「えー、うん。その……あー、なんというかその」
「どうかされたんですか?」
二日前に行われた能力検査の件で話があると言われ、保健室にやってきた。保健室にいたのはいつもの養護教諭ではなく素人目にも高級なのだとわかるスーツを着た若い男性だった。彼の後ろには校長先生と教頭先生が居る。また、保健室の扉の場所にはSPなのかサングラスを着用したガタイのいいスーツの男が二人立っている。
なんだ? なにかヤバイ能力に目覚めたのか?
まさか俺には秘めたるチカラが……と考えていると目の前の男性がようやく重い口を開いた。
「君の能力は、餌系の最上位能力であると判別された」
「餌系、ですか?」
聞いたことがなかった。中学に上がるとそれぞれの学校で行われる能力検査は様々な能力が判別される。例えば炎を操る能力であったり、水を操る能力であったり。そして能力には強度というものがあり、能力の強度が高いほどその能力は優れているという具合である。
そんな数多ある能力は当然いろいろな人から聞き及ぶことが多い。隣の家の○○さんは××系の△△くらいの強度なんですってよとか、ツウィッターでの呟きだとかで色々幼いころから能力については目や耳に触れることが多いのだが、寡聞にして餌系能力というのは聞いたことがない。
「君が聞いたことがないのはしょうがないことだろう。餌系の能力を持つ者はそれが判別した瞬間に人権を失うのだから」
「……は?」
「酷なことを言うが、君は現時点を以て人間ではなくなる。モノになる」
中学一年の春。俺は餌になった。
「はぁ、なんなんだよちくしょう」
俺は豪華な内装の自動車に乗せられていた。あの後、取り乱しに取り乱した俺はSPのなんらかの能力で気絶させられ、動けないように拘束されてからいろいろと説明をされた。
餌系の能力者の能力はその名の通り餌であること。自身から生成される何もかもが餌になるのだとか。能力強度は、その餌がどれだけの栄養がありどれだけ美味いかという程度の違いしかないらしい。
そんな能力何のために発現するんだよと思ったが、人類の隠された歴史を紐解くと明らかになるのだとか。その辺の説明も懇々とされて、その結果、今俺は自動車に乗せられてどんぶらこと輸送されている。
どこに輸送されているのかというと、異形の国である。異形の国は都市伝説として語られている程度の場所で、バケモノだけが暮らす場所なんだとか。現実には都市伝説の異形の国は存在していて、しかも俺は今からそこで暮らすことになるのだというのだから笑えない。
餌系能力者は異形共の餌になるのが義務になるので異形の国でゆっくり死ね。というのが説明された内容である。異形は遥か昔から地球に存在していて、人類は異形に生贄を捧げることで繁栄してきたんだとかなんとか。そしてその風習は現代も残っていて、餌に目覚めた者は異形の生贄になるという契約の元、我々人類は発展しているんだってさ。
なので、俺は餌として運ばれて、今後はもうずっと異形の国とかいう場所で一生過ごすことになるのだとか。ざっけんな。精神系能力者によって自殺を封じられているからおちおち死ぬこともできない。なんでもここ数十年の間餌系能力者が発見されておらず、異形の国側からの突き上げが激しくなっていて、国連などでも毎回議題に上がるほどの喫緊の課題だったらしい。そんな折に発見された最上の強度を持つ餌系能力者。何が何でも逃すわけにはいかないと策に策を重ねて俺を確保したらしい。まあそんな状況だったことすら説明されてようやく知ったんだがな。
「はぁ」
不安だ。異形って何さ。どんなのがいるんだよ。そして俺から生成されるものが餌になるっていうけど俺は何を生成するんだ。そして異形は何をどう食べるんだ。怖くてたまらない。腕とか足とか食べられちゃうのだろうか。生きてさえいればいいとかそんな感じにされてしまうのか? 勘弁してくれ。怖くてもう心臓が張り裂けそうだ。自殺できないから張り裂けることはないけれど。
そうしてガクブルと震えているうちにいつの間にか俺は眠ってしまっていた。自動車の定期的な振動が程よい刺激だったのか、あるいは張りつめていた緊張の糸が限界に達したのかずいぶん深い眠りだったようである。うっすらと目が覚めたのは、ぴちゃぴちゃという何かの粘つく音と、肌の上を何かが這いずり回る感覚からだった。
ゾリゾリと強く這い回ることもあれば、スルスルと撫でるように肌の上を進むそれは生温かく、無数にある。頭がぼんやりとする。この変な感覚はおかしいと感じているが、目を開ける気になれない。この感覚が若干の快楽を伴っていることも手伝って、まどろみの中に俺はいる。瞼が重い。このまま二度寝しようか、なんて思ったその時だった。
「キミ、おいしいねぇ……」
背筋に氷をぶち込まれた気分だった。一気に全身が鳥肌立ち、嫌な汗が流れる。
「おおっ、今度は違う味だ! こっちもおいしいなあ」
まどろみはまだある。もうこれは何らかの能力を使われたと考えていいだろう。政府の人間が移送中に使ったのか、今目の前にいるだろう何かが使ったのかはわからないが、能力によるものだ。でなければ今こんな状況なのに目が明かないのはおかしい。
本当に、目が明かないのか?
怖い想像をしてしまった。目が明かないのではなく、もしかして目が無いのでは?
「うふふ、キミ、最高……ワタシ、キミのこと好きかもしれない」
声は若い。しかし、粘ついているような、まとわりついてくるようなその声は女性のような高さにあっても地の底をはいずるような印象があった。それが話している間にもなお肌の上には無数の何かが這いずり回っているし、鳥肌が止まらない。
「っ、あ、あなたはなんなんですか!?」
瞳はまだ明かないが声は出た。肺の中の空気がすべて出て行ってしまいそうなほど必死でかけた問いかけに、肌の上を這いずっていた何かは止まった。
静寂が満ちる。俺の荒い息の音と、ドックンドックンと跳ねる心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。やがて、がしりと頭を掴まれる。情けない悲鳴が漏れた。
「ヒぃっ!?」
「キミは……」
声を待つ。俺は……何?
「っ!? んんん!?」
「んちゅ、ちゅ、んんんんー、んふーふふふ」
口元を何かに覆われて、そのまま口内に何かが侵入してきた。柔らかく、湿っているそれは舌のように感じたがそれにしては本数がおかしい。五つほどの何かにさんざん舐られた俺は、解放された時には息も絶え絶えになっていた。
ボツ理由
この後主人公はエロエロして過ごしました(オワリ)
プロット
主人公の排出するありとあらゆるものが極上の餌って設定なのでいろんなモンスター娘にいろいろなことをされるんだろうたぶん