貴方だけの歌 ~ラブライブ! School idol IF~ 作:貫咲賢希
J( ・`д・´)し 「ちょっと、何で私だけ出番がないのよ!」
/cVσ_VσV「すみません。出番がまだ先の方は発言を控えてください」
J( `д´)し「なんでよっ!」
新入生歓迎会────μ's初ライブの日がやってきた。
各部活のデモンストレーションや委員会による軽い催し物をして新入生歓迎会が終えると、生徒たちは散り散りに講堂から出て行く。
部活動を行っている生徒たちはここからが本番だ。委員会は半ば強制的に何処かへ所属されるが、部活は選んで貰わなければ入部してもらえない。
デモンストレーションを行った部活やそうでない部活も、周りの新入生に呼びかけて勧誘を行う。今年の一年生は一クラスしかない為、今後の活動のため新入生獲得は何処も必死である。
同じく、海未たちμ'sの三人もチラシを配ってライブの宣伝をした。
「初ライブやります!」
「この後、午後四時からです!」
「よろしくお願いします!」
講堂から出て行く生徒たちに海未、穂乃果、ことりの三人は手当たり次第チラシを配ろうとしてるが、色よい反応はほとんどない。
ほとんどが既存の部活に足を向けており、彼女たちの声は雑多にかき消されていた。
「うう、他の部活に負けてられないね」
「そうだね」
「時間はまだあります。とりあえず講堂から完全に人気がなくなるまで宣伝しましょう」
苦い顔を浮かべる海未たちだったが、すぐに笑顔を浮かべてチラシ配りを再開する。
「この後、午後四時から初ライブやります!」
最初にあったぎこちなさはなくなり、自然な笑顔で海未はチラシを配っていく。
「μ'sです! ライブをやります! お願いします!」
流れように笑顔を振りまきチラシを配る様は、歌ってと言われて逃げ出した少女には見えない。正しくアイドル活動、アイカツをしているアイドルの姿だった。
「ライブします! 是非きてください!」
「ライブ?」
「!? はい、午後四時から──」
久しぶりにライブに興味ありげな反応が聞こえたため、海未が声がした方へ振り向いた途端、彼女は笑顔を引きつらせた。
「なに、園田って軽音部でも所属してたの? 意外だな」
「うっ、貴方ですか……」
そこには音乃木坂唯一の男子生徒、新田色明がいた。
仕事の関係で早々に学校を抜け海未たちのチラシ配りを見なかったり、校内でμ'sの活動を目撃しなかったりしたため、今の今まで海未たちのアイカツを知らなかったのだ。
隣の席の海未も、相手がプロであることの畏縮と気恥ずかしさから、自分から話すことはなかった。そもそも、面と向かって話すのも久しぶりである。
しかし、知られたからには隠す必要もないので、海未は仕方なく説明した。
「いえ、軽音部ではなくスクールアイドルです」
「スクール、アイドル? あの学生が自主的にアイカツするやつか?」
「ええ、そうです」
首肯する海未にますます色明は驚いたように目を丸くした。
「……………。ほんと、意外だな」
心底、予想外だったのだろう。しばらく沈黙してから、色明はそう呟いた。
その反応には海未自身も同意見である。
「ええ、私自身も思いますよ」
「新田君も初ライブ来ない?」
「ほ、穂乃果!?」
二人が話しているのに気づき割って入ってきた穂乃果の誘いに、海未が狼狽した。
「か、彼も誘うのですか!?」
「いや、海未ちゃん。穂乃果にはこの流れで誘わないほうが解らないんだけど?」
「彼はプロですよ!? 私たちのを見てもらうなんて痴がましいです!」
「えぇ、大げさだよ……」
「大げさなものですか! そもそも、同性ならともかく、あんな短いスカートで殿方の前に出るなど私は嫌ですよ!」
最終的は認めたが、海未はことりが作った衣装に不満だった。
別に出来が悪いわけでない。むしろ、ここ数日で可愛らしい衣装を三着も作ってくれたことりには感謝し切れないほどだ。
だが、スカートの丈が如何せん短い。少なくとも海未はそう感じた。他の二人の説得がなければ自分だけ制服で踊りたいほど、彼女は乗気ではない。
あれを色明の前で着ることを想像すると、抑えていた羞恥心が再び溢れそうになる。
そんな海未を見て、穂乃果は呆れた顔を浮かべる。
「何を今更。そもそも、初ライブの様子はネットで公開するんだから新田君一人を気にしても仕方ないよ」
「は? 何ですかそれは?」
「だから、新田君一人に気にしても──」
「その前です! ネットで公開するなんて私聞いてませんよっ!」
「さっき決まったからね。実はね、ヒデコ、フミコ、ミカたちが穂乃果たちのライブを手伝ってくれるって言ってくれたんだ」
ヒデコ、フミコ、ミカというのは穂乃果たちのクラスメートだ。
昔からの幼馴染である海未とことりほどではないが、穂乃果はその三人と仲が良い。
彼女達三人は学校存続のため、穂乃果たちのアイカツの成功を思い、進んで協力を申し出たのである。
「ヒデコいわく、講堂って記録のために吹奏楽の演奏や演説を撮影するカメラが設置してあるんだって。で、せっかくならそれを使って初ライブの様子を撮ろうってなったんだ」
「そ、そんな!」
「ちなみにことりちゃんは賛成してくれました」
「くっ! また相談もなしに二人して私を貶めましたねっ!」
「人聞き悪いなぁ。海未ちゃんもいつまでも歌だけじゃ見栄え悪いし、他のスクールアイドルたちみたいにPVも必要だって思うでしょう?」
「それは、まぁ…………」
「思い出にもなるし。海未ちゃんが嫌って言うんだったらネットには公開しないから、ね?」
「うぅ、それなら、わかりました」
「やった!」
項垂れて渋々了承した海未の横で穂乃果が嬉しそうに両手を上げる。
「あ、置いてけぼりでごめんね、新田君」
「いや、別に。初ライブということは、スクールアイドルを結成してまもないのか?」
それまで二人の様子を黙っていた色明が静かな声で穂乃果に訊ねた。
「うん! 私と海未ちゃん、あとことりちゃんって子の三人でね! 学校のためにアイカツを始めたんだ!」
「学校のため?」
「そうだよ。スクールアイドルって最近目立ってるよね? 私たちもアイカツして注目を浴びたら、人も集まって廃校も阻止されるっと思ってね」
「ふーん、学校のためにねぇ」
それを聞いた色明は一瞬両目を瞑る。
この学園が廃校の危機であることは彼も知っている。男である己が女子高に通うことになった一旦であるのだから当然だ。
色明は閉じられて目を見開くと、軽く微笑んだ。
「いいんじゃないか? 学校のために頑張るなんて悪くないと思うぜ」
「ほんと? ありがとう!」
「ああ。……さてと、俺は色々とお呼ばれしてるんでこれで失礼するぜ」
色明は唯一の男子生徒であり、プロの歌手。ルックスもいい。あわよくば自分たちの部活に引き込めないかと様々な部活から誘いがあっても不思議ではなかった。
「うん。解った」
「お忙しい中、足を止めてすみません」
「気にするな。んじゃあ、精々頑張れよ」
そう言い残して色明が去った後、海未が気を落としたように「はぁ…………」と溜息を零し、そんな彼女を見て穂乃果は呆れ顔を浮かべた。
「いい加減元気を出しなよ。さっきまでの笑顔の海未ちゃんはどうしたのさ?」
「見も知らない誰かに自分が歌っているところをいきなり曝すことになったら、気の一つや二つも落ちますよ」
「アイカツをすれば遅かれ早かれ通る道なんだから、しっかしして」
「そうですけど。はぁ、私はそろそろ弓道部に顔出すので後はよろしくお願いします」
元々、海未は弓道部に所属しており、スクールアイドルを始めてからも止めずに掛け持ちをしている。
最近はアイカツに集中しているが、今日は新入生勧誘のため一立ち披露することになっていた。
「うん、わかった! 弓道頑張ってね! 残りのチラシはことりちゃんたちと配るよ!」
「はい、お願いします」
海未は残っていたチラシを穂乃果に預けて、弓道着に着替えるために更衣室に向かう。
その様子を物陰から誰かが見ていたことに、彼女達は気づかなかった。
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弦から解き放たれた一矢が静かな音と共に的を射抜く。
四射中四射共的中──見事、皆中させた海未に周りものは敬意を持って表し送った。
弓道において四射目を当てるのは難しく、ある指導者いわく「一射目は技術、二射目は体力、三射目は精神力で中る。最後の矢は人格者でなければ中らない」と述べていることからどれだけ困難であるか解るだろう。
残心を済ませた海未は一礼した後、後は弓道部の先輩に任し、静かに弓道場から去った。 海未は幼いから頃から家柄ゆえ弓も励んでおり、腕前も先ほどのように達者であるため弓道部では当然主戦力だ。本来ならば、スクールアイドルの両立など反対されるところなのだが、心優しい先輩や顧問は彼女の掛持ちを許し、また応援してくれている。
そんな先人者に感謝しつつ、海未は着替えのため更衣室に向かった。一部の部活を除き、ジャージやユニフォームに着替える場合は共用の更衣室で着替えるのが決まりである。それを煩わしく思う者は物陰で着替えたりするのだが、新田色明という男子生徒が通ってからはあまり見かけなくなった。
海未はこれから一度更衣室で制服に着替えてから、その後で講堂に向かう。講堂で再び着替えをするわけだが、後々のことや気持ちを切り替える上で面倒承知の行動である。
「あの、すみません」
「?」
あと数歩で更衣室がある校舎へ入る間際、海未は呼び止められた。
振り向くとジャージ姿の女子生徒がおり、彼女は暗い顔で海未を見つめている。
「使わなくなったからこれを体育倉庫に戻してきてと言われたんですけど、場所教えてもらえまんか?」
見ると彼女は両腕で沢山の赤いカラーコーンやバーを抱えいた。
今にも零れて落としてしまいそうな様子、体育倉庫がまだ解らない即ち新入生一人にこれほどの荷物を任せることへの苛立ちを内心に秘め、海未は優しげに微笑む。
「かまいません。なんなら私が半分持ち案内します」
海未の提案を聞き、少女はびくりと体を震わせ、見る見るうちに申し訳なさそうな顔を浮かべる。
「いいんですか?」
「ええ、勿論」
ライブまでまだ時間がある。少しくらいの寄り道など問題ないと海未は判断した。
「…………それじゃあ、お願いします」
「はい。では、こちらです」
手伝って貰う事に気後れしてるのか顔色悪い少女に苦笑しつつ、海未は半分よりも多めに彼女が抱えたものを受け取ったから案内する。
体育倉庫はグランドから離れた場所、学園内の人気がない片隅にあった。道具を出し入れするに不便だが、少しでも自由なスペースを作るための配慮である。
「ここです。鍵がかかってるみたいですね。受け取ってますか?」
「あ、はい。ここに!」
錠前で施錠されている扉を見て海未が振り向くと、少女は抱えたものを一旦その場に下ろし、ジャージのポケットから一本の鍵を取り出した。
彼女はそのまま錠前の鍵を開けると、海未は埃が漂う体育倉庫の中に入る。
「後のことを考えて私が整理しながら置くので、貴女は道具を渡してください」
「は、はい!」
少女は海未に言われたとおり、地面にあった道具を渡し、海未は慣れた様子でそれらを定位置に戻す。
数秒もかからず、片づけが終わると少女は海未に向かって頭を下げた。
「あ、ありがとうございました!」
「かまいませんよ」
そう言いつつ海未は体育倉庫から出ようとし、
「それと、ごめんなさいっ!」
いきなり閉められた扉に思考が停止する。
「え? な!? 貴女、何を!?」
暗闇の中、数秒呆然とした海未は我に返り、急いで扉を開こうとするが既に施錠されており、ぐらぐらと揺らすだけだった。
「くっ! ふざけてるのですか! 早く開けなさい!」
「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」
怒鳴る海未に対し、扉の向こう側から少女の悲痛な叫びが聞こえてた。
嗚咽交じりにの声に海未は益々訳が解らなくなる。
泣きたいのはこっちだと海未が思った矢先、少女の声が彼女の耳に響く。
「あとで必ず開けます! あとで幾らでも怒られます! でも、どうか、しばらくここにいてください!」
「何故ですか!? 今から私は──」
「──ライブ、ですよね海未先輩」
それは先ほど海未といたものとは別の少女の声。
いきなり扉を閉められたことを考えれば、声の主は何処かに潜んでいたのだろう。
新たに現れた少女は、冷ややかな口調で海未に語りかけた。
「高坂先輩や南先輩と一緒にライブするんですよね」
「解ってるなら早く開けなさい!」
「嫌です」
その一言で胸の奥から熱くなるように激昂した海未が怒鳴り散らそうとした瞬間、新たに現れた声の主は悲しげに言った。
「だって、私たちは海未先輩に嫌な思いをさせたくない」
「え?」
「スクールアイドルで廃校阻止する、でしたね。立派だと思います。でも、それで海未先輩に無理強いをするのは幾ら幼馴染だからと言って身勝手すぎます」
「あ、貴女は何を────」
「さっきだって、海未先輩に選択肢なんて与えずにライブ映像をネットにアップしようとしてたじゃないですか。先輩、あんなに嫌がってたのにっ!」
講堂での一件を言っているのだと解った海未は、徐々に彼女たちの行動理由を察していき、顔色を青白く染める。
彼女たちは自分を『海未先輩』と敬称していた。
ならば、先ほど会った子の姿や今聞こえる声に覚えがなくとも、素性は簡単に突き止められる。以前新田色明を取り込んだ者と同様、園田海未という人間を慕っている者たち。
目的は、海未にライブをさせないこと。
「自分たちが無茶苦茶なことをしているのは解ってます。でも、海未先輩が見知らぬ大勢の誰かに恥を曝すくらいなら、私たちは幾らでも悪者になります」
こつこつと足音が聞こえる。
遠ざかる足音に気づいた海未は止まっていた両腕を何度も扉に叩き付けた。
「待ちなさい、話を! うっ、誰か!! 誰かここを開けれください!!」
海未の必死の叫びは誰も聞こえず、ただ虚しく響くだけだった」
アニメではえりちがライブを撮影してたとなってますが、途中から参加してた人が撮るなんて無理があると思い、ヒフミトリオが撮影することにしました。