史上最強の武術家の弟子伐刀者マコト   作:紅河

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BATTLE.42 努湖彼野遊楽園

 空は見事な快晴。

 〝努湖彼野(どこかの)遊楽園〟の入口は蒼海を表すような装飾が施されている。

 貴徳原財閥は、この遊楽園と同時並行で水族館も運営し〝努湖彼野(どこかの)水族館〟と命名している。運営側の設立者兼命名者が水族館と同じな為、この様な装飾になっているのだ。

 

 二人は受付を済ませ、パンフレットを受け取りこれからのプランを立てている。

 

 

「さてと、何から乗りますか?刀華さん?」

 

「そうだね、王道のジェットコースターから行ってみる?」

 

「・・・刀華さんがそう言うなら」

 

「んじゃ、行こ?」

 

 二人は手を繋がないとはいかないものの、一度腕を動かしてしまえばお互いの掌が触れてしまう、そんな距離感でジェットコースターへ向かった。

 二人は前にも生徒会の面子と一緒に公共の場に、遊びに行ったことは何度かある。が、いつもとは違う服装、しかも二人っきりというシチュエーションが、不思議な緊張感を生んでいた。

 自然とお互いの口数は減り、歩みだけが進んでいた。

 

「(いざとなると、何を話していいか分からねぇ・・・)」

 

「(な、何の話題で話せば・・・)」

 

・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

「そ、そうだ。と、刀華さん、代表選抜戦の方はどうなんですか?」

 

「まこ君こそ、どうなの?苦戦しそうな相手とかいない?」

 

「苦戦しそうな、ですか・・・。まぁ刀華さんは当然として、破軍の連中の中だと一輝ですかね。苦戦するビジョンが見えるのは・・・」

 

「黒鉄君だけ?カナちゃんや噂のヴァーミリオンさんとかは?」

 

「正直に言って、その二人は本気一歩手前くらいですかね。ステラの場合攻撃が分かりやすいので対応しやすいのでいいのですが、カナタさんと対峙する場合は〝ある技〟を使わざるを得ないと言った具合です」

 

「ある技?」

 

「ええ。師匠から受け継いだ、俺にとって最も重要な技になります。刀華さんとの模擬戦でも使用してますよ」

 

「あぁ、〝あの技〟かぁ・・・。そうだね、あれ使わないとカナちゃんには対応出来ないかもね」

 

「ええ。カナタさんはそれほどの伐刀者ですから」

  

 二人が伐刀者しか出来ない話題をしていると、もうまもなくしてジェットコースター前へと到着した。

 土曜日という事もあってか、大勢の人々が列を作っている。真琴達の行動が早かったからか、待ち時間、一時間程でジェットコースター搭乗入口へと到着した。

 海というのをテーマにした装飾が周りに施されている。手荷物はスタッフに預け、席へと移動する。

 ジェットコースターとは人間を機械に乗せ、高所から猛スピードで登リ降りし、そのスリルを味わうというモノ。

 もし、施設側の確認の不備があれば命を落とし掛けない。そうならないよう、点検スタッフは念入りに行っているが・・・。しかし、搭乗する以上、頭を(よぎ)ざるを得ないというモノだ。今からそのジェットコースターに搭乗するかと思うと、ドクン、ドクン、という高揚感が二人を容赦なく襲ったのだった。

 刀華は友人や小中の修学旅行で幾度となく経験しているが、対する真琴はほんの少し違う。

 真琴は秋雨作の独自とれ~にんぐまっし~んで何度となく経験し、この場にいる。

 

 

「(刀華さんの前でこういう絶叫マシーンが苦手なんて、言えねぇ・・・)」

 

 そう、真琴は幼少期に秋雨作のマシーンのせいで、師匠の兼一同様、絶叫マシーンが苦手になってしまっているのだ。

 真琴はポーカーフェイスで隠してはいるが、その内心はガクガクのバックバクである。二人は肩から腹部までの

ガッチリと固定するタイプの安全バーをしっかりと付け、念を入れて備え付けられたであろう、ベルトも装着。

 

 真琴の心配を余所に、ジェットコースターは動き始める。

 ガタガタガタガタ・・・と金属と小型車両のタイヤとが組み合わされた独特な音を放ちながら、上へ、上へ、と登っていく。鉄骨で組み上げられた線路の上を小型車両が、ドンドン、ドンドン、登っていく。

 真琴達以外のお客も高揚感に襲われ、片やわくわくしている者、片や真琴と同じ様に心臓が破裂しそうなほど、恐怖と戦っているモノ、その様子は人それぞれだ。刀華はというと、この状況を純粋に楽しんでいるようだ。

 様々な思いを胸に、小型車両はジェットコースターの天辺へと到着した。

 

 

 

 

 ゴォォォォ・・・・・という音を立てながら真琴達を乗せた小型車両が・・・地面へと降りていった。

 

「(ギィィヤアァァァァァァ・・・・!)」

 

 真琴は声には出さないものの、心の中で悲鳴を思いっきり叫んだ。

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わってみれば、あっという間だったねー」

 

「え、ええ。そうですね(もう、二度とこのジェットコースターには乗らん・・・五回連続の捻りからの、二回転は、ないだろう・・・。あれ、マジで死ぬかと思った・・・)」

 

 ポーカーフェイスを装っている真琴。そんな真琴に刀華がこんな言葉を発した。

 

「まさか、あんなに強いまこ君が絶叫マシーンに弱いなんてね」

 

「え!?俺、口に出してました!?」

 

「え!?まさか本当に苦手なの!?(笑)」

 

「は、計りましたね!刀華さん!」

 

「ごめん!まこ君!まさかこんな意外な弱点がまこ君にあったなんて思わなくて・・・」

 

 

 そう、如何に真琴がポーカーフェイスを保とうとしても、体は正直なのだ。

 刀華は搭乗しまもなく、真琴の方を見たとき真琴の足が小刻みに動いていたのを見逃さなかった。それを見たからこそ、カマをかけてみたのだった。

 

「絶叫マシーンが苦手なら他のところに行かない?」

 

「あ、そうですね・・・。すみません、みっともない姿を晒して・・・」

 

「ううん。まこ君にこんな一面を見れただけで、私は嬉しいよ。前に生徒会の皆で遊びに行った時は、水族館とか動物園だったし」

 

「ふふっ、そういえばそうでしたね・・・。努湖彼野(どこかの)水族館、でしたっけ?」

 

「うん。まこ君が異様にテンションが上がってたのが印象的だったなぁ・・・」

 

「あれは、まぁ・・・(昔、師匠の奥さんと師匠の親友の奥さんとが戦った場所だから、テンションが上がってたとは言いづらい・・・)」

 

「もしかして、動物とか好きなの?」

 

「嫌いではないですね」

 

「んじゃ、ペットにしたい動物は?」

 

「え?ペットにしたい動物ですか?それはですね・・・」

 

 二人はペット談義をしつつ、次の目的地へと足を運んだ。

 次はどうやら、フードコーナーに向かうようだ。

 といっても真の目的地はその先のお化け屋敷のようだが・・・。道順的に はフードコーナーの方が近い為、お化け屋敷は食べた後のお楽しみという事になりそうだ。

 そのフードコーナーにはジャンクフードから和食、洋食、多種多様な食べ物屋が営んでおり、お店、一軒一軒が遊楽園のお城をバックに屋台形式で一列に並んでいるようだ。お店の前にはテーブルと椅子が設置してあり、その場で食べる事も出来そうだ。

 

「た、沢山ありますねぇ・・・」

 

「カナちゃん曰く、この遊園地は様々な料理が食べられるのも一つの魅力なんだって」 

 

「へぇ・・・」

 

 そんな、二人の目に止まったのはなんと、アイスクリーム屋だった。

 

 

  

「彼処にアイスクリームが売ってますよ」

 

「そうみたいだね、行ってみる?」

 

「ええ、行きましょう」

 

 二人が店の前に来ると、奥から一人の女性スタッフが姿を現した。

 

「いらっしゃいませ。ご注文は何に致しましょうか?」

 

「えっと、刀華さんは何にします?」

 

「私はソフトクリームのバニラ味で・・・。まこ君は?」

 

「俺は・・・ソフトクリームのチョコレートで・・・」

 

「はい、ソフトクリームのバニラお一つと、チョコレートお一つですね、少々お待ちください」

 

 そういうとスタッフは直ぐ様、作業に取り掛かった。真琴と刀華はお店の前で待つことにした。

 その数分後・・・。

 

「お待たせ致しました、ご注文のソフトクリーム、バニラ味とチョコレート味で御座います」

 

「あ、有難う御座います。はい、こっちが刀華さんのですね」

 

 真琴が刀華の分も品を受け取り、刀華へ手渡した。

 

「有難う、まこ君」

 

「では、ごゆっくりお楽しみ下さい」

 

「溶ける前に食べちゃいましょう」

 

「うん」

 

「「いただきまーす」」

 

 二人が口に入れると、一瞬にしてクリームが消えてしまった。まるで、冷たい雲を食べているようなそんな感覚だ。それでいて、口に残るのは濃厚なミルクの味・・・。刀華が食べているバニラではミルクとバニラ、二つの味が喧嘩することなく共存し、口に一杯に広がってゆく・・・。

 対する真琴のチョコレートはビターチョコレートを使用し、少しほろ苦い味に仕上げているようだ。その癖のない味わいに、舌が止まることなく舐めてしまう・・・。

 ふと気が付くと、二人の手にはコーンを包んでいた紙しか残ってはいなかった。

 

「このソフトクリーム、滅茶苦茶旨いですね・・・」

 

「う、うん。話す暇もなかったね・・・夢中になって食べちゃった・・・」

 

「こ、こんな美味しいソフトクリームがあったとは・・・他の味も食べてみたい・・・」

 

「まこ君、アイスとかケーキとかに目がないものね。カナちゃん達と一緒にクレープ食べ歩きとかにも行ったよね」 

 

「あの時は楽しかったですね。計何枚食べたんだっけか・・・」

 

「十枚とかじゃなかった?うた君とか雷君は五枚行けなかったし・・・」

 

「その位でしたっけ・・・」

 

「うん。その時、まこ君がスイーツ男子というのには驚いたなぁ」

 

「まぁ、最初はそうですよね。この顔ですし」

 

「私は、顔に傷があっても気にしないよ?」

 

「刀華さんはそうだとしても、他の人間はそうじゃないでしょう。生徒会の方々も最初はビックリしてましたし・・・」

 

「そうだけど・・・、私は気にしない。寧ろ格好いいと思う。まこ君がどういう経緯でそうなったか知っているけど、尚更私はまこ君の顔、好きだよ。だって、その傷はまこ君のお父さんとお母さんが残した最期の愛の形だもの。命を懸けて貴方を護り通したっていうね。だから私は好きだよ」

 

 その言葉に真琴は燃え上がるような熱い気持ちが湧き出てきた。この気持ちがなんなのか、自覚はしている。だが自覚しているだけだ。自覚しているだけで、一度たりとも口にしてはいない・・・。

  

「・・・はい、そうですね。父さんと母さんがいなければ俺はここには居ませんから」

 

「さて、もう一つ食べてから行く?」

 

「そうですね、そうしましょう。そうだ、今度アイスクリーム食べ歩きとか行ってみます?」

 

「生徒会の皆で?」

 

「はい」

 

「うた君や雷君が大変そうだけど」

 

「それも一興ですよ」

 

「フフッ、それもそうだね!」

 

 二人はまた、店を任されている女性スタッフに声を掛けたのだった。

 あの味をもう一度味わうために・・・。




いかがでしたか?

次回更新予定日は10月18日~20日の17:00~21:00の間とさせて頂きます。
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