隙、見当たらないわね......。
織斑先生の合図で始まってかれこれ五分程経つが楯無は攻められずにいた。
隙がない、と言ったら嘘になる。実際、よく見ていないと気づけないような隙がちらほらと見受けられた。しかし楯無はその隙に違和感を感じた。なんというか、誘われている感じがするのだ。
でも、今のままじゃ何も進展がなくて面白くないわね......一か八か。
そして楯無は蓮の見せた隙を攻める。
この模擬戦にルールは特にない。どちらかがギブアップするまで続けられる。
楯無は右からの打突を蓮の鳩尾めがけて放つ。しかしそれはあっさりと躱された。蓮はそのまま避けたあと、楯無の腕を掴み、さっき楯無が織斑にしたような一本背負いで投げた。
織斑から「あっ‼︎」っと声をあげるが楯無は抜け出し、空中で体勢を立て直し難なく着地してみせる。
「あなた、今の手を抜いたでしょ?」
「あ、やっぱりばれてました? さすが更織だけのことはありますね」
「簡単に抜けられたものあれくらいわかるわよ」
「じゃあ、今度はこっちから行くぞ‼︎」
そう言って今度は蓮から仕掛けた。蓮は低い体勢で即座に懐に潜り込み、突き上げる様に楯無の顎を狙う。常人なら懐に入り込まれたことすら気づかない早さだが幼少より暗部組織で過ごしていた経験からか楯無はかろうじて反応し回避しようとする。
「ーーー無駄だ‼︎」
しかし蓮は楯無が反応したのを見ると空振った勢いをそのままに回し蹴りを繰り出す。それは横腹を捉える。何とか楯無は腕でダメージを軽減することはできたが、衝撃は殺しきれず壁まで殴り飛ばされた。
「なんだ、もう終わりか?」
ゆっくりと倒れている楯無に近づきながら蓮は言った。
「ま......まだまだよ......‼︎」
立ち上がり、蓮に攻撃を仕掛けるが蓮は全てを躱し、いなし、捌いていく。
「くっ.....!」
楯無は距離を置こうと攻撃を止めて後ろに下がる。
それを見て次は蓮が攻撃を仕掛けた。
蓮の蹴りや突きが楯無を襲う。最初は対応できていた楯無もその圧倒的な手数に徐々に押され始め、最後は織斑に楯無がしたように鳩尾を殴った。
「そこまでだ‼︎」
織斑先生は楯無が意識はあるものの、蹲ったまま動かないのを見て続行不可能として終わりの合図を告げた。
蓮は楯無が回復するのを待ってから話をした。
「やるわね、あなた」
楯無は【見事】と書かれた扇子を顔色悪気に言った。
まだ完全に回復してはいないらしい。
「それで俺の言うことを何でも聞くってことだったはずだが.....」
そういうと楯無が何を言われるのか
少し身構えた。
「俺、生徒会長はやらないから」
「----へっ?」
思ってもみなかったことを言われた楯無は素っ頓狂な声をあげる。
「織斑に言ってただろ? 生徒会長とはこのIS学園において、最強を意味するって感じの事。勝ったけど俺そういうのする気ないから......」
現生徒会長である楯無に蓮が勝ってしまった為、本来であれば蓮が楯無に変わって新たに生徒会長という事になるのだが、いかせん蓮は国連IS委員会所属である。今はまだ通達されてないがいつ任務が入るかわかったものではない。その為蓮は生徒会長になる気はなかった。
そして、言うべき事を言った蓮はこの場をあとにしようとするが....
「じゃあ貴方を副会長に任命します」