タイトルとは真逆の鬱展開です。

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ヴィーネ「仕送りが……0円!?」

ガヴリール「なんでだよ! なんで……どうしてヴィーネが消えなきゃいけないんだ」

 

ヴィーネ「ごめんね、ガヴ」

 

ガヴリール「今からでも遅くないだろ! 学校の窓ガラスを割るとか、他にもいっぱい悪さすれば良いじゃないか!」

 

ヴィーネ「もう、ガヴったら。私がそう言うことできないって知ってるくせに」

 

ガヴリール「でも……でも、もう二度と会えなくなるんだぞ! そんなの悲しすぎるじゃないか」

 

ヴィーネ「ガヴと……ガヴリールと会えて、私は幸せだったよ?」

 

ガヴリール「なんで……なんで過去形なんだよ」

 

ヴィーネ「短い間だったけどありがとう、ガヴ。そして、さよ…………」

 

ガヴリール「ヴィーネ!? ヴィーネーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

【前日 朝 ヴィーネ宅】

 

ヴィーネ「おはよう、小鳥さん」

 

小鳥「チュンチュン」

 

ヴィーネ「えーっと、今日の仕送りは……っと…………?」

 

 

 

 

 

 

【ガヴリール宅】

 

ピンポーン

 

ガヴリール「ん? ああ、もう朝なのか……土曜なのに誰だよ」ガチャ

 

ヴィーネ「ガヴリール! 大変よ! ゼロなのよゼロ!」

 

ガヴリール「ドラゴンボールか?」

 

ヴィーネ「それはセル! それどころじゃないのよ!」

 

ガヴリール「はぁ、私の休日の安眠を妨害する以上に大変なのかよ」

 

ヴィーネ「今日、魔界から仕送りが来たんだねどね」

 

ガヴリール「それで?」

 

ヴィーネ「ここの数字、なんて書いてある?」

 

ガヴリール「ゼロ……だな」

 

ヴィーネ「でしょ。どうしてだと思う?」

 

ガヴリール「と言うかゼロ円を振り込むって逆にどうやるんだよ」

 

ヴィーネ「もしかして私、悪魔失格なのかな……」

 

ガヴリール「私が堕天したら、その代わりにヴィーネが天使になるのかもな」

 

ヴィーネ「それどころじゃないわよ! 今はまだ貯えがあるけど、ああもう食費どうしよう」

 

ガヴリール「駅前でリーマン釣るとか?」

 

ヴィーネ「イチゴなんて高くて買えないわよ」

 

ガヴリール「どこでその言葉を覚えたんだよ」

 

ヴィーネ「成人男性を堕落させるための本に書いてあったわ」

 

ガヴリール「捨てろ! そんな本!」

 

ヴィーネ「はぁ……身近な悪魔がサターニャじゃ当てにならないし、ラフィエルに聞いても意味ないし」

 

ガヴリール「ッ!? おい! ヴィーネ! 透けてる! なんか透けてるぞ!!」

 

ヴィーネ「え? 透けてるって……ってウソ!? 手が半透明に!?」

 

ガヴリール「ええい! 当たって砕けろだ! ラフィエルに相談するしかない!」

 

ラフィエル「呼びましたか?」

 

ガヴリール「うわっ! いつからそこに居たんだよ!」

 

ラフィエル「サターニャさんへ持っていくメロンパンを買おうとしたのですが、残念ながら売り切れていまして」

 

ガヴリール「メロンパンとどう繋がるんだよ」

 

ラフィエル「帰り道にヴィーネさんをお見かけしましたので、こっそり後を追ってみたのです!」

 

ヴィーネ「渡りに船かは分からないけどラフィエル! これって明らかに良くない現象よね!? いきなりで悪いんだけど、なにか知ってたりしない?」

 

ラフィエル「えー? えーっと……あー……」

 

ヴィーネ「なにか知ってるのね!」

 

ガヴリール「私からも頼む、ラフィエル! 教えてくれ!」

 

ラフィエル「悪魔にも同じことが言えるかは分からないですけど、天使の場合……ですね」

 

ヴィーネ「うんうん」

 

ラフィエル「半透明になるのは所謂警告です。天使らしい行動……ヴィーネさんの場合は悪魔らしい行動ですね」

 

ガヴリール「それをすれば元に戻るのか!?」

 

ラフィエル「戻るかどうかは天界……いえ、魔界が判断することです。問題ないと判断されれば普段通りに戻れます」

 

ヴィーネ「それで……ダメだったら?」

 

ラフィエル「そのまま薄くなり、最後は消えて居なくなります。消滅するのです」

 

ヴィーネ「大変なことじゃない! ああもう、こんなことなら喫茶店のおじさんからもっと悪いことを聞いておくべきだった……」

 

ガヴリール「いやいや、それよりもサターニャは無事なんだろ? あいつと同じことをすればヴィーネも立派な悪魔だって認めて貰えるんじゃないか?」

 

ヴィーネ「あ!」

 

ガヴリール「どうした!?」

 

ラフィエル「どうかしましたか?」

 

ヴィーネ「サターニャ……昨日の夜に用事があるからって里帰りしたんだった……」

 

ガヴリール「どどどどうするんだよ!」

 

ヴィーネ「それを今聞いてるんじゃない!」

 

ラフィエル「天界に……聞いてもダメですね。魔界に伝はないんですか?」

 

ヴィーネ「それがあったら苦労してないわよ……」

 

ガヴリール「悪いこと悪いこと……そうだ! 銀行強盗すれば悪人だぞ!」

 

ヴィーネ「それじゃあダメ。悪人と悪魔は違うのよ」

 

ラフィエル「天使は人助けをすれば大丈夫ですが、悪魔って意外と定義が曖昧で難しいんですよ」

 

ヴィーネ「誰かに嘘をつくとか?」

 

ガヴリール「ヴィーネ! それだ! 試しに私に嘘を付いて点数稼ぎだ!」

 

ヴィーネ「えぇ!? いきなり言われても……うーん……ラフィエルって実はパッドなのよ」

 

ラフィエル「そうなんですか!?」

 

ガヴリール「どれ……答え合わせを」モミモミ

 

ラフィエル「あっ……」

 

ヴィーネ「なんだか私、自信が付いてきたかも!」

 

ガヴリール「まあ、嘘だって丸分かりなんだけどな」

 

ラフィエル「ですねー」

 

ヴィーネ「本当に? 渾身の大嘘だったのに……」

 

ガヴリール「これはもうダメかも知れない……」

 

ラフィエル「なにか打つ手があるはずですよ! ヴィーネさんを助けるなにかが……」

 

ヴィーネ「ラフィエル……天使なのに悪魔の私を救って貰うのも変な感じだけどありがとう!」

 

ガヴリール「私は良いのかよ!」

 

ヴィーネ「ガヴは一応天使だからね」

 

ラフィエル「それにヴィーネさんが居なくなったら私やガヴちゃん、サターニャさんだって悲しみます!」

 

ガヴリール「絶対に……絶対にヴィーネを消えさせはしないからな!」

 

ヴィーネ「二人とも……ありがとう!」

 

 

 

 

 

 

【翌日】

 

ガヴリール「なんでだよ! なんで……どうしてヴィーネが消えなきゃいけないんだ」

 

ヴィーネ「ごめんね、ガヴ」

 

ガヴリール「今からでも遅くないだろ! 学校の窓ガラスを割るとか、他にもいっぱい悪さすれば良いじゃないか!」

 

ヴィーネ「もう、ガヴったら。私がそう言うことできないって知ってるくせに」

 

ガヴリール「でも……でも、もう二度と会えなくなるんだぞ! そんなの悲しすぎるじゃないか」

 

ヴィーネ「ガヴと……ガヴリールと会えて、私は幸せだったよ?」

 

ガヴリール「なんで……なんで過去形なんだよ」

 

ヴィーネ「短い間だったけどありがとう、ガヴ。そして、さよ…………」

 

ガヴリール「ヴィーネ!? ヴィーネーーーーー!!!」

 

ラフィエル「……」

 

ガヴリール「……ラフィエル」

 

ラフィエル「? なんですか?」

 

ガヴリール「確か天使ってのは、神からのご加護を使えるんだったよな」

 

ラフィエル「ガヴちゃん! それだけはダメです! それじゃあガヴちゃんまで――」

 

ガヴリール「うん、知ってる」

 

ラフィエル「ヴィーネさんはガヴちゃんに生きて欲しかった! だからやらなかったんですよ!」

 

ガヴリール「天使殺しだろ? 天使を殺すなんて大罪人、悪魔くらいなもんだからな」

 

ラフィエル「それに……ガヴちゃんまで失うなんて……私、絶対に嫌です! そんなの認めません!」

 

ガヴリール「ラフィエルは優しいな」

 

ラフィエル「どうして!? ガヴちゃんまで居なくなる必要ないじゃないですか!」

 

ガヴリール「決めたことなんだ」

 

ラフィエル「変える気は……ないんですか?」

 

ガヴリール「ああ」

 

ラフィエル「それでヴィーネさんは喜びませんよ」

 

ガヴリール「正直、これが悪魔に効く保証もないしな」

 

ラフィエル「じゃあどうして!」

 

ガヴリール「あいつはな……ヴィーネは、こんな自堕落になった私を更生しようと頑張ってくれたんだ」

 

ラフィエル「夏休みの宿題で集まったときに、ヴィーネさんが話していたことですね」

 

ガヴリール「ヴィーネが居てくれなかったら……多分、私もあのまま消えていたんだと思う」

 

ラフィエル「ヴィーネさんの想いを無駄にするんですか?」

 

ガヴリール「違うよラフィエル。今までの大恩を返したいだけさ」

 

ラフィエル「そんなのガヴリールさんの我儘です。身勝手です」

 

ガヴリール「ラフィエルには言ってなかったかな。私は怠惰でぐうたらで……自分勝手なんだよ」

 

ラフィエル「勝手すぎますよ」

 

ガヴリール「うん、分かってる」

 

ラフィエル「消えないって、居なくならないって約束きてくださいね」

 

ガヴリール「……」

 

ラフィエル「また四人、仲良く学校に行けるって」

 

ガヴリール「ごめん」

 

ラフィエル「ガヴちゃん!!」

 

ガヴリール「神よ。天使、ガヴリール=ホワイトは願います」

 

ラフィエル「なにをしてるんですか! ガヴちゃん! ガヴちゃん!!」

 

ガヴリール「――――神の、御心のままに」

 

ラフィエル「…………ガヴちゃんの、バカ」

 

 

 

 

 

 

【魔界】

 

ヴィーネ「あれ? ここは……」

 

ヴィーネ(真っ暗でなにも見えない。これが“あの世”なのかな)

 

???「ヴィネット=エイプリルよ」

 

ヴィーネ「この声は……学園長なの?」

 

学園長「ヴィネット=エイプリル。あなたは悪魔失格だと大会議により認められました」

 

ヴィーネ「……はい」

 

学園長「しかし、一人の天使があなたを蘇らせようと尽力を尽くしています」

 

ヴィーネ「それって……?」

 

学園長「ヴィネット=エイプリル。あなたが消えたことにより、一人の天使を消すことに成功しました」

 

ヴィーネ「ガヴに……ガヴリールになにかしたの!?」

 

学園長「それを決めたのは魔界ではありません。なんにせよ、天使を亡き者にしたヴィネット=エイプリル。あなたを悪魔失格とは言い切れません」

 

ヴィーネ(ガヴのバカ……大バカよ)

 

学園長「よって、再び人間界ヘ降り、立派な悪魔として研鑽を積むのです」

 

ヴィーネ「ありがとう……ございます」

 

ヴィーネ(生き返ってもガヴリールが居ないんじゃ。そんなの生き返る意味ないじゃない)

 

 

 

 

 

 

【天界】

 

ガヴリール「ん……ふぁーあ……なんだここは?」

 

ガヴリール(そうか、ここが堕天した天使たちの墓場ってやつか。闇が深すぎてなにも見えないけども)

 

???「ガヴリール=ホワイト、ですね?」

 

ガヴリール「うおっ! 眩しっ!」

 

???「あなたの脳に直接語りかけています。眩しくはならないはずですよ」

 

ガヴリール「なんだ学園長かよ。驚かせやがって」

 

学園長「なんだとは失礼ですね。これでも色々とがんば……いえ、なんでもありません」

 

ガヴリール「それでなんの用だよ。死者蘇生。それも悪魔を復活させようと願ったんだ。良くて堕天、悪ければ消滅だろ」

 

学園長「更に良くて、です」

 

ガヴリール「うん? なんの話だ」

 

学園長「ガヴリール=ホワイト。あなたは堕天使だと自称し、それを改心させようと悪魔に尽力をさせましたね」

 

ガヴリール「ああ、確かにヴィーネは私に色々と世話を焼いてくれたな」

 

学園長「悪魔、ヴィーネの優しさに漬け込み、天使を助けさせようと誘導した。その結果、彼女は消滅しました」

 

ガヴリール「なんだよ! それじゃあ……それじゃあ、全て……私のせいじゃないか」

 

学園長「悪魔を籠絡させ、天使然とさせました。そして、彼女の優しさを更に増幅させました。これは立派な天使としての行為」

 

ガヴリール(確かにヴィーネは天使の私でも眩しいくらいの笑顔を振りまいてたな)

 

ガヴリール「確かにヴィーネは天使の私でも眩しいくらいの笑顔を振りまいてたな」

 

学園長「聞こえていますよ?」

 

ガヴリール「うおっ!?」

 

学園長「あなたはまだまだ見習い天使。さあ、ガヴリール=ホワイト。下界へ降り、再び人間と溶け込み修行するのです」

 

ガヴリール「でも、ヴィーネが……」

 

学園長「神に願ったのでしょう? 全ては神の御心のままに、ですよ」

 

ガヴリール「!? ありがとう……ありがとうございます! 神様ありがとう!」

 

学園長「現金なものですね。さあ、目を閉じなさい」

 

ガヴリール「はい」

 

 

 

 

 

 

【下界 ヴィーネ宅】

 

ヴィーネ「本当に……戻ってこれたんだ」

 

ヴィーネ(でも、ガヴリールが居ないんじゃ意味ないじゃない)

 

ヴィーネ「ガヴリール……電話……繋がらないよね」 プルルルル

 

ガヴリール『はーい』

 

ヴィーネ「えぇ!? ガガガ、ガヴリール!?」

 

ガヴリール『あー、ちょっと待って』

 

ヴィーネ「ちょっと、ガブ! 今どこに居るのよ!」

 

ヴィーネ(今すぐにでも会いたい、ってのは流石に恥ずかしいわね)

 

ガヴリール『私ガヴリール、今ヴィーネの玄関に居るの』ピンポーン

 

ガチャ

 

ヴィーネ「ガ、ガブ! あんたってば無茶して……もう」

 

ガヴリール「ま、まぁアレだ! 終わり良ければ全て良しってな!」

 

ヴィーネ「もう……ただいま? で良いのかな」

 

ガヴリール「お互いにただいま! そして――」

 

ラフィエル「ガヴちゃーーん!!!」

 

ガヴリール「おわっ! ラフィエル! ちょ、抱きつくな胸が苦しいだろ!」

 

ラフィエル「もうお二人には二度と会えないかと思っていましたぁ……また、またこうして会えて嬉しいです!」

 

ガヴリール「ラフィエルには心配かけて悪かったな」

 

ヴィーネ「心配かけてごめんね、ラフィエル」

 

サターニャ「三人ともなにやってんのよ! 学校に遅刻するわよ!」

 

ガヴリール「お前なあ……少しくらいは空気を」

 

ヴィーネ「走るわよ、ガヴリール! 私の無遅刻記録がかかってるんだから!」

 

ラフィエル「欠席はしましたから表彰はされませんけどね」

 

サターニャ「ちょ、ちょっと……置いてかないでよ! 私まで遅刻しちゃうじゃない!」

 

ヴィーネ「サターニャ!」

 

サターニャ「な、なによ」

 

ヴィーネ(せーの!)

 

ガヴリール「ただいま!」

ヴィーネ「ただいま!」

 

サターニャ「うん? おかえ……り? 変な二人ねぇ」

 

ヴィーネ「良いから良いから!」

 

ガヴリール「知らないって、ある意味一番の幸せだよな」

 

ラフィエル「サターニャさんらしいですね」



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