「では、次に一輝、お前だ」
冷たい視線が一輝へ迫る。
氷山の吹雪に似た冷たい冷たい視線だ。
「と、父さん」
「お前はヴァーミリオン皇国の姫、ステラ殿下と恋人関係だとの報告だが、そうなのか?」
「はい。事実です」
「まさか、ヴァーミリオン皇国のご令嬢とな・・・」
「僕は、彼女を愛していますし、彼女も愛してくれています。・・・覚悟は決めています」
「ほう・・・」
一輝が真っ直ぐな目で黒鉄さんを見つめている。
まぁ、普段からのイチャイチャ振りを見れば、そんなの分かりきってることなんだが。
あのイチャイチャ振りはバカップル一歩手前と言わざるを得んな・・・。
一輝とステラの二人。
誰かが見ている分には問題なく普通に振る舞っているのだが、一度離れてから様子を見ると・・・。
ところ構わずキスとかはしてないけど、手握ったり、腕組んだり・・・って感じにイチャイチャしている。
っと脱線したな。
さて、何を言われるのやら。
「お前みたいな、落第騎士が!天才騎士と釣り合うわけないだろう!?付き合ってるのもステラ殿下の戯れだっ!」
と、ここで茶々を入れる、赤座守。
いわゆる野次だ。
ま、どうでもいいな。言葉はわりぃけど。
「今、お前は要らん。黙っていろ」
「っ・・・はい」
おっ、黙った。上司の言葉には弱いのか、コイツ。
腰巾着なだけはあるな!
「・・・さて、話を戻そうか・・・。一輝、覚悟と言ったか。前までただの子供だったお前が、言うようになったな」
黒鉄の親としての意見だろう。
その言葉通り、俺達は年齢的にはまだ子供だ。世間も、闇が蔓延る現代社会も知らない、ただの餓鬼だ。
黒鉄さんにとって、一輝の言葉は生意気な子供の反発声としか聴こえていないんだろうな。恐らくだけど。
「・・・と、父さん!確かに前まで子供で、戦うことも出来ない、ちっぽけな存在だったと思います。けど、今は違う!好きな人が出来て、大事な
言い切ったな、一輝。
黒鉄さんの反応は?
「・・・成る程。お前は自分が弱いから教えてもらえないと、見てもらえないと、そう思っていたのか」
おっ?
一輝がその言葉に明るい表情を見せた。望んでた答えが来るか?
「だが、才能の無い人間に技術を教え込んだところで、
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・は?今、何て言った?
「・・・む、無益?」
「そうだ。無益で済むのならまだいいだろう。しかし、中途半端な力を身に付け、中途半端な結果しか生まない。・・・お前では無理だ。・・・だから、家に戻れ」
その父さんの言葉に、僕の世界が止まった。
一瞬にして世界が暗闇に覆われ、蕀の鎖が僕を縛り付けた。
また、
嫌だ。
それは、嫌だ!
けれど、僕が拒否をしても、蕀は止まらない。押し寄せてくる。
腕に、足に、首に、蕀が絡み付いてくる。
痛い、痛い、痛い!
誰か、誰か、僕を助けてくれ・・・。
この呪縛から、僕を解き放ってくれ!
もう、見向きされなくなるのは嫌だ・・・。
パァン!
手が背中を叩く音がした。
誰だ?僕の背中を叩いたのは?
誰だ?僕を助けてくれるのは?
「大丈夫だ、一輝。俺がいるのを忘れるな」
あっ・・・。この声は・・・。
「俺と七星剣武祭で戦え」
そうだ。僕は約束したんだ。
「俺の大事な親友を馬鹿にするなあああああ!!!!」
そうだ。彼は僕を助けてくれたんだ。
「まぁな、しかも早朝4時にやってたな」
「その手があったね! 僕もやってみるかな?」
「お前正気か!? いやリミッター外して戦う男にそんな事は無粋だな」
そうだ。彼と一緒に訓練を続けたんだ・・・。
こうやって、父さんに会う日までずっと・・・。
「・・・真琴」
「言ったろ?俺が側にいるってよ」
「・・・そうだったね、有難う」
「いいさ、別に。それより・・・黒鉄さん、ちょっといいですか?」
「・・・何かな?近衛君」
「国際連盟の日本支部長だか知りませんけど、言わせてもらいます。貴方、実の息子になんでそんな言葉を掛けるんですか!?」
「・・・なんだと?」
「父親というのは子供にとってヒーローでなくてはいけないんです。道に迷っているなら、目一杯背中を押してやる。息子が困ってるなら、助けてやる。落ち込んでるなら、全力で励ます。それが父親ってもんでしょう!?」
真琴・・・。
その真琴の言葉には何故か、ずっしりとした重味を僕は感じた。
「それを何ですか、才能の無い人間に教える価値はないから無益?それは違う!〝師は弟子を育て、弟子は師を育てる〟武術は、剣術は!そういうものじゃないんですか!?」
真琴の振り絞った声がこの広い一室に、轟いた。
赤座さんはびくつき、父さんは沈黙でそれを聴いていた。けど、父さんは何処か、寂しそうなそんな気がした。
「・・・君の言いたいことは分かった」
「黒鉄さん!?良いんですか!?こんなガキの言い分なんて聞かなくても・・・!」
赤座さんの申し分に父さんは・・・。
「元々、お前が蒔いた種なのだ。上司である私が部下の不始末をつけるのは当然だろう」
「・・・」
苛立ちと目線を僕達の方へ向け、赤座さんが身を引いた。
「近衛君、君の所属は?その言葉から察するにどこかで武術でも学んでそうだが」
「梁山泊、俺は梁山泊の弟子二号。貴方なら梁山泊は知っているでしょう?」
「り、梁山泊・・・。活人拳の猛者達が集う場所か、どうりでな(新島さんの知り合いな訳だ。まさか、梁山泊の身内が伐刀者になるとは・・・)」
「はい、そこで俺は育てられました。だからこそはっきり、言えます。貴方は間違っています、黒鉄家当主としては正しいのかも知れませんが、父親としては間違ってます」
「・・・そうかもしれんな」
「言いたいことも言ったので、あと俺達に聞くことはありますか?」
「いや、無い」
「なら、俺達は帰ります。行くぞ、一輝」
「ちょっと、待って」
「どうかしたか?」
「父さん、一つ提案があります」
◇◆◇◆◇
「一輝、本当にあれで良かったのか?」
ここは、国際魔導騎士連盟日本支部前。用事が完了し、帰宅途中の俺と一輝。
帰り支度のいつもの世間話だ。
「うん。あれは僕が元々望んでいたことだから」
「だからってな、無茶な提案にも程があるだろ・・・」
「無茶も承知さ。けど納得させるにはこの手しか思い付かなかったんだ」
「だろうな、特に赤座ってやろうにはな。ともあれ無事に帰れるんだ、早く行こうぜ」
「ああ」
「んじゃ、帰り道は走っていくか、トレーニングがてら」
「良いね!どっちが速く着くかの競争と行こうよ!負けたら夕飯奢りで」
「乗った!レディー、ゴー!」
短いようで長い、事情聴取が終了した。
一人の青年の承認欲求。親に認められたいっていう些細な気持ち。
もう一人の青年の救世主的欲求。他者を助けたい、友を救いたいという確固たる意志。
それがここに渦巻き、一つの嵐を生んだのだった。
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次回更新予定日は4月13日~14日の17時00分~21時00分とさせていただきます。