Fate/false protagonist   作:破月

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相変わらず字数がバラバラ、よくこんなのpixivに載せてるな……


Kapitel 2-6

 

 

撃ち出した弾は狙い通りの軌跡を描き、真っ直ぐにサーヴァントの巨躯を貫いた。それでもまだ、アレを倒すには威力が足りないらしい。

 

 

「……どれくらい強化すれば、一撃で倒せるのやら」

 

 

独り言を溢してライフルを肩に預ける。懐を探り煙草のケースを取り出すが、残念ながら中身は空だった。ストックはまだあっただろうか、と考えながら、魔術で視界を強化する。二組の主従と、ランサーが橋を渡ろうとしているのを確認して、視界を閉ざす。

 

 

「――――」

 

 

バゼットは既に屋敷の中に戻っている。士郎が遠坂嬢と共にこちらに戻って来ていることを伝えると、いそいそと客間の準備に行ってしまった。おそらくというか、きっと彼女をうちに泊める心積もりなのだろう。家主である士郎には事後承諾でいいだろう、とかなんとか言っていた気がする。いやはや、女とは強かだな。

 

 

「(アイリスフィール――義姉さんも、強かだったな)」

 

 

白雪のような美しい髪を揺らし、ルビーのような輝きを放つ瞳を細めて。

 

 

―――私のことは裏切ってもいいわ。でも、キリツグの事だけは、絶対に裏切らないであげてね?

 

 

そう言って笑った彼女は、儀式に失敗したのではなく、無惨にも言峰に心臓を抉り出され絶命した。そして、空っぽになった肉体(そとがわ)は、呆気なく、あの泥に飲み込まれてしまったにちがいない。その時の情景は、今でも簡単に想像できる。

 

 

「―――っ、」

 

 

思い出さなくてもいいものを思い出した。きっと、バーサーカーの傍にいた少女の姿を視界に入れたからだろう。そうでなければ、今この瞬間に義姉(あね)のことを思い出したりはしなかったはずだ。

 

 

「(ああ――――ダメだな)」

 

 

割り切れたと思っていたが、実はそうでもなかったらしい。"彼等"にあんな結末を迎えさせてしまった事を、俺は未だに悔やんでいる。そう、悔やんでいるんだ。

 

 

「――もっと、他にやりようがあったはずだ」

 

 

義姉を犠牲にしなくてもいいような、そんな方法が、きっと、確かに、あったはずなんだ。

 

 

「くそっ……――――!」

 

 

ままならない思いをぶつけるように、乱雑に髪を掻きまわす。兄貴よりも短い黒髪は、だけど確かに彼と同じ質感をしていて。

 

 

――――僕達は双子だけれど、僕は君に沢山の物をもらうばかりで、僕から君に何もあげられていないような気がする。

……別に、そんなことはない。物をやるのは、俺がやりたくてやってる訳だし。

そうだね……そうなんだけど、それじゃフェアじゃないなって。

兄貴の口から"フェア"なんて言葉が出てくるとは思わなかった。

失礼だな、君は。まあ……僕も少しだけ、らしくないとは思ったけどね。

だろうな。

…………ねえ、雪嗣。

ん―――?

君がいるから、僕はここまで来ることが出来たんだ。

………、

ありがとう。結局、僕は君に何かをあげることも、残すことも出来ないんだろうけど。それでも、感謝を伝えるくらいのことはしなくちゃ罰が当たるよね

そんなことないだろ。ちゃんと、姪と甥を遺してくれただろう。

そうだねえ。でも、二人には悪いことしちゃったなあ………………子供達を、よろしくね?

ああ、確かに頼まれたよ……切嗣。

 

 

「――――」

 

 

そんなこともあったな、と。そう遠くはない過去に想いを馳せる。よろしく、と言われたのに、俺は士郎が絶命するのを一度は見過ごしたばかりか、今ほど彼女に対して明らかな敵対姿勢を見せた。親不孝ならぬ兄貴不孝な不肖の弟だが、兄貴は――切嗣は、まだ見捨てずに傍で見守ってくれているのだろうか。

 

 

「マスター」

 

 

呼ばれると同時に気配を感じて、目を開ける。音もなく現れた群青の軌跡。記憶に残る義姉の瞳と似ているようで、違う色合いをした緋色の瞳が俺を射抜いている。

 

 

「嬢ちゃん達が呼んでるぜ?聞きたいことがあるんだと。ってことで、ちょいと話をしようや」

 

 

ああ、と頷いて。

 

 

「俺も、話したいことがある」

 

 

差し出された彼の手を取って屋根から飛び降りた。

 

 

 

 

 

― ― ― ― ―

(side : Rin)

 

 

 

 

教会から戻って来たわたし達を迎えてくれたのは、バゼットさんだけだった。衛宮くんの叔父さんは屋根の上で様子を見ているらしい。ああ、だからランサーは実体化すると同時に屋根に跳び上がったのか。

 

 

「また話をするのでしょう」

「ええ、そうですね」

「客間のほうは既に用意が出来ていますので、どうするかは貴方が決めてください」

 

 

居間に通されるなりそんなことを言われて、思わずバゼットさんを凝視する。そんなわたしに気付いた様子もなく、今わたしに説明したようなことを衛宮くんに説明している彼女からは、なんの含みも感じられない。

 

 

「(……何か企んでるって訳じゃなさそうね)」

 

 

純粋な好意なのだろうことが直ぐに判る。衛宮くんにしろ、居候のバゼットさんにしろ、この屋敷に住んでいる人は御人好しなのか。アーチャーに泊まりようの荷物を簡単にまとめて持ってくるように伝え、そんなことを考えながら腰をおろす。すかさず差し出された湯呑には、温かな湯気をたたえた緑茶が注がれていた。そっと手を伸ばして湯呑を手に取ると、その温かさが身に染みるようだった。

 

 

「おかえり」

 

 

湯呑の縁が唇に触れるか触れないかというところで、襖が音もなく横に払われその人が現れた。手には物騒な武器――全長140センチメートルほどの大きな銃だ――を携えて、背後にはランサーが感情のない顔で控えていた。銃を目にしたセイバーが、やはり、と小さな声で呟く。衛宮くんは大きく目を見開いて、興味深そうに銃を眺めていた。

 

 

「怪我は」

 

 

立ったままわたしを見下ろすように視線を寄越したその人は、そう言って少しだけ表情を和らげた。

 

 

「ありません。おじ様の援護射撃もありましたから」

「……そう。それじゃあ、何か俺に聞きたいことは?」

「たっくさん」

 

 

二コリ、と笑みを浮かべながらそう言えば、衛宮くんは引き攣った声を漏らし、目の前の人物は苦笑を浮かべて言う。

 

 

「その表情、すごく葵さんに似ている」

「え―――?」

 

 

埋もれてしまった記憶の中から何かを掘り出すような。忘れてしまっていたはずのそれを、ふとした拍子に思い出したかのような。とても懐かしそうな顔で、わたしを見るその人の目には、

 

 

「質問は山ほどあるだろうが、こちらから話しをしよう。遠坂嬢――否、遠坂凛」

 

 

今この場にいるわたし達ではなく、

 

 

「君との共闘を申し入れたい」

 

 

何処かに置き去りにしてきてしまった、この人にとって大切な"何か"が映っていた。

 

 

 

 

 

― ― ― ― ―

(side : Saber)

 

 

 

 

彼が手にした銃を目にした時、懐かしさと共に込み上げてきたのは、嘗ての凄惨な光景だった。彼が銃を手にする時、それは――"何か"が壊れる時だ。それは、強固な建造物であったり、豊かな自然であったり、――儚く脆い人間であったり。様々だ。対象物によって姿を変える弾丸を撃ち放つその銃は、世界にたった一つしか存在しえない、いわば彼の"宝具"。それを手にして、リンと顔を見合わせた彼の姿を、ぼんやりと見つめていた。

 

 

「共闘?わたしと?そんなことしなくても、貴方には衛宮くん……士郎がいるじゃない」

「士郎とも共闘するつもりだ。しかし、それでは不十分だと思っている。俺が欲する物は、士郎の手を借りるだけでは手に入らないからな」

「……貴方には聖杯に願いたい事はないけれど、他に欲しいものがある、という事ね?」

「ああ」

「ではそれが何なのか、教えてもらえるのかしら」

「すまないがそれは出来ない」

「なぜ」

「……出来ないものは出来ない、それが"世界"との決め事だからな」

「――――"世界"?」

「セイバー?」

「決め事……つまり"契約"みたいなもの?それって、英霊と似たようなものと考えても?」

 

 

思わず彼の言葉に反応する。隣に座っていたシロウが、怪訝な様子で私を呼んだ。瞬きだけで答えて、彼の横顔を見つめる。"世界"との決め事、という言葉に聞き覚えがあったのだ。そう、彼は前回の聖杯戦争でもよくその言葉を口にしていた。とても大事なことなのに、詳細が話せない時には決まってその言葉を。そんな彼を片割れとするキリツグですら、彼が口にするその言葉の意味を知らなかった。いつからその言葉を使い始めたのかも、知らなかったらしい。言葉を濁すユキツグに、凛と同じように、"世界"との決め事とはまるで私達英霊のようだ、と、言った覚えがある。そんな私に彼は何と答えたのだったか。

 

 

「ああ、その解釈は中らずと雖も遠からず、だな。俺は出来損ないの英霊のようなものだから」

 

 

そう、確かにそう言っていた。あの時も、そして今も、言葉の意味を図りかねて眉間にしわが寄る。あの時はアイリスフィールが気を利かせて話題を変えてくれた。しかし、今彼が対峙している少女は、そんなことを許してくれるような気質ではない。

 

 

「どういう意味よ、それ」

 

 

信用ならないといったような声で、さらに凛が尋ねる。

 

 

「それを言ってしまったら、契約違反だ」

 

 

そう言って、彼は困ったような顔に笑みを浮かべた。これもまた、見覚えのある表情だった。最後の令呪をもって、私に聖杯の破壊を命じたキリツグを見守っていた時も、こんな表情をしていた。その表情にどんな意味が含まれているのかも判らずに、私はただ、痛々しいな、と。あの時も、今も、思ったのだ。

 

 

 

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