悪の組織とは政府の機関である。その役割は多岐にわたる。
例えば破壊活動。これは政府や企業の不要になった建物を壊しているだけなのだ。経費の削減というやつである。さらに言えば悪の組織によって壊されることによって保険金が下りる。
政府から企業へ、企業から政府へとクリーンな金を運ぶという事業でもあるのだ。破壊されるためだけに作られる中身スカスカの建物も用意されるほどだ。悪の組織の主だった活動はこれだといっても間違いはないだろう。
また悪の組織というわかりやすい悪い奴がいることによって国内の不満をそちらにコントロールすることができる上に、政府の失策や企業のマイナスなニュースを報道させないために活動をするということもある。そんな時は大規模にインフラなどを破壊しない範囲で破壊活動することもある。
さらに悪の組織は大きな雇用を生み出している。破壊した建造物などの撤去や新しい建物の建築などは基本的に悪の組織の末端従業員の仕事だ。彼らは最初はこういった小さな仕事を任され、体が鍛えられる。
そうして鍛えられた体を手にすると末端戦闘員へと昇格できる。そこでキャリアを積み、戦闘員長になりという風に辞めなければ順当にステップアップできる。辞めたとしても悪の組織の下請け会社を紹介してもらえる。失業率の増加が叫ばれている昨今においては政府が悪の組織を利用しないという手はない。
当然、悪の組織もあれば正義の味方もいる。両組織は公には敵対しているが大本はどちらも政府管轄の機関である。当代のトップ同士も週一で飲み会をするほどに仲がいい。実際に組織に属していてそのことを知らないのは正義の味方及び悪の組織の末端戦闘員くらいだろう。
かくいう俺は悪の組織の怪人である。怪人といっても数多のフィクション作品よろしく改造手術などを受けたというわけではなくて特殊能力を持っているから怪人という優遇された立場にいる。というか怪人はみんな特殊能力を持った人間である。
特殊能力とは数百万人に一人程度の割合で目覚める能力である。特殊能力を持った人間は幼いころから政府に預けられ、その能力によって正義の味方側と悪の組織側に分けられる。
そして正義の味方は若年の時に正義の味方の末端戦闘員として働き、ある程度の年になると悪の組織の幹部として迎えられる。悪の組織に割り振られた能力者は怪人として中年過ぎくらいまで働き、その後はどこか適当な悪の組織の天下り先で悠々と過ごす。
正義の味方として働いた連中の中にはこういった組織構造を認めることができずに反発するようなのもいるようだが、大人になっていくにつれてそれも収まるらしい。
ついこの間幹部として入ってきた正義の味方である“警察戦隊マッポファイブ”のブルーを務めていた男性もなんやかんやで当代の正義の味方と敵対するような立場で日々戦うようになっている。最初はぐちぐち文句を言っていたが今ではどんな笑い方が悪の組織っぽいかという議論を交わすほどに悪の組織に馴染んでいる。
「おい、そろそろ時間だ。行くぞ」
別の怪人に声をかけられる。俺の仕事が始まる。ここからは戦場。一瞬の気を抜くことも許されない。大変だが、これも仕事だ。やるっきゃない。
あー疲れた。
帰路につき歩いている途中にそんなことを考える。空は曇り、歩いているうちにぽつぽつと降り出した雨は数分で本格的に降り出した。
今日も大変だった。当代の正義の味方である“騎士戦隊ラウンドテンプラー”は熱意が高く、怪人や末端戦闘員を追いかけてくるのだ。
毎回毎回正義の味方側の司令の静止の声があるにもかかわらず、何とか悪の組織の秘密基地を見つけようと必死である。当然こちらも撒くために相応の労力が必要になる。“警察戦隊マッポファイブ”の時はもっと楽だったのになあなんて考えは年を取った証拠だろうか。
また、三か月ほど前から出てきたどこの組織にも属していない正体不明の“ミラージュナイト”とかいう能力者もこちらに負担を強いる要因である。
稀にいるのだ。ある程度の年齢になって特殊能力に目覚めたり、国が保護し損ねた在野の能力者が。そういった連中は凶悪な犯罪に走ったりお山の大将やってることが多いが、中には今回の“ミラージュナイト”のように個人的に正義の味方やら悪の組織に加担する迷惑な連中が現れるのである。
こういう在野の連中は能力の制御が十分でなく、末端戦闘員や正義の味方に後遺症の残るような怪我をさせたり破壊対象でない建造物を破壊したりといろいろと加減ができていないのだ。本当に迷惑な話である。
“ミラージュナイト”は結構制御ができている方ではあるのだが、如何せん周りに及ぼす被害が大きい。
まあ在野の奴に壊して良いものと悪いものの区別がつくはずもないが、それでもかなりピンポイントに我々のスポンサーである大企業の建造物ばかり壊している気がする。無茶苦茶に壊すせいできれいな解体ができなくて時間がかかって面倒なのだ。
とはいえまあその辺はもう俺の考えるところではない。とりあえず怪人として一度やられたので一か月ほど暇になる。また一か月後には強化蘇生された怪人として出るローテが組まれていたがそれまでは休暇だ。その間に正義の味方か悪の組織がなんかいい具合に対応するだろう。
正義の味方が対応したのなら新たなるメンバーとして戦列に加わるだろうし、悪の組織が対応したのなら幹部っぽい雰囲気で前面に押し出して正義の味方のやつが目を覚まさせて仲間になるとかそんな感じになるだろう。マニュアルにもそう書いてある。
今日の夕ご飯何にしようかという思考まで飛んだ頃だろうか。我が家の前に人が倒れていた。どうしたんだと思って駆け寄る。近づくにつれてその人物が誰であるのか思い当った。
小柄でありスレンダーな体系。髪は肩口で切りそろえられており濡羽色でサラサラである。ドミノマスクはのっぺりとした灰色でうまく表情を隠している。服装は紫がかった黒色のぴっちりとしたラバー質のもの。腰に下げてある細長いものは彼女の代名詞とも言われている武器。
彼女こそが“ミラージュナイト”である。なんでそんなのが自宅の前に倒れているのかわからないがとにかく家の中に運ぶこととした。
濡れたままでいるのも彼女の体調に障るだろうということも考慮し、服を脱がしてバスタオルで全身をぬぐってからジャージを着せる。武器やマスクを取り去った彼女は美しくはあるがそれよりも幼さが見え、十代前半ほどの年齢に思えた。暴れられても困るのでとりあえず特殊能力で動けないようにしておく。ついでにリビングの椅子に座らせて縛りつけておく。
こうしてみると結構美人である。今日も敵対していろいろと面倒をかけてきたやつであるが見てくれがいいというだけでなんとなくその憎らしさみたいなものが漸減するのだから不思議だ。
今日も迷惑かけられたんだよな。
ムラムラとしたものがわいてくる。現在彼女は身動きが取れず、俺は彼女を拘束してどうとでもできる。この圧倒的有利な状況。しかも相手は美人かつこっちに散々迷惑をかけてきた奴。
先ほど服を着替えさせた時もムラっときた。つつましやかな胸ではあったがぷっくりした小ぶりな乳輪と、寒さ故かピコンと勃起した乳首の色は薄く綺麗であった。体のほうも無駄な脂肪がついておらず、うっすらと浮き上がった肋骨が何とも言えない淫靡さを醸し出していた。
股はつるりとしていてぴっちりと閉じられた幼い陰部があり、やや盛り上がったそこは明確に女を感じさせるものだった。
ハッと思いとどまる。いや待て俺は悪の組織の怪人とはいえ扱いは公務員だ。こんなことでこんな犯罪なんか犯した日には解雇処分とかで相当面倒なことになる。ここは落ち着いて上司に連絡しよう。
スマホを取り出して上司にコールする。時刻は午後の六時半。二十秒ほど待っていると上司からのもしもしという声が聞こえた。
「こちら怪人のテンタコです。お時間よろしいですか?」
『ああ君か。大丈夫だが何かあったのかい?』
上司に今までの状況を伝える。“ミラージュナイト”を現在捕縛しているということについて驚いた様子であり、本物の“ミラージュナイト”であるのかという確認を幾度か行った。
その結果自宅に置いてある能力感知装置で彼女を測定し、能力波の波長が秘密基地にあるデータと一致したため本物であるという確認が取れた。じゃあ彼女をどうするかという話に移ったのだがそれ以降上司の歯切れが悪い。どうしたのだろうと尋ねると、言葉を濁しながら大よその理由を教えてくれた。
『うーん、それがねえ、彼女が今日壊した物の中にエライ、その、なんていうか高価なものがあったみたいで……それでそこのオーナーがね、もうカンカン。
実は今も首領の部屋で怒鳴り散らしてるの聞こえちゃってさー、たぶん今日は俺、首領の愚痴に付き合わされる感じだろうなぁ、ああめんどくせえ』
「お疲れ様です。それで結局“ミラージュナイト”はどうします? 今からそっちに運ぶんでしたら持っていきますけど」
『あー、どうすっかなあ。今回は困ってるんだよねえ。
今までみたいな展開はもうマンネリ化してきて視聴率取れないってマスコミから苦情が来ててね。それで今回の正義の味方には追加される奴をこっち側から排出する予定だったんだよね。ほら、今回の幹部役の女の子いるでしょ。あの子が正義側行く予定だったの。
それがいきなり“ミラージュナイト”が現れちゃったでしょ? もうてんやわんやだよ。よてーが崩れたーってシナリオ作ってる奴が泣いてるの見たでしょ? 今もどうするか練ってるみたいよ』
「そうなんですね。ところで“ミラージュナイト”はどういう扱いにしますか?」
『うーん悩むよねえ。とはいえ今こっちに持ってこられるとなんかオーナーの滞在時間増えてメンドそうだしその後も余計なこととかしちゃいそうだしそっちで預かってて貰える? オーナー帰るまでにシナリオの奴とか他の幹部に相談して決めとくよ。じゃあまた電話するから』
そう締めくくられてプツりと切れた通話画面を見て、これは面倒くさいことになったと独り言ちる。もう一度電話があるまでに目の前で気絶しているこいつが目覚めないとも限らない。眠り続けてもらうのが一番都合がいいが希望的観測だろう。
目が覚めたこいつが騒ぎ出したらご近所迷惑どころではない。
そこではっと思いついた。六代くらい前の悪の組織の怪人が実際にやったという戦法が使えるんじゃないか?
そうと決まればさっそく準備を始める。まずは彼女の拘束を解く。そしてソファに仰向きで眠らせ、毛布を掛ける。体温はやや低く感じられなんとなく不憫に思え、これからの作戦を思うとこの感情はそのままにしておいたほうがいいと判断したのでこんなに震えてかわいそうになあと考える。椅子に縛り付けていたやつが何をという感情は封殺する。
次に暖かいスープを作る。栄養たっぷりの温かく美味のスープ。鼻腔を通り抜ける香りはすきっ腹に効くだろう。この匂いを前に食欲を我慢できるような者はいるはずもない。
「ん……? ッ!? ここはっ!?」
スープも作り終え、彼女の様子が観察できる位置で椅子に座って本を読んでいるとそんな声が聞こえた。本から視線をずらし彼女のほうを見ると混乱した様子で周囲に目線をやり、警戒したように跳ね起きた。
ソファの上に立つんじゃない。スプリングが傷んだらどうする、と言いたいのをこらえて声をかける。
「ああ、気が付いたみたいだね」
そう彼女に優しそうに声をかける。それを聞いた彼女はようやく俺の存在に気が付いた様子で毛布を体に巻きつけながら距離を取ろうとしてソファの背もたれに躓いて転んでいた。
「おいおい、大丈夫か? ほら、立てるか?」
彼女のそんなギャグのような行動に笑いそうになるのを堪えながら心底心配したような演技をして声をかける。悪の組織の人間は演技派なのだ。俺の演技にまんまと騙された様子の彼女は警戒を解いたようで、今もなお混乱した様子ではあるものの俺の手を取って起き上がり、ありがとうと礼を言った。
「すみません……。ところで、ここはどこなんですか? それにあなたは一体……?」
「うん、混乱してるみたいだね。まずここは俺の家。君が俺の家の前で雨に濡れながら倒れていた。それで、女性には申し訳ないと思ったが服を着替えさせて寝かしてたんだ。濡れたままじゃ風邪ひいちゃうかもしれないしね」
そこでようやく自分の服装がぶかぶかのジャージであることに気が付いたようで、顔を真っ赤にさせた。何か言われると面倒なので彼女が口を開く前にさっさと次の話題に行ってしまおう。
「さ、体も冷えていることだろう。温かいスープを作ったんだ。まずはそれを飲んで、ゆっくり落ち着いて話をしないか?」
ちょうどよくくうと可愛らしく鳴った彼女の腹の音を後ろ手に聞きキッチンに行く。マグカップにスープを注いで彼女の元に戻ると、顔を真っ赤にさせながらこちらを睨みつけていた。
とはいえおなかが空いているというのも事実であるようで彼女はいくらか逡巡した様子でマグカップをちらちらと盗み見をし、三十秒程かけてカップに口をつけた。
「おいしい……」
思わず漏れてしまったといわんばかりに目を見開いてそういった彼女ははっとした様子でこちらを見た。俺はにっこりと笑顔を返した。すると彼女はさらに顔を赤くさせたがちびちびとスープを飲み、空のマグカップをこちらに突き付けてきた。
「……おかわり……いいですか?」
目を合わせずにそう言う彼女を見ているとなんだか野良猫に餌付けをしているような気分になる。この子は初対面の人にこんなに簡単に懐柔されて大丈夫なのかと不安になるがだましている側としては都合がいい。ただまああとで今回の経験をちゃんと失敗として糧にできたらいいなと思うのは勝手ではあるが大人の特権だろう。
「今持ってくるから待っててね」
そういってスープを注ぐが今回は睡眠薬も入れる。これでももう一度眠ってもらえばさすがにそれまでに電話は来るだろう。そのあとはどうせ秘密基地に輸送するのだろうしぐっすり寝てもらうほうが都合はいい。
「はい、熱いから、ゆっくり飲むんだよ」
「はい……なんでこんなに親切にしてくれるの?」
彼女にマグカップを渡すと毛布に包まった彼女が上目づかいにそう聞いてくる。不安だか何だかわからないような感情を瞳に浮かべているように思えたが、直後にスープを飲み始めたのでそれ以上彼女の様子はわからない。
正直に、お前を寝かしつけるために今は天下り先で悠々自適な生活を送ってる先輩怪人の手順を真似てるだけだよとは言えないので何とかそれっぽいセリフを言うことにする。
「……」
ボツ理由
エロいことしてる最中はヒロインがくっころ! って言うんだけど実際の心情はバッチコーイな感じのツンデレもどきみたいな話を書こうとしていたはずがなんか人情ものっぽくなってしまったのでボツになった。
プロット
テンタコはテンタクルスの略で要するに触手怪人
敵が騎士戦隊なのは女騎士がくっころ! という脊髄反射
気の強い女は尻が弱いので触手怪人がなんかいろいろやる