「待った待ーった。その作戦はちょっと待ったなんだよ~!」
そう言って束は天井から逆さになるようにひょっこりと顔を出した。
俺は束の後ろで束が天井から出るのを待っているため下で千冬たちがどんな反応をしているかは見えないがおそらく皆、呆然としていることだろう。
「......山田先生、室外への強制退去を」
「えっ!? あ、はいっ。あのぅ、篠ノ之博士、とりあえず降りてきてください......」
そんなんで束が降りるはずが――
「とうっ♪」
――あれ....降りた....。
束は空中で一回転しながら降りる。
俺もそれに続き、降りる、とは言っても束のように一回転するわけではない。
降りたとたん、織斑に睨まれたが無視だ無視。
あの程度の睨みで俺が竦むとでも思っているのか?
「それじゃあ篠ノ之博士、早く外に「ちーちゃん、ちーちゃん。もっといい作戦が私の頭の中にナウ・プリンティング!」....グスン....」
山田先生(さっき千冬が言っていた)の指示に従って大人しく降りたかと思えば、束は山田先生を無視して一目散に千冬に詰め寄った。
無視された山田先生はというと、束の方を見ながら山田先生は涙目になっていた。
「....出て行け」
千冬は少し考えながら詰め寄ってくる束の頭を押さえながら冷たくあしらった。
「聞いて聞いて! ここは断・然! 紅椿の出番なんだよっ!」
「なに?」
おいおい。さっきまでの冷た~い態度はどこへ行ったよ? さっきまであんなに無関心だったくせに。
「紅椿のスペックデータを見て! パッケージなんてなくても超高速機動ができるんだよ!」
束は千冬を囲むように次々と紅椿のスペックデータが載っているディスプレイを展開させる。
それを驚きもせずにしっかり目を通しているのは、さすがブリュンヒルデといったところか。
「あとは紅椿の展開装甲を調整して、ってこれに関してはレンくんのほうが詳しいよね。私は説明しておくからレンくん調整しておいて」
「展開装甲? それにお前よりもコイツの方が詳しいとはどういうことだ束?」
コイツって...ひどいな。せっかく開発者直々に調整してあげてるというのに。
「ふっふっふ~! では、説明しましょ~。展開装甲というのはね、そこにいるレンくんが作った第四世代型の装備なんだよー」
「第....四....世代?」
束の説明に皆が呆然しながら呟く。
「まあ、紅椿の展開装甲はレンくんが作ったものを束さんが真似て作ったものだから、オリジナルよりも性能は劣るけどね」
自分の作った展開装甲を見ながら束は笑う
「そしてうまくいったので、紅椿は全身のアーマーを展開装甲にしてみましたー。さらにこの展開装甲は攻撃・防御・機動と用途に応じて切り替えが可能。これぞ第四世代型の目
標である
それを聞いてこの場にいた千冬以外全ての人間が黙る。
それもそうだろう。今、各国が多額の資金、膨大な時間優秀な人材の全てを注ぎ込んで競っている第三世代型のISの開発。
それが今も紅椿の調整を行っている男、篠ノ之蓮によってそれが、無意味にされているのだから。
「束、蓮。私は言ったはずだぞ? やりすぎるな、と」
「「そうだっけ?」」
俺と束の声が見事に重なった。
それにはさすがの千冬も、はぁ、とため息をついた。
「それにしてもあれだね~。海で暴走っていうと十年前の白騎士事件を思い出すねー」
すごい笑顔で話しだした束を見て千冬は、しまった、という顔をする。
『白騎士事件』――
おそらくこの名前を知らない人間は世界にいないだろう。
十年前束が発表したISは、初め、その成果を認められなかった。
『現行の兵器すべてを凌駕する』という束の言葉を誰も信じようとしなかったのだ。
そしてIS発表から一ヶ月後、この事件が起きた。
日本を攻撃可能な各国のミサイル2341発。
それらが一斉にハッキングされ、制御不能に陥り、発射された。
そこに現れたのが白銀のISを纏った一人の女性だった。
そのISは次々と日本に迫るミサイルを切り落とし、撃ち落としていった。
しかし日本周辺各国は、国際条約を無視し現地に向けて偵察機を飛ばした。
彼らの任務は『目標の分析、可能であれば捕獲。無理ならば――撃滅』。
しかし彼らはそのISに圧倒的な性能差を見せつけられて落ちていった。
それでも躍起になって部隊を投入するが白騎士は日没とともに忽然と姿を消した。
まるで、幻であったかのように。
レーダーでも捉えられず、目視でも確認できない、完璧なステルス能力。
ダメ押しで見せつけられた性能に――世界は敗北した。
たった一機でミサイル2341発、戦闘機207機、巡洋艦7隻、空母5隻、監視衛星8基を撃破あるいは無力化した『究極の機動兵器』としてISは一夜にして世界中の人々が知るところ
となった。
『ISを倒せるのはISだけである』という束の言葉を世界は無抵抗に受け入れた。
「しかし、それにしても~ウフフフフ。白騎士って誰だったんだろうねー?」
「知らん」
無論、この人織斑千冬だ。
「....話を戻すぞ。....束、紅椿の調整にはどれくらいかかる?」
「お、織斑先生!?」
作戦に参加できると思っていたセシリアは驚いたように声を上げた。
「わ、わたくしとブルー・ティアーズなら必ず成功してみせますわ!」
「そのパッケージは量子変換してあるのか?」
「そ、それは.....まだですが....」
痛いところを突かれたのかセシリアの言葉は後になるにつれどんどん小さくなってしまった。
「レンくん。紅椿の調整はどう?」
「もうとっくの前に終わってるよ。長いんだよ、説明が」
とっくに終わって話に入ろうにも隙がないって酷くない?
「よし、では本作戦は織斑・篠ノ之の両名による目標の追跡及び撃墜を目的とする。作戦開始は30分後。各員、直ちに準備にかかれ」
千冬が手をパンッ、と叩き、それを皮切りに教師陣はバックアップに必要な機材等の設営を始めた。
「なあ、俺って何すればいいんだ?」
「う~ん....とりあえずは待機かな?」
....本当に出る幕あるのか俺って....。
次回からようやく福音戦ですね。
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