短編とボツその他   作:(^q^)!

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美醜逆転でのヤンデレ(ボツ)

 恋は落ちるモノなんて聞いた時にそれをいまいち実感できなかった。こういった書き出しから想像できると思うが、見事に恋に落ちてしまったのだ。

 

一目見た瞬間の事は今までも、そしてこれからも忘れることはないだろう。あの人はにこやかに笑いながら初めましてと言った。自分はそれになんと答えたかは覚えていない。頭が真っ白になっていた。いや、正確に言うなら白ではなくあの人一色に染め上げられていたのだ。

 

 恋は落ちるモノ。見事に落っこちて、愛の坩堝にはまった。そしてその気持ちは、いつまでも続くだろう。

 

 

 

 

 世界が異常だなんて言い始めたらそれこそ、おまえが異常なんじゃないの? とか言われること必至なのだがそれでもそう思わずにはいられないのだ。

 

 この世界は異常だ。

 

 「この世界」という表現を使う以上、「この世界」以外の「世界」の存在をまず肯定しなければいけないだろう。主観でしかないために信頼性は欠けるかもしれないが、自分はこことはまた別の世界を知っている。つい数年前までそこで産まれ、生きて、過ごしていた。

 

しかし奇妙なことに、気が付くと自分は赤ん坊になっていたのだった。その時はまるで状況が理解できず、自由に動かない体にすわ病気にかかったかと戦々恐々としていたものだが、一旦状況を整理し終えたらし終えたで全く意味が分からず困惑したことを覚えている。

 

頭の中身そのままに若返ると聞くとどこかの少年探偵を想起させるが、それだって小学生に戻っただけで何も赤ん坊まで戻るということは無かった。それに自分の場合はどうにも体が縮んだとかそういう感じではなくてまるで生まれ変わったかのような状況だった。

 

新しい両親。新しい名前。新しい容姿。何もかもが今までと異なっていて、今までの自分のすべてを塗りつぶされていくようだった。生を受けて五年ほど経過した今となってはもう今までの自分の名前を思い出すこともできない。

 

 そのことに特に悲しいと思わない程度には、新しい自分になっていた。そしてこの世界になじんでいた。

 

 この世界には魔法がある。しかし、科学も同じように発展している。科学の発展具合は西暦1800年代くらいだと思われる。そんな世界の、貴族の息子として産まれた。まだ五歳だというのにいろいろな勉強や各地の貴族との顔合わせがあり、その時にこの世界の異常性を感じた。

 

 美しいものには魔力が宿るという価値観が人に対してに当てはめられていたのだった。結果として、魔力が少ないものは醜いという考え方が蔓延していたのである。そして、今までの自分の価値観からしてみれば美しい人こそ魔力が少ない傾向にあるということが往々にしてあった。

 

 両親がまだ幼い自分を外回りに連れ出した理由はそこにあった。自分はとてつもなく膨大な魔力を所持していたようで、いるだけで覚えめでたくなるのだとか。実際連れられてあいさつ回りをすれば強く実感した。自分が出向くと相手がにこやかになるのだ。気難しいと言われている高齢の貴族もにこやかになるのだから相当なのだろう。

 

 余計な価値観を持っている自分からしてみればそれは即ち醜さの証明なのでは、と考えが至るのはそう遅くは無かった。この価値観さえなければ、知りさえしなければ幸せだったのにと思うべきか、知らずに滑稽に調子に乗ることを予防できたことを喜ぶべきか頭を悩ませる日々が続いた。そんないつものあいさつ回りの途中に出会った人がいた。

 

 頭から小さな角を二本生やし、尻尾があり、翼がある。見た目は全く自分たちと一緒なのだがちょっとしたオプションが付いている人間。父はその嫌悪感を隠すことなく亜人であることを自分に告げた。また、亜人は極端に魔力が少ないことも告げた。その人物は隣国の王様であるらしく、あいさつに向かうことになった。

 

 自分からしてみれば王は美しく思えたが、周りの人からしてみればそうではなく、父をはじめあいさつだけ済ませるとそそくさと去っていく人が多い様子だった。王の娘も紹介された時に自分は綺麗だと思ったが、父の顔は歪む顔を抑えるのに必死であったように見えた。

 

 そしてまた五年が過ぎた。

 

自分は魔力がどんどん大きくなり、父はそんな自分を活用して領地を大きくしていったようであった。どんどん豪華になる家や家具を見て思うことはいくつかあった。まるで悪徳貴族みたいな成金っぽい趣味してるなとか、両親の価値観が悪徳貴族っぽいなとか。

 

 そんな二人でも家族であるし、自分に注いでくれている愛は確かなものである。自分の家や家具が豪華になるにつれて税で苦しむ人がいるのだろうか。そう思うことが無いでもないが、10歳の子供に領地の経営がどうなっているかなど話す親なんているはずがない。今日まで行われてきた教育だって一般教養や読み書き計算、礼儀作法なんかでそう言った方向の事は一切触れていない。

 

 だからだろうか。今後悔しているのは。燃える家を見て、家を囲む領民を見て、磔の両親を見て、それを未然に防げたんじゃないかと後悔するのはできることをしなかった証左なのだろうか。

 

 自分は領民に押さえつけられ、その光景を余すことなく見せつけられた。いい気味だと笑う領民ははたして人間なのだろうか。いや、この時代の社会を見る限り前世ほど成熟していないわけであるしこういった野蛮性は仕方ないのだろうか。

 

「それが人を殺して、言うことか」

 

 そう言うと、顔を赤くした領民は自分を殴りつけてから怒鳴った。

 

「うるせえ! てめえら貴族のせいでうちの娘は売られたんだ!」

 

 売るという選択肢を採ったのはあなたであって自分たちは関係ないんじゃないか。とは言えなかった。自分は両親の経営方針を知らない。いつしか自分が考えたように、今までは重税の上に立った生活だったのかもしれない。薄れゆく意識のはざまで、自分は奴隷となり高値でどこかに売られるという話を聞いた。

 

 

 目が覚めた時、自分がいた場所は暖かな家ではなく冷たい檻の中である。檻の隙間から見渡すと、自分の周りには同じように檻があり、中には人が入っていた。檻は半畳ほどの床に一畳ほどの高さがある鉄格子のものだ。檻の中にいるどの人も見たことがある。魔力が多いことで有名だった貴族やその護衛達だ。そのほかには大きな扉がある。一人の力では開きそうにない大きさである。

 

 護衛達がいるなら魔法で何とかして脱出できないかと思ったがそうもいかない様だった。まず、手首と足首、そして首に機械が付いている。魔力が強制的に拡散する機械だったはずだ。三つも付ければ魔力を認識することすら困難になるだろう。自分の馬鹿魔力なら魔法を放つこともできるだろうが、制御が効かなくなるため使うことはできない。貴族にはその機械が付けられていて、護衛達はさらに手錠と足かせも付けられている。

 

『起きたか、奴隷ども』

 

 悩んでいると声が響いた。どこかに伝達装置があり、そこから声を出しているようだった。

 

『いくつか忠告しておく。まず、お前らは今度行われるオークションに出品される。良いところに買われたいなら今から媚びる練習でもしておけ。

次に、俺たちはお前らの商品価値を下げたくない。だからできる限り暴れるな。騒がしい場合のお前らの無事は保証しない。

以上だ』

 

 それきり、通信は切れた。

ひとまず安心したのは無駄に暴力が振るわれる心配が薄いと言うところだ。しかしそれだけに怖い。自分を捕えている相手は油断を欠片もしそうにない。脱走は非現実的だと考えた方が良いだろう。しかしそうは思はなかった人がいた。

 

「おい! 私を誰だと思っている! 公爵家の四男のヘリオネスだぞ! さっさと出せ!」

 

 考え事をしているとそんな声が聞こえた。今この状況で身分が武器になるかどうかはわからないが望みは薄いように思える。

 

「護衛! 早くこの檻を何とかしろ!」

 

「ヘリオネス様、申し訳ありませんが少々お待ちください」

 

 周囲は無言だったので護衛の小さな囁きですらも響いた。しかし主は我慢ならないとばかりに騒ぎ立てている。

……こいつに対する行動で、今後自分がとるべき行動が変わるだろう。予想より軽い罰を与えるようなら魔法を暴走させてでも脱出を図るべきだ。

 

『……俺は騒がしくするなと言ったはずだが?』

 

「うるさい! 私を誰だと心得ているこの下郎!」

 

 伝達装置からは落胆のため息が聞こえた。直後、ぞわりとした。

 

『確かお前は……番号29か。商品の価値は低い方だしまあいいか。処分だ』

 

 そう言ってから通信は切れた。貴族はまだ騒いでいたが、周りは押し黙っている。通信越しの声は冷え切っていた。

 

 相手がこちらの事を物としてしか扱っていないことをほとんどの人は察してしまったのだろう。自分も、恐怖した。腹の底がかなり重たくなるのを感じる。吐き気がこみあげてくる。それほどの怖さがあった。

 

 何分か経っただろうか。扉がゆっくりと開いた。そこには筋肉質な男たちがたむろしていた。

 

「えーっと、確か29番だったよなあ」

 

「おーおー、こんなに綺麗どころがが多いのか。これなら一人くらいやっちゃってもばれないんじゃないか?」

 

「頭に殺されてえならいいんじゃねーの?」

 

「ジョーダンだよ、ジョーダン」

 

 裏稼業に従事している人のお手本のような粗暴さだった。そんな彼らが騒いでいた貴族の檻まで到達した。

 

「じゃあちょっと大人しくしてろよ」

 

 それからの事は、凄惨すぎて思い出したくもない。まず彼らは足の腱を切った。次は腕の腱。最後に舌を切り、歯をすべて抜いた。

 

 響いた悲鳴は人のモノとは認識できない程の怒号だった。彼らは、失血死をしないようにと言いながら回復魔法をかけてから帰って行った。

 

 処分という言葉を聞いた時、自分は最悪殺されるのではと考えていた。しかし、予想を上回る最悪だった。殺されないことに絶望するだなんて考えたことも無かった。

 

『番号29はどこかの娼館に売ることになるだろう。まあお前たちの中では商品価値が低い方とは言え、一般で言えばなかなかの美形に入るだろうしそこそこの値段で売れるはずだ。しかしそこで問題を起こされても困るので今のような処理をした。

商品価値は下がるとはいえ最低限の値段は確定しているのでお前たちのうちどれが騒ごうと同じ処理をする。いやなら騒がないように』

 

 それきり通信は切れた。すすり泣く声や嗚咽が聞こえる。異臭がするがそれに文句を言うことはない。自分が同じことをされてはたまらないと誰もが思っているからだ。

 

 ご飯はパンと水に塩漬けの野菜が支給された。トイレはご飯の後に一人ずつ連れ出されてする。風呂なんてない。光なども無い部屋に閉じ込められているので日付の経過はわからない。なので食事の支給された回数でなんとなく日付を計測している。

 

 最近は何も考えないことが増えた。考え出すと、後悔と憎悪が止まらなくなる。自分が何か行動していたらと言う後悔と、反乱を起こした人々に対する憎悪が止まらないのだ。民衆には彼らなりの理由があったのだろう事はもちろんわかる。しかし捕虜に対する扱いが奴隷と言うのは果たしておかしくないのだろうか。奴隷よりひどい扱いを日常的に受けていたのか? 受けていてあの元気な反乱だったならそれは尊敬に値するがとてもそうとは思えない。これだから社会制度が成熟していない野蛮人は嫌いだ。暴力に訴えるしか能のない蛮族どもめ。

 

 ……いや、やめよう。これ以上考えても何も好転しない。彼らには彼らなりの理由があったんだろう。そして自分は今現在それを認識できていないだけなんだ。

 

 七十四回目のご飯が支給された時、久しぶりに声が響いた。

 

『奴隷ども、オークションの日付が決まった。十日後に開催される。わかりやすく言うと後二十回飯が支給されたらオークションだ。

それに伴って、五日後から風呂に入れる。以上だ』

 

 その連絡を聞いても脱出の算段は考え付かなかった。もう、どうでもよかった。最悪、魔法を暴走させて自殺することが出来る事を考えればオークションで買われた先で死ねばいいと考えていた。

 

 そしてまた後悔するのだった。

 

 

 

 売られた先は、実家の領地があった場所だった。そこが新しく樹立された国家の首都らしかった。民衆の反乱によって建国されたその国の首都は以前の貴族政の時の方が栄えていたと思える。道端には浮浪者がおり、少し入り組んだ場所を見れば死体のようなものが野ざらしである。

 

 何故? 反乱の末に荒廃したにしては早すぎる。まだ何日もたっていないはずだ。それがなぜこうなっているんだ?

 

 国王の目の前に連れられ、傅かせられた。

 

 国王はにやけながら、紹介したい者がいると言い、自分の目の前に両親を連れてきた。体中が腫れて呻いている二人を見て憤怒しか浮かばなかった。しかし同時に、生きていてくれたことへの感謝があった。

 

「お前が私に協力的でいる限り、その二人に危害は加えない事を約束しよう」

 

 そう言われ、頷く以外にはなかった。両親の為に自害することもできない。オークションの前に考えていた自殺の手段も行えない。

 

「分かりました。しかし、必ず毎日両親に会わせてください」

 

「約束しよう」

 

 それから毎日、自分は魔力を機械に送り続けた。そうでない日は国王やその臣下の酌をしたり踊りを踊ったりということをさせられた。救いだったことは、自分の精通がまだだったために性交が行われなかったことと、彼らに衆道の趣味が無かったことだろうか。母や父は初日のような様態になってはいなかったが元気がないことがよくあった。話をすると、こちらに心配をかけないようにしていることが察せられたが、それ以上に何かわかることは無かった。口数がかなり減ったような印象を受ける。

 

 二年が経って、自分は本当に何も考えなくなっていた。両親は毎日会ってくれている。自分がやることは魔力を放出する仕事と王たちの歓待。

 

 救いは無い。きっと自分が何かに耐え切れなくなるか、両親が死んだときにこの永遠と続く苦行から解放されるのだろう。

 

 ……何を考えているんだ自分は。両親の死が救いだなんてことを考えるべきじゃない。今やっている魔力の放出だって両親の命を救うための行動じゃないか。何が苦行だ。自分が辞めたら両親はどうなる。

 

 辞められない行動をしているわけじゃなく、自発的に辞めないんだ。そこを譲ったら人間としての行動をしていないことになってしまう。状況は文明的ではないが、精神だけでも文明人であることを忘れてはならない。

 

 その時だった。轟音とともに天井が崩れ落ちた。そして尋常ならざる力で上に引っ張られる。意識がブラックアウトした。気絶する直前に見えたのは翼であった。

 

 

 

 隣国で反乱があった事を知った時、食べていた饅頭をポロリと落としてしまったのはしょうがない事だろう。あの人が無事かどうかを確かめるために父に縋り付いたが、父から色よい返事はもらえなかった。

 

 ならばと思い、自分で確かめに行こうとしたがそれも止められてしまった。逆らうことは容易だが、その場合彼を保護した後に匿う場所に難儀することになる。従わざるを得なかった。

 

 とは言え、ただ祈るだけというのもあり得ない。諜報部隊のようなものを作り上げ、あの人の探索が可能になったのは反乱から半年以上経過してからだった。反乱の末に出来上がった国との国交樹立の時は殺意を抑えるのが大変だったが、自分の立場から仕方なく我慢した。

 

 そして一年。ようやく見つけたあの人の居場所は、隣国の国家元首の居城だった。しかもあの人のもともと住んでいた場所である。頭をかきむしりたくなるほどの憎悪と、胸の底から噴き上がる思いに焦がれながら奪還計画を練り上げた。

 

 しかしようやく見つけた。そのことの歓喜は数々の思いを無視することが出来るほどに大きかった。城を捜索するにつれて疑問が湧きあがった。なぜ魔法を使って脱出しないのだろう。それが可能なほどの魔力はあるはずだ。

 

 どうやらあの人はほぼ毎日魔力供給の仕事をしているようだった。

 

 隣国の液体魔力輸出量の多さが気になっていたが、あの人が原因だったのか。魔力発電にも使える液体魔力は魔力溜まりに自然発生するか、人が液体に魔力を込めるしかない。しかし、魔力を大量に込められるほどの人がわざわざそんな仕事をするはずがないし、逆に、そんな仕事に就くような人は魔力量が多くないので大量生産はできない。大規模な魔力溜まりでも発生したのかと思っていたが、そうか、あの人を酷使していたのか。そうかそうか、また一つ隣国を許せない理由が出来た。

 

 そして、あの人がなぜ魔法を使って脱走しないのか探ると、どうやらあの人の両親が囚われていることが原因のようだった。

 

 なんて迷惑な人達だろう。こいつらさえ居なかったらあの人は自由であったはずなのに。しかし、次いで上がってきた報告は驚くべきことだった。どうやらあの人の両親は死霊術で操られているようで、反乱の時にもう死んでいたようだ。あの人を騙して、酷使している。

 

 何もかも許し難いけれど、それ以上に許し難いのは、あの人を所有しているのが自分ではないということだ。

 

 あの人を手に入れる。そのためには計画を練らなくては。

 




ボツ理由

美醜逆転という状況下を現実として考えていると頭がおかしくなって死にそうだった

プロット

亜人は科学技術に優れている
主人公は亜人の姫にかくまわれて、その後科学技術で革命がおこった祖国に対して戦争を仕掛けて滅ぼすとかそんな感じ
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