『暁紅』第六話になります。
前回から続いている二部構成も今回で完結します。
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
東の『川神学園』と、西の『天神館』による交流戦、名付けて『東西交流戦』。
現在、川神学園の一年生が敗北。三年生が勝利という一勝一敗の結果となっている。
そして現在、両校の二年生どうしの戦いが繰り広げられていた。
九鬼財閥所有ビル、天神館本拠地。
「では、俺が行くとしよう」
長宗我部が切り出した。
「ほう? お前が? 奴らも可哀そうにな」
石田はそう言って快く長宗我部を送り出した。
四国最強(自称)の長宗我部なら、この状況を打破できると考えたからだ。しかし、その期待は呆気なく崩されることとなる。
☆
「————いきなり後ろから現れるとは……」
川神学園2-S所属の葵冬馬は、背後にある海から這い上がってきた長宗我部を見やる。
「がはは! 海を泳いで回り込んできたわ!」
豪快に笑う長宗我部。
「念のため、備えをしていてよかったです」
その合図とともに周囲に川神学園生徒が集まる。
「ほう…。予想以上に敵が多いな…。だが、すべて吹き飛ばす!」
そう言うと長宗我部は壺の中に入った油を自身にかけた。
「ヌルヌルだ…、最強のオイルレスリングを見せてやる! 我こそは西方————————」
「ちゃんと、海に向かって飛び込んでくださいよ」
「ん? 今なんと言った? 優男」
「オイルレスラーがいると聞いていたので」
そう言うと冬馬はポケットからライターを取り出した。そして—————————
「これも、用意しておいて正解でした」
ライターを長宗我部へと投げた。ライターは弧を描き、長宗我部を炎で包んだ。
「ぬぐわあああああ! ノリ悪すぎだろおぉ!」
熱さに悶えながらも長宗我部は冬馬へと突っ込んできた。しかし、冬馬を護るように立ち塞がった『新感覚癒し系』の榊原小雪が、長宗我部を上空へ蹴り上げ、さらに自ら跳躍し長宗我部を海面へと蹴り落とした。
「ちゃんと海側に叩きつけておいたよ」着地した小雪が冬馬に駆け寄る。
「ありがとう、ユキ」
冬馬は小雪の頭を撫でる。家族同然の仲である冬馬、小雪、準にとってこの行為は当たり前のことなのだ。
「わ~い! もっともっと~!」
親子のような絵であった。
と、少し離れたところにいた大和の携帯が鳴った。クリスからだ。
「大和。今、敵本陣にいるんだが。敵の大将がどこにもいないぞ!?」
「わかった、とりあえずそこらで暴れてて」
そういうと携帯を切る。
「不利とみて隠れたな、そろそろ俺も動いたほうがいいな」
「兵隊を連れていかないで大丈夫ですか?」
心配する冬馬に手を振って答える。
「一人でいい、雑魚相手は回避で十分だ」
そういうと大和は歩き出した。
☆
石田と島は、工場の死角であるエアポケットまできていた。
「ここまでくれば安全だな」
「向こうがあそこまで手練れ揃いとは思いませんでしたな」
「十勇士が壊滅だからな。おれ一人で奴ら全員をなんとかできるが……」
「いけません! あれを使うのは負担が大きすぎます」
「まぁ、ここに隠れて時間切れに持ち込めばいい。このスポットは、おれのような小狡い保身に長けた者でなければ見つけられまいよ。むろん、おれはそれだけではないがな」
「悪かったな、小狡くて」
突如聞こえた声に、石田と島は動揺する。
石田がもたれかかっている建物の上から、スーツを着た男が飛び降りてきた。海斗である。
「なにやつ!?」
島が身構えるが、海斗の方が初動が早かった。一瞬で島に肉薄し、腹部に一発と顔面に二発、パンチをお見舞いした。
「ぐぅっ!」
島が膝をつくが、まだダウンしていない。
「見た目通りタフだな」
「やるな…、だが!」
島が薙刀を構え、斬りかかってくる。それを海斗は紙一重でかわす。
「あぶねっ!」しかし、海斗は冷静に薙刀の軌跡を読み。島に肉薄すると、今度は腹部に三発と頭に二発、パンチを打ち込んだ。
「がっ!」そして島はダウンし倒れた。
「こんどはお前だな、……っと」
海斗は攻撃態勢を解き、一目散に逃げて行った。
「貴様っ! どこへ行く!」
追いかけようとした石田だが、人が近づく気配を感じ止まる。
「やっぱりここだったか大将」
来たのは大和であった。
「貴様…、何者だ?」
「直江大和、川神学園の生徒だ」
「一人で来るとは阿呆だな、直江!」
「やるか! 大将!」
大和が構えをとる。
「!! こ、こいつ…この構えは!! まさか!!」
「フッ」
「ド素人ではないか! 愚弄しくさって、阿呆が!!!」
どうやら構えだけで見破られてしまったようだ。
「西方十勇士が大将、石田が戦闘を教えてやる!」
石田は日本刀を抜き、スラリと構える。
「いくぞ!」
石田が大和に斬りかかる。しかし大和はそれを回避していく。普段、『武神』川神百代の相手をしているので回避力には自信があったのだ。
二撃、三撃と、次々に避けていく。
「ちょこまかとっ…!」
そう言うと石田は攻撃を止め、大きく息を吸い。そして——————————
「奥義・光龍覚醒!」
石田の髪は金色へと変色し、オーラを纏っている。
「なっ!?」
「寿命を削るこの力、使わせたことは褒めてやる。だが、ここまでだ!」
石田が刀を振り上げる。
(まずい! 避けきれるか!?)
石田が刀を振り下ろす刹那———————————
工場の垂直の壁を駆け下りてくる者がいた。
「!? 何やつ!?」
石田が振り返った先に、一人の少女が壁を駆け下りてくる。
「源義経! 推参!!」
義経と名乗った少女は壁を蹴り、石田へ一直線に飛来し、手に持った刀を一閃。石田へ鋭い斬撃を浴びせた。
「…その名前…、お前も…俺や島のように…、武士の血を引く人間か……」
「違う。よしつねは『武士道プラン』で生まれた者。血を受け継ぐ者にあらず。そのものだ」
「……? それにしてもこの強さ……、惚れ…る…」
そういうと石田は気を失った。
義経は大和の方を向く。
「義経は、同じ学び舎の友として、お前に助太刀した」
「うん…助かった、ありがとう。でも俺は君みたいな目立つヤツ知らないんだけど」
「無理もない。義経は、今日から2-Sに編入となった」
「2-Sか……」
「しかし、大将を潰すためとはいえ、作戦を出す立場の者が敵陣へ単独で乗り込むのは危険すぎると思う」
「うまく倒せると思ったんだけど。助けられちゃ世話無いね、反省する」
「…気持ちはわかる。義経も時々やるからな」
大和の肩をポンポンと叩き、義経は続けた。
「しかし、敵将を一人倒したのだ、それは誇っていいと思う」
義経が島を指す。
「? あれは俺がやったんじゃないよ?」
「え!? では、だれが?」
「さあ、俺が来たときにはもう倒れてたし」
「そうだったのか…。ともあれ、敵総大将を討ち取ったのだ。勝鬨を上げるべきだ」
「俺が?」
「ああ、その権利がある。義経が保証する」
「そうか、じゃあ」
大和は携帯を取り出し、翔一に電話を入れる。
勝鬨は翔一から瞬く間に広がり。皆、勝利の報を心から喜んだ。
「フハハハハハ!! 皆の者、大義であった!!」
「おい九鬼英雄、なんなんだ彼女は?」
現れた英雄に詰め寄る大和。
「『武士道プラン』の申し子か。予定より早く投入されたようだな」
「なんなんだ? 『武士道プラン』って」
「明日の朝、テレビを見よ。それが一番てっとり早いわ」
「これから、よろしく頼む」
義経がペコリと頭を下げる。
「こちらこそよろしくね」
大和も返す。
「では、さらば」
そういうと義経はどこかへ行ってしまい——————————————帰ってきた。
「自力で帰ろうと思ったが、道がわからない」
「ん? 地図を渡されなかったのか?」
と英雄。
「義経なのだから自力で帰る、と強がってみたが、無理そうだ…」
「土地勘が無いのに強がってはいかんぞ」
「しきりに…、反省する」
義経が壁に手を当て、しばらくして離し。
「反省したので、道を教えてくれないだろうか」
「この工場を出たらまっすぐ行って………(中略)こうです」
「おお、わかりやすい、ありがとう。それでは、これにてご免」
そう言い、今度こそ義経は帰って行った。
「なんだか騒がしくなる予感がするな」
明日から起こる出来事を思いつつ、大和は月を見上げた。
「源義経か…」
「興味があるの?」
大和たちから少し離れたところで、海斗と麗華が話していた。
「『血を受け継ぐ者にあらず。そのものだ』と言ってたのが気になってな。要は本人ってことだろ?」
「そうね。クローン技術ってやつかもしれないし」
「なんか起こりそうだな…」
海斗もまた、月を見上げた。
—————こうして、東西交流戦は川神学園の勝利で幕を閉じた。
いかがだったでしょうか?
『暁紅』第六話、『東西交流戦 ~後編~』をお送りしました。
『真剣で私に恋しなさい!S』をプレイした方はご存じのはずの『東西交流戦』。海斗が参戦する都合上、少しアレンジしました。ファンの方に「これは違うぞ」と言われぬよう精一杯書きました。
話を考えるのに時間がかかったため、投稿が少し遅くなりましたが、大目に見ていただければと思います。
次回はなんと! あの合法ロリ美少女が満を持して登場します。こうご期待!
次はもう少し早く投稿できるよう心掛けようと思います。それではみなさん。ありがとうございました。
追伸。上記したのですが、諸事情により数日投稿出来なくなりました。
大変申し訳ありません。今後も『暁紅』をよろしくお願いいたします。