貴方だけの歌 ~ラブライブ! School idol IF~   作:貫咲賢希

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\\\[前回のラブライブ]///

 練習の後、色明の奢りでおしゃれなカフェに来た一年生組。

从*廿_廿*从「そ、そう言えば名前で呼びなさいよ。私も名前で呼ぶから、花陽。凛」

(´*´_`*`)「真姫ちゃん!」(白ご飯6杯目)

ヴエエサッキモオナジノヲヤラレタ!!∑从廿_廿从>ω</スリスリ「真姫ちゃん!真姫ちゃん!真姫ちゃん!真姫ちゃん!真姫ちゃん!真姫ちゃん!真姫ちゃん!」

(´´_``)「うふふ、すっかり仲良しさんだね」(白ご飯8杯目)


11話・遭遇 アンノウンマン

「はい。14時予約された新田様ですね。お待ちしておりました。23番です」

「どうも」

 

 色明は店員から番号札を受け取ると、慣れた様子で先に進み、その後ろを海未、真姫、凛が続いた。

 辿り着くと、そこは様々な機材が設置されてた部屋。

 凛は「ふぇ~」と声を上げながら物珍しそうに辺りを見渡す。

 

「凛、変なとこ触らないでよ。簡単に壊れはしないと思うけど、機械ってデリケートなんだからね」

「流石の凛も怖いから触らないよ。ところで真姫ちゃんはスタジオ借りたことあるの?」

「私もわざわざスタジオ借りることはなかったわね。音を取るだけなら家でもできるし」

 

 ついこの前でただのクラスメートだった二人だが、既に名前を呼び合うくらい親しんでいた。

 海未は仲が睦ましい後輩たちに微笑みを浮かべつつ、自分も周りを見渡す。

 彼女たちは色明に連れられて、音楽スタジオに訪れていた。

 理由は曲をレコーディングする際、本格的な機材でやれば音質は段違いで良くなるという、色明の意見を採用した為だ。

 プロシンガーである彼は音に拘っており、少しでも品質を高めたいとのこと。

 これには真姫がすぐ賛同し、音楽担当の二人が言うならということでμ'sの曲は機材が揃ったスタジオで撮ることにした。

 無論、施設を借りるためには費用が掛かる。

 言い出した色明が既に稼いでいたり、真姫の実家が裕福とはいえ頼ってばかりはいけない。かかった金額は全員で分担して、最低限の利用を心がけることにした。

 今回は実際に収録するのではなく、色明がμ'sの一部に機器の使い方や注意事故の説明するためにやって来たのである。

 

「かなり広いですね。部屋が幾つもかあるようですし。ここでならダンスは無理でも、防音されるので歌の練習はできそうです」

「元々、そういう場所だ」

 

 海未の言葉を聞き、色明が説明し始めた。

 

「収録している間、別スペースで他の奴が練習。あるいは練習中、完成度が高くなったと感じたら即座に収録に取り掛かる。ここはそういう場所だ」

「なるほど。会員専用のプロ御用達だけはありますね」

「そこまで大げさじゃないがな。プロの連中が多用してるのは事実だ」

 

 色明が招いた音楽スタジオは紹介された会員限定の店である。

 彼のようにプロの世界で活躍している人間が自練習を行ったり、プロダクションに所属済みでデビュー前のアーティストが音楽を磨く場所なのだ。

 そのためプライバシー管理は徹底されており、利用中するアーティストのファンがやってきても門前払いされる。

 紹介であれば、海未たちのような人間も利用することは可能だが、プロのアーティストが多くいるため、ある程度のマナーは守らなければならない。

 

「念のためにもう一度言っておくが、アーティストを見かけてもサインを強請ったり、邪魔をしないようにな。特にアイドルのことで興奮しそうな小泉には再度注意しとけよ」

『わかりました』

 

 色明の言葉にしっかりと頷く一年生二人。

 なお、不安に思われた残りの一年生の花陽がこの場にいないのは、プロアイドルに遭遇しそうな場所から彼女を遠ざけた。

 わけではなく、同じくこの場にいないことりの手伝い。

 既にμ'sは新曲を一つ完成させている。

 色明から作詞と作曲は毎日やるようにと言われた海未と真姫は、互いに意見を交わしながら一つの曲を生み出した。

 ちなみに、作曲作業を通して、真姫とは少し仲良くなれたと海未は密かに思っている。密かなのは、言ってしまえば照れ隠しで否定しそうだからだ。

 曲が完成させれば、次は衣装。

 歌とダンスの練習の傍ら、衣装担当であることりは奮闘していた。

 次の衣装は前よりも凝っているらしく、コンセプトも全員同じではないらしい。

 だが、メンバーが二倍に増えたので、仕事量は以前よりも増大した。

 そこで手先が器用な花陽がことりの手伝いをすることになる。ことりほど手芸には長けてないが、言われたとおり針に糸を通すことはできるいようだ。

 よって、本日花陽はことりの家で彼女の手伝いをしている。

 ちなみにμ'sのリーダーである穂乃果は実家の店番。是非もないね。

 

「凛。改めて聞くのも悪いと思ってるけど、ちゃんと覚えられる? 機械の扱いが得意そうには見えないんだけど……」

「大丈夫にゃ、真姫ちゃん。ゲームの設置とかパソコンの設置の自分でしたことあるし」

「今の時代は簡単に接続できるけど」

「むぅ……。そんなこと言うんだったら、どっちが早く覚えるか勝負しようよ」

「ふーん。凛が知力で私に勝負?」

「凛を見くびっては困るよ。凛は自分が興味あることならすぐ覚えるにゃ!」

「分かったわ。なら、最後にテストして貰って、点差が低いほうが高いほうにジュースを奢るのはどう?」

「その勝負乗ったにゃ!」

「ふふ。勝負はいいですけど、ちゃんと三人で覚えましょうね。二度手間は新田さんにもご迷惑ですから」

 

 本当に仲良くなったなと感慨深い気持ちの中、海未がが二人に軽く注意する。

 すると真姫と凛がピクリと反応して、二人同時に海未をまじまじと見つめてきた。

 

「え? な、なんですか?」

 

 突然凝視されて海未は戸惑う。

 凛と真姫は何処となく哀れんだ顔をしながら、口を開いた。

 

「言いにくいんですけど、私は凛より海未先輩のほうが心配ですね」

「は?」

「凛も、海未先輩って機械苦手そうと思ってた」

「はぁ!?」

 

 予想外の言葉に海未は驚愕する。

 どうやた後輩たちに機械音痴だと思われていたようだ。

 

「いや、別に悪い意味ではないですよ。ただ、先輩の家って古いですから、最新の機械とか触れる機会がなさそうだなって」

「た、確かに私の家は古くて、最新の機械もありませんけど、だからって……」

「ゲームとかするとき、戸惑いながら変なとこ押してそうにゃ」

「へ、変な言いがかりはよしてください!(←身に覚えがかなりある)」

「パソコンで軽いエラーが出ただけなのに、壊したと思ってかなり動揺しそう」

「そ、そんなことで動揺するわけないじゃないですか!(←めっちゃ動揺した)」

「ケータイなんかもスマホが使えないからガラケー使ってそうにゃ」

「ガラケーの何が悪いのですか!!(←愛用してます)」

 

 中学の入学祝で親から買ってもらったガラケーを使う海未だが、それは物を大事にしてるからであり、スマホが扱いきれないからガラケーにしていると思われるのは心外だった。

 なお、以前にことりからスマートフォンを借りたとき、謝って操作して持ち主に謝った経験があるのは内緒である。

 

「あっ、本当にガラケーだったんですね。そういえば、まだ海未先輩とは連絡先交換してないし、お願いできます?」

「凛も!」

「ええ、もちろんいいですよ。って、誤魔化されてませんよ!? 貴方たちが私を機械音痴だと遠回しに言ったのは、誤魔化されてないですからねっ!」

『いえ、誤魔化すつもりはないです。事実みたいですし』

「少しは誤魔化してくださいよ! 新田さんも黙ってないで何か言ってください!」

「園田、無理に覚える必要ないからな」

「貴方も思ってたのですか!? うぅ、そんな優しさ、いらないですっ!!!」

 

 色明までに機械音痴だと思われていた海未はショックで叫んでしまった。

 なお、ちゃんと防音してるので隣近所に迷惑はかかってないので安心してほしい。

 それはともかく、まるで近頃の機械も扱えない老人のような扱い。確かに得意ではないが、酷い扱いを受ける云われないと彼女は憤慨した。

 屈辱を受けた海未は、半泣きの眼でぎろりと三人を睨む。

 

「いいでしょう。先程真姫と凛が言っていた勝負に私も混ぜなさい!」

『え、それは──』

「ま・ぜ・な・さ・い! 一番点数が低かった人間が全員分のジュースを奢る! それで、いいですね!?」

『はぁ……』

「そして、新田さん! 貴方には私が一番だった場合、個別で奢って貰いますからね!」

「え、なんで?」

「貴方も私を侮辱したからです! そのつもりはなかったのでしょうけど、私がされたといったらされたんです!」

「うん、まぁ。いいけどさ」

「では、早速ご教示をお願いしますっ!」

「ヒソヒソ……(もっと大人しい人だと思ってたけど、熱くなりやすいんだね)」

「ヒソヒソ……(ご実家で武道も習ってると聞いたし、それが関係してるんじゃない?)」

「そこの二人! 私語は慎むように! 覚えるというなら真面目にしなさい!」

『……はい(負けたくないなら自分だけ先に聞けばいいのに、真面目だなぁ)』

 

 ▼

 

「うっ、うっ…………」

 

 ガシャコンと、落ちてきたトマトジュースを取り出し、次はコーヒーを押す海未。

 

 ──結局、勉強の後でした勝負の結果は、海未の敗北だった。

 

 前半のテスト。用語や知識点、注意点などは完全に覚えていた海未。

 逆に凛などは所々抜けており、これは勝ったと思った矢先である。

 次の操作面で海未はやらかしたのだ。

 見当違いの場所を押したり、メモリ上げすぎたりし、その失敗が後を祟ってミスを重ねてしまった。

 三人の予想通り、海未は機械の扱いが苦手なのである。

 といっても、少しだけだ。

 説明書を読みながらや時間をかける。あるいは慣れたものなら普通に使えるが、手に触れなれていないものは戸惑い気味で操作するのだ。

 原因は、これは壊れないでしょうか? という心配性。

 古風な家に生まれたゆえ、本人的に近未来的なものや、最新鋭の機械に少々畏縮してしまうわけだ。それが海未の機械苦手の起因であり、今回はそれが酷い結果に転んだのだ。

 逆に凛は多少操作ミスはあれど、前半の部分を巻き返すほど正解を叩き出す。

 

 結果、僅差で海未が最下位。一位は無論、真姫である。

 

 だが、誰もそれで海未を機械音痴だと馬鹿にはしなかった。

 むしろ、自分たちが彼女を馬鹿にしたことを反省し、お詫びでジュースを奢ろうとした。

 海未には、その気遣いが苦しかった。

 負けは負けである。傷口に塩を塗られた方が辛かっただろうが、あれだけ騒いで、自分から混じった勝負に負けてしまったことが恥かしかった。

 敗北を認めた海未は申し訳なさそうな三人(勝負をしたのは真姫と凛だが、自分が一位になったら奢れと言ったので色明も)から飲みものを聞き出し、ノロノロとスタジオを出たのだった。

 

「はぁ…………」

 

 海未は四人分の飲み物を抱えながら、重い溜息を零す。

 せっかく入ってきくれた後輩に、随分と情けない姿を見せてしまった。

 おまけに気を使われてしまう始末。

 もはや、先輩としての威厳はなくなっただろう。

 

 ──更には色明にも恥かしい姿を見せてしまった。

 

 そう考えると、海未の気分が自分でも分からないほど落ちる。

 どんな顔して、スタジオに戻ればいいのか。

 悩みながら考えていると、反対側からヘッドフォンをつけたまま、手に持った楽譜に視線を落としている青年がやって来た。

 ──余所見とは危ないですね。

 と、思いつつも集中してるのだろうと気遣い、海未は避けて通ろうする。

 

「ん? なぁ、おい!」

「…………」

「そこのジュース抱えてるお前だよ!」

「?」

 

 突然、呼び止められて海未は振り返る。

 見ると、楽譜を見て歩いていた青年が、今は立ち止まってこちらを睨んでいた。

 

「てめぇ、見かけない顔だな。何処の事務所のもんだ?」

 

 いきなりなんなのだ、この失礼な男は?

 それが海未の第一印象である。

 アイドルをやっていそうな顔立ちの良さと細身のスタイル。街中で歩いていればさぞ人気だろう。だが、海未には魅力的に映らない。身近な異性と比較すると、青年は誠実さに欠ける。

 彼の乱暴な物言いに海未は腹を立てたが、ここは会員専用のスタジオだと思い出した。

 通いなれた者ならば、見知らぬ人間を不審に思っても仕方ないかもしれない。

 そうやって割り切り、堪えた海未は青年の質問に答えることにした。

 

「事務所には所属してません」

「はぁ? なんだ、アマかよ。誰の紹介でこのスタジオに来たんだ?」

 

 馬鹿にした物言いの後に、更なる質問。

 明らかに俺様タイプの青年である。

 ガンガンいく姿勢に気に入る女性もいるだろうが、少なくとも礼儀を重んじる乙女の海未にはマイナス印象しかない。

 

「………新田色明さんからですよ。今日は彼と一緒に来ました。もう、いいですか?」

 

 さっさとこの青年から立ち去りたいので、誤魔化ずに答える。

 すると、青年は目を見開いて驚いた。

 

「あん!? 新田さんの連れかよ! なんだよ、あの人。まさか、スタジオに女を連れ込んでるのか!?」

「────」

 

 青年が何を勘違いしているのか、海未はすぐ理解した。

 しかし、彼女がが訂正するより早く、青年は捲くし立てる。

 

 

「なんだよ。音楽に対して真摯だと尊敬してけどさ、スタジオに女連れ込むなんてがっかりだぜ。見損なったな」

「さっきからなんなのですか、貴方はっ!」

「!?」

 

 勝手な想像で色明が貶されたことにより、海未の我慢が限界を超えた。

 

「新田さんは私たちにスタジオの使い方を教えに来てくれただけです! 貴方のお子様みたいな妄想で、彼を愚弄しないでください!」

「お、お子様!?」

 

 自分が勘違いしてしまったことに気づいた青年だったが、素直でないため矮小な意地を張り、言い返しにもならない言葉を吐き捨てる。

 

「そもそも、ここは会員限定とはいえ、見知らぬ人を見かけても、あのように失礼な尋ね方は言語道断です! 謝ってくださいっ!」

「くっ!」

「うん、謝ったほうがいいと思うよ」

 

 青年が苦渋で表情を歪ませると、別の場所から爽やかな声が聞こえた。

 海未が目を向けると、騒ぎを聞いてやってたのか金髪の男が二人に近づいて来る。

 

「ひ、ヒロさん!?」

 

 青年はやってきた男に面識があったのか、ばつが悪そうな顔で驚いた。

 

冬馬(とうま)くん。途中から見てたけど、今のは全部、君が悪いよ。ほら、彼女に謝って」

「くっ…………。悪かったよ」

「…………」

 

 知人にも諭されて観念した青年──冬馬は顔を向けて謝罪する。

 ただ、それだけではまだ気がすまない海未は、彼をじっと睨んだままだ。

 そんな彼女へとヒロと呼ばれた金髪がやんわりと話しかける。

 

「君もこれで許してあげて。これ以上騒ぐと俺以外にも目立っちゃうだろうしさ」

「…………わかりました」

 

 冬馬という青年にはまだ言い足りなかったが、衆目に晒されることも望んでいない。

 第三者から言われたこともあり、海未は渋々引き下がる。

 

「ほら、君はもう行って。あとのフォローは俺がしとくから」

「わかりました。なんか、その、すみません…………」

「この借りは、うちとまたセッションしてくれたらいいさ」

「…………はい」

 

 ヒロに頭を下げた冬馬は睨んだままの海未を見た後、そそくさと立ち去った。

 すると、残ったヒロが海未に人懐っこい笑みを向ける。 

 

「ごめんね。彼、最近イライラしてたんだ。この時期って、そんなにやる気もないのに音楽を始めたりする人たちとか、彼みたいなアイドル見たさに入会したり忍び込んだりする人が増えてるんだよ。この前も、ここで言い寄られたみたいだし」

「はぁ……」

「まぁ、だからと言って、君につかかるのはダサいけどね。ははははは」

「…………」

「ははは、ははは……はぁ。ええと、新田くんの連れなんだっけ? 彼、噂では女子高に通ってる聞いたけど、まさかクラスメートだったり?」

「そうです」

 

 誤魔化す必要はないので正直に答え、在らぬ誤解を生み出さないため海未は言葉を続ける。

 

「ですが、それは特別な事情のため。そして、あの人は不埒なことは何もしてませんよ」

「ああ、別に変な疑いなんて持ってないさ。俺のとこのボーカルなんて、バンドと女子学校の教師兼業だしさ」

「それはまた、……変わったお話ですね。その……先程はありがとうございました」

 

 会話している内に落ち着きを取り戻した海未は、礼を言った。

 

「貴方が間に入ってくれなかったら、まだ言い争いが続いてたと思います」

「いや、あれはもう君が言い負かす流れだったけどね。どっちかと言うと、俺は彼を助けた側かな」

「それでも、ありがとうございます。貴方のお陰で落ち着くことができました」

 

 彼が何気ない会話をして宥めてなければ、海未はイライラしたままスタジオに戻っていただろう。

 必ず、周りに心配される。それを回避できたので、海未は感謝の言葉を送った。

 

「君は────いい子だね」

 

 一瞬驚いた後、ヒロはにっこりと笑った。

 間近で見た海未は、感心する。

 なるほど、改めてみれば美形の部類だ。バンドをしているようだが、ルックスだけでも人気があるだろう。明るく柔和な姿勢で人の良さも理解できた。

 

「さて、もう少しと君とお話したくなったけど、王子様が来たみたいだし退散するよ」

「王子様?」

 

 突然、訳の分からない言葉に海未は首を傾げたが、すぐ聞き慣れた声が耳に届いた。

 

「園田」

「あっ、新田さん」

 

 振り向くと、色明がこちらにやって来た。

 中々帰ってこない海未を心配して迎えに来たのである。

 

「誰かと話していたのか?」

「あれ?」

 

 視線を戻すと、既にヒロは背中を向けて歩いており、一度軽く手を振ってからそのまま去っていった。

 

「何かあったのか?」

「ちょっとしたことです。瑣末なことなので気にしないでください」

 

 再び色明に振り向き、何でもないようにと説明する海未。

 

「そうか………。なら、戻るぞ。二人も心配している」

 

 海未が何でもなさそう顔したため、色明はそれ以上問い詰めなかった。

 そのまま二人は横並びで歩き、借りたスタジオに戻る。

 広い場所とはいえ、数十秒もあるけば目的地に着いた。

 

「あのさ」

 

 しかし、あと数歩で扉前のところで、色明が海未に声を掛ける。

 

「?」

「俺は楽器の演奏、そこまで得意でもない。でもできないよりはマシだ」

 

 いきなりの自虐にきょとんとする海未だったが、続けた色明の言葉で意図を察した。

 

「だがら、あれだけ使い方覚えていれば十分かと思うぞ」

「…………。それは、先程のことを励ましてるつもりですか?」

「一応」

「下手ですね」

 

 くすりと海未が笑う。色明自身も自覚あったのか、眉を寄せただけで何も言い返す、口を尖らせるだけだった。

 

「気を使わなくて大丈夫ですよ。恥かしい姿を見せたのは心狂いいですが、過ぎたことを引きずっていては前に進めませんからね」

「なるほど……園田が落ち込んでいないならこの話は止めよう。からかうネタで掘り返すかもしれないけどな」

「意地悪ですね。その場合は、倍返しするので覚悟してください」

「肝に銘じるよ」

 

 苦笑を浮かべる色明を見て、海未も安心する。

 醜態を晒したことで、色明に気を使わせたことに引け目を感じていたが、その心配はもうしなくてよさそうだ。

 今回のことを話の種にすると宣言したのはどうかと思うが、半分冗談だと思って今は目を瞑ろう。

 

 ……、彼と話すのは何処か安心しますね。

 

 立て続けに見知らぬ異性とやり取りで疲れたのか、ふっと海未はそのように想う。

 そもそも、色明との交友も一ヶ月ほどしか経っていない。

 どちらかといえば人見知りである自分が、異性と話していて心を穏やかにしているのが不思議だった。

 

「ほら、早く中に入るぞ。あまりの時間で実際収録するんだからな」

「わかりました」

 

 疑問は堰かされたことで、一旦忘れる。

 

 彼女が同じ疑問を再び抱くのは、もう少し先の話だ。

 

 

 




 長くなったので話を分割。続きは明日です。
 
 そして、『アイドルマスター』からJupiterの天ヶ瀬冬馬と『アイカツ!』からモアザントゥルーのヒロ登場。

 今度SideMがアニメ化する冬馬はともかくヒロって誰やねんというかた多数かと思います。ぶっちゃけモブですし。フォトカツに出たけど。

 でも、ヒロの声優である岸尾だいすけさんは海未ちゃんの声優であるみもりんと違うアニメで共演してたんですよ。
 みもりん好きならご存知かと思いますが『神様はじめました』という少女漫画のアニメで、みもりんはヒロイン。岸尾だいすけさんはそのヒロインを気にかける男キャラの一人です。
 もう、狙ってないけど立ち位置似てて一人笑いました。

 冬馬くんは悪者扱いしてごめんよ。でも、アニメで春香さんや真くんに難癖つけてたよね。刷り込みといえ。だから、扱い的には妥当かと。
 そもそも出番すら、かなり話を続けないと再登場しなさそうです。

 ではでは。また。
 
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