【GE作者合同投稿企画】MMOだよ、神喰さん! 作:GE二次作者一同
投稿作品「ゴッドイーター ベテラン新型さん」
chaosravenと申します。初のコラボ企画ということで緊張してますが、頑張って書き上げましたので宜しくお願いします。なお、主人公はオリジナルキャラクターのため、詳しくは当方の作品ページ第1話めの設定集をご覧ください。また、今作のリッカさんは主人公に対し少なからず思っている所がありますので、その点ご注意ください。リッカと主人公の関係性についても、できたら当方の作品を読んでからの方がわかりやすいと思いますので、できたらそちらのほうを先にご覧ください。
「はいレイン兄。コレあげる」
ある日、俺は用があって神機整備庫にいるリッカを尋ねたところ、なぜかポリポリと頬を掻きどこか顔をほんのり紅くしてソッポを向きながら、赤い紙に綺麗なリボンでラッピングされた箱を渡された。はて?俺にプレゼント?俺の誕生日は5月8日だし、かといって特に大きな出来事がある日でもないと思うんだが...。
「リッカ?もらえるのは嬉しいが、なんで俺に渡すんだ?」
「は、はぁ!?そそそそそれを私に言えっていうの!?な、にゃにを恥ずかしい事を...」
「恥ずかしい?なんでその箱を俺にプレゼントするのが恥ずかしいんだ?」
「うるさい!いいから黙って貰って食ってそして死ね!このどてなすび!!」
「ど、どてなすびぃ〜!?」
しまいには茹で蛸のごとく赤面したリッカ。さっきと変わって思いっきり箱を胸に押し付けるように渡すと、途端に猛ダッシュで整備庫奥の自室に籠もってしまう。昔、俺の神機の初代専属メカニックだったリッカの親父が上層部に無理言って作った整備庫の部屋。親父さんが亡くなり代替わりした現在も部屋をそのまま使っている彼女だが、突如閉ざされた扉がガションとロックが掛かる。こりゃ当分俺と顔を合わせてはくれないな。というか『どてなすび』ってなんだ。『どてなすび』は『土手茄子』なのか?何故『どてカボチャ』じゃなくて『なすび』?『おたんこなす』じゃなくて?土手カボチャなら意味はわかる。何に対して俺が役立たずなのかイマイチぴんと来ねえが、とりあえずどこかでそう思ってる点があるってことなんだろう。土手カボチャと言葉を間違えたのならの話だが。おたんこなすは...ウン気にしないでおこう。
それと、黙って貰って食ってそして死ねとは一体どういうことだ。意味不明な『どてなすび』の事といい、俺が死ぬほど嫌いなのか?確かに特務のたびに毎度毎度神機をぶっ壊して帰ってくるし、何度言っても聞かないのならそりゃ誰だって嫌になる。とても大きな心当たりがある。食ってというからには中身は食べ物だろう。もしや毒入り?というのは冗談としても、一体なぜ箱を受け取るか受け取らないかの問答だけで俺はここまで言われてるんだろう。
「なんだったんだ?」
そうは言いつつも、顔を真っ赤にしながらも渡してくれた贈り物である。思いっきり押し付けたせいで多少ラッピングが崩れかけているが、見たところ包装の中身の箱に目立った損傷は見当たらないから箱の中身も無事だろう。中身がなんなのかは開けてから確かめるとして、今はありがたくリッカからの贈り物を受け取ろう。
「ありがとな!リッカ!」
『うるさい!さっさと出てけこの朴念仁どてなすび!』
「...どてなすび呼びが覆ることはないんだな」
肝心の用があるリッカがこうして部屋に引きこもってしまっては目的も果たせない。いまいち腑に落ちないものを感じたが、しょうがないので整備庫を後にするべくエレベーターに乗り込んだ。
-----
「おはようございますレインさん!任務の発注の前に一つお伺いしたいんですけど、リッカさんからのプレゼントは食べましたか?」
「はあん?」
エントランスで任務を受けようとした矢先、受付嬢を務めるヒバリから突然こんな事を聞かれて驚いた。なんで俺がリッカからプレゼントをもらったのを知っている?いや、ヒバリはリッカと仲が良いから知っていても可笑しくはないか。
「確かにアイツからプレゼントは貰ったが、まだ封自体も開けてないよ。これから任務で体を動かしてから食おうかと思ってたからな」
「あーそうでしたか。でしたら、なるべく早く食べてあげて下さい。リッカさん、一生懸命作られたんですよ?」
そういってヒバリは可愛らしい笑顔を浮かべる。なるほど、あの箱の中身はリッカの手作りというわけか。だったら尚の事美味しく頂かなければならないな。普段は恥ずかしいのか、俺に対してちょっぴりツッケンドンなリッカからのプレゼントだ。さくっと任務を終わらせて頂くとしよう。
「ああ。さっさと帰ってきて食わせてもらうよ。んじゃあ、手頃な任務のリストアップ頼む」
「そうですねぇ...。レインさんの腕に合うレベルの任務ですと、コレとかコレあたりいかがでしょうか?」
「んじゃあその2枚目の任務のアサインを頼む」
「了解しました。お気をつけて」
「おう」
ヒバリのやつ、俺なら簡単にできそうな感じで任務のリストを見せてきたが、その内容が最も手軽なもんで「ヴァジュラ」二体ってのはどうなんかね。確かに油断する事なく戦ってりゃ俺にとってはちょっとデカめのネコ科動物だが。さあってと、ともかくさっさと仕事を終わらせよう。
-----
「お疲れ様です。本当にサクッと終わっちゃいましたね...」
「ヒバリが自分で簡単な任務をリストアップしたってのに、その言いぐさだとまるで俺が規格外みたいじゃないか」
「え?」
「え?」
「え?じゃないですよレインさん。自覚ないんですか?」
「お、おう。と、ともかくまあ、報酬はいつものところに振り込んでおいてくれ。何かあったら部屋に直接コールを掛けてくれ」
「わかりました!後で感想を聞かせてくださいね!」
「おーう」
ヒバリに手を振りながらエレベーターに乗り込む。階段を登る途中でヒバリに惚れているタツミが何を勘違いしたのか、血涙を流しながら嫉妬に狂った目で俺を見ていたが気にしない事にしよう。あれはアレだ。誤解ってやつだ。だから俺は見なかった事聞かなかった事にする。「ヒバリちゃんがレインさんに...」という絶望に満ちたタツミの言葉は聞いていない。実際ヒバリとは任務の扱い以外の事は何もしてないしされてもない。
自室に着くと早速、冷蔵庫の中にしまっておいた(常温で保存して良いものなのか分からなかったからとりあえず冷やしておいた)プレゼントの箱を取り出す。さっきのちょっとしたやりとりの所為で少々崩れたラッピングを丁寧に外すと、無地の白い箱が姿を出す。何が入っているのか少しワクワクしながら箱を開けて、ようやくリッカがどこか恥ずかしそうに渡してきた理由を理解した。
「なぁるほどね。そりゃどてなすびなんて事も言いたくなるよな」
思わずクスリと笑みがこぼれる。
箱の中に入っていたのは、リッカが寝るときに抱きしめている抱き枕のキャラクターを模して作られたチョコレートだった。確か『キテ◯グマ』とかいうモンスター?だったと思う。幼いリッカにこのキャラの描かれたアーカイブを見たときに、愛くるしい見た目の割に作品の中でキャラに付けられた設定がエライ恐ろしいもんだった事からよく覚えている。それが箱の中にチョコでできたベッドの上に、大人キテ◯グマチョコが2匹、その真ん中に子供キテ◯グマチョコが1匹の3匹家族で仲良く眠ってる。
実はリッカはあまり料理が得意でない。自室で調理をすれば必ずどこかでミスをして、食えないほどではないにせよ焦げたり調味料が多すぎたりなんて事がザラ。盛り付けなどもイマイチだったり。しかしこのチョコは、所々キテ◯グマの形が崩れているところはあっても、幸せそうに家族が眠っているシーンはとても素晴らしいし、なによりも自分が食べさせたい人に対する熱意がとても伝わって来た。得意でないなりに一生懸命に作ってくれたんだという事が分かる。
「Saint Valentine's day、バレンタインデーか...。日本だと好きな人にチョコを贈る習慣が根付いてたんだよな。この歳になるまで完全に忘れてたよ」
一人つぶやき、キテ◯グマ親子には申し訳ないが子供のチョコを頂く事にする。うん、ビターチョコレートっぽい感じだ。でも甘すぎず苦すぎず、後味が残るのがあまり好きじゃない俺の好みを知っているせいか、他のチョコレートと比べるとだいぶすっきりした後味だ。他の親のチョコも頂くが、やはりスッキリした味わいだ。ここまでされちまうと、リッカが俺の事を想ってくれているのがはっきりと分かってしまう。
「なんだか、ほろ苦いな...」
生まれてから、少年として充実した生活を出来ていたのはホンの9年間。アラガミが出てきてからというもの、俺の周りにいた友達やその家族は殆どが奴らの餌になってしまった。こんなところで死んでたまるかって躍起になって生き延びてきたが、とてもバレンタインデーなんてやってられるような状況じゃない。今よりもオラクル技術が未発達で投与された偏食因子の制御も不安定だった時代、腕輪を装着して1ヶ月ぐらい経った後に突如体内のオラクルに食われて肉片に・・・なんて最期を辿った神機使いだっていた時代だ。技術が未発達で研究も進んでいない。計測したデータもどう転ぶかわからないからあまりアテには出来ない。次は自分がそうなるんじゃないかってビクビクしてた頃、とても、青春なんてものを過ごしてられる余裕は無かったんだ。
あまり過去の事は思い出さないようにしてきたが、リッカのチョコを食べてるとそんな事を思い出してしまう。初めての実戦、初めて自分の仲間が目の前で死んだ時、先輩の神機使いが俺の身代わりになって死んだ時、神機使いになって暫くして初めて取れた休暇で実家に行ったら、俺の近しい知り合いはほぼ全員死んでた事を知った時など。そして、俺が幼い頃から想いを寄せていた幼馴染みがアラガミ化し、俺がこの手で、相棒で彼女を殺めたこと...。
絶望をまだまだガキの内に心に散々叩きつけられた。そういえば、この辛かった事を誰かに全部吐き出した事は無かったな。今こうして思い浮かべてみると、どうやら俺は本当に辛いことは吐き出すよりも溜め込んで蓋をしてしまうタイプらしい。気付けば、手に持っているチョコには雫がポタポタと落ちていた。
「...っ」
自分は今泣いているのだ。それを自覚したらもう、止め処なく涙が溢れてしょうがなかった。あの時その場で散々泣いたはず。もう涙は流れない程に泣いたはずなのに、堰を切ったように溢れ続ける。
「...らしくねえな。30過ぎてもこんなにメソメソしちまうとは...」
まさかチョコレートがきっかけで、自分はこんなに我慢してきたとは思わなかった。頭は妙に冴えてて冷静に思考できてるが、感情はとても制御できるような状態じゃない。いままで感じてきた辛い想いが次から次へと堂々巡りのように駆け巡って。しばらくはそのまま心のままに任せよう、そう思いながら、俺は久々にすごく泣いた。
-----
翌日・・・リッカ視点
「リッカ。昨日はありがとうな。お前の気持ち、嬉しかったよ」
「う、うん。ありがと...」
「あんまり料理は得意じゃないお前がここまで頑張って作ってくれたこと、本当に感謝してる。それと、昨日は気付いてやれなくて悪かったな。バレンタインデーの存在を完全に忘れててな」
翌日、再び私の元を訪れたレイン兄は開口一番、私があげたチョコレートへの感謝の言葉をくれた。昨日は本当に理解してなかったみたいだけど、どうやら箱の中身を見て私のプレゼントの意味に気がついたみたい。本当にもう。
「で?その、どうだった?」
「ああ、俺好みの味でとても食べやすかったし、美味かった」
「本当!?よかったぁぁ...」
「ああ、本当さ。それに、お前のおかげで色々整理もついたしな...」
「え?」
整理ってなんのこと?そう思ってレイン兄の顔を見上げる。よく見るとレイン兄の目元が少しだけ腫れてる。どういうこと?レイン兄が泣いたの?
「レイン兄、昨日泣いた?」
「い、いや?」
「ねえ」
目を逸らそうとするレイン兄の両頬を抑えてまっすぐ見つめる。しばらく言うか言うまいか逡巡してたみたいだけど、やがて決心したみたい。
「ああ、そうだ。昔のガキの頃のことを思い出したんだよ。バレンタインデーなんてやってる暇のなかったあの頃の、何回も絶望で打ちのめされてたあの頃のことを思い出しちまってな。我ながら30過ぎにもなってみっともなく泣いちまった」
少し恥ずかしそうに、でも陰りのある苦笑いを浮かべながら言うレイン兄の顔を見て、私はキュッと胸が締め付けられるのを感じた。そうか...。レイン兄は私の倍近く生きてる。私たちは生まれた時からアラガミがいた世代だけど、レイン兄は違う。物心ついた時はまだ平和な世界だったはず。そこからアラガミの出現によって、大切なものをいくつも奪われる経験を幼いうちに経験してきた世代なんだ。ましてや、世界最初期の神機使いの生き残りでもある。今まで経験してきた辛いことの数は、私たちとは比べものにならないんだよね...。
「友達がアラガミに食われた。近所の優しい爺さん婆さんの夫婦が食われた。学校の先生が食われた。友達の家族が食われた。同行してた神機使いが目の前で食われた。先輩が無茶した俺の身代わりになって食われた。そして、俺がずっと好きだった女の子がアラガミ化して、俺が喰らわなきゃならなくなった。今まで経験してきた絶望は色々あった。でもその時の俺はその場でひとしきり泣いて、あとは心の奥底に封じこんでたんだよ。でも、チョコを食べて、バレンタインデーのことを考えると急に自分の過去に思考が行ってな。そこで初めて、俺は本当に辛いことは溜め込んでそのまま封じ込めちゃうタイプなのがわかった。それと同時に涙が止まらなくなって、そのまま昨日はずっと泣いてたってわけだ。いい歳したオッサンがみっともねえだろ?」
「そんなことないよ!レイン兄は立派にやってきたんじゃない!お父さんだってきっと今の話聞いてたらそう言うに決まってる!私にとって、レイン兄は色んな苦難を乗り越えた憧れの神機使いなんだから!」
そう。それが私のレイン兄に対する本音。でもね。
「でも、本当に辛いなら吐き出しちゃって良いんだよ。私だけじゃない、リンドウさんやツバキさんだって、きっと聞いてくれるよ」
「...フッ」
ようやくいつものレイン兄の笑みに戻ったかと思うと、私の髪をクシャクシャに撫で回す。ちょっと!せっかく整えた髪がハチャメチャになるじゃない!
「ありがとうなリッカ。おかげで、俺もちっとは変われそうだよ」
「うん!神機はもちろんだけど、使い手の心のケアも時には私の仕事だからね!」
「ぷっ、なんだそりゃ」
「使い手の心がすさんでたら、神機が雑に扱われちゃうじゃない!どっかの誰かさんみたいに」
「ぐ、そりゃいつも悪いと思ってるが状況がそれを許してくれないっていうか...」
しどろもどろになって言い訳をするレイン兄。でも実際、レイン兄が雑に神機を扱おうと思って普段の破壊神っぷりを発揮してるわけじゃないのは私もわかってる。レイン兄と相対するアラガミが極端に強いから、生き延びるために止むを得ずの行動なのだ。それは神機の傷の付き方を見ればわかるから。結果的にボロボロに壊して帰ってくる癖は直して欲しいと思うけど。
「とにかく!!毎回任務が終わったら必ず無事に帰ってくること!ホワイトデーのお返しすっぽかしたら、許さないんだからね」
「ああ分かったよ。自分で死ぬなって命令出してる以上、それを破るのは俺のポリシーに反するしな」
「はいはい。じゃ、期待してるから」
「おう。本当にありがとうな」
さっきよりも晴れやかな笑顔でレイン兄は部屋をあとにする。やっぱり、レイン兄は私をことも扱いしてからかってる姿のほうがしっくり来る。あんま子供扱いされすぎるのも考えものだけど、さ。
どうか、私の好きな人が戦場で命を散らしませんように。もしこの世界を見守る神様がいるのなら、どうかレイン兄のことを死なせないで。
これは、まだ『最初から新型』と『最強遠距離使いの後継』が極東支部に入隊する前の、とある2月14日の話。
他の作者様がたと比べて自己満足感が半端じゃない気もしますが、ともかくこれからも当方の作品『ゴッドイーター ベテラン新型さん』を宜しくお願いします。