Fate/false protagonist   作:破月

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NOUMINの話し方が割と迷子
魔女殿の話し方も割と迷子


Kapitel 6-4

バイクを奔らせ、一途柳洞寺へ。ライダーの生き死にがどうなるかは賭けに等しいが、何とかなる、と思いたい。原作とは違い、こちらにはランサーという手駒があるのだから。ギアを上げようとして、急激に近づく気配を感じる。バックミラー越しに背後を確認するも、何もいない。では空か、とスピードを緩め一瞬視線を走らせるも、やはり何もない。ヘルメットの視界が狭いこともあるかもしれないが、何も捉える事ができないとなると、近づいてくる気配は気のせいということになる。が、しかし。

 

 

「――――走っているバイクに乗り込むとは、随分と危険な真似をする」

 

 

柳洞寺に着き、長い階段の下に停めた瞬間、それは姿を現した。いつの間に、と思わないでもないが終わったことをどうこう言うつもりはない。

 

 

「いやなに、異様な気配を感じて外に出てみれば、君が単車を奔らせる姿を見つけてね。何をするのかと興味を惹かれ、同乗させてもらったという訳さ。追いつくのは骨が折れたが、曲がりなりにもサーヴァントなのでね」

 

 

一瞬スピードを緩めた隙に乗り込んだ、と皮肉を交えて言い肩を竦めたアーチャーに、俺も肩を竦める。サーヴァントの並外れた身体能力だからこそ出来ることだ、そもそも普通の人間はそんな危険かつ馬鹿な真似はしない。説教染みた言葉が出そうになるのを堪え、石造りの階段に足をかける。予想外の事態ではあったが、これ以上ここで時間を潰すわけにはいかないのだ。

 

 

「なぜ柳洞寺に?」

 

 

一段遅れてついてくるアーチャーが尋ねてくるのを無視し、黙々と階段を上る。むっ、とした気配が背後からするがそれ以上何も言わないので、無視。あの手この手を使ってでも聞き出そうとはしてこない辺り、やはり士郎よりも精神年齢が高いのだろう。()()()()()()として完成しているのだから当然と言えば当然なのだが。歪なまま成長したな、と場違いな感想を抱きながら門の前に辿り着く。

 

 

「これはこれは……音に聞く魔術師殺し殿ではないか。斯様な寂れた山寺に従者の如くいつぞやの弓兵をつれ、如何な理由で参られた」

 

 

一陣の風が吹く。涼やかな空気を纏って、和装の男が姿を見せる。頭上高く結い上げられた濃い紫の髪を揺らし、みやびに微笑んだ男は獲物を手に道を阻んでいた。

 

 

「出迎えご苦労、こちらに戦闘の意思はない。君の主にお目通り願いたいのだが、通してもらえるだろうか」

「ふむ……我が主人たる女狐が応じるかどうかは分からぬが、一度伺いを立ててみるとしよう」

「よろしく頼む」

「あい分かった、暫し待たれよ」

 

 

男はそう言うと踵を返し霊体化して消えた。そう言えば、噂で聞いたとは言うが、俺の話―――もとい魔術師殺しの話を誰が語るというのだろうか。聖杯がそんな情報を流す訳がないし、ましてや今回のアサシンであるあの男は少々特異な存在だ。聖杯から正式なバックアップを受けているのかすら疑問である。しかし……キャスターを召喚した魔術師は、中東に居を構える魔術師一族のトップの者だったか。それならば、多かれ少なかれ自分の敵となり得る魔術師殺しの存在を知っていてもおかしくはない。どこからか俺が今回の聖杯戦争に参加するのを耳にして、それがキャスターの耳にも入り、巡り巡って男の耳にも入った、と。そう考えるのが妥当か。

 

 

()()()()()()とも、手を組もうと考えているのかね?」

 

 

沈黙に耐え切れなくなったか、はたまた先ほど俺が無視したことへの腹いせか。どちらにせよ俺の注目を引きたかったに、違いない。腕組みをしてそう尋ねてくる赤い外套の男(アーチャー)に目だけで頷いてやれば、しかめ面が苦渋に満ちた表情に変化する。

 

 

「いつ裏切るともしれない相手と、契約を結ぶ?正気か?既に我がマスターとあの未熟者を引き込んでいるにもかかわらず、それでも手が足りないと?」

「そうだな」

「……馬鹿な、何をそう急いている」

 

 

不快感を隠しもせず、アーチャーは俺を睨む。急いているつもりはなかったが、そうか、他人の目から見ればそう見えるのかと、他人事のように思う。()()()()を成就させる為なら手段を選ぶつもりはないし、そもそも選んでいる暇などない。それを()()()()()からこそどうしても誰にも話さずに、己の中だけで考えを完結させてしまう。今も口にすることは憚られたが、俺が何を考えているのか、うっすらと理解したのだろう。眉間に深いシワを刻みこちらを見るアーチャーに苦笑を禁じ得ない。理解しろ、とは言わないから、納得だけはしてほしい。そう言えば、無理だ、と端的に返される。まったく、取り付く島もないとはこのことか。しかし――――

 

 

「もう少し、可愛げがあってもいいだろう」

「たわけ」

 

 

何言ってんだこいつ、というような目で見るのだけはやめてほしい。

 

 

 

 

 

― ― ― ― ―

(side : Caster)

 

 

 

 

漸く来たか、という思いと。まだ来て欲しくなかった、という思い。相反した二つの思いが混在する心情を察してか、そうでなくても何かしら感じ取っているらしいアサシンは、緊張することはない、と艶やかな笑みを浮かべる。それも、そうなのだろう。相手は明確に敵意がない事を示しているし、事実、武器のようなものを懐に仕込んではいるようだがそれに手を伸ばす素振りもない。極々普通の、リラックスした状態で、私への目通りが叶うその瞬間を待っている。

 

 

「――――ああしていれば、本当に()()()()()()()()()()()()のに」

 

 

現実とは非情理だ。あの男は()()()()()()()()()()()()()()であるがために、明確な終わりがやって来る。否、既に終わっているはずだった。輪廻転生などというものなど、あの男には存在しない。この場、この瞬間限りの存在。だからこそ、哀れでもある。

 

 

「聖杯戦争が終わる。それ即ち、()()()()であることを、彼は知っているのかしら」

 

 

そんな疑問は無意味だ。私は、ただ、あの(ひと)と共に、一秒でも長く生きられればそれでいいのだから。他人の事を心配しているようでは、願いは掴めない。けれど、少しだけ。ほんの少しだけではあるけれど。あの、魔術師(どうけ)の言葉を聞くのも悪くはないと、思う。

 

 

「アサシン」

「なんだ?」

「彼を、彼だけを、通しなさい。アーチャーの相手は貴方にお願いするわ」

「ふむ、承知した。では、案内(あない)するとしよう」

 

 

霊体化して消えたアサシンを見送る。遠隔操作に使っていた魔術道具は片付け、深く、フードをかぶる。表情を悟られぬようにするのも、交渉術のひとつだ。魔力で編んだ水晶を一つ、掌に出して来訪者の顔を映し出す。

 

 

「私を含めいったい何人のヒトが、貴方(エミヤユキツグ)()()を知っているのでしょうね」

 

 

――――()()()姿()を幻視する。オーシャンブルーの瞳、癖のある黒髪、エヌ字を描く特徴的な眉尻。左手には三画の紅い模様と、両隣にはただならぬ気配を持った二人の男。それに並ぶのは、赤銅色の髪をサイドテールにした琥珀色の瞳を持つ少女。薄紫の髪を持つ儚げな少女と寄り添い、少年と肩を並べて何かに挑もうとしている。少年と少女の下には、数え切れないほど多くの英雄たちが集っている。優秀な少年と、未熟な少女。対照的な二人だ、けれど、相反することはない。お互いがお互いの欠落した部分を補っている。

 

 

『■■■■』

 

 

――――この光景は()()()()()()()()()()()()し、()()()()()()()()()()ものだ。なぜなら衛宮雪嗣(あのおとこ)はまだ()()()()()■■雪■(あのしょうねん)はまだ()()()()()なのだから。過去、現在、未来、全てに当てはまり、どれにも当てはまらない、いつかの記録(きおく)。故に、私は知っている。

 

 

「"The desire of my heart(願いは心に)"、ね……」

 

 

その言葉(のろい)が、単なる意識の切り替えに用いられているのではないことを。

 

 

 

 

 

― ― ― ― ―

 

 

 

 

 

アサシンが戻ってきてすぐ、寺の中へと誘われる。アーチャーもついて来ようとするがアサシンに止められてしまい、一瞬眉をしかめるもそれに従った。なるほど、()()()()()、と。

 

 

「ここで待っていてくれ」

 

 

アーチャーの後方、ゆるゆると浮かぶ魔術師に向けて言う。

 

 

「わざわざ言われずとも、そうするさ」

 

 

アーチャーに言ったわけではないのだが、そう勘違いしてくれる分にはありがたい。何せ、魔術師は他人の目には見えないのだから。

 

 

『君の意向に従おう。ここで大人しく、彼らの剣闘劇でも見ているさ』

 

 

朗らかに言ってのけた声は、やはり俺にしか聞こえていないらしい。物騒ではあったが、返事も聞いた。三人の視線を受ける中、山門をくぐって寺の境内に足を踏み入れる――――瞬間、ばつん、とブレーカーが落ちたような音が耳奥で聞こえた。足を止める。ああ、ここでもか。

 

 

「如何した」

 

 

状況が理解できていないだろうに、あくまでも冷静に尋ねてくるアサシンに苦笑が浮かぶ。表情までは分からないが、おそらく困惑しているらしいのは気配で分かった。

 

 

「いや、どうということもない。ただ――――」

 

 

聴覚は正常だ、嗅覚もある、触覚も、痛覚も。

 

 

「目が見えなくなった、それだけだ」

 

 

視界が黒く染まっていた。ここが、落ちているとはいえ霊地であったことも災いしたのだろう。だが、それも一瞬だ。気にするほどではない。霊地に赴くたびにこうなっているのだから、もう慣れたものだ。それに時間が経てば回復する。そうとは知らず、戸惑う気配を隠しもしないアーチャーとアサシン。いつの間にか魔術師は俺の傍に寄って来ていて、頬を撫でている。

 

 

『こういった事に馴れてはいけないよ、普通ならば有り得ないことなのだから』

 

 

分かっているとも、それくらい。徐々に色を取り戻し始めた視界を馴染ませるように、瞬きを繰り返す。滲んだ視界の向こう側、寺の境内の中央にぼんやりとした影を見た。

 

 

「あまりにも遅いから、迎えに来てあげたわ」

「―――レディを待たせ、あまつさえ迎えに来させてしまうとは、申し訳ない」

「構わないわ。その目では、歩くのに苦労しそうですもの」

「感謝しよう、キャスター」

 

 

確かに、視界はまだ不明瞭だ。アーチャーやアサシンの手を借りて歩くよりも、彼女が赴いた方が早いのも解る。……さて、時間はかかってしまったが本題に移ることにしよう。

 

 

「早速で申し訳ないのだが」

「何かしら」

「――――ある少女の体の中に埋め込まれた()()()()()()()()()()()()のだが、協力してもらえるだろうか」

「――――っ」

 

 

さあ、俺の()()()()()を始めよう。




正体を暴露したようなもんだな……
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