史上最強の武術家の弟子伐刀者マコト   作:紅河

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BATTLE.48 〝史上最強の弟子〟❮白浜兼一❯VS〝落第騎士〟❮黒鉄一輝❯

 各々が部屋を出てから、それほど時間は経っていない。

 大体、数十分といったところだろう。第四訓練場に向けて足を進めている。

 

 真琴は久し振りに再会した兼一と共に・・・。

 一輝は憧れの兼一と一緒に会場へ向かう。

 アドバイスや真琴の過去話を交えながら・・・。

 

 一方、前を歩いていたステラはというと・・・。

 

 大好きな一輝を男に取られたからだろう。少々、気が立っているようだ。

 

「イッキ、なかなか私達のところへ戻らないわね・・・!」

 

「気持ちは分かりますけど、少しは隠す努力をしてください、ステラさん!」

 

「でも、ズルいわよ!マコトと白浜さんだけイッキを独占なんて!」

 

「白浜さんはお兄様の憧れなんです。憧れの人に初めてお会いしたんですから、ああなるのも仕方ないじゃないですか?気持ちは痛いほど分かりますけど・・・」

 

「二人とも、邪魔しちゃ悪いわ。私達は先に行きましょ?ね?」

 

「・・・分かったわ」「そうですね、アリス」

 

 二人は名残惜しそうに、後ろの三人を見つめながら前へと進む。

 進んでは振り返り、進んではまた振り返り、またまた進んでは振り返りを続けながら・・・。

 

 ―――――――――

 

 第四訓練場に到着した三人。

 程なくして、後ろから真琴達も到着する。

 先に来ていた三人は控え室で動きやすい服に着替え、会場へと向かっていた。

 だがその会場にはある人物が一人、中央で佇んでいた。

 その人物は・・・なんと、新宮寺黒乃だった。

 

「あれ?理事長先生?何故貴女がここに?」

 

「ん?近衛から聞いてないのか?」

 

「何も聞いてないですよ、イッキと白浜兼一さんとの組手がここで行われるってこと以外は・・・」

 

「ふむ、それでは私から話そう」

 

 彼女が言うには、休日で行われる訓練には学園教師が随伴しなければならないとのことだった。

 普段の使用であれば、生徒達だけで      いいのだが・・・。休日となると話は違ってくる。

 休日では教師の人員が減り、対処する人間が少ない。そんな状況で問題が起きてしまうと、子供達に危険が及ぶかもしれない。

 子供を守るのが教師の務め。

 それを放置したり、自分の保身のために問題に見向きもしない奴など論外だ。

 

 ここに黒乃が来ているのは真琴から連絡を受けたからというのもあるが・・・、たまたま学園で空いているのが黒乃しか居なかったからだ。

 もっとも、この破軍では休日に訓練場を使用する生徒は少ないというのが現状なのだが・・・。

 

 しかし、休日に努力する人間の方が珍しい。

 何故なら・・・鍛練好きや修業好き、勝ちたいと言う確固たる意思でもなければ、休日はゆっくり過ごしたり、外で遊ぶというのが今時の高校生というものだ。

 ここの破軍学園の生徒もそう言える。

 

「とまぁ、こういうことだ。理解したか?」

 

「はい、ありがとうごさいます。理事長先生」

 

「真琴さんも先に言ってくれれば良いのに・・・」

 

「たまたま、忘れてたのよ。良く有ることだわ」

 

 

 そうこうしているうちに真琴達が到着した。

 だが、一人いつもとは違う服装の人物がいる。

 その者は、白い胴着に紺色のカンフーパンツだろうか?それを着用している。それと、カンフーシューズを履きこちらに進む。

 

「ま、真琴さん!?その格好は・・・」

 

 なんと、その者は三人がよく知る近衛真琴、その人だった。

 普段の稽古では見ない格好だ。

 

「ん?あぁ、そういや珠雫達には初めてだったか・・・」

 

「何かちぐはぐね。ジャパーンの胴着に中国のカンフーパンツとシューズとそれから・・・手に巻いてるのは何?」

 

「これは確か、ムエタイのバンテージだったかしら?」

 

「そ、流石アリス、よく知ってんな。これが俺の本来の衣装なんだよ。師匠もいるし、こっちにした。もっとも服の中には帷子も着るんだけど、今日は別に切り合うわけじゃないから置いてきた」

 

「我ら、梁山泊の弟子の正式装束だね」

 

 良く見れると、左胸辺りに『弟子二号』と刺繍が縫ってある。

  

「へぇー変わってるわね」

 

「良く言われる」

 

「貴方が、かの有名な白浜兼一さんですか」

 

 ステラ達の後ろから真宮寺の声が掛かる。

 

「はい。そうですけど、貴女は?」

 

「私はこの破軍学園で理事長を勤めております、新宮寺黒乃と申します」

 

「あぁ!いつもうちの真琴がお世話になってます。去年は真琴がご迷惑をかけたようで・・・」

 

「いえ、子供を守るのが私達の仕事ですから。真琴君は強いですからね、活躍を期待しています」

 

「アハハ、それにお応えできればいいですけどね」

 

 と、大人の世間話が花を咲かせている。

 真琴達は置き去りに・・・。 

 

「理事長、話はそれくらいでいいでしょ?それより・・・」

 

「あぁ、すまなかったな。固有霊装(デバイス)ありの組手でいいんだな?」

 

「はい。審判、宜しくお願いします」

 

「了解だ」

 

「では、準備しようか、一輝君。いい組手にしよう!」

 

「はい!!」

 

 ―――――――――

 

 二人の準備運動が終了し、ステージへと向かう。

 上手に兼一、下手に一輝。

 下手側の少し離れたところにステラご一行。

 そこに、真琴もいる。

 

「ステラ、珠雫、アリス、よく目に焼き付けとけ。〝真の武術家〟の戦いがどんなものかを。俺達がどんなに力を合わせても傷一つつけられない、特A級の達人級(マスタークラス)の実力をな・・・。目にする事なんてそうそうねぇぞ」

 

「前に真琴さんが言ってましたね」

 

「そういえば、そうだったな」

 

 前に真琴が武術位階を話したことがあった。

 珠雫はそれを言っているのだろう。

 

「私はいまいち、ピンと来ないけどね。あの白浜さんの実力・・・」

 

「お前は話を聞くより、実際に観たり体験したりした方が実感沸くだろ。後で組手を申し込んでみろよ」

 

「分かったわ」 

 

 

 

「二人は分かっていると思うが一度、組手のルールを説明させてもらう。

 第一、相手を殺してはならない

 第二、急所を攻撃する場合は寸土に留めておく事

 第三、気絶はあり 

 両者、これらのルール守り組手に臨んでくれ!黒鉄は幻想形態で固有霊装(デバイス)を展開しろ!」

 

 黒乃の掛け声と共に両者の闘志が、沸々とマグマように涌き出てくる。

 まるで、ここに火山があるかのように熱気が辺り一面を包み込む。

 

 

「では、これより!〝梁山泊〟❮白浜兼一❯対〝破軍学園〟❮黒鉄一輝❯の交流組手を始める!両者準備はいいか!?」

 

「いつでもどうぞ」

 

「・・・来てくれ、隕鉄!」

 

 手を翳したその中から絞り出すかのように、一降りの刀が精製される。

 そして、それを構えて相手を見据える。

 

「(一輝君の実力、どれほどのものか拝見させてもらおう。僕の見積りでは恐らく・・・)」

 

 ある一定の実力者であれば、手を握る、目を見つめる、相手の仕草等から実力を把握出来る。

 真琴もその術を梁山泊で学び身に付けた。

 兼一もそうである。

 

 当時、兼一がそつなさが目立つ弟子クラスだった頃・・・。長老から流水制空圏を学び、それを活用し数多の天才達を打ち倒してきた。

 その中で、『相手を観る力』と『気の扱い』が破格のレベルへと成長を遂げた。

 

 今の兼一は特A級の達人級。

 その“観る力”は最早、〝神速〟と言っていいほど素早く正確になっていた。

 真琴のとは比べるモノではない。

 真琴は未だ妙手だ。

 相手を見切るには些か時間がいる。

 と言っても、弟子級やその他大勢よりかは早く、正確無比だが・・・。

 

 

 兼一の見切りが終え、それと同時に組手のゴングが響き渡る。

 

「組手、始め!」

 

「〝梁山泊〟❮白浜兼一❯参る!」

 

「〝破軍学園〟❮黒鉄一輝❯行きます!」

 

 両者の掛け声と共に仕合が始まった。

 先に仕掛けたのは一輝からだった。

 姿勢を低くし、突きの構えだ。

 

「(こちらから!この戦いは胸を借りるつもりで行こう!!迷ってなんかいられない!前へと進むんだ、ステラと真琴達と一緒に!!)ハアァ!」

 

 一輝が出せる通常の突きが兼一へ突き進む。

 ただの弟子級であれば躱すのが難しいだろう。

 それほどのスピードが出ている。

 

 が・・・。

 

 ひらりと兼一は回避してしまう。

 

 

「よ、避けた!?あのスピードはかなりのモノよ!?」

 

 ステラ達が驚くのも無理はない。

 そこまでの速度が出ていたのだから。

 

「鋭い、いい一撃だ。弟子クラスであれば今ので沈んでいたね」

 

「(まだだ!)」

 

 一輝はなおも斬撃を繰り出す。

 お構い無しに。

 逆なで切り、振り下ろし、突き、横凪ぎ、左切り上げ、右切り上げ。

 全引き出しを総動員しながら、この戦闘を構築していく。

 

 例えるなら、緻密に出来たアトラクションのように!戦闘を組み上げていく!!

 

 

「(あれ、いってみるか!)」

 

 一輝の中で何か思い付いたようだ。

 一輝が兼一から距離を取り、全速力で向かって来る。

 兼一は前羽の構えを取る。

 

「あれは絶対防御の〝前羽の構え〟」

 

「確か、マコトが仕合で使ってたわね」

 

「そうだ。師匠もよく使う構えだ」

 

「待って、一輝が何か仕掛けるようよ」

 

 こうして、話をしている間に一輝が攻撃を放っていた。

 

 数メートルから兼一目掛けての跳躍。

 だが、その斬撃は如何にもカウンターしてくださいと言わんばかりだ。

 

「ダメよ!イッキ!今行ったら!」

 

 誰しもが一輝の敗北する構図が目に浮かんだだろう。

 

 〝観の目〟を持つ者なら別だが・・・。

 

 真っ直ぐ、兼一目掛けて隕鉄が振り下ろされる。

 

 

「(ふむ・・・。なら、ここは)❮白刃流し❯!」

 

「危ない!お兄様!」

 

 珠雫の悲鳴が木霊する。

 が、兼一の拳が顔に当たった直後、一輝の体が霧のように消え失せた。

 

「おぉ、〝虚実技〟!」

 

 

「・・・❮第四秘剣―蜃気狼❯」

 

 霧に隠れ、その気配は兼一の後ろからだ。

 

「せやァ!」

 

 一輝の振り下ろしが兼一へ迫り来る。

 絶対に躱すことは出来ない。

 完全に背後を取った一撃。

 ステラ、珠雫は決まったと確信する。

 

「イッキの一撃が入る!」

 

 

 

 誰が観てもそう見える。

 破軍の生徒達も。

 教師でさえも。

 

 しかし・・・。

 

 

「❮白刃流し❯!」

 

 その声と共に拳が打ち出される。

 しかも、振り向きもせずに!

 兼一の右拳が隕鉄をはね除け、一輝の顔面へ一直線。

 

 

「(ま、まずい!)」

 

 と、思いつつももう離れられない距離だ。

 バチーン!

 快音と共に一人の青年の顔面に直撃した。

 

「(ん?これは・・・)」

 

 直撃したというのに、何か違和感を感じる兼一。

 

「イッキ!!」

 

 一輝のダメージにステラが反応してしまう。観客のステラの心配に拍車が掛かる。

 思わずステラがステージへ駆け寄ってしまった。と、見たその瞬間!

 

「危ないところでした。・・・クリーンヒットしていたら、今ので沈んでました」

 

 だが、一輝は倒れず、戦闘体勢を維持している。

 どうやら、当たる直前に軸をずらしたようだ。

 

「流石、一輝君。やっぱり躱していたか」

 

「な、なんとかですけど・・・」

 

「イッキ、大丈夫なの?」

 

「うん。心配かけたね、ステラ」

 

「まさか、その歳で虚実を完璧にこなせるとはね」

 

「努力してきましたから」

 

 〝努力〟これだけの言葉では解決するものではない。

 ましてや虚実など、武術の中でも難しいとさせれる部類だというのに・・・。

 もし、努力だけでここまで来たとするならば、相当な数の修業を積んだといえるだろう。

 

 

「大したものだよ、ここまでの剣技を扱えるとは・・・、驚いたよ」

 

 突然の誉め言葉に言葉がでない一輝。

 

「これは僕の経験から言わせてもらうけど。黒鉄一輝君、君は・・・もう既に、剣術をマスターしてると言っていいね。体術や身体能力、経験、気に関してはまだだけど、剣術だけで言えば、その極みに近付いている」




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次回更新予定日は12月13日~14日の17:00~21:00の間とさせて頂きます!
御意見、御感想、質問誤字脱字があれば、御遠慮なくメッセージなどで御送り下さい!お待ちしております。

次回はいよいよ、あの二人が登場です!お楽しみに!
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