「おーい、お前らぐうたら生徒会に朗報だ
来月の頭に千葉まで行ってそこの生徒会と交流を深めてこい。拒否権はない」
『………はあああああああああああ!?』
唐突にやってきた暴走顧問によって千葉行きが決まってしまった我らが碧陽学園生徒会だった。
「先輩先輩先輩〜!聞いてください!助けて下さい〜!!」
「全くいつもノックしなさいって言ってるでしょ?一色さん」
「あっ、いろはちゃんやっはろー!」
「……なんだよ、一色」
涙目に顔を赤くして俺のことをそんな連呼しないで下さい。好きになっちゃうでしょ。まあ、そんなことは置いといてどうやらまた嵐のようにやってきて面倒事を押し付けに来たらしい。
「どうしたらいいんですかあ!先輩ぃ〜」
雪ノ下の厳しい目線をスルーしながら一直線に俺の椅子の前にきて顔の距離を縮めてくる。近い近い!やめて、八幡ドキドキしちゃう。それにしても、この焦りようからまた面倒くさい内容であることは嫌でもわかっちまう。しかし、聞かずにはいられないのはお兄ちゃん属性のせいなのか…
「さっぱり何をどうしたらいいのかわからない。しっかり一から説明してくれ」
俺に話を聞いてもらえるとわかった途端涙目を引っ込め少し真面目な顔になる。
…あれ?いつもの一色らしくないな。あざとさを保ってられないほどの面倒事ってことか?
「実はうちの生徒会と他の学校の生徒会の交流会が決まってしまいまして…もう、来週にはこちらに来るみたいなんです」
「それのなにが問題なのかしら?」
雪ノ下も由比ヶ浜も何が問題なのかわからないという感じだ。確かにこれだけだと何が問題なのか伝わらない。何か他に問題があるのか?
「実はですね、うちの生徒会って私含めコミュ力低いんですよー」
「ん?いろはちゃんはそんなことなくない?男の子とだってよく喋ってるじゃん」
「それが相手の方の生徒会は女の子ばっかりみたいなんですよ」
あー、そういうことか。こいつは男にはあざとさを武器に円滑にコミュニケーションが図れるが女の子ばっかりとなると少し苦手なのかもしれない。あざとさの所為で嫌われることも少なくないらしいしな。ましてや、生徒会活動という堅苦しい中で喋るとなるとあざとさは出ないかもしれないが、一色一人でのコミュニケーションは難度が高いかもな。
だが…
「なぜ、コミュ力の話をぼっちの俺に相談したんだ?少なくともこのメンバーでコミュ力があるのは由比ヶ浜だけだぞ」
「そうね、比企谷君と一緒なのは大変遺憾なのだけれど私もその相談には乗ってあげられないわね」
「あっ…た、確かに…」
まるで今気付いたかのように一色は眉に皺を寄せ考え始めてしまった。どうやらこいつは人選を考えもせずこの部室に突撃してきたらしい。おいおい、何かと最近頼りすぎだろ。全くどこぞのよろず屋じゃないんだぞ。
「ま、まあ、あたしなら相談に乗ってあげられると思うけど…」
おずおずといった感じで由比ヶ浜が声を挙げる。確かに由比ヶ浜のコミュ力は天下一品だ空気を読むという点では俺と同レベルであると言える。同性の友達も一色と違って沢山だしな。俺と違って…べ、べつに悔しくないもん!と、友達とか、い、いらないし!
「結衣先輩どうしたらいいですかあ?何を話したら良いんでしょう?」
「生徒会活動ということは何か目的があるのでしょう?ある程度話す内容は決まっているのではないかしら?」
だよなあ?普通はたかが交流会だろ?面倒であることに変わりは無いが事務的な話し合いをすれば終わるもののはずだ。
「それがですね、学校から言われたのは北海道からわざわざいらっしゃるから楽しんで貰えるように案内しなさいと説明されだけなんですよー!」
「なんだそりゃ」
「てか、北海道からくるんだ!?遠!?」
「それにしても学校の意図がよくわからないわね…」
あまりにも投げっぱなしな内容だな。
もしかして何か裏にあるのか?
「どうやらですね、向こうの校長とうちの校長が仲がいいらしく、向こうの校長もこちらに来るみたいです」
「それって…」
「おいおい…」
「ん?どしたの?ヒッキー、ゆきのん」
一人だけなんのことやらという感じで首を傾げている。小動物みたいで頭撫でたくなっちゃうでしょ。
「要は向こうの校長とこっちの校長が会いたいから生徒会という建前を使って、お金のかからない旅行をしに来るということよ」
「えええええ!!いいの?そんなことして!?」
「生徒会の活動で来るのは確かなのだし問題はないでしょうね」
「おかげで私達生徒会はどうしたらいいのかわからないんですよ〜!」
一色は大分困っているのか涙目だ。さすがにこれは可哀想だな…
「そうだな…でも、それだったら真面目に考えず、学校の案内とかお互いの学校の雰囲気はどんな感じなのかを適当に喋ればいいんじゃないか?」
「そうね、これに関しては正直解決のしようが無いわね」
「うぅ〜…やっぱりそうですね…」
一色には悪いが正直手の施しようが無い。ここは当日に臨機応変にやってもらうしか無いだろ。
「でも、北海道の学生かあー、少し喋ってみたいかも」
その瞬間一色の目にギラリと光が見えた。
「だったら結衣先輩も来てくださいよお!結衣先輩のコミュ力があればなんとかやっていける気がします!」
「ええ!?でもあたし生徒会じゃないし…」
「大丈夫ですよ!そんな真面目な話し合いじゃないですし、空気さえ明るく保ってて貰えればそれで十分です!」
「じゃ、じゃあヒッキーもゆきのんも一緒に来てよ!一人は寂しいよ!」
「いやいや、俺たちぼっちが入ったところで認識すらしてもらえないまである」
「私達が入っても力にはなれないわ」
「そんなぁ〜…」
「じゃあ結衣先輩!また連絡しますのでよろしくお願いしますね」
一色はニコニコとそう告げるとルンルンと出てってしまった。あれ?もしかしてあいつ、由比ヶ浜が欲しかっただけじゃないの?もしかして最初から全部仕組んでた…!?一色いろは恐ろしい子!
「杉崎!遅い!罰金!」
「どこぞの涼宮姉さんですか!ていうかまだ待ち合わせ時間内ですよ!」
「おはよう。キー君」
「おはようございます!知弦さん、会長」
今日はいよいよ、千葉行き当日だ。真儀留先生にいきなり言われたときはどうしようかと思ったが、学校のお金で旅行ができると思えば安いものだ。そして、これは俺、杉崎鍵にとっても大チャンスでは無いか!ここにきて新たな美少女をさらにゲットだ!ぐふふふふ!
「おはようって、また、へんなこと考えてるんだろ鍵、いつもの二倍顔がきしょいぞ」
「おう!おはよう!深夏、真冬ちゃん!仕方ないだろ!関東なんてアニメ以来行ってないんだからな!」
「あーあの、不思議なオリ回ですね。真冬個人としてはあの回東京に行く意味がわからなかっ「おっと真冬ちゃんそこまでだ。それ以上はいろいろと敵に回してしまうからね〜」
「グダグダやってないで行くわよ千葉!」
とまあ、飛行機乗ってやってまいりました。千葉!
「飛行機だとあっという間だな」
「だな、会長さんは乗ってすぐに寝ちまったけど」
会長はといえば、知弦さんの背中で気持ちよさそうに寝ている。会長の寝顔可愛すぎる!天使やこれは天使ですよ!
「むにゃむにゃ…もう食べられないよおーうへへ……」
「…アカちゃんを連れこめ…休ませられる建物は…あそこのお城みたいな建物が良いわね」
『こらこらこらこら』
「はっ!起きたよ私!」
「ちっ……」
「会長さんさすがの危機回避能力です」
「そういえばこれからどうします?俺たち特になんの計画もせずにこっちきちゃったので明日の交流会までやること決まってないですけど」
「それなら心配いらないよ、私、知弦、椎名姉妹はディスティニーランドに行くことになっているから」
「えっ!?そんなこと俺一言も聞いてないんですけど!」
「だって言ってないもの」
「どうしてですか!俺だけでどうしろと!」
「女の子だけでディスティニーは最近の流行りですよ?そこに先輩が入ったら、アトリエシリーズのキャラのパーティの中にニャルラトホテプがいるみたいなものです」
「俺吐き気を催す混沌と一緒なの!?」
「ということで、杉崎お留守番。げっとあうと」
「いやだー!!俺も行くの〜!置いてかないで!!」
「うわー、会長さんに大泣きしながらすがりついてるよ。警察呼んどくか」
「はあ…仕方ないなー付いてきてもいいよ」
「マジですか!ありがとうございます!会長大好きです!」
ぃやっほーい!!会長たちと遊べる!
そういえば会長達と外で遊ぶのって初めてじゃないか?おらワクワクしてきたぞ!
「だ、大好きって、そ、そんな嬉しそうにしないでよぉ…」
会長、めっちゃ顔赤いけど大丈夫か?俺を連れて行くことになってすごくイライラして顔赤くなってるとか!?そんな嫌だったか…
「俺と行くの嫌ですか…無理いってすいませんでした。留守番してるんで行ってきて下さい」
泣きそうだけどそうだよな、女の子だけで出かけたいこともあるよな。笑顔で送り出してあげなければ。
「な、なんでよ!別に良いって言ってるじゃない!」
「だって会長顔赤いから、それって怒ってるからですよね?だったら無理は言えないです。すいません……」
「こ、こ、これは違うの!」
「違うんですか?じゃあなんでそんなに…」
「うぅ…ああ!もう!杉崎が大好きとかいうのが悪いんでしょ!それにそんな嬉しそうな顔見てたら少しドキドキしたの!」
「あ…えと……ありがとうございます?」
やばい!真っ赤になって涙目でうるうるしてる会長が可愛すぎる!俺、もう死んでもいいかもしれない。どうしよ、動悸息切れ目眩が止まらない!……あれ?そういえば、会長以外のみんなはどこへ……?
じーーーーーーーーーーーーっ
後ろを振り返った瞬間そこにあったのは圧倒的な無、無、無。
「す、す、す、杉崎」
ギュッと腕にしがみついてくる会長、涙目上目遣いで可愛い、可愛いのだが…
じーーーーーーーーーーーーーっ
…………………………『へぇ』
やばい…っ!言った言葉はへぇだけなのになんだこの圧力は!?
「……キー君はアカちゃんと二人っきりで千葉を観光するということで」
「そうですね、杉崎先輩と会長さんだけ二人でいちゃいちゃすればいいんじゃないでしょうか」
「じゃあ解散しようぜ」
そういうがさっささと死んだ目で駅に入っていく3人………
「「ご、ごめんなさいぃぃぃぃぃっ!!謝りますから置いてかないでえええええ!!」」
〜当日〜
「それじゃ結衣先輩借りていきますね!」
「ヒッキーもゆきのんもホントに来ないの?」
「行かないわ。それに由比ヶ浜さんなら上手くやれるでしょう?」
「俺も同じだ」
「うぅー心細いよぉー」
そうして涙目で一色に部室から引きづられるように連れてかれる由比ヶ浜は少し可愛そうだったが、仕方ない、人には適材適所というものがあるのだ。ただ、由比ヶ浜がいないとやっぱりこの部室は静かだ。雪ノ下との距離感も心なしかいつもより広がっているような気がする。
「どうしたの比企谷君。腐った目で私を視姦して、もしかして貴方そういう趣味なの?もはや痴漢だわ」
「いや、違うから。冤罪とか笑えん。まあ、見ていたことは否定できんがな」
「貴方が認めるなんて…もしかして、明日地震がくるとか…」
「そんなマジな顔して震えないでくれ。由比ヶ浜がいないと雪ノ下との距離が広く見えるなと思っただけだ」
あーあ言っちまった。また雪ノ下のことだから『それは、もっと近づいてほしいということかしら?…セクハラだわ』
とか言われるんだろうな…
「……そうね、少しそちらに行くわ」
ほらな…ってえ?
今なんつった?聞き間違いか?
そういうがすぐに椅子をもって机の角、つまり俺の斜め前まで来た。
「なんか…近くないか?」
「っ……そんなことないわ、今の貴方との距離感はこんな感じよ」
「えっ……」
雪ノ下は本に目を落としてしまって、どういう意味かは聞けない。
…待って。八幡混乱しちゃう。
でれのんなの?でれでれなの?
じっと無意識に雪ノ下の横顔を眺めてしまう。……なんか少し頰が赤くないか?
「っ……そんなにこちらを見ないで頂戴」
「あっ…わ、わりい」
いつもより心なしか鼓動が早い…おい、俺しっかりしろ!なんで雪ノ下が可愛いとか思ってんだ!俺のマイエンジェルは小町だけだ。……うん、少し落ち着いた。
俺も読書に没頭するとしよう。
そうして、どれくらい経っただろう。二人の吐息と風の音、ページが擦れる音、こんなのも悪くないよなと思っていたときだった。
「ここが奉仕部ね!!!」
いきなり教室のドアが思いっきり開き、誰かが元気よく入って来た。
一体いきなり何事だよ!?
そう思い本から顔を上げたとき、そこに居たのは……
「「小学生……?」」
次もなるべく早く上げられるよう頑張ります!