『暁紅』第九話になります。
サブタイトルを見て、話の内容が大まかにわかった方もいらっしゃるかもしれません。おそらく、想像通りです。
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
日本全国に多数存在している『禁止区域』。
禁止区域とは、いわゆる『社会不適合者』が集まる場所。
殺人を犯した者。盗みをした者。理由はさまざま。そんな『無法者』が集まる場所が、禁止区域なのだ。
故に、禁止区域内で殺人、窃盗は日常茶飯事である。
「殺される者が悪い」、「盗まれる者が悪い」。それが、禁止区域でのルールだ。
故に禁止区域には、『生きる術』を持ち合わせた者が大勢いる。
頭脳、武力に長けた者だけが、禁止区域で生き残ることができる。
内田も、その『生き残ることができる者』の一人だ。
川神市のとある裏路地を抜け、さらに奥へ行った場所に、一つの店があった。
店といっても客はいない。閉店しているからだ。
その店の裏口に回り、塀に手を掛けた。そして、塀を使って跳躍し、塀の向こう側
、『禁止区域』へと『戻って』行った。
「あ、内田さん」
戻ってきた内田を見て、一人の少年が内田に走り寄って来た。
「今戻った、山西」
「お疲れ様です」
『山西』と言われた少年は、海斗や大和となんら変わらぬ歳だ。しかし、そのような少年でも禁止区域にいるのだ。
「なにか変った事はあったか?」
「いいえ、何も。例の男はどうでした?」
「合格だな。あれは人の域を超えている。俺たちと、良くて互角だろう」
「なかなかの腕のようですね。しかし、私たちの目的は川上百代を含むマスタークラスの『殲滅』です。その男は、その域まで及びますか?」
「わからん。奴も本気は出していないだろうが、私に攻撃を当てる程だ。それに、遠くにいる私にも気づいた。警戒が必要だな」
「そうですか」
「森羅さんは、いつもの場所か?」
「はい、『彼』とコンタクトが取れたそうです」
「例の『法案』の件だな?」
「はい」
山西は頷くと、内田を案内した。
森羅、この川神禁止区域を統べる男の元に。
「森羅さん」
川上禁止区域の最奥にいた男、『線眼』と呼ばれる特殊な目を持つと言われる男だ。
「内田が帰ったようだな、山西」
振り返らず森羅は口を開いた。
「戻りました、森羅さん」
内田が山西の前に出る。
「ご苦労だった。……何か良いことでもあったか? 少し興奮気味のようだが?」
森羅は振り返りそう言った。
「見えますか?」
「ああ」
頷くと森羅は山西の方を向き、幹部を集めるよう指示を出した。
しばらくすると、人が集まってきた。
「全員集まったようだな。それでは、幹部会を始める」
内田が切り出した。他の幹部たちも、内田の合図に頷いた。
「まずはじめに、例の男の件だが。これは、『要注意』ということにする」
「それほどなのか? その男は」
内田の言葉に反応したのはスキンヘッドの男だ。名を、甘田という。
「ああ、マスタークラスの資質を秘めている」
「それはそれは、厄介だな」
「たしかに」
ロン毛の男、宇畑の言葉に。刈り上げ頭の男、藤木が答える。
「しかしこちらも、暁東市の禁止区域とコンタクトを取れた。奴らが味方になるかはわからないがな…」
森羅がそう言うと、幹部たちがざわつきはじめた。
「こちらの味方に付くでしょうか?」
「あちらも、こちらと組むことにメリットを感じているはずだ。おそらく付くだろう」
山西の疑問に内田が答える。
「役に立つのか?」
藤木の質問に森羅が答えた。
「奴らのリーダー、五十嵐の政治的な力は強い。その部下も、戦力にはなるだろう」
「そうであればいいが…」
「…では、これで幹部会はお開きとしよう」
森羅の号令で幹部会は幕を閉じた。
☆
翌日、島津寮。
朝食を食べていた大和たちに衝撃が走った。
ニュースで『禁止区域強制退去法』の執行が正式に決定したと報じられたからだ。前々から案が出ていたとはいえ、海斗もこればかりは驚いた。
法案の内容は、禁止区域の住人を一人残らず捕獲し、更生施設に入れ、まっとうな教育を受けさせた後、社会復帰させるというもの。
しかし海斗は信じられなかった。表の世界の人間が、禁止区域の住人を平等に扱うはずがない。いや、ゴミと『平等に』扱うかもしれないが。
今は、憐桜学園校長である佐竹のおかげで表の世界にいるが。海斗はかつて禁止区域の住人だった。禁止区域で生まれ、禁止区域で育ってきた。人を殺し、モノを奪うのは日常茶飯事。
海斗は父、雅樹から、「この世で信じられのは自分自身だけ」と言われてきた。人は嘘をつき、裏切る生き物だと。
海斗は見てきた、表の世界の人間が、禁止区域の住人を『人』ではなく『ゴミ』として扱うところを。
海斗は無言でご飯を口に運び、テレビの画面を見つめていた。
ニュースキャスターが「彼らが社会復帰する日も近いですね」「今後どうなるか気になりますね~」と、原稿どおりの言葉を発している。
嘘であろう。おそらく表の人間は、禁止区域に者と同じ空間にいるだけで「不快だ」と言うはずだ。
これまで「ゴミ」だのなんだのと好き放題言ってきたのだ。そう簡単に認識が変わるわけがない。
(…無理だな)
海斗はそう確信した。
☆
川神学園でも『禁止区域強制退去法案』の話で持ちきりだった。
主に反対の者が多かった。「禁止区域の連中と仕事したくない」や「禁止区域に閉じ込めておけばいい」といった理由が多かった。
しかし、一人例外がいた。クリスだ。
悪は無くならなければならない。それがクリスの言い分だ。
海斗はどちらでもよかった。今となっては関係の無いこと、そう割り切っていた。しかし、嫌な予感がしていた。
「なにもなければいいがな…」
海斗は読んでいた本から目を離し、曇り始めた空を見上げた。
いかがだったでしょうか?
『暁紅』第九話をお送りしました。
今回、ドバっと新キャラが登場しました。
皆、日本人です。苗字だけです、「名前は必要ないかな~」ていう感じで苗字だけの表記にさせていただきました。
これらが今後どうなるのか期待して見ていただければなと思います。
それでは皆さん、ありがとうございました。