ストックもどきは底をつきました
よって、今後の更新は牛の歩みというより亀の歩みです
リアルも忙しくなる時期なので気が向いたら更新
そんな感じになるかと思われます
どうやって食事するんだという疑問はごもっとも
私もよく判らない(おい)
(side : Shiro)
そんなこんなで夕食が始まった。
「――――――――」
叔父貴と中途参加のハサンとか言うヤツは、無言を貫いている。おまけにセイバーとランサーも沈黙を保ちながら、黙々と食事を進めている。ふと、昨日は気にする余裕がなかったセイバーの外見にそぐわぬ巧みな箸遣いに目を惹かれ、次いで粗野に見えたランサーでさえ一つ一つの仕草が上品であることに気が付いた。これが本当に槍やら剣やらを振るっている存在とは、思えない。それに、なんていうか。
「……ふむ。……ふむ、ふむ」
手をつけていない料理を口に運ぶたび、こくこくと頷いたりするセイバーの仕草が、妙におかしい。おそらくは美味しいという意思表示なのだろう。ランサーはランサーで、時折感心したような声を溢している。一方の遠坂はと言うと、
「これは……勝てる、かしら……?」
なんて、一口食べただけで少々複雑そうな顔をしていた。話し合いの続きで、夕飯作りは交代制となったので、明日は遠坂が腕を揮ってくれるらしい。
「―――ああ、そうだ。中途半端になってた今後の話についてなんだが」
唐突に、叔父貴がそう切り出した。整った顔が一斉に叔父貴に向き、本人でもない俺が思わずたじろいでしまった。
「まずは他のマスターを探す、という事ですか?」
「そう。降って湧いた俺の話で有耶無耶になってしまっただろう?だから、具体的にどうするかというのを考えなければ」
叔父貴の言葉に、それもそうねと頷き、遠坂は思案気に顎に手を当てて目を細めた。
「魔術師の気配を追うのはきっと無理だろうし……、サーヴァント同士の感知能力をあてにするのもねぇ……」
「あまりいい手とは言えないな」
「ですよね。それじゃあ、私と士郎はいつも通り学校に行って、学校にいるかもしれないマスターを探すことにして……その間のことはおじ様達に任せてもいいんですよね?」
「そうだな。こちらにはランサーだけではなくハサンもいるから、情報収集には事欠かないだろう」
「任せな、嬢ちゃん」
「お任せを」
英霊二人の言葉に遠坂は満足げに頷いている。そこに横槍を入れたのは、それまで話を聞くだけだったバゼットさんだった。
「その必要はありません、既に粗方の目星はついています」
「「「は?」」」
素っ頓狂な声を挙げたのは俺と遠坂、それからセイバーの三人。叔父貴とランサーは軽く目を瞬かせ――ハサンは仮面のせいでよく分からないがたぶん呆気に取られてはいた――、食事が始まると同時に姿を消していたアーチャーがどこからともなく現れる。
「残るサーヴァントは、キャスター、アサシン、ライダーの三騎ですね。そのうち、キャスターは柳洞寺に陣を敷いていて、アサシンらしきサーヴァントもそこの門を護っていました。ですので、そのマスター達も柳洞寺内にいると考えていいでしょう。それから、ライダーのマスターに関しては憶測にすぎませんが、候補として最有力なのは間桐の者だと私は考えています。御三家の一つである間桐が、ただ指をくわえてこの聖戦を傍観しているはずがありませんから」
そう言って箸をおいたバゼットさんは、まるで問題の正誤を気にする生徒のように、そわそわと叔父貴の様子を窺った。それに気付いた叔父貴は少しだけ眉をつり上げ、
「流石、と言うべきか。とはいえ、合格点……という訳でもないな」
言い聞かせるように穏やかな声で言った。
「しかし、落第点というわけでもない。ふむ……動ける者が動く、という原理に基づいた行動自体は間違ってはいないし、君がもたらした情報は確かに有益なものだといえる。が、元とはいえマスターだった君が、敵の本拠地に単独で向かうという行為は明らかに軽率だった。――――俺の言いたいことは分かるな?」
「……はい」
誉められているような、叱られているような、まさしく宥められているバゼットさんに何とも言えず、視線を逸らす。遠坂も微妙な顔をしていたから、心境は俺と同じで複雑だろう。自分より年上の人が諭されているのを見て、居心地の悪さを感じない訳がないんだから。
「いつ行動に起こしたか気になるところだが、それはさておき。何事もなかったから良かったとはいえ、一歩間違えれば君は死んでいたかもしれない。それか、ここにいる皆にも危害が加えられていたかもしれない。そう考えると、キャスターが寛大だったのか、それとも見くびられていたのか……どちらにせよ泳がされているという線は確実だろう。そういったことも含めて、今回の行動を見返し、次に繋げてほしい」
「はい……」
神妙な顔つきで頷くバゼットさんを見る叔父貴の目は、まるで我が子を見るかのように柔らかい。表情筋が死んでいる叔父貴は、目は口程に物を言う、を地で行く人だ。そんな風に見られて恥ずかしくならない訳もなく、バゼットさんは顔を赤らめてだんだんと縮こまっていく。ああ、本当に居た堪れない。そんな俺や遠坂の心境などお構いなしなのだろう。パンッ、と一度手を鳴らすと、叔父貴は俺達に食事を再開させて一人席を立った。その後を、断固として食事することに頷かなかったアーチャーが追う。
「親鳥と雛鳥か」
遠坂がそう言ったが、たぶんその場にいたやつは皆そう思ったと思う。
― ― ― ― ―
居間から退出して、結界強化のために屋根に上れば、アーチャーが追従してくる。雛鳥のようだなと思うと同時に少しだけ笑みがこぼれ、それを目にしたアーチャーが薄っすらと目を見開くのを見た。そんなに驚くことだろうか。確かに、ビジネスパートナーである男に
「君は――――」
「午前中の話の続きでもするのか?」
「っ、」
「難しく考えすぎるのは、お前の良くない癖だな。俺がここにいるのは紛れもない事実だし、あの時お前に殺されかけたのもまた、事実だ。……ああ、本当に、なんで死ななかったんだか」
瓦に足を取られないよう注意しながら、そんな言葉が口から滑り落ちていた。鋭い殺気と共に、喉元に銀光が伸びてくる。それを躱すこともせず、視線をアーチャーに移すと、そこに、泣きそうに歪んだ幼い彼の顔があった。
「死にたいのなら、今、ここで、殺してやる」
黒の上下から、赤い外套へシフトチェンジした装いに、アーチャーの本気の度合いを知る。
「死にたいと言えば、お前は殺してくれるのか」
問いでもなんでもないそれに、アーチャーはより殺気を濃くして刃を喉元に押し付けてくる。つぷり、と小さな音がして、鉄の臭いが鼻孔を掠めた。本来ならサーヴァントや士郎達が乱入してきてもおかしくない状況で、誰もやって来ないのは俺が咄嗟に結界を張ったからだろう。こんな会話、誰に聞かせるものではなし。間違いなく、俺とアーチャーの問題であるからして、横槍など不要。むしろ無粋だ。
「
その言葉は無意識に零れ落ちていた。俺の言葉にアーチャーは動揺をあらわにし、俺も俺自身の言葉に動揺する。どんな意図でその言葉を口にしたのか、俺自身が理解できていなかった。――いつ聞いたものだったか。不意に、脳裏に軽快な声が響く。
『■■■■■に頼まれてしまったらね、断れるわけもない。なにせ、
誰かが、そう、言っていた。それがどういう意味を持つのかを、俺は、理解できない/思い出せないでいる。