『暁紅』第五話になります。
今回は前話で予告したように、『前編』『後編』の二部構成でお送りいたします。
今回、『真剣で私に恋しなさい!S』にあった『東西交流戦』を中心に話を書いております。
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
島津寮、早朝。
窓から差し込む日の光を一瞥し。本に視線を戻す。
「お~い、海斗~。起きてるか~」そういって襖を開けたのは翔一だった。どうやらまだ眠そうだ。
「ああ」既に3回読み返した本を閉じると、立ち上がり、翔一とともに食堂へ。
「おはよう二人とも」
「ああ、おはよう」大和にあいさつを返しながら席に着く。
朝食はアジフライにご飯とみそ汁、それと漬物だった。
『昨日夕方。禁止区域に立ち入った男女5名が死体となって発見されました』テレビからアナウンサーの声が聞こえてきた。
「朝から物騒だな」アジフライをかじりながら海斗が言う。
「遊び半分で入ったそうね、この男女」麗華もテレビ画面を見ていた。
「禁止区域か…。この目で見たことは無いが、悪の巣窟と聞いている」クリスが真剣な面持ちで言う。
「間違ってはいないな、現に犯罪者の多くは禁止区域の中にいるって聞くし」と大和。
「なら、すぐに一斉検挙してしまえばいいのではないか?」クリスがみんなを見回す。
「そうしようと議論になったが。一部の政治家が『人権に反する』とか言って見送りになったんだ。実際、犯罪を犯していないのにやむをえずそこに住んでいる者もいる」海斗が答える。
「だがそれでは、悪が残ったままだ!」
「今のままでも別にいいだろ」
「なに!?悪を野放しにするというのか?」クリスが海斗を睨む。
「現にたいした犯罪も起きてないんだ。無意味に動く必要もないだろう」
「そんな堕落した考えでボディーガードが務まるのか!?」クリスが机をダンッと叩く。
「務まるぞ?」
「なっ!?開き直ったか」
「それに、ボディーガードは正義の味方じゃあないんだぜ?プリンシパルを護るのが仕事だ。それに」そう言うと海斗はクリスを見据えて言った。
「自分と周囲の者だけならまだしも。関係無いやつまで守り通せるのか?」
「っ!?それは……」クリスはしばらく俯くと。席を立ち、食堂を後にした。
クリスが出て行き、部屋の空気が重くなったところで。海斗が口を開いた。
「…悪いな。空気を悪くして」
「あ~、気にするなよ。お前の言ってることも一理あるし。クリスが頑固だっただけだ」翔一がフォローする。
「たしかに」ボソリと京もつぶやく。
「そうか…」そう言い海斗は、アジフライを頬張った。
☆
登校時のクリスはどこか心ここにあらずといった感じであった。
海斗に言われたことが引っかかっているのだろう。
「クリス」そんなクリスを見かねた大和が声をかける。
「なんだ?」
「さっきのことは、気にするなよ。海斗が言ってただろ?『守り通せるのか?』って」
「ああ…」
「なら、守り通せるようになればいいんじゃないか?」
「!?」
「強くなって。関係無い人も守り通せるようになればいいんじゃないか?」
「大和…。そうか…、そうだな!勇往邁進だ!」どうやらクリスは元気になったようだ。
大和は安心した。
☆
昼休み。
「…海斗」海斗の席まで来たクリスが口を開いた。
「なんだ?」
「今朝は、強く言い過ぎてすまなかった…」
「あぁ、そのことか。こちらこそ、いろいろ言って悪かったな」
「いや、いいんだ。自分に新しい目標を課すことができた」
「そうか」
「言いたかったのは、それだけなんだ。それじゃあ…」そう言うとクリスは自分の席に戻っていった。
(大和は、いいようにフォローしたようだな)じつは朝食の後。海斗は大和にクリスのフォローをして欲しいと頼んでいたのだ。『方法は任せる』と。
(もう問題は無いな……)
昼休みが終わろうとしていると。校内放送により、全校生徒がグラウンドに集められた。
「諸君、唐突で悪いんじゃが。福岡の『天神館』が週末、修学旅行で川神に来ることになっての。学校ぐるみの決闘を申し込まれたので、引き受けたぞい。頑張るんじゃぞ」鉄心は本当に唐突にそう言った。
生徒達がザワつく。
(また急だな。交流戦って、ここみたいなところがまだあるってことか?)海斗は一人、想像していた。一体どのような交流戦になるのかを。
しかし、どう考えても。女が武器を持ってジャキンジャキン戦う絵しか浮かばない。
(……当日どうするかな?麗華の護衛だけに徹するべきか?)ただ考えていた。
☆
九鬼財閥所有工場地帯。夜。
そうこう考えているうちに日が経ち。ついに『東西交流戦』当日となってしまった。
「しまった……!場転したら当日になっちまった!」頭を抱えるがもう遅かった。
既に三学年の内、一年生は負け、三年生は勝つという一勝一敗の状況であった。次の二年生で勝たなければ勝利は無い。
『東西交流戦』のルールは簡単。各学年ごとに200人ずつ出し合い集団戦を行い、敵大将を討ち取れば勝ち、というもの。
一年生はチームワーク0による統率の無さと、大将の弱さから敗北。三年生は大将である武神、川神百代の無双により圧勝。
そして、二年生、海斗たちの番が来た。
「まったく軟弱よ!東の連中は」天神館の猛者『西方十勇士』の一人、大友焔が武器である大筒を前方の一子へと向ける。
「大友家秘伝・国崩しぃぃぃぃぃ!!」大筒より飛来した焼夷弾が一子に迫る。焼夷弾が炸裂し、あたりを爆炎が包む。
「うわぁっと!危ない!なんて広範囲なの!?」一子はかろうじて直撃を避けたが、一子の近くにいた何十人かは爆発による衝撃をもろに受け、脱落。
爆炎から飛び出した一子は大友を指さす。
「というか、そんな武器有りなの!?」
「ま、これはロケット花火を相手に撃つ行為の発展系よ!何ら問題はない!」
「いやいや、その行為自体が結構問題!」
「まったく軟弱よ!ゲームばかりしておるからだ」
「西の武士娘は豪快ね。でも!」そう言い一子は薙刀を構える。
「近距離武器で、この大友は倒せん!」大友も大筒を構えた。
「やってるな~」戦いを見ていた海斗がつぶやく。今海斗は麗華とともに大将である九鬼英雄のいる本陣にいた。九鬼英雄は『九鬼財閥』の跡取りの一人であり、高いカリスマ性を持つ。それが、英雄が大将に選ばれた理由である。
「朝霧よ、お前は戦わぬのか?」英雄が海斗に訊ねてくる。
「麗華の護衛もあるからな。そう簡単に動けない」
「許可するわ、海斗」麗華がしれっと言う。
「……は?いいのか?」
「ええ、人手ほ多い方がいいわ」
「…わかったよ」海斗はその場を後にし、戦闘に向かった。
「東の腰抜けめ、逃げるしか能が無いのか!」大友の連撃が一子を襲う。それを一子は避け続ける。
「我ら西国武士ならば、どのようなことがあっても攻撃は止めぬ!」再び大友は一子に狙いを定める。
しかし、今一子を狙っているのは大友だけではない。
一子の遥か後方。西方十勇士の一人、毛利元親が一子に狙いを定めていた。
「美の化身、毛利の三連矢で仕留めてやる。美しい国崩しを避けたその瞬間が、お前の最後だ」
「いや、あれは美しいんじゃなくて、ただ派手なだけだろ」背後から聞こえた声に振り向いた毛利の目に映ったのは海斗だった。
「貴様!いつからそこに!?」
「お前がその鬱陶しい髪を掻き上げてるときから」
「文章にも書かれていない時から!?」
「文章?なんだそりゃ?」そう言い海斗は姿勢を低くし、大きく踏み出した。毛利との3m程度の距離を一気に詰め、毛利の腹部に拳を打ち込んだ。しかし、それだけではダウンせず。弓をこちらに向けてくる。そこで海斗は大きく横にずれて遮蔽物の中に隠れる。
「隠れてもム————————」毛利の言葉を遮るように飛来した矢。その先端に取り付けられた爆薬が毛利の、文字通り目前で爆発した。
「美しいこの私がぁあぁぁあぁぁーーー!!」毛利は爆発をもろに受け、そのまま吹き飛び、地上へ落下した。
「椎名か、いい腕してるな。普通あそこから狙えるか……?」海斗が避けたのは、京が毛利に狙いを定めているのが見えたからだ。
「さて、十勇士一人め撃破、と」立ち上がり、海斗は歩き出した。
「毛利がやられたか…」天神館、本陣にて。副将、島右近が戦況を確認していた。
「だが奴は西方十勇士の中でも最弱…」大将、石田三郎は冷静に戦況を見守っている。
「東の連中ごときに負けるとは……、十勇士の面汚しめ!」マッチョ、褐色、モヒカンと暑苦しさMAXの十勇士。長宗我部宗男もまた、まったく動じることはなかった。
(そろそろ弾切れのはず…)一子は大友の弾切れのタイミングを計っていた。
「一言教えてやるぞ東の! この大友に弾切れは無いのだ!」大友の後方に天神館生徒が現れ、大友に弾薬を渡す。
「ガ~ン! 弾切れ狙ってたのに……」
「たわけ! 補給線を築いておくことは戦の初歩よ!」
「なら、補給線を断つのも戦の初歩と知りなさい」突如マルギッテが現れ、トンファーを構える。
「南蛮人! どこから湧いてきた!?」大友が大筒をマルギッテに向ける。
「クリスお嬢様の部隊が、お前の後方を攪乱している。もう弾はそれが最後と知りなさい」
「たわけ! なら、残りの弾でお前等を倒すだけのことよ!」大友が発射態勢に入る、しかし。
「トンファーシュート!」マルギッテが放ったトンファーはブーメランのように弧を描き、大筒の砲口に刺さった。そして。
「しまっ———————」暴発した衝撃を受ける大友。トンファーも衝撃でマルギッテの方に戻ってくる。トンファーを拾い上げ、マルギッテは大友との距離を詰める。
刹那、前方の爆煙から焼夷弾が飛来する。しかし、照準が定まっておらず、マルギッテの近くを通り過ぎた。
「大友家、秘伝…国…崩しぃ……!!」煙の中から声が聞こえる。しかし、その声と焼夷弾から予測される発射位置がマルギッテに王手をかけさせた。
「決して攻撃を止めないその気骨、見事だ…!」マルギッテは称賛の言葉を送りつつ。煙の中へ突入する。そして、大友に肉薄する。
大友は大筒を構えようと行動を起こすが、あいにくこの距離はマルギッテにアドバンテージがある。
「トンファーマールシュトローム!!」両手のトンファーで大友をはさみ、空中に浮かせたところで。無防備なその身に連続でトンファーの殴打を浴びせ。最後は思いっきりトンファーで殴り飛ばした。
「無念だあぁぁぁっ!!」大友は大きく吹っ飛び。地面に叩きつけられて決着した。
「なんだこいつ、わたしとやるきか?」十勇士の一人、尼子晴が井上準を睨みつける。
「一見ショタだけど、俺には分かるぜお約束が。実は女の子なんだろ? そうに決まってる!」井上準———川神学園1のロリコンでありハゲ、もといスキンヘッドの2-S生徒。隊長であるクリスを先に行かせ、尼子と対峙していた。背が低く、女の子のような容姿をしている尼子を女の子と勘違いし、いろいろさせようという不純な目的があるのだが……。
「わたしは、おとこだー!」
「いいねぇいいねぇお約束だね、かわいいよマジ天使」既に井上は変態の極地に辿り着いていた。
「なにがおやくそくだー!」斬爪で斬りかかってくる尼子を避ける井上。次も、その次も、さらに次も、井上は避け続ける。
「すばしっこいやつだ!」十勇士最速を誇る尼子ですら今の井上を捉えることはできない。なぜなら。
「ロリが絡んだ戦闘空間では、俺のスピードは3倍になる」からである。某仮面の彗星風に言う井上は尼子との距離を詰め、尼子を背後から捕まえた。
「は、はなせ!」
「兄タマと呼ぶがいい。さあ、一緒に風呂に入ろう。な!」
「うわぁぁぁ! きもちわるいよぉぉぉぉぉ!」と、尼子の体を触っていた井上が異変に気付いた。
「こ、この感じ。お前本当に男なのか!!」驚愕する井上。
「あ、あたりまえだ!」
「お前にはガッカリだよ」静かに井上が言う。
「え?」
「俺はショタじゃねぇ…、そんな間違った性癖はもたねぇ」この世の物とは思えない形相で井上は尼子に手刀を浴びせ、気絶させた。
川神学園本陣、上空。
「されど勝敗は、敵の頭をとること。なれば、奇襲あるのみ」英雄の上空から迫る、文字通り黒い影。十勇士の一人、鉢屋壱助。英雄の専属メイドであり忍である忍足あずみの『風魔』と同じ源流である『鉢屋』の忍法を使う天神館の忍である。
「鉢屋か! 一人で来るなんて頭悪いのか?」無論、目には目を。鉢屋を迎撃したのはあずみだった。
「うぬは風魔か! 相手にとって不足なし」そう言うと鉢屋は五つに増えた。『影分身の術』である。
「あずみ、さっさと片付けろよ」
「了解しました、英雄さまぁぁぁぁぁぁぁ!!」あずみは満面の笑顔で答えると、五人の鉢屋を全て斬り伏せた。それら全てが。
「全部残像?」驚くあずみを鉢屋が背後から捕まえる。
「もらったぞ!」鉢屋は地を蹴り、あずみを連れて上空へ。
あずみの体は飯綱によって縛られ、身動きがとれない。
「飯綱落とし。この技の威力は知っていよう!」
飯綱落とし、簡単に言うと空中バックドロップ。
(英雄様が見てるんだ、負けられねぇな)あずみが自らの奥歯をガチリと噛み鳴らすと、空中でそれが爆発した。
「自爆だと! しかし威力が足らんぬかったな」
「いや、まだだぜ!」あずみはメイド服の下に着込んでいた水着姿になり、鉢屋の後ろをとった。
「なに!」
「逝っちまいな!」あずみは鉢屋を思いっきり地面に叩きつけた。
「お騒がせしました、英雄様ぁ!」満面の笑顔で帰還するあずみ。
「うむ、警護の役目大義であった。……なかなかに似合うな、その水着は」
「きゃるーん☆ ありがとうございます、英雄様ぁぁ!」これ以上ないほど満面の笑顔で答えるあずみであった。
東西交流戦はさらに激しさを増していくのだった。
いかがだったでしょうか?
『暁紅』第五話『東西交流戦 ~前編~』をお届けしました。
今回は『二部構成』に挑戦しております。なので、今回の終わり方が違和感のあるものになっているかもしれません。
そして今回は『暁紅』最多の5404文字を記録いたしました。………多いのかな?
これから、一話一話を長く、かつ読み応えのあるものにしていこうと思います。
それでは、次回『東西交流戦 ~後編~』。出来る限り早く投稿できるよう頑張ります!
では、次回。ご期待ください。