史上最強の武術家の弟子伐刀者マコト   作:紅河

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こんにちは、紅河です!

なんと、通算UAが100000に到達致しました!
皆様、本当に有難うございます!!
これからも、頑張っていきますので、宜しくお願い致します!

最近、Twitterを始めました。あくまでも、小説のためにですが・・・。
@Kouga_115634です。宜しくお願い致します。


BATTLE.52 決着

 

 

「さて、ステラの実力がどこまで美羽さんに通用するか・・・」

 

「普通に考えれば、ステラさんに勝ち目は?」

 

「勝ち目は・・・ないよ」

 

 恋人である一輝のあまりにも冷たい一言。

 

「お、お兄様・・・」

 

 

 だが、その事実がステラと美羽の実力を物語っていた。

 ステラは伐刀者としては破格のAランクだ。これは紛れもない事実。

 はたまた、美羽も武術家の頂点、特A級の達人級であるのも、また事実。

 

 どちらも腕は確かなのは変わりないが、伐刀者のランクはあくまで魔力と魔力制御などを国際魔導騎士連盟が査定し、決定された。ただのランク付けにすぎない。

 高ランクだからといって強いというわけではない。それは黒鉄一輝を見れば分かることだろう。

 

 しかし、美羽や兼一の達人級は違う。

 例え、最上位の弟子クラスだったとしても、どんなに足掻いても、どんなに優れた技を持つ伐刀者でも、どんなに高ランクの伐刀者でも、達人級には勝てない。白兵戦の戦闘においては、武術家、達人級達には歯が立たないのだ。

 

 

 

 

「(何?この雰囲気・・・)」

 

 ステラの顔に小さな汗が滴る。

 

「(これまで戦ってきた伐刀者とも、イッキとも、ましてやマコトとも違う・・・)」

 

 ナニかを肌で感じるステラ。不思議な緊張感が彼女に押し寄せた。

 

「(美羽さんから神々しい、まるで天使を見ているかのようなオーラを感じる・・・)」

 

 レーヴァテインを構えたまま、硬直を続けるステラ。

 

「(今は様子見よ・・・。相手の実力が上な以上、突っ込めばすぐさま負けることになるわ)」

 

「仕掛けて来ないのですか?」

 

 ステラを煽る美羽。

 

 兼一を見ていれば分かるはずだ。美羽も“終えている”。

 

「なら、こちらから行きますわよ!」

 

 最初の真琴戦と同じように速攻をかけた美羽。その速さは真琴の比ではない。それより更に速く、ステラへ接近する。

 

「は、速い!?」

 

「(さぁ、どうする?ステラ)」

 

 瞬く間にステラへ近付く。

 

「(考えてる余裕はないわ!やるだけやってみなきゃ!)」

 

 覚悟を決め、攻撃を繰り出す。

 相手に合わせ、レーヴァテインを真っ直ぐに突き刺し、その鋭き突きを美羽に差し向けた。

 

 その突きが当たる直前。

 流れるように体勢を変え、その一瞬、ステラの視界から目の前の美羽が消えた。

 

「(なっ!どこ!?)」

 

 しかし、その気配はすぐに感じ取れた。

 

「そこ!」

 

 左の真横に感じた美羽の気配に自らの大剣を横に倒し、横凪ぎを放つ。

 

 だが、その時も当たる直前に美羽が視界から消え失せる。

 

「また!?」

 

「扣歩!」

 

「え?」

 

「擺歩!」

 

 その直後、ステラの視界に天井が目に入る。と同時に自分の状態にも気づく・・・。

 

「くっ!」

 

 魔力制御による身体強化によって、地面に当たる前に宙返りで回避する。

 

「セーフですね」

 

「間一髪ってところだけどな」

 

 真琴が一つ、余計な事を言う。

 

「やりますわね、伐刀者特有の身体強化ですか」

 

「ええ。今の技は・・・」

 

「歩法の一種ですわ」

 

「「歩法?」」

 

 ステラとほぼ同時に疑問符が頭に浮かぶ、珠雫。いつもの如く、真琴に聞くのだった。

 

「歩法とは歩く方法の意味ですよね?うちの剣術にも、確かありましたし」

 

「だろうな。武術には様々な歩法が作られ、使用されてきた」

 

「あれは、恐らく八卦掌の一手だね」

 

 一輝が美羽の技について補足する。多くの武術本を読破してきた一輝にとって、知らない技の方が少ないのだ。勿論、一輝も万能ではないから全てを知っているとも限らないが・・・。

 

「八卦掌・・・中国拳法の一つですね。美羽さんも中国拳法を使うんですか?」

 

「いや、主に美羽さんは三つの武術で戦う。ただ美羽さんの師匠は言わずもがな無敵超人こと、風林寺隼人。たまに中国の硬功夫なんかも授けて貰ってて、その時とかに技を教わったのさ」

 

「三つの武術・・・ね」

 

「美羽さんの武術って一体なんですか?」

 

 これは、当然の疑問とだろう。真琴もこればっかりは答えなければなるまい。

 

「美羽さんの武術は基本的に三つ・・・。一つに風林寺家の我流武術」

 

「が、〝我流〟?その意味は分かりますが、我流ってことはまさか一から全て?」

 

「その通りだよ、珠雫。僕も書物で知っただけの知識しかないけど、風林寺家の一族はずば抜けた戦闘センスを持った人間が多く、その技のほとんどが自力で編み出したものらしい」

 

 つまり、体さばきも、武術において重要である呼吸のタイミング、歩法、武術における全ての事柄を自分自身達で編み出し、それを構成しているのだ。

 

「言葉で聞くと信じられませんけど、事実・・・なんですね」

 

「そうだ」

 

「それじゃ、他のは・・・」

 

 人間、一度気になってしまってはもう止まらない。珠雫は他の二つについても追求していってしまう。

 

「もう一つは、プンチャック・シラットだ」

 

「プンチャック・シラット?」

 

 プンチャック・シラットとは、東南アジアで生まれた伝統的な武術である。

 日本ではあまりその名は知られていないが、外国ではポピュラーで日本で言うところの空手並みに認知されており、流派も多数存在する。

 

 が、今まで口伝で継承されてきたため、詳しいことは分かってはいない。

 主にジャングルファイトで使用する技があり、奇っ怪な動きを特徴とする。見極め、修得に困難を極める。

 

 ティタード王国と呼ばれる国で数多のシラットの達人がおり、その中でも無敵超人と同格の人物が居た。美羽と兼一、ティタード王国を巡る戦いに巻き込まれたのはまた、別のお話し。

 

「プンチャック・シラット・・・。聞いたことないですね」

 

「流石の私も、シラットについては何も知らないわ」

 

「まぁ、日本では知られてないマイナーの武術だからな、仕方無いな」

 

「それじゃ最後の一つって?」

 

「それは・・・な」

 

 真琴が言おうとした、その瞬間。

 ステラ達の戦闘が加速する。

 

「ステラさんが先に仕掛けた・・・?」

 

「ハアァァァ!」

 

 なんとか、なんとか、戦いにはついて行けてる・・・。けど・・・肝心な手応えは全くない。あしらわれているようなそんな感覚が、始まってからずっと私から離れない。

 

 けど、待ってたって勝機はない!私のやれる事をやるだけよ!

 

 戦闘中、覚悟を決める。達人級の実力は前の戦闘で把握は出来た。勝てないのなら、一回でいい、一度でいいから、一撃だけでもお見舞いする!

 

 そう、固く闘志を燃やすステラだった。

 

「(ステラちゃんの伐刀者としての能力、それなりに把握出来ましたわね。炎を司る能力・・・、ただそれだけっていう感じがしませんわ・・・これは一体?)」

 

 美羽の方も何かを感じていた。

 それは一体何なのか?ステラに眠る秘められし力なのか、今は知るよしもない。

 

 この戦闘中、ステラは能力を発揮していた。

 美羽の直接物理攻撃を防ぐために、妃竜の羽衣を発動させていた。

 丁度、真琴の話が終えたところで・・・。

 

「(さっき、体に当てれましたけれど、やはり通用はしませんでしたわね。弟子クラス開展程度の実力では・・・)」

 

 美羽は特A級の達人級だ。といっても達人歴は梁山泊の面々に比べたら、日は浅いのだ。

 しかし、❮動❯の気を持つ者、優秀な遺伝子を受け継いでいるからなのか、高校生時代から破格の強さとポテンシャルを有していた。

 同じ高校生同士であっても美羽にはほとんど敵わなかったのだ。圧倒的な力を持つ者だからこそ、自身の力をコントロールする術を美羽は身に付けた。

 そうしなければ大惨事になりかねないから。

 

 それが、❮動❯の気を持つ者の宿命だ。もし加減を間違えれば相手を殺してしまうという事に発展する恐れがあるのだから。

 

「(少し体内レベルを上げなければなりませんですわね・・・。弟子クラス最上位、兼一さんとの思い出深いあの頃の私まで・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘は前ほどではないにしても、長めに行われた。

 美羽は損傷軽微と言ったところだが、ステラはというと・・・。

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

 満身創痍だった。

 息切れ、妃竜の羽衣は維持しているのがやっとの状態だ。

 

「勝負、ありましたわ」

 

 これは、ステラに向けての一言だった。

 その痛烈な一言にステラは、自分自身の中で激しい怒りを感じていた。それは相手へではない。“自分自身”に対してだった。

 

 ここに来るまで、自分の能力を制御しながら、周りの人間に止められながら、自分自身の道を歩んできた。

 剣術も自分で編み出して、修練を積んでここまでの実力にまでなった。

 

 けど、それまでだった。

 私の実力はこんなものなのかと・・・。

 あの日々は無駄だったのかと・・・。

 こんな愚考を繰り返してしまう。

 

 そんな情けない自分に余計、腹が立ったのだ。

 だが、それと同時に喜びも押し寄せる。

 

 日本に来日して、様々な強者と戦えている。 

 あの国では自分を超えられる存在はもう、居はしなかった。

 上へは目指せないと感じていたから、あの故郷を離れた。

 そして、その選択は正しかった。

 

「・・・いえ、ま、まだ・・・まだ」

 

 もう一度、レーヴァテインを構え直す。

 まだだ・・・!

 まだだ・・・!

 

 もう一度、立ち向かう!

 私はまだ、負けてない!!!

 

「ステラ・・・」

 

「へっ、いい目をするようになったな」

 

「うんうん。若いっていうのは良いものだね」

 

 頷く、兼一。

 

「・・・来るというのなら、受けて立ちますわ」

 

「・・・ヤァァァ!」

 

 ボフッ!

 ステラのレーヴァテインに炎が纏う。彼女の闘志が大剣に乗り移ったかのように・・・。

 

 そこから、ステラの猛攻が止まらない。

 ボロボロだというのに、何処からそんな力が湧いてくるのか・・・。

 

 炎の精霊がその身に宿ったかのように、ステラの猛ラッシュが美羽を襲った。

 しかし、美羽も負けていない。

 

 空に舞う羽のように、ヒラりヒラりと躱してゆく。

 

 まるで鳥が戦っているように、そんな情景が広がっていた。

 

「・・・綺麗」

 

 珠雫が思わず、その言葉を口にした。

 美羽の姿に魅入られたか、はたまたこの戦いの景色になのか、それは恐らく前者だろう。

 

「(これ以上長くするとステラちゃんに悪いですわ!次の一撃で決めませんと!)」

 

 ステラの皇室剣技(インペリアルアーツ)はステラ自分自身の技をカバーするために編み出された。

 その数多くの剣技に一輝ですら苦戦したのだ。

 といっても武器は大剣。

 スピードのある武器には速さで劣ってしまう。

 

 ましてや、美羽は真琴や兼一よりスピード重視の武術家だ。その大剣に攻撃を合わせることなど、容易なのだ。

 

「フッ!」

 

 ステラが美羽に向けて、左振り下ろしを放つ。真っ直ぐに、身体に向かって真っ直ぐに!

 

「・・・待ってましたわ。❮風林寺浸透撃合わせつぶて❯!」

 

 ステラの大剣をサッと避けた美羽は、それと同時に二つの拳を相手へ打ち出す。

 狙うは一点、身体のど真ん中。鳩尾ではないが、その下辺りだ。

 

 ❮風林寺浸透撃合わせつぶて❯は中国拳法の柔拳、浸透勁と融合させた技。

 相手の体力を根こそぎ奪うというもの。世直しで伐刀者と死闘を繰り広げることもあってからか、伐刀者用に魔力も奪うよう、細工もしている。

 

 それを繰り出したのだ。

 

「ステラ!」

 

「カハッ・・・!」

 

 体内の魔力を掻き回され、体力すらも奪われたステラは、ゆっくりと沈んだ。

 

 美羽に支えられながら、ステラは目を閉じた。

 

「そこまで!勝者、梁山泊、〝白浜美羽〟!」

 

 

 無慈悲なゴングが会場に轟いた。

 




いかがでしたか?
楽しんでいただけたでしょうか?


御意見、御感想、質問誤字脱字があれば、御遠慮なくメッセージなどで御送り下さい!お待ちしております。

次回更新予定日は1月22日~23日の17時00分~21時00分とさせていただきます!

今回使用した美羽の技は、原作にあった技を私がアレンジしたモノになります。
ですから、この場にて説明をさせていただきます。

❮風林寺浸透撃合わせつぶて❯

風林寺家の体さばきによって、作られた技の一つ。美羽の突き技のオリジナル。本来は味方の攻撃に合わせて使うものだが、合わせなくとも相手にダメージを与えるべく編み出した。
中国拳法の浸透勁を組み合わせることで、相手の内部を攻撃する。伐刀者用に魔力を奪う気も練り込んである技。

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