校舎の中に入り、三階の廊下に辿り着くと目の前に通常の五倍はあろうかという広さを持つ教室にびっくりした。
「これがAクラスかぁ。デカすぎるよ。ってか教室なのか?豪華すぎるよ」
僕は足を止めて窓から中をのぞいてみると、眼鏡をかけた、いかにも知的な感じのする先生が話していた。
「まずは設備の確認をします。ノートパソコン、個人エアコン、冷蔵庫、リクライニングシートその他の設備に不備がある人はいますか?」
Aクラス生徒(あるわけないだろ…(でしょ))
Aクラスのみんなが意思統一した瞬間であった
「では、クラス代表の霧島翔子さん前に出てきてください」
クラス代表−−−つまり、学年で最高成績を誇るAクラスでのトップは二年生のトップということになる。
「……霧島翔子です。よろしくお願いします」
彼女は顔色一つ変えずに淡々と名前を告げた。
そろそろFクラスに向かおうとした時、僕の恋人の優子さんと目があった。
(優子さん無事にAクラスに入れたんだね)
僕はとりあえず優子さんに笑顔で返した
「ニコッ」
「…………///」
僕が手を振ると優子さんも照れながら振り返してくれた。
(恥ずかしがってる優子さんも可愛いね)
そう思いながら僕はFクラスに歩き出したのであった。
Aクラスから離れてFクラスがある旧校舎の方へ歩いているとボロボロな教室が見えてきた。
「まさか、これがFクラス…?」
いくら何でも酷すぎる。これを教室と言っていいのだろうか?そんな不安を背に僕は教室の扉を開いた。
「すいません、ちょっと遅れちゃいましたっ♪」
「早く座れ、このウジ虫野郎」
いきなりこんな罵倒する奴誰だと思ったら僕の悪友の坂本雄二だ。昔は神童と呼ばれていたが、今ではひっそり影を潜めている。
「雄二なにしてるの?」
「先生が遅れてるから、代わりに教壇に上がってみた」
「なんで雄二が?」
「一応このクラスの最高成績者だからな」
「へぇ〜そうなんだー」
「それで明久に話がある」
「なに雄二?」
「俺はいずれAクラスに試召戦争を起こそうと思っている」
「え?Aクラスに‼︎」
「あ〜そうだ」
「そのためにお前の力が必要になってくるから、お前には厳しいが手伝って欲しい」
僕は一年生の時に色々あって、観察処分者になっている。観察処分者は物に触れられる利点があるが、召喚獣のダメージの一部が自分にフィードバックしてくるのだ。おそらく雄二はそのことを心配してるんだろう。
「頼られるとやるしかないね!」
「ありがとう、作戦は後で詳しく言う」
ちょうどいいタイミングで、担任の福原先生が来たので僕たちは席に戻る。
「えー、おはようございます。担任の福原慎です。よろしくお願いします」
福原先生は黒板に名前を書こうとして、やめた。もしかして、このクラスにはチョークすら用意されてないのか?
「皆さん、全員に卓袱台と座布団は支給されてますか?不備がありましたら申し出てください」
「せんせー、俺の座布団に綿がほとんど入っていません」
「あー、はい。我慢してください」
「先生、俺の卓袱台の脚が折れています」
「ボンドが支給されていますので、後で自分で直してください」
「センセ、窓が割れていて風が寒いんですけど」
「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」
酷すぎる、酷すぎるよこの教室。
「では、自己紹介を始めましょうか。そうですね。廊下側の人からお願いします」
「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。言っておくけど、ワシは男じゃからな、間違わないようにしてくれるかのぉ〜、1年間よろしくじゃ」
誰かと思えば秀吉じゃないか。僕の大好きな優子さんの双子の弟で僕の親友の1人でもある。でも、まだ優子さんとの関係言ってないんだよなぁ〜。見た目はまるで女の子ってか女の子にしか見えないし、優子さんにとてもそっくりだけど、優子さんの方が可愛いな。
どこかから、結婚してくれって声も聞こえるがあえて突っ込まないでおこう。
僕がそう思ってると次の人が自己紹介を始めた。
「戸塚彩加です。テニス部に所属してるよ。僕も木下くんと同じで男なので、間違わないでね。みんなよろしく〜」
またしても、女の子みたいな男の子だよ。秀吉といい戸塚くんといいなんで男なのにこんなに可愛いんだわよ。
「おぬしも同じ悩みを持つものかの〜。同士じゃのぉ」
「そうだね〜。お互い大変だけど頑張ろうね〜」
あの2人はもうすでに仲良く話してるようだ。
「比企谷八幡です」
次々と自己紹介が進んでいるとまた知ってる人が
「………土屋康太」
僕の親友の1人で、ムッツリーニって呼ばれている。口数が少なくてエロに関してはとんでもない力を出す奴だ。それにしても女子が少ないなっと思っていたら女の子の声が聞こえて来た。
「島田美波です。趣味は吉井を殴ることです」
島田美波、ドイツ育ちで去年日本に来た帰国子女で、去年同じクラスの時に仲良くなっていたが最近暴力が多くなって来て、あんまり好きじゃなくなって来てるんだよなー。
「はろはろー」
笑顔でこちらに手を振るので、こっちも偽物の笑顔で振り返す。
その後は淡々と自分の名前を告げるだけの作業が進んだ。途中で、やっはろーとか言う馬鹿そうな女の子がいたけど、気にしないでおこう。そして次は僕の番なので席を立ち、自己紹介を始める。
「吉井明久です。皆さん気軽に『ダーリン』ってか呼んでください」
「ダァァリーン‼︎」
これはとても不快だ。
「冗談です…とにかく皆さんこれからよろしくお願いします」
作り笑いで席に戻るが正直吐きそうである。まさか本当に呼ばれるとは…。Fクラス恐るべし。
その後も単調な作業が続き、とても眠くなってきた頃、ガラリと教室のドアが開き息を切らした女子生徒が現れた。
「あの、遅れてすいません…」
僕以外のFクラスの生徒がみんな驚いている。そりゃそうだ。彼女は姫路瑞希で成績が常に上位一桁に常に名前を残すくらい有名な人がこんな頭の悪いFクラスにくるからびっくりするのは当然だ。
なぜ僕が驚いてないかと言うと、振り分け試験で席が隣で姫路さんがテスト中に倒れてしまい途中退席でテストの点数が全て0になってしまったからである。その時に僕は姫路さんを助けない先生の代わりに保健室に連れて言ったりしたからテストの点が一部ゼロになったのであるが、元々そんないい点を取れないので関係ないっちゃないのである。
「姫路瑞希です。皆さんよろしくお願いします。」
この後、クラスの人が色々質問して、姫路さんの言い分を聞き、クラスの中でもチラホラと頭の悪い言い訳をしてる人がいたがほっといておこう。
姫路さんが僕の席の近くに座ったので話しかけよう。体調のことも聞きたいしね。
「あのさ、姫ー」
「姫路」
僕の声に被せるように隣の席の雄二が声をかける。酷いっ!せっかくの僕の人生計画、『クラスメイトから結婚まで 〜君と出逢えた春〜 全654話』が開始2分でエンドロールに!って僕は彼女いるんだったな。優子さん愛してる〜
「は、はいっ。なんですか?えーと…」
「坂本だ。このクラスの代表だ。よろしく」
「あ、姫路です。よろしくお願いします」
「ところで体調の方はどうだ?」
「あ、それは僕も気になる」
っと僕が口を挟むと姫路さんは僕を顔を見て驚く姫路さん。ちょっとショックだ。僕ってそんなにブサイクだろうか、でもブサイクでも優子さんが入いれば大丈夫。
「明久がブサイクごめん」
雄二がフォローのつもりか分からないが、追い討ちをうってきた。全然大丈夫じゃないかも…
「全然そんなことないですよ。目もぱっちりしてるし、顔のラインも綺麗だし、ブサイクじゃないですよ。むしろ…」
「そう言われると、確かに見てくれは悪くない顔してるかもな。俺の知り合いにも明久に興味を持っている奴がいたような気もするし」
まさか優子さんと付き合ってるのがバレてるのかとドキドキしてると姫路さんが食い気味で雄二に話した。
「それは、誰ですか?」
「確か、葉山」
葉山さん?どの葉山さんだろ。
「ー隼人だったかな」
「………」
「おい明久。声を殺してさめざめと泣くな」
「もう僕、お嫁にいけない」
「冗談だ。どっかのおかしな女子が勝手に妄想してるだけだ。お嫁にいけないのは当然だ。葉山のお嫁になるなら別だが」
「それの方が問題だよ‼︎わ、ワザとに決まってるじゃないか」(ヒヤヒヤ)
「ところで姫路。体は大丈夫なのか?」
雄二は僕を無視して姫路さんに話を戻した。
「少し咳とかはありますけど、大丈夫ですよ」
「はいはい、そこ静かにしてください」
先生が教卓をバンバン叩くと突如、先生の前で教卓がゴミ屑と化す。まさか叩くだけで崩れるとはどれだけ最低なクラスなんだ。姫路さんの為にももうちょいまともな設備で勉強させてあげたい。
「雄二ちょっと」
そう言って僕は雄二を廊下に呼んだ。
「なんだ明久」
「今すぐにでも試召戦争を起こそうよ」
「理由を聞こう」
「設備が悪すぎて体調壊すからしれないじゃないか」
「正直に姫路のためって言えばやってあげるが」
「そ、そんなことないよ」
「はいはい分かったよ」
「君たち教室に入ってください」
福原先生が戻ってきて、僕たちは教室に入っていった。
教室に戻り、淡々と自己紹介が終わり
「坂本くん、キミが最後の1人ですよ」
先生に呼ばれ雄二がゆっくりと教壇に歩み寄るその姿にいつものふざけた雰囲気は見られず、クラスの代表として相応しい貫禄があった。
「代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも好きなように呼んでくれ」
「バカゴリラ!」
シュッとカッターが僕の耳をかすめた。
「次は目だぞ」
僕は、黙り込んでしまった。
「邪魔が入ったが、みんなに1つ聞きたい」
カビ臭い教室
古く汚れた座布団
薄汚れた卓袱台
雄二の言葉に僕らも備品を順に眺めていった。
「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいがー」
一呼吸おいて、静かに告げる。
「ー不満はないか?」
『大ありじゃっ‼︎』
Fクラスの魂の叫び。
「だろう?俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱えている」
『そうだそうだ!』
『そもそも、Aクラスだって同じ学費だろうが?あまりに差が大きすぎる』
次々と不満の声が上がる。
「みんなの意見はもっともだ。そこで代表としての提案だが」
「FクラスはAクラスに試験召喚獣戦争を仕掛けようと思う」
「無理に決まっている‼︎」
「いいや勝てる。勝たせてみせる」
さすが雄二、ちゃんとした勝算をクラスに言っている。
「それに吉井明久もいる」
……シーン
「誰だそいつ?」
「聞いたことないぞ」
「雄二!せっかく指揮が上がってたのにわざわざ言う必要ないじゃん!」
「そうか。みんな知らないんだな。こいつの肩書きは観察処分者だ」
『それってバカの代名詞ではなかったっけ』
「違うよ。ちょっとお茶目な16歳につく肩書きだよ」
「そうだ。バカの代名詞だ」
「バカ雄二!肯定するなよ!」
「まぁ、教師の雑用で召喚獣を動かしてるから、操作に関しては学年一位だ」
『それなら、勝てるかもしれない‼︎』
「まずは明久。Dクラスに宣戦布告してこい!時間は明日の昼1時からだ」
「えーやだよ〜、宣戦布告しに行ったら、みんなから殴られるんじゃないの?」
「大丈夫だ。それはドラマやアニメの話だ!実際には起こらない」
「なら大丈夫だね。行ってくる」
数十分後〜
「雄二騙したな!」
「やっぱりか。騙されるお前が悪い」
「でも、もう後には引けないぞ」
「分かってるよ。絶対勝つぞ」
「ああ〜」
こうして僕の戦いが始まる。