IS学園side
「な、なんだよこれ....」
学園外に飛ばされてようやく戻ってきた一夏は目の前の光景を見てそう言った。
観客席の一部はもともと何もなかったかのようにぽっかりとなくなっており、それと同じように所々にも穴があった。
それに何より――
「箒!!」
今まさに複数の教師と、医師にアリーナから運び出されている箒だった。
クラス対抗戦の前に見た姿はなく、制服は赤く血に染まり意識はなかった。
幸い、IS学園は世界中から生徒が集まるということもあり保健室も並みのものではなく最先端医療機器が揃っている。
しかし、箒の一命は取り留めるので精一杯だった。
「一夏....」
「千冬姉、箒に何があったんだ!」
「学校では織斑先生と呼べ....と言いたいところだが、今はいい」
状況が状況だからな、と言った後、一夏がいなくなって起きたことを話す。
「お前が消えたあとに、篠ノ之はあのISのよくわからない
「何か、何かわかったことはないのかよ!!」
「....わかったことといえば、あのISは私たちが知りえない技術の装備を使っていることだけだ」
それを聞いた一夏は悔しそうな顔をしながらピットの方に戻っていった。
「一夏....」
「一夏さん....」
そんな一夏に、鈴とセシリアはその背中に声をかけることができず、ただ見ているだけしかできなかった....
蓮side
「ただいま~」
「......」
「はいこれデータ」
「......」
「お~い束?」
「......」
「......、あっ」
ここで思い出す。自らが能力を使って重傷を負わせた相手の名前を――――篠ノ之箒、束の妹だ。
「....あー、まぁ、悪かった」
あの後、十分程謝り続けてようやく許してもらった蓮は一夏のデータを見ていた。
これは束が作ったもので、もうプライバシーなんてないんじゃないか? と思うくらいの代物だ。
名前から生年月日、好きなもの嫌いなもの、性格、最後には日常生活の過ごし方まで
「どうやって調べてるんだ? 束は....」
俺がこれを見ているのも理由がある。
束に謝り続けて許してもらえたがそれには条件があった。
――――ただし、これから私が開発する医療キットで箒ちゃんを治療してきて
なんて条件が出されたため、面倒くさいことが起きないように事前に見ているのだが、どうやらそうはいかないっぽい
織斑一夏の性格がめんどくさい
正義感に溢れていて、コイツ自身の目標はみんなを守ること
理想は語るが自ら行動はしない...こういう奴が一番嫌いだ。
「とりあえず、束が作り終わるまで、瞬影の装備でも作っておくか」
そう言って、蓮は見ていたディスプレイを閉じた。
*****
蓮が箒に怪我を負わして3週間が経った6月半ば
「レンく~ん、やっとできたよ!!」
あの怪我を負わせた日から3週間でようやくできたらしい医療キットは恐ろしい程に高性能だった。
意識の回復、怪我の治癒はもちろんのこと、怪我の跡まで完全に消せるという....
どうやって作ったんだ、と思うが3週間もかけて束が作ったものだ、これくらい当たり前だろうということで一人納得した。
束からキットを受け取った後、俺はIS学園に来ていた。
辺りはもうオレンジ色に染まり夕日がとても綺麗に見えていた。
そんな時、織斑千冬を探していると面白い状況だったため聞いておくことにした。
「答えてください教官! なぜこんなところで?」
「何度も言わせるな、私には私の役割がある。それだけだ」
「こんな極東の地で何の役割があるというのですか? お願いです教官。我がドイツで再びご指導を! ここではあなたの能力は半分も生かされません」
「ほう....」
「だいたいこの学園の生徒など教官が教えるに足りる人間ではありません。危機感に疎く、ISをファッションかなにかだと勘違いしている。そのような者たちに教官が時間を割かれるなど――――」
「そこまでにしておけよ小娘」
「っ!?」
「少し見ないあいだに偉くなったな。15歳でもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」
「わ、わたしは!?」
「寮に戻れ。私は忙しい」
「うっ....くっ」
話を聞いていて蓮は思ったことがある。
(いやいや、半分どころか全く生かされてないから、俺が襲撃しても一人怪我人出してから来るぐらいなんだから)
「そこの男子、盗み聞きか? 異常性癖は感心しないぞ」
「な、なんでそうなるんだよ!? 千冬姉」
「学校では織斑先生だ。お前も早く寮に戻れ、もう下校時刻だぞ」
そう言われて一夏はそそくさと帰っていった。
「それとそこにいる奴、出てこい」
千冬は真上を見上げてそう言う
『あれっ、バレてました? 完全に消えて見つけられないはずなんですけど』
おかしいな? 俺特製光学迷彩で気配も姿もなかったはずなんだけど....
「何をしに来た、返答によっては容赦はせんぞ?」
『まぁまぁ、そのとんでもない殺気をおさめてよ』
蓮は何気なく千冬に言うが、普通なら気絶ものだ。
『なに、ちょっと束に頼まれて、箒ちゃんとやらを治しに来ただけだ』
「お前ことを信用できるとでも?」
『別に信用してくれなくても俺は構わない、俺は帰るだけだ。だがそれだと束の妹が弱って死ぬぞ?』
蓮にそう言われ千冬は考える。
今、目の前にいるのは千冬からしてみれば全く面識のない人間、ましてやこの前襲撃を仕掛けてきたやつだ。信用できるはずがない。
しかし奴はこうも言った。束に頼まれて、と...ならば束本人に確認したほうが早い。
そう思い、千冬は束に電話をかける。
『はいは~い。何かな? ちーちゃん』
「束、これはどういうことだ」
『これって、なんのことかな? ちーちゃん』
「ISだ。この前襲撃してきたISがお前に頼まれたとIS学園に来ている」
『うん、だって実際頼んだし』
「この前の襲撃はお前がコイツに頼んだのか?」
『うん、そうだよ。でもまぁ目的はいっくんのデータ収集だったんだけどね~』
「では何故、篠ノ之まで攻撃した?」
『それはねー箒ちゃんが今ちーちゃんの目の前にいる人の禁句を言ってしまったんだよねぇ』
「禁句とは?」
『確かあの時は、「この程度の相手に――」だったかな? 絶対彼にはいっちゃダメだよ』
「......」
『ちーちゃん?』
「束。今お前、「彼」って言ったか?」
『......』
「まあいい、それでお前とコイツは一体どういう関係だ?」
『――――家族だよ。大切なね』
「....そうか。悪かったな急に電話をかけたりして」
『いやいや~、ちーちゃんならいつでも大歓迎だよ』
千冬は携帯をしまい蓮を見る、その顔は少し笑っているようにも見えた。
次回から臨海学校編にはいれればいいなと思います。
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