お待たせしてすみません!!!
ようやっと完成致しました!!
カナタの真骨頂、星屑の剣を躱したことで会場中の歓声が大きく膨れ上がった。
「皆さん!み、観ましたでしょうか!?貴徳原選手の伐刀絶技を近衛選手は見事、回避してみせました!しかし、どうやったのでしょう?私には理解出来ませんでした・・・、西京先生が解説に居ないことが悔やまれます!!」
半月の愚痴が入りつつも、実況の熱はドンドン、加速していく。
真琴、カナタは再度構え直し、お互いを見据える。
真琴は威圧殲滅の天地上下の構え、対するカナタはレイピア型の固有霊装、フランチェスカを前へ差し向ける。
真琴の目は真っ直ぐとカナタの眼を見つめ、離さない。
「まさか、私の星屑の剣を躱すとは。一体、どんなからくりですか?」
「わざわざ教えるほど、俺はお人好しじゃないですよ」
もう一度、心を静め、川の中に点在する岩のように水を後ろへ受け流す!
そうだ、深く、深く心を静めろ。
強敵だからこそ、心の中に墜ちる淵はある。
「それも、そうですわね!」
発声と同時に、カナタが突進を開始する。至近距離、レイピア特有の突き攻撃だ。
―――突きの連打。
一瞬たりとも緩めることなく、猛攻を続ける。
受け手の真琴はその攻撃を後ろへ流す。ひらりひらりと身体を反らしながら。
ボコン!
ボコン!
またボコン!と大きな音を立ち、その都度ステージ床が弾け飛ぶ!
「ラッシュ!ラッシュ!ラッシュ!貴徳原選手の猛攻撃だぁ!!」
戦闘の構図に思わず、実況に力が入る。目にも止まらぬ突きの速さ、その圧倒的な回避に、誰もが驚き、息を呑んだ。
「おおっと!近衛選手も負けていない!先程の技?で猛攻に耐えている!いや躱し続けている!」
「(これはどういうこと!?吸い込まれるように彼の居ないところを突いてしまう!!?まさか!この人、私の心を読んでいるとでもいうの!?)」
その瞬間、カナタに動揺が走った。
よもや、雷切と似た能力を有しているとは思っても見なかったのだ。
雷切の伐刀絶技の中で最も知名度の高い技が、異名の名から判る通り、❮雷切❯だ。しかし、雷切の中で❮雷切❯よりも警戒しなければならない技がある、それこそが❮閃理眼❯リバースサイトなのだ。
何故なら、この技は相手の思考を読み取る事が出来る、これに尽きる。
戦闘の最中、相手の気持ちや思考を把握出来たのなら、伐刀者にとって、いや戦に身を投じる者にとって!有利この上ない能力だと言わざるを得ないからだ。
数分間、ラッシュが続く。
伐刀者は魔力操作によって、身体能力の強化を図れる。しかし、そう長くは続かないのが現状だ。
カナタは次に転じようとする、が、そう甘くはなかった。
「どんな突きの達人でも、伐刀者であっても、一度伸ばした腕は引かねば突けないのがものの道理!」
「しまっ・・・!(懐に!!)」
真琴が懐に迫り、襟元に手が伸びていく!
◇◆◇◆◇
「流水制空圏!?あの技は!」
真琴の技を目にした瞬間、寧々が即座に立ち上がった。驚きの声と共に。
「・・・儂の目に狂いがなければ、あの小僧、既に気の掌握に至っておるな?」
優し気な老人から、全盛期を思い出す鋭き眼光が顔を出した。
「気に関することだけじゃ。
無敵超人こと、風林寺隼人がそう口を添えた。
「末恐ろしいのぅ・・・。小僧の目の奥に、眩く熱き信念が見え隠れしておるの。ふふっこりゃ将来が楽しみじゃな、隼人」
「ほっほっほ・・・そうじゃな。若人を見守るのも我らの勤めじゃ」
談笑をしつつ、戦いを静観する老人二人。
「まこっちめ・・・。まさか気当たりだけでなく、流水制空圏すらも会得しているとは・・・」
「静の極みの技の一つ、流水制空圏。果たして、これのからくりを把握出来た者は何人居たかな?」
流し目になりながら、生徒達に目を向けた。
ここには破軍学園、全生徒が席に座り観戦に興じている。
「・・・ここの人達でってことなら、私は二人しか知らないねぇ」
一つの真実を寧々は口にした。
「二人か、ま・・・妥当だな。全学園の生徒達の中で、あれに対応しつつ、打破出来る者は・・・私が知りうる限り、二桁行けば良いほうだろう。下手すると一桁かもしれん。あれはそれほどの技だ」
腕を組み、真面目な顔付きで黒乃は語った。
「・・・ところでお前、近衛と以前会っていたのではなかったか?手合わせもしたと言ってたと記憶しているぞ?」
「いやぁ、あの時のまこっち、まだ子供だったしー。気の練りだけは早い子だなとは思ったけど、これ程とは思わなかったさー」
「梁山泊の育成能力・・・恐るべし!」
感心しつつ、再度、戦いの方へ目を向ける黒乃であった。
◇◆◇◆◇
襟元へ真琴の右腕がグングン伸びてくる。
気づいた頃には片方の腕にがっちしと捕らえられる。
「❮背負い投げ!❯」
真琴の声と共に軽々とカナタの身体は宙に浮き上がり、瞬く間に投げられた。
「ま、まだまだ!」
そう言うと、身体をグルンッと宙返りし、空中に留まった。それと同時にフランチェスカが徐々に削られ小さくなっていく。
「なっ!?(数多の星屑の剣で宙に壁を!?)」
「やああぁ!」
その足場を武器に突きの一撃を放つ。
「くッ!❮白刃流し❯!」
真琴は咄嗟に技を合わせようとするが、先程の技に一瞬、気を取られたからか、間に合わずお互いの肌に掠める形となった・・・。
真琴は対応した右椀撓付近。
カナタは右ほほに。
そのまま真琴が首相撲に持っていこうとするも、惜しくも逃げられてしまった。
「真琴もまだまだ読みが粗い」
それを観ていた兼一が一言溢した。
「真琴君も読んではいただろうけどね」
秋雨がそう補足を挟んだ。
「ええ」
兼一が頷きで返した。
両者、距離を取り次の出方を窺っている。
お互い、初の被弾。
慎重になるのも仕方がないというもの。
「相変わらず、見事な剣捌きですね」
「それはお互い様というものですわよ。この腕、どうりで会長が苦戦するわけですわ」
「褒めてもなにも出ませんよ?」
ん?
よく見ると、フランチェスカがまだ削れている・・・?
ヤ、ヤバイ!!
パチンッ!
カナタが指を鳴らすと、真琴の腕から血潮がタラタラと沸きだしてくる。
「拮抗してたかの様に見えましたが、ここで貴徳原選手、ダメージレースに一歩リードだぁ!」
「つゥッ!」
カナタさんがこちらを見て笑みを浮かべている。
いつやられた?
攻撃は読んでいたはず・・・。
ま、まさか・・・あの時か・・・!
「今更、気付いても遅いですわ!」
更にもう一度、パチン!と指を鳴らす。
するとどうだろう。
今度は真琴の口から血が吐き出された。真琴はそのダメージに堪らず、膝をついてしまった。
「カハッ・・・!」
カナタは両者の技を掠めた時、真琴の体内へ星屑の剣を潜り込ませていたのだ。
「・・・?」
だが、カナタには何か、いつもの相手とは違うような感覚があった。
そう、いつもより血潮が少ないのだ。
普段ならば、傘が手離せなくなるくらいには出るはずの血がそれほど真琴からは出ていなかった。
「・・・・・・カナタさん。俺の身体を似非伐刀者達と一緒にしないでいただけますか?」
真琴はゆらりと立ち上がる。
まるで、生きるゾンビのように。
「貴方・・・あれをくらってまだ・・・」
「俺は、俺の身体はですねぇ、過酷な修行に耐えるよう内蔵を強靭に鍛えられてきたんです。そんな攻撃、屁でもないんですよ!」
「(あの人、この状況下で笑っている?やはり、一筋縄では行きませんですわね・・・)」
カナタは再度、覚悟を決め戦闘に当たる。
真琴はというと・・・。
「(くそー・・・。
師匠の受け売りで笑ってはみたものの八方手詰まりだぜ・・・)」
ハッタリだった。
「(如何に強靭つったって、限界はある。どうしたってな。早いとこケリつけねぇと、時間切れになるな・・・。身体、もってくれよ!)」
真琴は傷を負いながらも、突撃を掛ける。勝利をもぎ取るその時まで、歩みを止められない。
「(もう来ますか!)」
「オラオラオラァ!」
真琴は武器使い相手だというのに臆せず、拳を走らせる。
カナタも負ける気は更々ない。
両者の、信念に従い、死闘を繰り広げる。
武術家は拳の猛攻。
かたや、伐刀者はそれを受け、剣戟の応酬。
お互い全力で、それぞれの武器、それぞれの技を打ち合っている!
それはまるで、詰将棋のような陣取り合戦だ。
会場の控室において。
一輝とステラが食い入るように見つめていた。
「先に拮抗を破るのはどっちだ」
「マコト、勝ちなさいよ」
声援を送りつつ、モニターにて仕合を見守る。
そんなことすら頭から抜け落ち、真琴には目の前のことの情報しか入ってこない。
一心不乱に攻防を続けている。
一瞬足りとも油断は出来ない。
だから、どんな手段でも使用する。
「(三、二、一、ここだ!)」
カナタの腕を引く一瞬の隙を突き、被弾した右腕をしならせ、血を放出させた。
その血飛沫が目元へ向かい真っ直ぐ突き進んでいった。
「キャア!(め、目潰し!?)」
真琴の思わぬ手段で、攻撃の手を緩めてしまう。
「ハアァ!」
それに乗じて真琴は気当たりによるフェイントで撹乱する。一時的に目も見えないこの状況下、気を取られるのも仕方がないというもの。
しかし―――
カナタはそれを読んでか、フェイントで背後に回ろうとした真琴よりも速く、身体を向き直った。
「逃がしませんわ・・・!」
カナタも真琴の動きを読んでいたのだ。背後に向かうことも。
だから、攻撃を構え迎え撃とうとしたが、その先に真琴の姿は視認出来なかった。
そればかりか、気配は左の方からするではないか。
「い、いつのまに・・・」
「流水制空圏、第二段階!」
その言葉を口にした瞬間から、師匠である兼一の目が漏れていく。
「相手の流れに乗り、次に相手と一つになる」
待ってましたとカナタの構えた腕を真琴は掴み取った!そして、そのまま投げの姿勢へと移行し始める!
「❮一本背負い!❯」
先程の投げより素早く、カナタを地面へ送り付ける。
ビターン!快音が会場へ轟いた。
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