貴方だけの歌 ~ラブライブ! School idol IF~   作:貫咲賢希

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\\\[前回のラブライブ]///

リ`・ヮ・)⊃「えいえい!」

/cVσ_VσV ガシガシ

リ`・ヮ・)「怒った?」

/cVσ_VσV「怒りました」


21話:二人のペールタイム

「うわあああああ!」

 

「・・・・・・凛ちゃん。神社なんだから静かにしないと駄目だよ」

 

「ごめん、かよちん。でもでも、これ見てよ!」

 

 新たなメンバー絢瀬絵里を加えたμ'sたちは、早朝練習のため地元の神社に来ていた。

 神社での朝練は主に体力作り。境内であるため、音を出す練習は一切せず、階段の上り下りや筋力トレーニングを行っている。

 だが、彼女たちは全員集まっておらず、まだ練習も行っていない。

 残りの穂乃果とことりが来るまで、準備運動も済ました凛が暇を持て余し、共用のノートパソコンを覗くと、驚きの声を上げたわけだ。

 そんな彼女に促され、花陽もパソコンの画面を覗く。

 開いていたスクールアイドルの公式ページには、このように映し出されていた。

 

μ's(ミューズ)

↑UP! RANK 060 

[Congratulations!ヾ(´∀`)ノ゛]

 

「おおぉ。また、上がってるね!」

 

 凛ほど大きな声はださなかったが、花陽も映し出された情報に驚き、そして喜ぶ。

 

「まったく、何度も飽きずに見れるわね。ここに来る前にも見たでしょう」

 

 興奮している二人に目を向けながら、真姫は興味なさそうに髪を弄んでいた。

 なんてことはない。凛や花陽とお話したいのに、二人ともパソコンに夢中で拗ねているだけだ。

 

「新曲を上げてからドンドン順位が上がってるにゃ」

 

「ほらほら、真姫ちゃん。これプロが作った曲じゃないんですか? て言われてるよ」

 

「失礼ね。正真正銘、この私が作ったに決まってるじゃない」

 

 言葉では嫌味が効いてるもの、微妙に口端は緩んでおり、満更でもなさそうだ

 

 μ'sは新曲を上げて以来、スクールアイドル内での順位を瞬く間に伸ばしている。

 

 絵里の介入により、彼女の歌を入れるため発表が予定より遅れたが、その分想定以上の成果を得た。

 ほんの少し前までは三桁だった順位はすぐに二桁になり、今でも日毎に地位を上げている。

 この飛躍は当人たちが一番驚いているが、上昇自体は当然の結果だ。

 そもそも、三人だったときと比べて、七人になって上げた動画は全てのレベルが違う。

 歌を色明や真姫によって磨かれ、踊りも絵里により鍛え上げられた。時間があった分、ことりが作った衣装もクオリティが上がっており、演出も前より派手。目立たないわけがない。

 そして、この急上昇は新曲の力だけではなかった。

 

「絵里先輩が加わったことで女性ファンがかなり増えましたね」

 

 手持ち無沙汰にしていた海未もパソコンを覗き、詳細な数字を確認する。

 他のメンバーも粒ぞろいだか、絵里は異国の血が混ざってるあって毛色が違う。

 前々から解っていたことだが、彼女はそこにいるだけで人を惹きつけるのだ。異性が魅了されるのは無論のこと。同姓も嫉妬するよりも先に憧れの目で彼女に魅入る。コメントでも新しく入った絵里のコメントが一番多い。

 

「流石ですね。背も高いし、足も長いですもんね。まさに女の子の理想って感じです」

 

 海未の言葉に花陽が頷き、自然と周囲の視線が絵里に集まる。

 改めて見ても、メリハリがある体型。締まっているとこは締まっており、出るとこは出いる。

 花陽の言うように、乙女にとっての理想な体だった。

 

「うん! 何よりおっぱいが大きいにゃあ!」

 

「ちょっと! やめてよ!」

 

 凛の無遠慮な言葉に絵里は胸を腕て隠した。

 腕に抱えられることで逆に豊満な乳房が強調される。思わず海未はなだらかな自分の胸と比べて、人知れず溜息を零した。

 絵里は顔を真っ赤にしながら、不満そうな顔でちらりとある者を見る。

 

「彼がいるんだし、そういう話題はちょっと」

 

「別に意識してませんよ」

 

 毎度の事ながら、少女たちに紛れる唯一の男性、色明は特に気にした様子がない。

 彼も絵里は魅力的な女性だと思うが、だからと言って不躾な態度は一切見せなかった。

 元々、姉の教育や、芸能活動で麗しい異性に耐性がある。そうでなければ、見本生という特殊な立場を任せられないだろう。

 

「けど、アイドルやるんならそれぐらい軽く流さなければ駄目すよ」

 

「そうなの?」

 

「他のメンバーにもいえることだが、注目が上がった分、色んな人間の目に止まる。エロイ目で見る野郎なんざ数えるのが馬鹿馬鹿しいほど増えるでしょうね」

 

 絵里が途端嫌そうな顔を浮かべ、他の少女たちも顔を曇らせる。

 アイドルなのでそういう目で見られることは承知の上だが、不快であることには変わらない。

 そんな彼女たちに色明は現実を語る。

 

「どんな奴でも嫌な顔せず、涼しい顔で流す。それが世渡りってもんですよ。一々目くじら立てた方がやり辛い。絵里先輩だって覚えがあるでしょう?」

 

「返す言葉もないわね」

 

 会長である立場なので、人に注意することは当然ある。

 だが、相手の顔色を全く窺わずに我を通せば、他から反感を得るのだ。

 よって、絶対に通さなければならない筋以外は、ある程度受け流すこそ処世術の基本である。

 

「特にアイドルは人気があってこそ。一部の馬鹿共のせいで自分まで泥に飛び込むのは、それこそ馬鹿馬鹿しい」

 

「つまり君は嫌な目で見られても我慢しろと言いたいの?」

 

「なわけねぇでしょう」

 

 絵里の言葉に色明は一蹴した。

 その反応を見て絵里は一瞬驚きつつも、すぐ嬉しそうに顔を緩める。

 

「あら? さっきの言葉とは違うわね」

 

「何でも許せってわけじゃないすよ。流せないほど我慢するくらいなら、相応の制裁が必要です」

 

「例えば?」

 

「当然、通報するか近くの人間に助けを求める。世の中、女性に格好をつけたいフェニミストだらけですからね。綺麗な女性を救ってヒーロー気取りたい男は幾らでもいるさ」

 

「へぇ……。なら、君もその一人かしら?」

 

「か弱い女の子を見過ごすようなら、俺はとっくに姉か武道を教えてくれた師匠に制裁されてます」

 

 実際、彼は街中で自分のファンが絡まれたら助けたし、海未の窮地を救ったこともある。

 女を守れる男という点は、合格といえるだろう。

 色明が其処まで言うと、絵里は安心したように微笑む。

 

 

「なら、私たちがいつか握手会でもするときは、君にボディーガードでもやってもらおうかしら。アイドルがそういうイベントするとき、そういう人は必ずいるものでしょ?」

 

「ご使命とあれば何なりと。お姫様たちを守るのは騎士の務めです」

 

「хорошо ! 頼りにしてるわ、色明」

 

 色明の芝居がかった言葉に、絵里は満足そうな笑みを見せる。

 そうやって二人が会話している間に一年生三人組が集まり、なにやらヒソヒソと会話していた。

 

「先輩たち、いつの間にか仲が良くなってるね」

 

「遅れて入った絵里先輩のために新田先輩が歌の個人レッスンしてるから、それでじゃない?」

 

 素材がいいからと言っても、絵里がμ'sに最近介入したの事実である。

 ダンステクニックはともかく、歌唱力に関しては色明や真姫によって鍛え上げられた他のメンバーたちに劣っていた。

 そのため、絵里が他のメンバー同等になるまでの間、色明が彼女の個人指導しているのだ。

 

「しかし、美男美女だから絵になるにゃあ」

 

 ふと、凛がそんなことを呟いた。

 彼女の言葉どおり、二人のツーショットは見栄えが良い。

 前述どおり、絵里は人目を惹きつける美貌も持っており、色明もルックスが高い。宛ら雑誌の一ページを飾っているか、あるいはドラマのワンシーンのような見栄えの良さだ。

 

「こうやって二人を見ると、噂されるのも仕方ないね」

 

『噂?』

 

 聞き覚えのない言葉に凛と真姫が疑問符を浮かべたので花陽は教える。

 

「真姫ちゃんの言ったように、新田先輩が絵里先輩に歌の練習をしてるけど絵里先輩熱心だから、空いた時間はよく新田先輩を尋ねてるみたい。それで二人を見かける子が増えてるんだよね。

 更に最近、絵里先輩の態度が前よりも柔らかくなったから、二人は付き合ってるのではないかと噂されてるんだよ」

 

「初耳だわ」

 

「凛も。かよちん、そういう話相変わらず好きだにゃあ」

 

 なお、絵里の態度が柔らかくなったのは悩みを吹っ切り、スクールアイドルを楽しんでるからだ。

 以前の彼女は鬼気迫るものがあり、近寄りがたいイメージがあったが、それが払拭され、自ずと笑顔が増えている。

 最近雰囲気が変わった少女の傍に異性の影があれば、そのような憶測が生まれるのは自然だ。

 そもそも、絵里自身元々目立つし、唯一男子生徒の色明も当然目立つ。

 更には生徒総数が少ないだけあって、疑惑の流布は早く広がる。田舎で噂が流れるのが早いと同じ原理だ。むしろ、凛と真姫が知らなかったほうが珍しいくらいである。

 

 当然、一年生の会話を傍聞きしている海未もその噂は知っていた。

 

 全ては妄想の産物だと思っている海未だが、親しげな色明と絵里を見ると心の中がもやもやした。

 

(いつの間にか、お互いに名前で呼び合ってますね)

 

 絵里の呼称に関しては、全員が会長から『絵里先輩』に変わったので、色明が合わせたからだ。

 色明を名前で呼び捨てしているのも、彼女はμ'sのメンバーを名前で呼び始めたので、それに合わしただけである。

 なお、色明は絵里がμ'sを遠ざけていたとき、責任放棄と不満を抱いてたようだが、既にそれは彼女が介入時に謝罪したことで解消されていた。 

 あとは二人きりの歌唱特訓で親睦を深めたわけだ。二人とも歩み寄る精神を持ち合わせているため、蟠りをなくのは必然である。

 ただし、あくまで友人レベルまでであり、噂にされるような男女関係はない。

 そのはずだと思いつつ、互いに気安そうにしている二人を見ると、海未は妙に落ち着かなかった。

 未だ色恋に疎い彼女は、ただ黙って眺めることしかできない。

 

「おはよう、みんな! お待たせ!」

 

「おはよう~♪」

 

 丁度そこで穂乃果がことりと共に走ってやってきて、色明と絵里の会話も中断された。

 そこにほっとししつ、海未は幼馴染二人を出迎える。

 

「おはようございます、穂乃果、ことり」

 

「うん! 海未ちゃんおはよう!」

 

「おはよう♪」

 

「すみませんね、ことり。穂乃果の迎えを貴女だけに任せて」

 

「全然いいよ。練習メニューを考えてくれてる海未ちゃんまで遅刻したら、みんな困っちゃうもんね」

 

「待って待って、二人とも。私、少し寝過ごしたけど遅刻してないよ、ほら、時間時間」

 

 そうやって携帯の時間を見せてくれる穂乃果へ、海未は呆れたような溜息を見せた。

 

「滅茶苦茶ギリギリじゃないですか。もう、いいですから準備運動して早速練習しますよ」

 

「いや、その前に少し待って」

 

「なんですか? 走ってきたから少し休みたいのですか?」

 

「それもあるんだけど、みんなに話したいことがあって」

 

「話したいこと?」

 

 みんなという言葉で全員の意識が穂乃果に集中する。

 余程の吉報なのか彼女は嬉々とした笑顔であり、全員に聞こえるよう大きな声で叫ぶ。

 

「みんな、聞いて!」

 

「穂乃果。神社なんですから、もう少し静かに」

 

「ご、ごめん」

 

 海未に注意された穂乃果は、出足を挫かれながらも笑顔を再び作り、今度は近所迷惑にならない程度の声で言った。

 

「みんな! 実は次の日曜日、ライブすることが決まりました!」

 

『ライブ?』

 

「そう! ライブだよ! 実はうちの卸先の人が今度の日曜日にミニライブしないか誘ってくれたの」

 

「随分と急な話ね……」

 

 いきなりの報告に絵里が呆然としている。他のメンバーも似たような反応だった。

 

「場所はデパートの屋上なんだけど、ヒーローショーする前の時間に歌ってくれないかって」

 

 穂乃果の家は老舗の和菓子屋である。作った菓子は自分たちで売る他にも、別の小売店で委託販売も行っているのだ。

 今回はその取引先から声が掛かった次第である。

 

「なるほど、本命はそのヒーローショーで、お前たちは前座。そしてヒーローショー前の客寄せか」

 

「まさにそうなんだけどね。でも、わざわざ私たちを選んでくれたのは変わらないよ」

 

 察した色明の言葉を否定せず、穂乃果はやる気に満ちた表情を崩さない。

 

「折角、人前で歌える機会を貰えたんだし、チャンスだと思ってすぐOKしたんだ。で、どうかな?」

 

「どうかなって。もう穂乃果が了承したなら、やるしかないじゃないですか……」

 

 また海未は呆れたように溜息をするが、今度はすぐに笑顔を浮かべた。

 

「穂乃果の言うとおり、人前で歌える機会を頂けたのは光栄です。謹んでお受けしましょう」

 

「そうね。自分たちでライブしたいと思ったら色々と手間だし、ここはご好意に甘えましょう」

 

 海未に続き、絵里がそういうと突然のライブに戸惑っていた他のメンバーたちも徐々にやる気が出始めた。

 

「人前で歌うのはファーストライブ以来だけど、ことりも頑張ります!」

 

「そ、そうですよね。撮影じゃないなくてライブなんだがらお客さんがいますよね。うう、どうしよう」

 

「花陽、始まる前から緊張しないの。決まったことなんだから、どーんと構えてなさい」

 

「真姫ちゃんは緊張しないの」

 

「別に。人前で歌うことは初めてでも、音楽を披露することは初めてじゃないわ」

 

「さすが、真姫ちゃん。心強い!」

 

「デパートの屋上かぁ。新田先輩のお姉さんたちが歌ったような場所かな?」

 

「凛ちゃんの期待を裏切るようで悪いけど、あそこまで凄い場所じゃないよ」

 

 凛の言葉を聞いた穂乃果は思わず苦笑を浮かべる。

 色明の姉、新田美波とアナスタシアらが歌ったイベント会場は、殆どがプロが主催する本格的な舞台だ。比べること事態、おこがましい。

 

「そうだ! なら、今日の放課後は皆でライブをするデパートの屋上に行ってみようよ。下見と挨拶も兼ねてさ」

 

「そうですね。穂乃果のいうとおり、挨拶と歌う場所の確認は必要です。挨拶も礼儀として当然ですが、当日行って不足の事態があってもいいように」

 

 海未の言葉の後で反対意見は出なく、放課後の予定が決まった。

 

「よーし、今日の放課後は皆でお出かけだ──!」

 

「なら、その分、朝は放課後をする分の練習が必要ですね。いつもより三倍のメニューをしましょう」

 

「────」

 

「ほら、やりますよ穂乃果。早くしないと学校に遅れます」

 

「はい……」

 

 遅れてでもやる気なのかとは言わず、朝からテンションMAXだった穂乃果はここでテンションDOWN。

 彼女は気落ちした心でいつもの三倍メニューをした後、疲れて授業中に寝てしまい、何度も怒られるのであった。

 

 ▼

 

 穂乃果が通算七回授業中に叱咤された学業が終わると、μ'sたちは彼女の案内でライブを行うデパートに向かった。

 その場所は秋葉原から駅数個分のとこにあるが、そこまで遠出でもない。

 なお、この場に色明はいない。いつも通り、彼は仕事である。

 しかし、ライブ当日は来れるようなので、後日、自分だけで現地確認をするようだ。

 μ's一行は彼女らを誘ってくれたイベント責任者に挨拶すると、その足で自分たちがライブする屋上に向かった。

 

「おお! 小さい遊園地があるにゃあ」

 

 幾つかの売店に飲食スペースのテラス。一角には幼い子供用の遊具が沢山あり、反対側にはライブを行うであろうイベントステージ。典型的なデパートの屋上といえる場所だ。

 

「懐かしいにゃ。昔はよくあの動く動物で遊んだよね」

 

「そうだね。すぐにお金がなくなるから勿体無いってお母さんに怒られたっけ」

 

 硬貨を入れて動く、小さな乗り物を眺めながら幼い頃の思い出に花を咲かせる凛と花陽。

 その傍では海未は辺りを見渡していた。

 

「このデパートには初めて来ましたが、平日でも人が多いですね」

 

「そうだね。駅から近いし、大きいからかな?」

 

 海未の言葉に、ことりが同意する。

 来る途中でも、建物の中には様々な小売店があった。以前、LOVE LAIKAらのライブで向かった超巨大商業施設ほどにないにしろ、見て回れるほどの物に溢れ、人も賑わっている。

 

「これなら休日はさぞ人が多いでしょうね……」

 

 実はデパートの屋上ならそこまで人はいないだろうと高を括っていた海未。

 だが、実際に現場を目の当たりすると、想像以上の人だかりで焦りだした。

 ファーストライブは自分が通う学校だったが、慣れ親しんでない場所で人に見られると思うと、足が震えそうである。

 そんな幼馴染に気づいてる穂乃果とことりだが、身を按じたりはしなかった。

 いざというときは海未は人前で芸を披露できる。そうでなければスクールアイドルを始める以前から、実家で日本舞踊の舞台に立てれないだろう。

 勿論、一度只を捏ねだしたら一苦労するのだが、自分から泣き言を言わない内は大丈夫だろうと、幼馴染たちは見守るのであった。

 

「うーん」

 

「どうしたんですか?」

 

 なにやら悩ましい顔を絵里がしてたため、真姫が何事かと尋ねる。

 

「ちょっと確認したいことが。穂乃果、あそこが私たちが踊るステージで間違いないのよね?」

 

「ええ、そうですよ」

 

「なら少しステージの上に登ってみるわ。管理の人からは許可もらってるしね」

 

「あっ、なら私たちも。みんな、行こう」

 

 何かステージに気になる絵里に続き、他のメンバーたちもステージに向かう。

 全員がステージに上がったところで、やっぱりと絵里が納得したように頷いた。

 

「少し小さいわね」

 

「……絵里先輩。使わしてもらえるんだから文句は──」

 

「ごめんなさい。別に悪口を言うつもりはなかったのよ。ただ七人で踊るにはステージの横幅が足りないと思ってね」

 

「言われてみれば……」

 

 確かに今立っているステージは、学校にある講堂のステージやダンスの練習をしている屋上に比べて狭かった。

 それに気づいた他の少女たちも、絵里が何を気にしているか察する。

 

「これだと、普通に踊ったらぶつかってしまうわね」

 

「なら、振り付けをステージに合わせて身振りを小さくします?」

 

「──、いえ、それは止めたほうがいいわ」

 

 真姫の提案を絵里は少し考えてから却下した。

 

「お客さんの中には私たちを知っている人もいるかもしれないし、どうせならライブの告知もしたいわ。そうやって集まった人が、PVよりも小さな動きをしている私たちを見たらどう思うかしら?」

 

「手を抜いてるように見られる、かも?」

 

 花陽の言葉に絵里が頷く。

 

「そうよ。少なくとも、この前公開した新曲を七人でするは避けたほうがいい」

 

「なら、全部カバーで披露しますか?」

 

 自分たちの曲が踊れないなら、他の曲をやるしかない。

 μ'sたちは技術向上のため、プロの曲も練習している。商業目的でなければ、披露することは問題はなかった。

 

「いいえ。全部の必要でないわ。そもそも、私たちが持っている曲は二つ。貰った時間を考慮すると、あと一曲分は何かしらカバーをするしかない」

 

 そう言いながら絵里は自分の頭の中にあるライブスケジュールを説明する。

 

「今考えたのは、最初はスタダを二年生の三人で。次にこれSomeを私と一年生の四人。最後に振り付けが小さい有名曲を七人でカバーしようと思うの。

 私たちに興味ない人たちでも、最後が知っている曲ならば耳を傾けてくれるわ。それなら客寄せとしての役目も十分果たせるはずよ」

 

『おお!』

 

 即座に代案を出した絵里にメンバーたちは感服した。

 

 ちなみに、スタダは『START:DASH!!』。これSomeは『これからのSomeday』の略称だ。

 

 ファーストライブで行った二年生が『START:DASH!!』披露できるのは当然として、他の四人が『これからのSomeday』を担当するならば問題ない。

 追加メンバーたちも『START:DASH!!』は練習しているが、完成度は自分たちが最初に覚えた『これからのSomeday』のほうが高いからだ。

 振り付けが小さいカバー曲にすることで、七人揃ってステージに立ても問題なく、主催者側の集客も考慮しているいい案である。

 

「さすが絵里先輩! すぐそうやって思いつくなんて、凄いですね!」

 

「ほ、穂乃果さん。そんなに褒めても何も出ないわよ。これぐらい誰でも思いつくわ」

 

 素直に賞讃する穂乃果に顔を赤くして照れる絵里。

 四月頃に対立していたとは思えない光景だった。

 

「けど、一年生には四人編成の振り付けを覚えてもらうわ。大丈夫?」

 

「覚えてるって言っても、少し立ち位置を修正する程度ですよね? 問題ありません」

 

「凛も大丈夫です」

 

「わ、私も頑張ります」

 

 その他にも何か気をつけなればならないものがあるか確認し、その日は帰宅する。

 

 翌日から彼女たちはライブ中心の練習を行い、宣伝もスクールアイドル公式HPのマイページで告知。学校内には花陽の手描きポスター。街中でも軽くチラシ配りをした。

 既に衣装も持ち込んでおり、前日にはデパートが開店する前の早朝にリハーサルも行っている。、まさに準備万端の状態。

 そうこうしている内に、μ'sたちはセカンドライブの日を迎えたのであった。

 

 ▼

 

「流石に速く来すぎましたかね」

 

 一人で前入りした海未は割り振られた控え室の時計を見た。

 時刻は十時四十五分。

 集合時間はお昼過ぎの十三時であり、ライブ開始時刻は十四時である。

 最初は穂乃果、ことりと来る予定の海未だったが、昨晩に興奮して眠れなかった穂乃果がまだ就寝中だったため、ことりに任せて彼女一人で向かった訳だ。

 最初は海未も穂乃果を待とうと思ったのだが、ある人物がかなり早く来るようだったので一足先に向かったのである。

 

「おはようございます──って、園田? もう来てたのか」

 

 扉を開けたのは、伊達眼鏡をかけた色明だ。頭には帽子を被っており、軽めの変装だが注視しなければ誰なのか把握することは難しい。

 もっとも、顔見知りである海未にこの変装はしていないようなものだったので、特に気にすることなく挨拶をする。

 

「今来たところです。新田さん、おはようございます」

 

 海未が軽く挨拶をすると、色明は少し驚いた顔で彼女を見つめていた。

 

「随分と早い到着だな」

 

「新田さんが早めに到着するとお聞きしましたので」

 

 色明はライブが行われるデパートの下見をするつもりだったのだが、多忙だったため、結局訪れることはできなかった。

 よって、色明は当日道に迷わないように早めに来たわけだ。

 彼は仕事で様々な場所に赴くことが多いため、行ったことがない場所へ向かう際には、今回のように余裕をもって行動するのが習慣付いている。

 しかし、彼に合わせて海未も早く理由が色明には理解できなかった。

 

「なんで俺に合わせて来たんだ? 俺が言うのはなんだが、前入りにするにしては早くないか?」

 

「歌う私たちよりも貴方が先に到着しているのは気が引けるので」

 

 そう言った海の言葉に色明は得心しながら、ばつの悪そうな顔をする。

 

「あぁ、気をつかわせたか?」

 

「いいえ。私が勝手に来ただけですので貴方こそお気遣いなく」

 

 やんわりと微笑みながら、海未は手荷物をテーブルに下ろす。

 

「本当は穂乃果やことりも一緒に来て、昼食を此処で取る予定でしたけど……。穂乃果が寝坊してしまったので、私だけでもとやって来た次第です」

 

「──、高阪寝坊してるのか?」

 

「集合時間には十分間に合いますよ。念のために、ことりが迎えに行ってますしね」

 

「なら、大丈夫そうだな」

 

 寝坊という単語を聴いて顰めた顔を緩ませる色明。

 高阪穂乃果が寝坊する様子は頭の中で簡単に想像できるが、引き受けた張本人が寝坊で遅刻するなど洒落にならない。

 

「さて、早めの集合したのはいいもの時間が余っているのは事実だな」

 

「そうですね。しかし、準備するのは流石に早すぎますし、他の皆を気長に待つことにします」

 

「待つのはいいが、園田。飯はどうした?」

 

「朝ごはんですか? 当然、朝家に出る前に食べてきましたよ」

 

「それって何時くらい?」

 

「今日はいつも通り朝稽古を済ましてからですから、八時前には終わっていたかと」

 

 海未の話を聞いていた色明は、彼女に感心した眼差しを向ける。

 

「健康的で何よりだ。ちなみに俺は寝起きに飲料ゼリーをぶち込んだ程度だ」

 

「お忙しい中、お時間を作るのは難しいかもしれませんが、ちゃんと食べたほうがいいですよ」

 

「出来る限りそうあるよう心がけているさ。今日は朝に足りなかった分を、今から補おうを思っている。少し早いが昼飯だな」

 

「なるほど、それはいい考えです。開店したてならば飲食店に人も少ないでしょうし、ライブまでゆっくりしててください」

 

「園田も一緒にどうだ?」

 

「──え? わ、私もですか?」

 

 一瞬、理解するのに時間か掛かった。

 色明から昼飯の誘いに、海未は戸惑う。

 提案は普通だ。

 ライブがあるので量は控えめにするが、早めに昼食を済ましておば本番に響かないだろう。

 だが、海未は色明と二人きりだと思った途端、顔の熱が上がった。

 別に色明が嫌なわけではないのが、海未は家族を別にして、異性と二人っきりで食事をする機会は一度もなかった。

 それを意識すると、彼女は緊張して思わず口篭る。そんな海未に、色明が苦笑を浮かべた。

 

 

「無理に付き合う必要はないぜ。一人で行くから、他の奴ら来るまでゆっくりしな」

 

「え? あっ、ちょっと待ってください!」

 

 そのまま立ち去ろうとした色明の袖を慌てて、海未は掴み取る。

 

「私も行きます! 是非、ご一緒させてください!」

 

「気を使う必要はないぞ?」

 

 急に意気込んできた海未に戸惑う色明がそう言うと、彼女は首を横に振った。

 

「気なんて使ってません。むしろ折角のお誘いを断るような真似をするほうが気を使います」

 

「そうか。なら、一緒に行くか」

 

 可笑しかったのは見て取れたが、色明は追求することはせず、改めて彼女を誘った。

 そう言うと、海未は安心したように微笑む。

 

「はい! では、参りましょう!」

 

 ▼

 

 開店して時間も経っていないが、休日だけあって既に店内には沢山の客をお目にすることができる。都内で駅からも近く、それなりに大きさならば集客はむしろ当然だ。

 それでも、海未たちが歩く飲食店が建ち並んだフードコーナーには人影がまだ少ない。

 昼にはまだ早い時間であり、此処に来る客の殆どは遅めの朝食、あるいは海未たちのように早めの昼食だった。

 二、三時間すれば買い物や映画などを終えた人間によってここも人口密度が増す。そうなれば入店し易い場所も限られてくが、逆に言えば、今はどこも空いているため、ゆったりと選べるのだ。

 海未と色明はゆったりとフードコーナーを一周した後、ランチメニューが豊富な洋食店に入った。

 

「しかし、意外だな。園田のことだから和食でなければいけないと思っていた」

 

 案内された席に座り、注文後、色明は向かい合わせで座る海未にそんなことを言う。

 人が少ない店内とはいえ、色明は変装の眼鏡を取っていない。流石に帽子は外しているが、普段とは違う彼の顔を正面から見る海未はどこか新鮮な気分だった。

 二人がここを選んだ理由は、一度この店を通りかかったときにショーウインドに並ぶランチメニューを色明が見た途端、「美味そう」と呟いていたのを海未が覚えており、一周した後、何処にしたいか彼が相談すると、「貴方が一番気になっていたお店に行きましょう」と言われたからだ。男を立てる慎ましい女性の見本である。

 色明としては自分が気になっていた店だったので無論異論はなかったのだが、入った後で海未の好みに合わなかったのではないかと慮ったのである。

 

「そうでもありませんよ。家ではほぼ和食ですが、穂乃果たちの付き合いなどで外食し、口に馴染みがないわけでもありません」

 

「南は如何にも洋食という雰囲気だな。高阪は──家が和菓子屋らしいが、それにしては和菓子を食っているとこは見たこともない」

 

「実家だからこそ、物珍しくも感じないのでしょう。餡子飽きたというのは、随分前から穂乃果の口癖でして、ご両親は困った顔をしています」

 

「ふーん」

 

「けど、別に穂むら──穂乃果の実家が営んでいる店の名前ですが、それを疎んでるわけでもありません。店の手伝いは確りしますし、実家の味にも誇りを持っています。ただ、好きだからと言って毎日食べても飽きないわけではないようですね」

 

「そこは同じ生まれが飲食店の子じゃなければ理解もできんだろうな。そういう園田も家では和食を出されるから、洋食の方が好みなのかい?」

 

「いえ。どちらかと聞かれれば和食の方が好きですよ。そもそも、食べ物(・・・)に関しては苦手なものはありませんがね」

 

「おー、流石名家のお嬢様。弱点など作らない方針ですかい」

 

「そういう訳では……。私だって苦手なのはあります」

 

「ほう。それはなんだ?」

 

「……笑いませんか?」

 

 ちょっと恥かしそうに尋ねる海未に、色明の加虐心が煽られたがそこは芸能生活で養われたポーカフェイスで隠す。

 

「笑わねぇよ。人間苦手なもん一つや二つはあるだろさ。俺も食べ物の好き嫌いで話すなら、イクラが苦手だね」

 

「イクラですか?」

 

「あのプチプチ潰れるのが気味悪い。我慢して食うときはしばしばあるが、可能な限り避ける」

 

 顰め面をしながら語るので本当に苦手なのだろう。

 そんな様子に海未は納得したように頷く。

 

「なるほど。イクラが苦手と言う人から良く聞く話ですね」

 

「それで、オタクはどうなんだい? 俺は話たんだから、教えないのはフェアじゃないだろ?」

 

「別に隠したいわけじゃないですが、その、炭酸が苦手なんです」

 

「炭酸?」

 

「ビリビリしたのが、どうも……。アレを平気で飲まれているのが方々が未だに信じられません」

 

 恥かしそうに口先を揺らす海未を眺めながら、色明は彼女に話しかけた。

 

「あの喉越しがいいんだろうが。なるほど、オタクには文字通り刺激が強すぎるわけね」

 

「そうなんですよ──って、ちょっと、何で笑ってるんですかっ?」

 

「おっと、隠せなかったようだ。すまねぇ」

 

 ワザとらしく色明は口元を手で覆い隠すも、その隙間から口角が上がっているのが解る。

 

「妙に可愛らしく白状するもんだらか、つい微笑ましくてね」

 

「か!? い、いきなり何を──」

 

 可愛らしく、という単語を聞いた途端、海未は顔を真っ赤にさせた。

 いつものことだが、何故彼はこうもお世辞をサラリと言えるのだろうか。芸能界で鍛え上げれてたリップサービスだとは解っていても、海未は毎度どきまきしている。

 そんな様子の海未に益々色明の胸を擽らせたが、これ以上からかっても機嫌を損ねるのは明白なので、引き際は見極める。

 

「悪いな。笑わないと言ったのに笑っちまってよ。詫びとしてここは俺が奢らせてもらうよ」

 

「え? 別にそこまでしていただくとも」

 

「女の願いを無下にしたんだ。むしろここは、食事一つで清算しようという魂胆に腹を立てるべきじゃねぇの?」

 

 やんわりと言った色明に海未が言い返そうとしたところで、丁度注文していた料理が届く。

 食事が並べられている間に会話を続ける気もなく、店員が去った後、十分な間を空けられた彼女は拗ねたようにぼそりと呟いた。

 

「……私は少しからかわれた位で横暴な要求をする女ではありません」

 

「そんな優しい園田海未に乾杯。続きまして、いただきますっと」

 

 色明は林檎ジュースが注がれた海未のグラスを、自身が注文したオレンジジュースが入ったグラスで鳴らしたあと、両手を重ね合わせた。

 そして、何かを待っているかのように海未を見つめてきたので、察した彼女は仕方なく自分も手を合わせる。

 

「いただきます」

 

 彼女がそう言うと満足したように、色明は食事を始めた。

 なんとマイペースな人なんだろうと、海未は呆れる。

 身近なところで穂乃果も我が道を突き進んでいるが、色明も似たようなタイプなのかもしれない。

 料理が届くまでの束の間、海未の感情は色明の言動で多く揺れ動いた。

 平穏。羞恥。感心。驚き。憤り。呆れ。一緒にいると心が波が一定ではない。

 そんなところも穂乃果に似ていると海未は感じ入る。

 

 しかし、悪い気分ではない。むしろ好ましく、充実した時間だ。

 

 考えてみれば、海未が色明と腰を据えて、何気ない時間を過ごすのは初めてである。

 二人きりになったことは今まで何度もあったが、それはほんの僅かな間であったり、音楽に付いて学ぶ時、スクールアイドル活動を通してのことが主だ。

 彼と出会ってそろそろ三ヶ月にもなるが、アイカツとは関係ない時間で、このような落ち着いて共に過ごしたことはない。

 

 改めて思うと、海未は色明のことをよく知らない。

 

 有名な歌手なのは知っているが、彼女が知っていることなど彼のファンならば全部知っているだだろうし、ネットで調べれば簡単なプロフィールも解る。海未が見かけたサイトの中には、色明の食べ物に関する好みは乗っていなかったが、コアなファンなら誰でも知っていそうな内容だ。

 彼が特殊な事情で女子高の音乃木坂に通っていることは前々から公表しており、最近デビューした新田美波とは兄妹関係も今は公表している。人気アイドルグループ、Soleilの霧矢あおいと幼馴染であることも知る人は知っている情報だ。

 

 だから、少しだけ嬉しいのだ。

 

 彼は歌手だ。稀に歌番組以外でもメディアに映されるが彼が食事している姿など、何人のファンが知っているのだろうか。

 これが俳優やアイドルならばバラエティー番組でお目にする機会は幾らでもありそうだが、音楽のみを生業とする彼の日常的光景はファンの間でも珍しいはずだ。

 

 よって、海未はちょっと得した気分になる。

 

 食事は綺麗な様だ。茶化した態度が目立つが、礼儀は重んじているので想定の範囲内。しかし、予想と観察は違うのである。

 美味しそうに食べている。この店の味に満足しているようで何よりだ。

 なるほど、彼はあのように食事をするのだな。

 本当に些細なことだが、その積み重ねこそが相手の理解に繋がる。

 色明は忙しい身であり、今も食事が済めば控え室に戻らなければならないが、こうやってまた、今度もはもっとゆっくり出来る時間に食事を共にしたいと思う。

 また何気ない会話をすれば、知らないことも増えるに違いない。

 そこで海未は思い出したように自分も食事を始める。

 一口入れた、コンソメスープの淡い味はとても美味しかった。

 

 ▼

 

「おはよう──あら?二人で来たの?」

 

 食事を終えた海未と色明が控え室に戻ると、其処には絵里が到着した。

 二人を見て少し驚いている彼女に海未が説明する。

 

「おはようございます、絵里先輩。そして二人で来たのではなく、ここには一度は別々で。そこから早めの昼食を一緒に行っていただけですよ」

「あら、そうなの」

「ふふ~ん。つまり海未ちゃんと新田くんはデートしてたわけやな」

 

 納得した絵里の横で、何故かいた東條希が面白そうに声をかけてきた。

 デートと言われた瞬間、海未は瞬間沸騰でもしたかのように顔を熱くさせる。

 

「で、デートなんて何を言ってるんですか!? というか、何故希先輩までいるんですか!?」

「そりゃあ、えりちの晴れ舞台やからな。面白そうやったし着いてきてん」

 

 狼狽している海未を見て楽しんでいる希の前に、さっと色明が出てきた。

 

「おはようございます、先輩方。ちなみに東條先輩。男女が食事しただけでデートと揶揄するなんて、子供ぽいから今後は止めた方がいいっすよ」

 

「まだピチピチの高校生、十分に子供やから茶目っ気ぐらい見逃してぇな」

 

「もうすぐ大人でしょうに」

 

「彼の言うとおりよ、希。冗談を言っていい相手も見極めなさい。ほら、貴女があんなこと言うから、海未さん顔を赤くしたままで様子が可笑しくなっているじゃない」

 

 海未は顔を赤らめたまま、ぶつぶつと小声で「──あれはただの食事だった。けど二人きりで若い男女が食事をしたのは事実で、逢引に捕らえられても──」と自問自答を繰り返している。

 そんな様子を見て、希は満足そうに頷いた。

 

「ちゃんと、言う相手は選んでるで、えりち。ご覧の通り、面白い反応をしているからな。大抵は軽く流されてお終いや」

 

「相変わらず性質(たち)が悪いわね。──ところで海未さん。色明とは別々に来たようだけど、此処には貴女一人だけ? いつもの幼馴染二人は?」

 

 親友に冷ややかな視線を送った後、動揺している海未を見かねた絵里は別の話題で意識を逸らそうとする。

 目論見は成功し、絵里が声をかけると海未は「はっ!」と我に返って、質問に答えた。

 

「穂乃果とことりはもうすぐ後に。本当は一緒に来る予定だったんですけど、穂乃果が寝坊して」

 

「あら、そうなの。大丈夫?」

 

「大丈夫です。ことりも一緒ですし、待ち合わせ時間には十分間に合い──」

 

 そこで、海未の携帯が鳴り響いた。

 彼女は咄嗟にポケットから取り出して、相手を見ると(くだん)のことりからだった。

 

「おっと、噂をすればことりからです。失礼、出ますね」

 

「ええ、どうぞ」

 

 海未は会話の途中であった絵里に一言断りを入れてから、鳴り響く電話の受信ボタンを押した。

 

「はい、もしもし、ことり? ────ええ、私はデパートに。新田さんや絵里先輩もいます。おや、穂乃果だけではなく、一年生たちと一緒に秋葉の駅にいるのですか」

 

 聞こえてくる会話の断片から、偶然なのか、ことりと穂乃果は一年生メンバーと駅にいるらしい。

 都会の電車本数は多いので、今が駅にいるのならば待ち合わせ時間には十分間に合う。

 穂乃果が寝坊したという発言で少しだけ心配した絵里だったが、これなら大丈夫だと安心しかけたとき、不穏な気配を感じ取る。

 

「────え? ────そうですか。──はい。──はい。わかりました。では、進展あれば。連絡を。気をつけて来てくださいね」

 

 そうやって、電話を切った海未の顔は、深刻を物語っていた。

 

「何かあったの?」

「実は──」

 

 絵里が静かに尋ねると、海未は不安そうな声で答える。

 

「何処かの路線で事故があったらしく、ことりたちが乗ろうとした電車が運転見合わせのようで。他の方法で来るそうですが、最悪、本番に間に合うかどうか今は解らない、だそうです」

 




 そういうことで、皆様お久しぶりです。三ヶ月以上ぶりの更新になりました。
 執筆しなければと錆付いた心に油を注ぎ、ぶっこんだのが今回の話です。
 年末が忙しかったり、みもりんの交際を知って切なくなったとか関係ありません。
 ただの怠慢です。せっかくお気に入り登録している方々には返す言葉もありません。
 それでも、足掻きは続いているようなので、今後もよろしくお願いします。
 
 なお、今度の更新合わせて、一部の話をなかったことにしようと思います。
 アイマスの冬馬やアイカツのサブキャラが出た回ですが、アレから感想も途絶え不評だと感じたからですね。
 他にも、複線回収が遅いので良いところがなく再登場がかなり先なのは良くないだろうと考えたからです。予定では恋の鞘当に使う予定でしたが、まだμ'sのメンバー揃ってもいないのにそれを平行して進めるのは厳しいと思ったからです。ていうか、失敗してます。
 だから、消します。もしも気にっている人がいたら申し訳ありません。でも、アニメで頑張っている冬馬を見たら、悪印象だけ残すのは駄目だと思ったので。

 ではでは、また次回の更新で。
 最近、周りで体調不良者続出してますが、皆様もお体を大事に。
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