方が手っ取り早いしな)」

 

 この無拍子は師匠である白浜兼一が編み出したオリジナル技。自身が習う、空手、ムエタイ、中国拳法の突きの要訣を混ぜ、柔術の体捌きで打ち出すというもの。その技を使い、様々な強敵を打ちのめして来た。兼一はこの無拍子を、自身の弟子である真琴に授けていたのだ。

 その威力は凄まじく、硬い鎧を身に纏う鎧武者の胴の部分を凹ませたり、兼一より一回り大きい巨漢ですら打ち倒してしまうほどだ。この技の前に、厚い壁など無意味なのだ。

 

 

「小さく前にならえ!・・・❰無拍子❱!!!」

 

 

 

 

 衝撃。

 真琴が岩壁を打ち破り、牢獄の中から姿を現した。その姿を視認した、会場中の生徒はただただ唖然とするしかなかった。中川の大地の牢獄«ガイアプリズン»は硬い防御力を誇ると学園中の生徒に認知されている。それを真琴はたった一撃で打ち砕いてみせたのだ!

 

「嘘だ!嘘だ!こんなの有り得ない!底辺伐刀者であるお前が!何故、俺の大地の牢獄«ガイアプリズン»を打ち砕くことが出来たんだ!!?」

 

「そうやって人を見下してる間は絶対にわからねぇよ」

 

「っ!!」

 

 真琴は徐々に中川へ歩を進めていく。中川からは汗がしたり、焦りが出てきていた。自分自身の技の数々が真琴に一切合切効かないのだから。

 真琴の歩みは止まらない。

 ドンドン自分に迫ってくる。

 

 そして真琴は言葉発しながら“ある技”を放っていく。

 

「マコトが放っている技、あれは❰気当たり❱!」

「学生伐刀者には気当たりを受け流す術を持つ者は少ないはずだからね」

「真琴さんも最初からやれば良かったのに・・・こんな回りくどいことしなくても」

 

 

「(あのオーラは・・・“あの人達”と同じもの・・・。だったら真琴の実力は達人級だということ?まさかあの歳で!?)」

 

 実況席に座る寧々も、アリスと同じ様に驚愕していた。

 

「(まこっちめ・・・気当たりを既に身に付けているとはいやはや驚いたねぇ・・・。あの技は気の掌握を修めなきゃ使い物にならないというのに、それじゃまこっちは、掌握に至ってる訳か・・・。流石、梁山泊の弟子なだけはあるね)」

 

「おい、«大地の守護者»さん、どうしたよ?反撃して来ないのか?」

 

「ヒッ・・・」

 

 中川の目には真琴が急に大きな姿へと変貌した様に見えていた。その姿を見た中川の身体からは、冷や汗が溢れだし、恐怖という感情が中川の心を埋め尽くしていく・・・。

 

「う、うわあああああ!!!」

 

 なんと中川は真琴の気当たりに当てられ、ステージ場から逃走してしまった。中川の心情は闘争心より恐怖心が勝ってしまったのだ。

 

 選抜戦においてステージ場から逃走をするという事は敗けを意味する。つまり・・・。

 

 

 

 

 

「中川聖夜 敵前逃亡の為、勝者 近衛真琴」

 

 

 

 

 

 場内アナウンスが無惨にも中川の敗北を知らせる。

 

「アイツ、マジかよ・・・気当たり当てただけで逃げやがった・・・・ガッツねぇなぁ・・・」

 

 

「し、仕合終了ー!一体誰が予想したでしょうか!中川選手が逃走してしまった為、近衛選手の勝利です!昨日に引継ぎ大波乱が起きました!底ランク伐刀者が高ランクの伐刀者を下すという番狂わせです!!今年の選抜戦は何が起きるか予想出来ません!今後の仕合に期待しましょう!ここで解説の西京先生、最後に近衛選手が放った技は一体なんでしょう?あれも武術の技なのでしょうか?それとも伐刀絶技ですか?」

 

「あれは❰気当たり❱と呼ばれる体術さ。闘気や殺気を放ち、相手を威嚇する技だねぇ」

「武術家であれば誰でも使えるのですか?」

「いんや、あれほどの技は気を掌握した一部の武術家のみだね。相手の精神に訴えかけて、この場から逃走されるなんて芸当は並みの武術家には出来ないよ」

「でも近衛選手にはそれができると?」

「そうなるね」

 

 

 その寧々の発言を聞いた他の生徒達は、不満を爆発させた。黒鉄一輝に続いて、落ちこぼれのレッテルを貼られた真琴が仕合に勝つだけでなく、思いもよらない芸当をやってのけてしまったからだ。

 

「ふざけないで下さい!あんな落第伐刀者がそんなこと出来るわけないです!」「そうだ!きっと何かの間違いだ!」「中川が調子悪かっただけだよ、んじゃなきゃ落第の拳«ワーストフィスト»に負けるはずないもん」「そうだ!そうだ!」

 

 生徒達の怒号が会場中を包み込んでいく。それは次第に広がり、会場中にいる全ての人間が言葉を放っているかの様だった。

 

 

「何よ!?アイツら!懲りないわね!」

「(真琴、次は僕が君を救う番だ!)」

 

 意を決して一輝が口を開こうとするより先に、寧々がマイクを掴み声をあらげさせた。

 

「静かにしな!!!!」

 

 寧々が大声を出すと、会場中に広がる生徒達の声は静かにおさまっていく。

 

「大体ねぇ!自分達よりほんの少し劣ってるからって何故そうやって下に決め付けるんだよ!あんた達が思ってるより身体能力というものは優れている事を理解しな!まこっちと黒坊が勝利を収めた事が、何よりの証拠だろうに・・・。いい加減に認めな、落第騎士達の実力はあんた達より、数段上にいるのさ!いや、数段以上だね。これだけ言ってまだ信じられないというのなら、私自ら気当たりを放ってみせるから、いつでも来な!相手をしてあげるよ」

 

 

 

 

「(西京先生、励ましの言葉、有難うございます。凄く嬉しいですよ)」

 

 真琴は父の友人である寧々の言葉で、心が満ちていくのを感じた。

 

「あ、寧々先生にとられちゃったか・・・」

「お兄様・・・」

「後で言ってあげれば良いわよ」

「それもそうだね」

 

 

 こうして、真琴の代表選抜戦一回戦目は無事終了した。

 




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