【GE作者合同投稿企画】MMOだよ、神喰さん!   作:GE二次作者一同

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【ヒマラヤ支部】【クレイドル】【オリ主】

投稿作品「神喰い達の後日譚」


ヒマラヤ支部の前日譚【無為の極 様】

 通称アナグラと呼ばれる極東支部の支部長室では、以前にも見た様な表情をした榊が本部から届いた依頼書を片手に悩んでいた。

 本部からの通達は基本的には命令書の名目で届くはず。しかし、榊の手にあるのは誰が何と言おうと依頼書と書かれていた。

 

 

「我々の計画を認めてくれるのは有難いんだよ。でも、この内容は流石に………」

 

「ですが、今回の要望は事実上のサテライトの建設技術が要求されます。こちらにとっては、それ程問題にはなり難いかと」

 

 弥生の言葉に榊もまたそれ以上の言葉は持ち合わせて居なかった。

 本部から届いたのは新たな支部の建設の為に、クレイドルが使用している技術提供だった。これまでの活動が認められた事だけでなく、また、支部建設におけるコストの全てが本部からの支援となっている。それによって極東支部の持ち出しは殆ど無い点は確かに魅力的だった。

 実際に支部の様な建物は既に現地で作られている。今回の依頼はその支部周辺を拡大する為の内容だった。

 

 

「そうなんだよ。技術とは使ってこそ意味があるのであって、死蔵すべき物ではない。しかも、持ち出しすら無いのであれば幾らなんでも話が出来過ぎている……と勘繰るのはある意味当然なんだろうね」

 

「それについては否定出来ません。ならば、現地入りさせながら判断するのはいかがでしょうか」

 

「だとすれば、当然人員は決まってくるね」

 

「仕方ないかと。それに、今はサテライトの建設計画も少しだけ小休止してます。ならば思い切って派遣させてはどうでしょうか?」

 

 弥生の言葉に、既に予測された未来は榊の目にも浮かんでいた。最近は鳴りを潜めているが、ここで新たな火種を作るのは些か厳しい。当然ながらその対策をするのは必須条件だった。

 

 

「だとすれば、サクヤ君にも話を通した方が良さそうだね」

 

「今回は何とかなりますよ」

 

「だと良いんだが……」

 

 既に決まった未来だからなのか、榊は僅かに溜息が漏れていた。弥生が言う様に、今回に限っては完全に回避出来るはず。だからなのか、依頼書の返事の為に用意された書類にサインをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言う事なんだ。期間はおよそ三ヶ月程なんだけど、頼んだよ」

 

「分かりました。ですが、何時からですか?」

 

「資材の兼ね合いもあるから来週の中頃には行けると思うよ。後は現場の進捗状況次第だね」

 

 榊の言葉にエイジは特段渋る事も無く新たな任務を拝領していた。これまでであれば必ず一悶着あったはず。にも拘わらず穏やかだったのは、今回の依頼はエイジだけでなくアリサもまた同じだったからだった。

 榊は多分大丈夫だとうとは考えていたが、元々サテライトの技術を一部流用する為に、ある意味ではアリサもまた必要だった。これが半年以上かかるのであればエイジ単独の可能性もある。しかし、サテライトで製造している部材の現地建設だからなのか、予定された日数はそれ程でも無かった。

 まだ付き合っている状態ならば話は別だが、既にれっきとした夫婦である為に倫理的な問題も無い。だからなのか、支部長室の空気は何時もと同じだった。

 

 

「では日程が決まり次第であれば、こちらも調整しますので」

 

「済まないが頼んだよ」

 

 榊の言葉にエイジだけでなくアリサもまた頭を下げ退出する。今回の依頼は元から予定されていなかった物だった為に、戦力を一時的とは言え低下させるのはある意味ではリスクも孕んでいた。

 しかし、今回に限っては短期が故に手が打てる。陰謀も何も無いからなのか、榊もまた安堵の表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

「ですが、急にどうしたんですかね?」

 

「上層部の絡みなんだろうけどね。準備するだけの時間があるから有難いよ。アリサも時間が必要だったよね?」

 

「確かにそうですけど。でも、どうして私もなんでしょうか?エイジだけでも良かったと思いますが」

 

 アリサの疑問に内心は説明し辛い物があった。これまでの経緯であれば何かしらの問題が生じていた為に、恐らくはアリサも同行させた方が何かと都合が良いだろうとエイジは内心考えていた。

 でなければ榊があれ程緊張している筈が無い。弥生も居た為に問題は無いとは思うが、まさか自分が原因だとは考えていない事だけはエイジも分かっていた。

 

 

「でも、時間がそれ程かかる訳でもなさそうだし、今回は何時もと同じくサテライトの建設位で丁度良いと思うよ」

 

「そうですね。それにここを離れるなんて久しぶりですから」

 

 既にアリサの中では榊の話は遠い彼方へと追いやられていた。

 実際に極東の範囲から離れるのは本部に行った時以来。少しだけ旅情には浸れると考えていたからなのか、アリサの表情は明るかった。

 

 

「でも、行先って確かヒマラヤ支部だよね?そんな支部ってあったかな」

 

「……そう言われればそうですね。私も記憶には無かった気がします」

 

 エイジだけでなくアリサの記憶の中にもヒマラヤ支部の名前は無かった。出たばかりの命令の為に、まだどこにあるのかも知らない。何となく名前からここだろう事は予測していたが、詳細に関しては不明のままだった。

 

 

「後で弥生さんに聞くか、調べればいいさ」

 

「そうですね。まずは準備を優先させないといけませんね」

 

 既に二人の胸中には新たな場所への思いだけがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな所にあったんだね」

 

「ですが、思ったより手間がかかるかもしれませんね」

 

「でも、アラガミの出現率と度合いを考えれば大したことはないはずだよ。それに今回は助っ人も居るしね」

 

 眼下に見える光景はヒマラヤ支部と思われる場所があるはずだった。

 元々支部であればアラガミ防壁が支部を中心に囲っているが、このヒマラヤ支部にはそれが見当たらなかった。

 理由は幾つもあるが、その最大の理由はアラガミの出現率だった。

 山間部にあるここはアラガミもまた住みにくい地域なのか、大型種が最後に観測されたのは数年前だった。

 精々が中型種程度。その殆どが小型種だった。

 

 そうなればエイジとアリサの投入は過剰戦力でしかない。しかし、元々の依頼が討伐ではなく、防壁の建設に重点を置いている為に、その警戒要員としては最適だった。

 これまでに幾度となく建設してきたからなのか、その手順は改めてマニュアルを見る必要が無い。それと同時に時間の短縮を兼ねて建設要員もまた投入している為に、その管理の方が主な内容だった。

  自分達の乗っているヘリの後ろには資材を積んだヘリが同じく飛んでいる。既に距離も近いからなのか、内部に聞こえるアナウンスもまたこの地に来た事を強く印象付けていた。

 

 

「フェンリル極東支部独立支援部隊所属の如月エイジと同じく如月アリサです」

 

「ヒマラヤ支部第1部隊所属のゴドー・ヴァレンタインだ。クレイドルが来る事は聞いていたが、まさか精鋭中の精鋭が来るとはな」

 

 お互いが握手をしながら自己紹介をしていた。実際にクレイドルにおけるエイジとアリサの立場はかなり高い。サテライトの建設だけでなく教導教官としての手腕もまた広く知られている為に、ゴドーもエイジを見た瞬間は驚いていた。

 

 

「僕等だけが精鋭じゃありませんから」

 

「よく言う。極東の鬼と言えば、新人や中堅からは恐れられているって本部周辺では有名な話だぜ」

 

「今回は教導じゃなく、あくまでも防壁の関係ですから」

 

 お互いが固く握手した事によって大よその力量を判断していた。

 エイジの戦績は言うまでも無いが、ゴドーもまたベテランの領域に居るだけでなく、これまで培ってきた技術があるからこそ事実上の第一世代型神機で前線を張っている。

 お互いがそれ以上は必要ないと判断したからなのか、直ぐに今回の概要へと話題は移っていた。

 

 

 

 

 

「なるほどな。それで準備期間があったのと計画の日数が短かったのか」

 

「はい。今回は元々現地で時間をかける訳には行きませんでしたので、要望に答える事は出来る範囲でやらせて頂きます」

 

「ああ。その方がこっちも助かる。何せ仰々しいアラガミ防壁など皆無に等しいからな。それに、ここはそれほど交通網が発達している訳じゃ無い。大型重機が入れるのにも限界があるんでな」

 

 ヒマラヤ支部は元々周囲が山間部にかこまれた場所に存在していた。

 元々地域的な部分から中型種以上のアラガミの出没数はそう多く無い。時折コンゴウやシユウが出る程度だった。

 しかし、このまま放置して良い問題ではない。フェンリル本部もまたそれを懸念したからなのか、それとも政治的な力学が働いたからなのか、これまでそれ程注目されていなかった支部が脚光を浴びる結果となっていた。

 表向きは支部の防御の拡充ではあるが、実際にはサテライトの建設技術を利用すればどれ程で構築ができるのかのデータ採取だった。当然ながら、今回のこれが上手く行けば、今後はこの方針が一気に広がっていく。その為の試験採用だった。

 

 

 

 

 

「ゴドーさん。この方達は?」

 

「ああ。今日から防壁絡みで来てるクレイドルの人だ」

 

 会話が途切れたのは一人の女性がかけた声が原因だった。エイジだけでなく、アリサもまた声のした方へと振り向く。そこに居たのはどこか極東の人間を思わせる黒髪と、クレイドルの制服を思わせる純白の戦闘服を着た女性だった。

 

 

「八神マリアです。私は元々ここではなかったんですが、配属されて今はここなんです」

 

「そうでしたか。僕は如月エイジ。こっちは妻のアリサです」

 

 互いが自己紹介をしていた。部隊がある以上は当然ながら一人だけではない。右腕の赤い輪が主張する様に、声をかけた女性もまたゴッドイーターだった。

 物腰の柔らかい雰囲気は、ここの人間では無いと訴えている。これが新人であれば多少なりとも動揺するが、エイジやアリサにとってはこれが日常茶飯事だからなのか、何時もと態度が変わる事は無かった。

 

 

「短い間ではありますが、宜しくお願いします」

 

 マリアが頭を下げた事によってエイジとアリサもまた同じく頭を下げる。自己紹介が目的だったからなのか、その後は少しだけこのヒマラヤ支部の話が続いていた。

 

 

 

 

 

「流石は極東支部でもトップクラスの人間の神機だな。あれは手にあまるな」

 

「えっと………」

 

 マリアとの会話に割り込む様に入ってたのは野太い声だった。

 ゴドーとマリアの表情は変わらないが、エイジとアリサは少しだけ困惑している。声の主は素肌に作業用のエプロンをしている為に、恐らくは整備の人間である事だけは間違いない。二人が分かったのはそれだけだった。

 

 

「ジェイデンさん。お二人が困惑してます」

 

「それは済まんな。俺の名はジェイデン・ジミー・ジャクソン。ここの整備を担当している。ここに滞在している間の神機の整備は任せてくれ」

 

「そうでしたか。僕は……」

 

「いや。大丈夫だ。さっきの話を聞いていた。お前さんが如月エイジで、隣が嫁のアリサだな。それとお前さんの神機だが、あれは何だ?少なくとも俺が知る中ではあんな神機は見た事が無い」

 

 自己紹介をする前に、いきなり神機の話になったからなのか、エイジはこれを機に自分の神機の事を説明していた。

 元々フェンリルとは異なる開発の為に、事実上の唯一無二となっており、またその整備は通常とは違う手順が必要となっていた。事実、エイジの神機のケースには解説書が入っている。ジェイデンは最初にそれを見たからこそ、まだ居ると思われる場所に向っていただけだった。

 

 

「ここは極東とは違ってそれ程強固なアラガミが出た事は無い。間違い無くこれを改良する事は出来ない。俺も馬鹿じゃないんでな」

 

 事実上の機密に近いと判断したからなのか、エイジの神機に関してはそれ以上は何も言うつもりはなかった。

 整備をしている人間であれば、あれがどんな構成をしているのは口にしない方が良い。そう判断した結果だった。

 

 

「そうしてもらえると助かります」

 

「ああ。ここでは現状を維持する為に整備に終始する。それとお前さんの嫁んさんの神機もまた特殊なチューニングがされてるな。あれも同じか?」

 

「私の神機はエイジ程じゃありません。ですが、同じく整備の人間が常にアップデートしてくれますので、同じで結構ですよ」

 

「そうか。弄れないのは残念だが、仕方ない。とにかく、ここに居る間は俺が責任をもってやっておこう。ゴドー。後は任せた」

 

 既に言いたい事を言ったからなのか、ジェイデンはここから離れていた。

 既に互いの紹介が終わったのであれば、ここからは与えられた任務をこなす事になる。時間は既にそれなりだからなのか、実働は翌日からとなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうここまで出来ているとはな」

 

「そうですね。思った以上の早さで驚きました」

 

 ゴドーの呟きに答えるかの様にマリアは感心した様子で外を眺めていた。

 極東支部からの物資は事実上の完成品に近い物だった。ある程度の基礎さえ出来れば、後はその場所に設置をしていく。本来であればここから細部を詰めていくが、ヒマラヤ支部の面々からすれば既に完成した様にも見えていた。

 事実、仮組とは言え、大よそながらに防壁としての機能を発揮している。当初は支部の周辺に巨大な壁が出来た事に周辺の住民は驚いていた。

 事実、支部にはこれまでに近隣住民からの通報に近い連絡を幾度となく受けていた。その為、受付でもあるカリーナの仕事の大半がそれに割かれている。事実上の機能不全を起こしはしたが、結果的には支部からの正式なアナウンスによって徐々に解消されつつあった。

 

 

「って言うか、どうしてさっさとやってくれなかったんですか。お蔭でこっちは大変でしたよ」

 

「結果オーライだ。まさかこっちもあれだけ早いとは思わなかったんでな」

 

 支部の窓から見える防壁を見ながらも、受付でもあるカリーナは文句を言いながらも目には笑みが浮かんでいた。

 このヒマラヤ支部は防壁が存在しない。住民や設置されたレーダーからの情報で素早く出動する事によって未然に被害を防いでいた。

 事実、部隊長でもあるゴドーは常に出っ放しが続く。その関係上、受付のカリーナとマリアが辛うじて報告書を上げていた。

 ゴッドイーターは人類を護る盾である自覚はある。しかし、現状は人員も揃わない為に限界はあった。だからこそ、これが出来ればその被害は縮小し、ゴッドイーターもまた休息を取る事が出来る。

 幾ら超人的な活躍が出来たとしても人間の範疇を超える事は無い。まだ完成はしていなくとも、その効果を体感しているが為に何となく口にしただけだった。

 

 

「ですが、これで被害は少なくなりますから、カリーナさんも今だけですよ」

 

「そうだけど……でも、クレイドルの二人も凄いですよね。アラガミの討伐速度があんなに早いだなんて」

 

「極東に比べれば、ここのアラガミはそれ程じゃないからな」

 

「ゴドーさんは極東に行った経験があるんですか?」

 

「研修で少しな。流石に世界の最前線と言うだけの事はあったな」

 

 ゴドーは短期間ではあったが、極東に研修に行った事があった。

 実際には教導を受ける立場では無かった為に、実戦で過ごしている。その際に自身の神機を大幅に改修したのはまだ記憶に新しかった。

 研修が終わってからと言って神機は元に戻さずそのままになる。それが今に繋がる為にゴドーもまた当時の事を思い出したからなのか、心中は複雑だった。

 

 

「そうですよね。それに比べればここは大した事は無いのかもしれなませんね」

 

「だが、気を抜けば待っているのは死だ。あの二人の戦闘はこの目で見たが、基本は忠実に踏まえていた」

 

 ゴドーの言葉にマリアもまた同行した事があったからなのか頷いていた。

 実際に他の支部の事は分からないが、意外と外部から来る人間の大半は階級に物を言わす様な部分が多分にあった。しかし、エイジとアリサの二人はその限りではない。階級だけ見ても上位ではあるが、そんな事はまるで関係無いと言わんばかりだった。

 当然ながら腕が立って性格も穏やかであれば支部だけでなく周辺の住民からも好意の目を向けられる。だからなのか、二人がミッションに出た帰りが遅いのは偏に住民に捕まっているからだった。

 

 

「そうですね。私達もそれ以上に頑張らないとですね」

 

「そうだな。極東支部はゴッドイーターだけじゃない。オペレーターも的確だったからな」

 

「ゴドー隊長。私だってこれでも精一杯やってます!」

 

 どこか幼い雰囲気を持つカリーナは頬を膨らましながらゴドーに喰らい付く。子供じみた容姿が更に加速したかの様に見えたが、この場でそれを口にする人間は誰も居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろですかね」

 

「そうだね。後は調整すればほぼ完成だよ」

 

 ヒマラヤ支部のある場所は基本的には山岳地帯に分類されていた。当然ながら周辺にある住居の殆どは極東の様に華やかではない。これまでに何度も外部に出ていたエイジだけでなく、アリサもまた自身の事よりも防壁を優先させていた。

 元々娯楽が少ないのは知っていた為に悲観する事も無い。現状は自分達の事よりも住民を優先した結果だった。

 当然ながら周囲にアラガミの姿を見れば即座に討伐する。その為に完成まで現場はアラガミの脅威に怯える事無く建設に集中していた。

 基礎と外壁が完成し、残すはあと僅か。ここまで来れば完成の道筋は完全に見えていた。

 

 

「一度、支部に戻りませんか?」

 

「確かに。支部には少ししか顔を出して無いしね」

 

 元々は陣頭指揮だけの予定。当然ながらそこには人材交流と教導の一部も含まれていた。

 本来であればエイジもまた教導をするつもりだった。しかし、一度出来た仮設の後は一気に建築へと傾いていた。

 誰もが命の危険を感じる事無く普通に生活をする。人としての当然の権利がここで漸く芽生えたからなのか、時間に余裕がある度に支部の人間は頻繁に足を運んでいた。

 誰もが普通に生活を営む。極東では当たり前だった考えがここに来て漸く正常になりだしていた。

 そんな中、不意に聞こえる何かの咆哮。未だヒマラヤ支部からの通信が入らないが、その咆哮が何なのかは考えるまでも無かった。

 ここに来てからまだ見ていない大型種の可能性。極東ではお馴染みのヴァジュラだった。

 

 

「アリサ、直ぐに連絡を!こっちは周囲の索敵をするから」

 

「はい!」

 

 エイジの言葉にアリサもまた逡巡する事無く通信回線を開く。未だ確認出来ないのか、通信機越しの回答には時間を要していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………これは……」

 

 カリーナは思わず絶句していた。

 これまで探知できなかったレーダーに突如映ったのは大型種特有の偏食場パルス。支部内のデータでは確認できなかったが、本部からのデータを照会する事によって種別が判定されていた。

 

 

「カリーナ、何だ!」

 

「す、すみません。大型種の反応がありました。1体だけですが、こちらで分かるのはヴァジュラと言う事だけです」

 

「ヴァジュラだと」

 

「はい。これを……」

 

 カリーナは説明するよりも早いだろうと判断した事でゴドーには説明をせず、映し出された画像をそのまま見せていた。

 少なくともゴドーがここに着任してからは一度も見た記憶は無かった。これが支部だけのデータベースであれば一笑に付したかもしれない。しかし、本部からのデータリンクの為に観測された情報の精度は高い物だった。

 支部内に緊張が走る。誰もがその画像に時間が止まった様だった。

 

 

 

 

 

「嘘だろ。なんなデカいの見た事が無い……」

 

「進行方向は大丈夫なのか」

 

「でも防壁があるんだ、大丈夫だろ」

 

 既に現実逃避しているからなのか、支部の職員の声には力が無くなっていた。

 実際に中型種でさえ珍しいにも拘らず、ここに来ての大型種。職員の感情には既に生命に関する物が抜け落ちたかの様だった。

 

 

「カリーナ、クレイドルはどうなった!」

 

「既に索敵を開始してます」

 

「そうか……マリア。俺達も出るぞ!」

 

「了解です!」

 

 ゴドーの中では外部から来たエイジ達に任せると言う選択肢は最初から無かった。仮にここで頼んだとしても、次は無い。そうなれば幾ら防壁があろうとも別問題だった。

 だからなのか、二人もまた神機保管庫へと走り出す。既に互いの中には戦闘態勢が整いつつあった。

 

 

 

 

 

「俺達も加勢する!後は任せろ」

 

 ヘリから降下しながらもゴドーはエイジ達に叫んでいた。

 実際にあの二人が負けるなどとは端から思っていない。ただ、ここで自分達が出動しないと信頼関係が破綻すると考えた結果だった。

 クレイドルはここにはずっと居ない。ましてや当初から期間限定の戦力に頼れば、次が無い事はこれまでの経験で理解している。それは士気にまで影響を及ぼす物だった。

 既に数多のアラガミを屠るクレイドルの速度はヒマラヤ支部の討伐記録を次々と塗り替えていく。自分達こそがここの守護者だと主張するかの様にゴドーとマリアは戦場へと駈け出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石とだけ言っておこうか」

 

「いえ。私達だけでは難しかったですから」

 

 ゴドーの礼にアリサは当然の様に言っていた。実際に自分達が討伐すればどんな影響を及ぼすのかは言うまでもない。仮初の戦力を当てにすれば待っている結果は考えるまでもなかった。

 ゴドーもまたそれを理解している。だからこそ、マリアと緊急出動を敢行していた。

 既に討伐されたヴァジュラの体躯は大地に沈み込むかの様に霧散していく。これが極東支部の精鋭の実力であると肌で感じ取った結果に出た言葉だった。

 

 

「そうか……では尽力感謝する」

 

 一言だけのゴドーの言葉ではあったが、そこには感謝の念が込められていた。

 これが自分達だけであればどんな結果になったのだろうか。確実に被害は甚大になるのは間違い無い。水際で食い止める事が出来たが故に考える事が出来るゆとりだった。

 改めて派遣された二人に視線を移す。その先にあったのは仲睦まじく居たエイジとアリサの二人だった。

 

 

「私からもお礼をさせて下さい」

 

「いえ。僕らは当然の事をしただけですから」

 

「ですが……」

 

 お互いが謙遜している光景は少しだけ違和感があった。元々の力量があるから気が付かないのか、それとも生来の性格だからなのかは分からない。しかし、そこには互いに対する思いがあった。

 

 

「そんなんじゃ何時まで経っても終わらんぞ。さて、これからやる事は一つだけだ」

 

 ジェイデンの声に互いの言い合いは終了していた。ヴァジュラがどれ程危険なのかはゴッドイーターであれば周知の事実。討伐が無事に終わったのであれば、過程はどうでも良かった。

 事実、完成間際だから大丈夫ではない。寧ろ、この時点で何らかの破壊された部分があった方が厄介だった。

 一からの新設であれば簡単だが、周囲を確認し補修しながらとなれば時間だけが無駄にかかる。その結果として多大な時間を必要とする可能性が多分にあった。

 だからこそエイジとアリサはヴァジュラの討伐を優先していた。

 礼はあくまでも挨拶の様な物。設置に関しては責任が発生するが、その後のメンテナンスはヒマラヤ支部にかかってくる。それを理解した上での言葉だった。

 

 

「お前は………いや。防壁も完成に近いんだ。偶には良いかもな」

 

「そうですよ。最近はただでさえ忙しかったんですから。私も労って欲しいです」

 

 ゴドーの言葉にカリーナも追従する。ジェイデンが言う様に既に準備は着々と進んでいるからなのか、エイジとアリサもまたその席へと誘われていた。

 

 

 

 

 

「やっぱり、どこの支部も同じですね」

 

「そうだね。これ位で丁度良いのかもね」

 

 二人の目に映る光景はこれまでに幾度となく見た景色だった。

 アラガミからの脅威に怯える事無く生活をする。旧時代では当然の事が今では難しくなっていた。

 実際にアラガミが完全に死滅する事は無い。霧散したアラガミは時間が経てば再び再生する。事実上の対処しか出来ない現状はある意味では歯噛みする程だった。

 しかし、何かしら防ぐ手段を構築するからこそ仮初でも穏やかな生活を送る事が出来る。それを理解しているからこそ、エイジだけでなくアリサもまた走り続ける事が出来た。

 既にアルコールが出ているからなのか、陽気な雰囲気は何時までも続く。この光景が途切れない様に自分達が出来る事を精一杯やるだけだと二人は心に誓っていた。

 

 

 

 

 




オンラインはしていないので時間軸は不明です。今回のコラボ企画は意外と楽しめました。本編の方もよろしくお願いします。
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