Sword art online~Ein Retter aus werden wollen~ 作:鴉紋to零
アインsaid
今日も今日とて書類地獄
と思っていた時期が僕にもありました
「さて、キリトは勝てるのかなぁ…」
控え室でポツリと、俺は呟く
そう、察しのいい人なら気付くだろう
本日はうちの団長とキリトのデュエルの日である
そんなわけで私も駆り出されました
え?雑務の人が何故来るかって?それは勿論
「準備はできてるかね?アイン君」
おかしいよね、何故私がこうなるの?
いや、一万歩譲って私が代理なのは分かる
でもさでもさ……
「だ、だんちょー。お仕事増量の件は……」
恐る恐る挙手して問う私。それを見て楽しむ団長
「問題ないだろう?大丈夫。君なら勝てるさ」
いい笑顔で脅していらっしゃる!!
職権乱用だろ!?これ!?
「さあ、勝ってきたまえ」
…………え、ええい!どうせ普通に行けば団長が勝ってるんだ!!なら、俺でも勝てる!!
錯乱する俺の思考
沸き上がる(わけのわからない)自信
三人称said
沸き上がる喚声
ああ、もう後戻りできないんだよなぁ……とアインは今更ながらに覚悟を決める
腰の愛刀の柄を撫で、虚偽の重みを感じとる
真面目な話、仕事云々を置いておいたとしても俺は負けるわけにはいかない
ここでキリトに負けてもらわねばならない
「ほんと、まさかお前が出てくるとは思ってなかったよ。アイン」
目の前のキリトは自然体で悠々としている
「奇遇だな、俺もだ」
日頃は開いている目をスッと閉じながらアインは言った
「でも、まさかお前がヒースクリフより強いとは知らなかったよ」
愛刀に手をかけ、刀身を抜きは……なとうとするところで手を止める
「…………ちょっとたんま、何を吹き込まれた?」
張り付けた笑みを浮かべ、アインはキリトに迫る
「え、えっと……血盟騎士団No.3のプレイヤーでヒースクリフの右腕、彼がいないと血盟騎士団の戦力はがた落ちがどうとか……」
ピキッっと、聞こえてはならない音がした
「そうかそうか……団長はそんなことを……」
ポツリと呟くアインは、誰がどう見ても仁王のそれだった
その雰囲気を察してか、周りの観客も静かだ
「だ、大丈夫……か?」
キリトは虎穴に入るような思いで豹変したアインに尋ねる
「…………問題ない。全て切り伏せる」
その狂った発言と共にデュエルの申請がキリトの元へ届いた
キリトは息を飲み、本能的に悟った
殺らねば殺られると
いくら初撃決着だとしても運が悪ければ……
そんな妄想をキリトは振り払った
勝負の前に敗けを妄想するなど、その時点で負けている
キリトの指が受諾のボタンを押す、開始時間は……一分後
キリトとアインは同時に得物を抜き放ち、構える
左右に握られた二振りの剣が光で眩く輝く
本来のものとは一線を凌駕する長さの大太刀の切っ先が、キリトの喉元へ向けられている
カウントが零になった瞬間……
空気が、弾けた
さて、唐突だが何故アインがこの地位にいるのかを説明しよう
彼は団長であるヒースクリフにスカウトされた元ソロプレイヤーである
ヒースクリフが目をつけたポイントは二つ
一つは、この場に関係の無い事柄
彼は恐ろしいほどに小隊での指揮能力が高いのだ
六人ほどでパーティを組ませれば、素人がいようが、ソロプレイヤーがいようが、初陣の者がいようが関係なく、完全に統率させられるのだ
これは彼の持ち前のカリスマ性と性格から来ている
敵を作らない立ち回りが、彼のカリスマと相まってこうさせているのだ
だが、前述の通り。この際は関係ない
故に、二つ目が鍵となってくる
二つ目は……デュエルの経験量
プレイヤーVSプレイヤーにおいて、彼を出し抜けるのは、それこそ神のみである。等と巷で噂されるほどのデュエリストである
一日に多いときは百人近くと戦っているのにも関わらず、彼は無敗なのだ
現に、彼が破れたのはヒースクリフのみであり、それ以外の者には敗北したことはない
本人も気付いていない持ち前のセンスと経験量
これが、彼を副団長として至らしめている理由である
それ故にか、彼の二つ名は
今だヒースクリフを除き勝者のいない無敵の者
それが、血盟騎士団副団長アインファーストの力である
まず飛び出したのは黒の剣士
淡い緑の発光を纏う銀の剣がアインの胸を切り開かんと迫り来る
下段に構えていたアインは即座に腕を引き揚げ受け止めた
衝撃が全身に駆け巡る
だが、まだ終わりではない
裂破の気迫と共に黒の剣が銀の剣に重ねるように迫る
早く、鋭く、受けた太刀諸ともアインに一太刀入れんばかりに
だが、既にアインは勝機を見ている
彼は崩れるように右膝を地面につき、その二撃目を
水が流れるが如く、剣を滑らせ、その太刀の刃はキリトの腹を捕らえた
そして……
「…………絶空」
一太刀だった
キリトも無論、昔アインと何度も戦ったことある
そして、成長していることも計算に入れていた
それなのに、いや、そうだからこその一撃だった
文句のつけようの無い。完全な一刀だ
これにて、二人のデュエルは幕を閉じた
観客の声や、放心気味のキリトなど気にもせずに、アインは控え室へ戻っていった
全ては……
「団長ぶっ殺」
色々吹き込んだ団長に