Fate/false protagonist   作:破月

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前半は本文、後半は幕間もどき



どうにかしてメルトとリップを弊カルデアにお迎えしたい……諭吉に犠牲になっていただくか……????


Kapitel 5-3 / 幕間

(side:Shiro)

 

 

 

 

 

屋敷に戻ってくる頃には、日は沈みかけていた。

 

 

「…………」

 

 

昼休みに結界の基点を探していた俺は、そこで出くわした慎二に促されるがまま間桐邸へと向かった。それなりに有用な情報も得られたが、ランサーが付いていてくれたとは言え単独行動にも等しいことをしたのだ。遠坂から何か言われるかもしれない。そんなことを考えているうちに玄関に辿り着く。

 

 

「――――マスターがいねぇな」

 

 

実体化したランサーがそう呟いた。なるほど、確かに。玄関には、こちらにいる間叔父貴がよく利用している下駄がなかった。それに、人の気配というものもあまり感じられない。そうすると、叔父貴が屋敷を出たのは数時間前とかになるだろう。

 

 

「そうなのか?……じゃあ、散歩にでも行ってるんじゃないか?」

 

 

爺さんが生きてた頃も、暇が出来ると兄弟水入らずとか言いながら散歩に行ってたっけ。俺が過去の思い出を引っ張り出していると、ランサーはぎゅっと眉間にしわを寄せて後頭部を掻いた。

 

 

「一人で行かせたのか、セイバー」

「ええ、ユキツグであれば問題ないと思いましたから」

 

 

足音もなく、玄関にセイバーが現れる。何となく、セイバーは叔父貴についていったんじゃないかと思っていたので、彼女の登場に少なからず驚いている自分がいる。なんだよ、人にはランサーをつけといて、自分は護衛なしかよ。危機感のなさが異常だな、と独り言のように呟いたランサーに内心同意しつつ、まだ戸を閉めていなかった玄関を振り返る。

 

 

「……大丈夫です、彼には()()()()()()()()()()()()()

 

 

穏やかな、声だった。今まで、少しばかり固かった声音が、酷く暖かいそれへと変わっている。セイバーがどんな表情(かお)をしているのか気になり、横目で様子を窺う。と、その表情は平素のきりりとしたものと大差なかった。けれど、目元が小さな弧を描いているようで。

 

 

「――――セイバーは、その人の事を信頼してるんだな。"憑いてる"っていうのがなんだか不穏だけど、セイバーが大丈夫って言うのなら、そうなんだろう。だったら俺は大人しく、皆が帰ってくるのに備えて夕食の支度をするだけだ」

 

 

納得のいかなそうな顔をしているランサーを置いて靴を脱ぐ。戸は閉めておけよ、とだけ言い置いて自室に向かう。――――さて、今日の夕食の献立はどうしようか。

 

 

「(慎二から聞いた話は、夕食の後でいいよな。桜と藤ねぇがいたんじゃ話にならないし、その頃にはたぶん叔父貴も帰って来てるだろうから……うん、そうしよう)」

 

 

セイバーにもその時に、一緒に話をしよう。

 

 

 

 

 

― ― ― ― ―

 

 

 

 

 

『そろそろ、帰った方がいいんじゃないかな?』

 

 

そう言って俺に先立ち、浮遊霊もどきな魔術師は笑う。陽は大きく傾き、今にも西方の彼方に沈まんとしていた。厚着をしている訳でもないために、肌寒さに羽織の上から二の腕をさする。

 

 

『ブリテンほどではないにしろ、ここも寒いね。もっと北の方に行けば、ブリテンのような気候のところもあると聞くけど。君は、行ったことがあるかい?』

 

 

テンポよく言葉を紡ぐ魔術師は、俺の返答をまたずまた口を開く。

 

 

()()()()()()()()()()()、旅をするのもいいだろうね。もっともその時、君が衛宮雪嗣であるか、それとも()()()()()()()()()()()()()は判らないけれど』

「…………」

『何せ私は、現代しか視ることが叶わないからねぇ』

「よく言う……」

『極めて真実に近い嘘だって?』

「そんなことは言っていない」

表情(かお)に出ているよ』

「――――」

『とはいっても、本当に顔に出ている訳ではないけれどね。目は口程に物を言うというように、君は表情が乏しいけれど、その分目が雄弁に語ってくれる』

 

 

だから、それでいいのだと。脈絡もなくそう言い放ち、自己完結した魔術師は透けた手で俺の手を取った。そして急かすのだ。

 

 

『さあ、帰ろう。たとえこれが束の間の平穏であっても、君はそれを享受する義務がある』

「義務なのか」

『そうだよ?資格じゃない、義務なんだ。君は、今この時だけでもいいから、幸せにならなければいけない。万が一答えを誤ってしまったら、君は()()()()()()()()()()()()を果たすことになるからね。まあ、答えが正しかったとしても、似たような結果になるのだろうけど』

「はあ、」

『おっと、話しすぎてしまったね。もう太陽が沈んでしまったよ。何時までに帰るとか、そういうのは言っていなかったけれど、流石にもう帰らないと。皆が心配してしまうからね』

 

 

一般人がいたらこの光景をどう思うだろう。魔術師に手を引かれる俺の姿は、魔術師が見えない者にしてみれば、片手を宙に浮かせてやや前傾姿勢で歩いている変人にしか見えないだろう。まあ、この魔術師がそれに対する策を講じていないはずもないのだが。というかそもそも、こいつがここにいること自体がおかしいんだ。まだ死んでもいないこの魔術師がこうしてここに存在できているのは、魔術師曰く、俺の力らしい。だが、生憎とそんな力にまったく覚えがない。その疑問の答えは失った記憶にこそ、あるらしい。その事が酷くもどかしく感じる。

 

 

『今日の夕食はなんだろうねぇ』

 

 

――――俺の手を引く半透明の手は、不思議と温かい。

 

 

「……さてな」

『君は知っているだろうに』

「教えたとして、君は食べられないだろう」

『それもそうだ』

 

 

気安い友のようだ。どうでもいいことを駄弁り、くだらない事に笑みをこぼし。どこかで取り溢してしまったような、日常的なモノがはからずも今、目の前にある。存在自体が非日常であるのにもかかわらず。それを、皮肉と言わずしてなんと言おう。

 

 

「――――君とは、生前に出会いたかった」

 

 

引かれていた手がすり抜ける。鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした魔術師に、してやったりと笑ってみせる。するとさらに驚いたようで、何度も瞬きをして俺の顔を食い入るように見つめてきた。なんだ、と問えば。

 

 

()は、そんな顔で、笑うんだね』

 

 

そう溢して、くしゃりと笑う。そっちこそ、随分と幼い表情(かお)をするんだな。迷子になった子供のような、頼りなさげの表情を。

 

 

 

 

 

― ― ― ― ―

(side:■■■)

 

 

 

 

 

『――――初めまして、先達の皆さん。そして、ご苦労様です。わざわざ負け戦に参じるなんて……随分と、お暇なんですね?』

 

 

少年は平然と、何の傲りもなく言い放ち、年相応の笑みを浮かべる。その背後には威厳ある■と、歴戦の勇士然としたサーヴァント二騎を連れて。

 

 

『お前さんは生まれるべくして生まれた、強者(ゆうしゃ)、か。ぬぅ……時代が違えば英雄にもなれただろうに』

 

 

惜しいことだと。我が■たる■■■■が、唸るようにそう言った。その言葉に少年の背後に立つ■は然りと頷き、勇士はそれでこそ我が主だと笑みを溢す。これを見て、誰が、彼らに挑もうと思うだろう。

 

■■■■は勇士を眼にして唇を戦慄かせ、■■■■は美しい(かんばせ)を歪め忌々しげに■を睨み付ける。我が■■■■は思案するように顔をしかめ、■■■■■■は狂気の中に理性を宿した瞳を細めた。■■■■と■■■■■の姿は未だ見えず、しかし、姿を見せたとして、それはさして驚異にはなり得ないだろうと推測する。誰もが、この主従に対して一目を置かざるを得ない。それほどまでに強烈な印象を与えてた少年は、高らかに勝利を宣言する。

 

 

『■■の聖杯ほど悪辣なものはない。けれど此度の聖戦は、純然たる(さかずき)に力を示すもの。サーヴァントは杯にくべる■に非ず、この身と共に戦う同士である。であればこそ、この戦いにおける勝者は僕だ。誰にも譲らない。僕が聖杯を手に入れる。……いや、違うな。僕の下に聖杯が成る。そう、()()()()()()んだ』

 

 

――――それはあまりにも。

 

無粋だと嘆く者はいない。むしろ、そんなことなど出来はしない。少年は誰よりも強く、深く、聖杯を渇望している。聖杯(それ)が自らの手の内に在るのが当然だと言っている。決意など生温い、一種の誓いにも似た呪いを臆さず口にしたことに感服はすれど、こちらとて譲ることはできない。この少年は、我々の心を揺さぶると同時に、熱さえ昂らせるのだ。侮れるはずもない。

 

だからこそ、思う。■■■■の言う通り、時代が違えば確かに英雄と呼ばれていたのだろう。鮮烈で、鮮明で、生き急いでいるようにすら見えるその生き方が、どれ程尊いか。それを理解しているのか、そうでないのか。どちらにせよ、この少年は此度の聖戦において、誰よりも先を行く存在であることは確かだった。故に、何も言うことが出来なかった。

 

 

『傲慢にもほどがあるわ!勝負を始める前から勝った気でいるような子供に、わたしは負けない!!』

 

 

――――二人の男女を除いて。先に啖呵を切ったのはまだまだ青臭さの抜けない、しかし、秘めたるモノが輝く凛々しい少女だった。その傍らに立つ風貌が厳つい男、■■■■■■は、両の手に獲物を顕現しながら好戦的な笑みを浮かべる。

 

 

『■■の言う通りだ。そんな簡単に未来を決められてたまるか』

 

 

少女に続くように言葉を紡いだ青年は、荒削りの原石だが、平凡から抜け出せていないところを見ると、元来こちら側の人間(まじゅつし)ではないのだろう。青年の傍らには、白銀の鎧を身にまとう麗しの君、■■■■が立つ。不可視の剣を体の前に突き立て、両の腕で支えていた。

 

その二組の男女の主従の後ろでは、それぞれの()が直ぐにでも戦闘に移れるように構えている。

 

 

『……これだから正義の味方(■■■■■■)あかいあくま(■■■■■■)は……』

 

 

はたして、その呟きを聞いた者が何人いただろうか。少年の傍らに立つ■■■■■は呵々大笑し、勇士は少し眉を寄せると呆れたように息を吐き出している。

 

 

『決意表明ありがとうございます。――――――でも、面倒なので、()()()()()()()

『『『――――っ』』』

 

 

突風が巻き起こる。詠唱は聞こえなかった。ただ、言葉に魔力を乗せただけ。それだけでいとも簡単に魔術を発動せしめた。踏ん張りがきかずに浮きかけた体を■■■■が捕まえる。今回の聖戦で召喚されたサーヴァントの中ではかなり体格が良い方の彼でさえ、押し寄せる強風に顔をしかめている。他の主従の状態も似たり寄ったりだ。

 

 

『(……一筋縄ではいかないな)』

 

 

そのことを再認識すると同時に、右手に意識を集中させる。■■■■■の名を継いだからには、祖国で傍観に徹している先生のためにも、無様な姿など見せられない。

 

 

『――――令呪をもって命じる!!この場から離脱せよ■■■■!!!!』

 

 

最善策を打つ。もっとも、戦略的撤退、とは言い難い選択ではあったけれど。

 

 

 




うちのお花野郎盛大にネタを暴露してくれるが、肝心の部分は隠すからいい感じに謎が残る
だがしかし、格好はつかない



ちなみに、来週更新できるかどうかは分かりません
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