Fate/false protagonist   作:破月

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ここから先は、まだpixivには載せてない部分になるかと
でもまあ、予約投稿なのでどうなってるかわかりませんが……


2月4日 共闘
Kapitel 4


 

 

 

――――それは、誰かが失ってしまった記憶(おもいで)断片(かけら)

 

 

 

雲に聳える霊峰。

 

足下には真白の絨毯。

 

他に人はいないのか、

 

雪山の拓けた場所に、ぽつんと少年は立ち尽くしていた。

 

 

 

身を切るような寒さを孕んだ風が、少年の頬を撫でていく。

 

裸の木々は雪の花を乱れ咲かせ、少年が立つそこを取り囲んでいた。

 

 

 

数秒か、数分か。

 

何十分というほどではない。

 

 

 

だが、実際の時間がどうであれ、そこに少年は独り/一人だった。

 

足跡も少年の物しか存在せず、当然ながら親の姿など見る影もない。

 

特になんの感情も浮かばぬ顔つきで、少年は静かに佇んでいた。

 

 

 

――――その傍らに音もなく現れる。

 

 

 

黄金の■を見上げて。

 

何を望むかという問いに、少年は、そうするのが当然とばかりに口にする。

 

 

 

()()()が、欲しい。この戦いを勝ち抜くための、誰も予想ができないような、そんな力が』

 

 

 

そうして手渡されたのは、一組の■■■。

 

雪の中に埋もれてなお輝きを放つ、銀の楔。

 

 

 

――――それは。

確かに大切な思い出(きおく)だったはずだと、彼は思った。

 

 

 

 

 

― ― ― ― ―

(side : Lancer)

 

 

 

 

「――――、」

 

 

奇妙な夢もあったものだ。()()()()()()()頭を軽く左右に振り、オレは細く息を吐きだした。壁に預けた背はそのままに実体化し、この部屋の主が寝入っている一角に視線を移す。夢に出てきたのは、その主と似ているようで似ていない容姿の子供と、その傍らに立つおそらく同業者(サーヴァント)とおぼしき金色の男。サーヴァントとマスターの間で稀にある記憶の共有とやらが起きたのは分かる。が、如何せんその内容が納得いかなかった。霧散しそうになる少年の姿を思い起こして、首を傾げる。過去に行われた聖杯戦争の参加者であったとして、そもそもの年齢が合わない。ならば、あの少年はいったい何者なのか。疑念を抱きつつ、小さな山を作る寝具を見つめて、頭を掻いた。寝息は穏やかで、いつもならば起きている時間だと言うのに、まだ目覚める兆しはない。結界の強化を終えてすぐ寝入ったのは、想像に難くなかった。消費した魔力を回復させる手っ取り早い方法が、睡眠なのだから。それから、屋根の上でアーチャーと何があったのかは、聞いちゃいない。というよりも、聞く暇もなく寝入られれば、そんな気も失せるってもんだ。

 

 

「……はぁ」

 

 

規則正しく上下する胸の上には、(マスター)が長年連れ添っている暗殺者(ハサン)投擲剣(ダーク)が置いてある。マスターが寝入って直ぐ、気配遮断をするわけでもなく部屋に入ってきたハサンが置いていったのだ。様々な魔術が重ね掛けされたそれは、護身刀の役目を果たすらしい。オレが傍についているだけでは安心できないと言いたげなそれに、含むものがないわけではない。が、そのダークが果たす役割は、男の――――()()()()()()()宿()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことだと聞いてしまえば、そう無下には出来なくなる。切っ掛けは些細なもので、マスターがまだ魔術師として未熟だった頃、徒に召喚したハサンの存在により回路がオーバーヒートを起こしたのだという。そのせいで魔術が暴発し、命こそ危ぶまれることにはならなかったにせよ、弊害は確かにあったらしい。それ以来、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだという。"世界"というのも、なんとも漠然とした呼称だと思うが、それ以外に言いようがない。本来なら、その干渉に対抗し、侵食を妨害させる()()()()()があったらしい。身に着けずとも、肌身離さず持っていれば効力を発揮する代物が。しかし、マスターはそれを()()()()()()()。その礼装に、覚えがないわけでもない。とにかく、礼装の破棄と、先日の魔術行使。それが、ついに"世界"の箍を外した。結果、文字通り、マスターは徐々に命を削られている。例えるのなら、燃え続ける蝋燭のように。それでも、心配することなど何一つないと、表情一つ変えず、坊主や嬢ちゃんの前に立ってるっていうんだから、なかなか剛毅なもんだ。やせ我慢をしているのかと思ったが、それにはハサンの野郎が異を唱えた。

 

 

「ままならねぇな……」

 

 

今朝見た(きおく)といい、このマスターといい。どうにも判然としないことばかりで、正直なところ面倒くさいとさえ感じ始めている。強い奴と戦えりゃあそれでよかったはずなのに。知らないうちに、ろくでもないことに巻き込まれているんじゃないか、と。それでも、この男をマスターに定めたからには、最後まで付き合う気は勿論ある。それが、バゼットを生かしてくれたこいつへの恩返しであり、オレがオレ自身に課した責務だ。そう言い聞かせて、未だ眠りから覚めぬマスターから視線をそらす。

 

 

「――――アンタは、死なせねぇ」

 

 

零れ落ちた言葉は、静寂に木霊すことなく霧散した。

 

 

― ―

 

 

バタバタと騒がしい坊主を横目に居間に行く。マスターは相変わらず寝入ったままで、そのまま永遠に眠り続けるんじゃないかと心配になったが、それには及ばなかったらしい。一度目を覚ました後、オレに坊主の護衛を頼むと溢してから二度寝と洒落こみやがった。まったく、馬鹿にならねぇほどの魔力量の持ち主が、どうやったらそんな魔力切れ寸前にまでなるんだか。悪態をついても仕方がないので、護衛という名の見張りをハサンに任せて、部屋を出てきた次第。さて、と思考を切り替える。

 

 

「(今日はバゼットの仕事は休みだし、昨夜の話し合いでいつも通り坊主と嬢ちゃんは学校とやらに行くとも言ってたな。マスター達を抜いたサーヴァント同士の話し合いでセイバーが霊体化できねぇことも教えられたし、ここは大人しくマスターの言葉に従って坊主の護衛でもしておくかねぇ)」

「おはよう間桐さん。こんなところで顔を会わせるなんて、意外だった?」

「(マトウ……?そういや、昨晩、バゼットがその名前口にしてたな……)」

 

 

背後でそんな声を聞きながら。

 

 

 

 

 

― ― ― ― ―

(side : Shiro)

 

 

 

 

桜と遠坂の遭遇から、数分。遠坂は居間に残り、桜は無言で朝食の支度を始めてしまった。居間で遠坂と桜を二人きりにするのは不安があったが、こっちもセイバーの事を忘れるほど間抜けじゃない。それに、ランサーやアーチャーもいる。後者に関しては、さっきすれ違ったからランサーが居間にいるのは分かっていたけど、まさかアーチャーまでいるとは思わなかった。桜は見慣れぬ二人に驚いていたようだけど、叔父貴の知り合いと言えばすぐに納得していた。叔父貴のビジネスパートナーである桜の叔父さんから話を聞いているのか、桜は俺以上に叔父貴を信頼している節がある。何気、信頼度の高い叔父貴に嫉妬……って、そうじゃなくて。どうにも桜は遠坂がいる事に怒っているみたいだし、ここでセイバーが出てきては話がこじれる。こじれるので、セイバーには事情を説明することにした。もし、桜と遠坂の間で何かあれば、居間にいるサーヴァント二人が止めてくれるだろうと期待して。

 

 

「……という訳なんだ。桜――――あ、今うちに来てくれてる子は桜って言うんだが、桜は魔術師でもなんでもない普通の子で、聖杯戦争なんかに巻き込むわけにはいかないだろ。できれば知らないままで、暫くうちから離れていてほしんだが――――」

 

 

違うっ、どうしたら離れてくれるんだろうなんて相談しにきた訳じゃないっ!

 

 

「ああいや、そうじゃなくて……桜は遠坂がうちにいることに驚いているんだ。そこにセイバーが出てくると余計に混乱させてしまいそうなんだ。……まて、俺なんかセイバーに失礼なコト言ってないか……?」

「いいえ、シロウの言いたいことは判ります。つまり、私はここで待機していれば良いのですね?」

「――――!そう、そうしてくれると助かる!桜を送り出したらすぐに戻って来るから、朝食はその時で」

 

 

ええ、と静かに頷くセイバー。いや、セイバーが物わかりのいいヤツでもの凄く助かった。よし。居間の様子も気にかかるし、急いで戻ることにしよう。

 

 

「――――シロウ」

「ん?何だ、セイバー」

「サクラ、と言いましたか。彼女はもしや、マトウの者ではありませんか?」

「え――――」

 

 

どうしてそれを、と言いそうになって、セイバーのスキルに直感というものがあったと思い出す。未来予測染みたそれを持つセイバーなら、その問いを口にするのも何となくわかる。わかるが、どうしてそれを今俺に尋ねたのか。疑問を口にするより先に、昨日の夜に語ったバゼットさんの顔が脳裏に過る。

 

 

「ライダーの、マスター候補」

「はい。シロウは先ほど、サクラのことを()()()()()()()()()()()()()()()と言いました。ですが、その考えは正直言って甘いかと。マトウの者であるのなら、正式な後継者であろうとなかろうと、魔術の存在は知っているはずです。まして、彼女がライダーのマスターだった時には目も当てられない。親しい間柄であるのなら、尚更、貴方は彼女のことを見極めなければならない」

 

 

セイバーは静かに、いつもの調子でそんな助言を口にした。

 

 

― ―

 

 

で。何事もなかったかのように、いつもの朝食が始まった。いつもの、というと若干……いや、かなり語弊があるかもしれないが。ぎこちなさが抜けきってはいないものの、一見すれば仲良さげに会話する桜と遠坂。この場にいるのは不本意だと言いたげに眉を寄せながら、既に食事は終えた風を装い静かにお茶をすするアーチャー。その横では、ランサーが桜の料理の腕を絶賛しながら、景気よく箸を進めている。バゼットさんは、今日は仕事がオフのためまだ寝ているので、起き出すのは昼過ぎになるだろう。叔父貴が起きていないのは珍しいが、昨日の夜結界を弄っていたみたいだし、疲れているのかもしれない。ワーカホリックのきらいがあるから、たまにはのんびりしてほしい。そこまで考えて、一瞬、セイバーも普通に呼べばよかったと思い始めた。しかし、今更呼ぶのもなあ、と次の機会に桜に紹介しようと思いなおす。セイバーの事も叔父貴関連で説明すれば、納得はしてくれなくても理解はしてくれるだろう。……たぶん。

 

 

「――――――――」

 

 

ランサーが時折話題を振る以外の会話はない。まあ険悪なムードではないし、そもそもうちの朝食はこんなもんだ。俺も桜もお喋りな方でなし、飯時が静かなのはいたって道理なのだ。にも関わらず、どうして衛宮邸の朝食はいつも騒々しいんだろう。

 

 

「…………?」

 

 

いや、まて。なんか、また頭にひっかかったぞ……?桜に魚の味付けが濃かったかと尋ねられて、首を振る。どうにも、何か忘れている気がしてならない。思い出せないコトなら大した事じゃない、と割り切ろうとしたが、それはとんでもない思い違いな気がしてきた。放っておいたら死に至る病巣を抱えてしまっているような、そんな不安がよぎる。

 

 

「――――ま、いっか。どうせ大したコトじゃないんだろ」

 

 

うん、と無理矢理納得して飯をかっこむ。その次の瞬間、俺はその判断を後悔する羽目になるんだけど。そういえば、サーヴァントのランサーやアーチャーを見ても何も言わないあたり、やっぱり桜は聖杯戦争と無関係なんじゃないかと思う。

 

 

 

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